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川澄君の妄想


いつもの水曜日、川澄とすいれんは肩を並べて歩いていた。
特に会話もないが、手を繋いで歩くことは2人にとって幸せな時間である。
(もう…家か…)
川澄は一抹の寂しさを覚え、ふっとため息をつく。
すいれんのことを知れば知るほどに、愛しさが増していき、水曜日のこの時間…一緒に帰る時間が、川澄にとってはとても早く感じる。しかしそれはすいれんにとっても同じだということを気づいてはいない。
(前は頭の中の半分以上は空手のことだったけど…今は…)
『…じゃあまた』
『送ってくれて…ありがとう…』
すいれんを家まで送り、今日は良祐が家に来ると言っていた為、川澄も急いで自宅へと戻った。
『おぅ、おかえり~』
『…おぉ』
自室にはすでに良祐が居て、暇潰しに漫画を読んでいた。川澄が帰ると漫画を閉じて、本棚にしまう。
『なぁ…川澄ぃ…聞いていい?』
『…ダメだつっても聞くだろが…』
良祐は煮え切らない様子で、モジモジしてみたり、赤くなってみたりで、聞いていいかと言ったわりには話すのを躊躇っているようにも見える。
『なんだよ?』
『えっ…うーん…あのさぁ…』
『俺腹へったんだけど…下行っていい?』
『ちょ、ちょ、ちょ、待てって!!』
すぐにでも部屋を出ていきそうな川澄を必死に引き留めると、良祐はようやく話す決意をした。
『おまえってさ…童貞…だよな?』
『はぁ!?』
思ってもみなかった話題に、川澄も動きが止まる。
『いや…だから…高嶺ちゃんと、そういうこと…してない…よな?』
こういった話が一番苦手な川澄だったが、良祐に言われたことですいれんとのそういう行為を想像してしまい、真っ赤になる。
『…そういう…ことって…おまえ、何の話だよ!?』
『俺さ…みなちゃんが出てくるんだよ…』
『もう意味不明だぞ…おまえ』
話の展開に全く付いていけないため、取り合えず良祐が全て話終わるのを待つことにする。
『1人でしてるとき…みなちゃんの裸…想像するんだよ!!』
意を決した良祐は、川澄の方を見ずにそれだけ言うと頭を抱えて座り込んでしまう。
『もう…次の日とか会うと、罪悪感でさ…顔見れないんだよ。これって、普通のことなのか!?なぁ、川澄も高嶺ちゃんの裸想像する!?』
『…っ…んなもん知るかっ!!』
真っ赤になりながらそれだけ言うと、部屋を出てドタドタと階段を降りていってしまう。
『かわすみぃぃぃ…』
1人残された良祐は、相談相手に逃げられて座り込んだまま川澄の出ていったドアを見つめる。

寝る前に少しの時間勉強をしていると、川澄はふとすいれんのことを思い出し、子機を手に取りもう既に覚えてしまったダイアルを押していく。同時に良祐に言われたことも思い出したが、それは無理矢理打ち消した。
『もしもし…』
『あ…俺…』
喋り下手な川澄が、電話で長話をすることはあり得ないし、すいれんもぺらぺらと喋る訳ではない。しかし、川澄が話すこともないのに電話をかけてしまうのは、ただ声が聞きたいだけなのかもしれない。
『今、何してた?』
『…べ…んきょう…』
『俺も…勉強してた。もう寝る?』
『うん…』
『そっか…おやすみ。また明日な』
『おやすみなさい』
すいれんに、川澄君の声がホッとすると言われたことがあるが、それは自分の方かもしれないと川澄は思う。
今の電話のように、ただおやすみという声を聞くだけで、川澄の心に何かを落としている。
すいれんの声がまだ耳に残っている。
川澄は幸せな気持ちで眠りに着いた。

薄暗い部屋の中、裸で絡みあう2人の姿がある。
荒い息づかいと衣擦れの音が静まり返った部屋に響く。
(気持ち…いいな…なんだこれ…)
川澄は横になっている状態で、すいれんを後ろから抱き締め柔らかい胸をもむ。
『…っ、う…んっ』
どうしてこんな状況なのか、いつ部屋に来たのか、色々考えることはあったはずなのに、目の前の行為に考える力を全て奪われた。
熱くなった自身をちょうど後ろから当たるソコに擦り付けながら、胸の突起を弄ると、すいれんの身体はビクビクと震えた。
『あっ…はぁ…』
何度も擦っていると、どちらの体液か分からないほどに濡れて、擦り付けたところからクチュクチュと湿った音がしてくる。
すいれんの顔を見たかったが、何故か身体が動いてくれない。
『あっ…か…わすみ…くんっ…』
もう訳も分からずに、無我夢中で身体を触り腰を打ち付けた。
(も…やべ…っ)
一層大きく腰を動かし、すいれんの足の間に欲望を放つと、川澄はまた深い眠りに落ちていった。

川澄は下半身に不快なものを感じて目を覚ますと、まだ室内は真っ暗だった。もちろんすいれんの姿もない。
(…っ!!俺…何やってんだ…)
下半身の不快な原因は自身の体液で、すいれんとのあれこれはもちろん夢で…川澄はガックリと肩を落としてベッドに座り込んだ。
『俺…りょーすけよりヤバイかも…』

Fin

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川澄君の苦悩

いつも通りの朝、教室のドアを開け中に入ると、いつも通りのみんなの視線。
すいれんはため息をついて、自分の席へ座る。
『おはよ』
後ろから大好きな人の声が聞こえた。
『お…はよ…川澄君…』
そしてまたみんなの視線が集まる。見られるのも、川澄とのことを色々言われるのもすいれんにとっては不快だったが、それでも朝挨拶したり、教室で話したりするのはとても大事なことだった。
『なんか顔色…具合悪い?』
すいれんは頷くだけで返事をする。
(やっぱり…休めばよかった…)
今日は朝から生理痛が酷く、少し歩くだけでもお腹に鈍い痛みが走る。
それでも、川澄が気がついてくれたことが嬉しく、やっぱり学校に来て良かったと思うのだった。
『…大丈夫…だから…』
川澄は心配そうに見るが、それ以上は何も言わなかった。

2時間目の授業が終わって休み時間になると、すいれんは机に突っ伏してしまうほどの具合の悪さになっていた。
(も…帰りたい…けど…歩けない…)
川澄に頼れば、また他の男子たちが騒ぐことを思うと、簡単には頼れなかった。
(あやちゃん…のとこ…)
そう考えて立とうとすると、目眩がしてふらついた。
『大丈夫っすか!?』
力強い腕と安心する声に支えられてホッとするが、すぐに教室内がざわつき出す。
『高嶺ちゃんに触んな~川澄!!』
『高嶺ちゃん、なんか具合悪そうじゃね!?』
注目の的になっていることに、居たたまれなさを感じて自力で歩き出そうとするが、川澄にそれを阻まれひょいと横に抱っこされる。
それを見ていた周りの男子の悲鳴のような声は、すでにすいれんの耳にはとどいていなかったのが、不幸中の幸いだ。
『保健室…連れてく…』
『あ…りがと…』
2回目のお姫様抱っこにドキドキする余裕もないまま、保健室まで運ばれると、優しくベッドに下ろされた。
『保健の先生…いないな…』
『…うん…』
『横になってたら?…俺、先生呼んでくる…』
川澄はそう言って歩き出そうとするが、すいれんにシャツを掴まれ立ち止まる。
『…』
『…そばに…いて…』
『分かった』
横になるすいれんの手を握り椅子に腰掛けると、すぐにスースーという寝息が聞こえ始めた。
(睫毛…長いな…って俺何見てんだっ!!手握ったままだしっ!!)
赤く頬を染め、起こさないようゆっくりと手を離そうとするが、すいれんがぎゅっと握っているため離すことが出来なかった。しかし、それが堪らなく嬉しくなる。
(なんだ…俺…変だな…もっと触りてぇ…)
空いている手で髪を撫でると、すいれんが気持ち良さそうに吐息をもらす。
『…ん』
(もっと…触りたい…ってこれじゃあ俺、変態みたいじゃねーか!!)
それでも髪を撫でる手が止まらず、授業開始のチャイムが鳴っても川澄が教室に戻ることはなかった。
しばらくすると、すいれんが川澄が手を握っている側に寝返りを打ち、手を抱き枕のようにして眠り出した。
『…!!!』
声こそ出さなかったものの、真っ赤になりながら動くことも出来ずに俯く。
(む…胸が…当たってる…)
髪を撫でることも忘れて、どうしようかと思い悩んでいると、すいれんが抱き締める腕に力を込めた。
『か…わすみ…くん…』
寝言で言ったのは川澄の名前、どうしようもないほどの喜びが沸き上がると、その瞬間、分かってしまった。
世の中のカップルはどうしてあんなにもベタベタするのだろうと、いつも疑問を感じていたが、自分も同じことだ。
好きだから、この人のことを触りたくて、触ったら…止まらなくて、そういう想いを相手に伝えるためにキスやその他の行為をするのだと。
川澄は起こさないように、そっと腕を抜くと寝ているすいれんの頬にキスを落とした。
『お大事に…』

そのあと、教室に戻った川澄に男子たちの大ブーイングがあったことは言うまでもない。


Fin

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デート

日々蝶々 【デート】川澄×すいれん

いつもの水曜日。いつもの帰り道。
川澄は学校から走ってきた分、軽く汗をかくぐらいに体が温まっているが、横を歩くすいれんは寒そうに体を縮めている。
『寒い…?』
『うん…ちょっと…だけ…』
川澄はポケットから去年すいれんからもらった手袋を取り出すと、すいれんの手に渡した。
『俺…暑いぐらいだから…使って』
『ありがとう』
2人は顔を見合わせ、手を繋いで帰り道を歩いた。
『あの…さ、今週の土曜日…予定ある?』
しばらく無言の時間が続いたが、緊張の面持ちで川澄が切り出すと、予定も確かめもせずにすいれんが首を横に振る。
『どこか、遊びに行こうか…』
『うん…嬉しい…』
すいれんが、微笑みながらそう言うと、照れたように川澄も微笑み返す。
(川澄くんが…デートに誘ってくれた…嬉しい…嬉しい…どうしよう)
『じゃあ、部活終わったら電話する』


(土曜日…どうしよう…何着ていこう…)
約束をした日の夜、自室で1人洋服を何枚も出しては終い、出しては終いを繰り返していた。
すいれんは可愛い洋服やアクセサリーなどはもちろん好きだが、諸々の事情から買っても着る機会がないため、いつもおとなしめの洋服を選ぶことが多い。
(可愛い格好で…行きたいな…)
すいれんに自身の可愛さの自覚はないが、今までは《可愛くなりたい》と思ったこともなく、あまり騒がれずに毎日過ごせたら、それでよかったのだ。
しかし、恋をして初めて、髪の毛が少し跳ねてるのが気になったり、テスト前に睡眠不足で目が赤くなってしまったことを、気がつかれませんようにと、少しでも可愛いと思ってほしい、そう願う自分がいた。
(でも…もし、他の男の人に絡まれたりしたら…川澄くんに迷惑かけちゃう)


翌日の帰り道、あやとゆりにそのことを相談すると、案の定ゆりは目をキラキラさせて、すいれんの話を聞いていた。
『そっかぁ~そうだよね!!好きな人の前では、可愛くしたいもんね!!』
ゆりの言葉にすいれんも大きく頷く。
あやは心底分からない、という表情をしていたが、フッとため息をつくとすいれんに笑顔を向ける。
『目立って絡まれたりしたら危ないから…キャップはした方がいいと思うけど、あとは好きにしたらいいんじゃない?』
あやの応えにすいれんも安心したように笑った。
『そうと決まったら明日の帰り洋服買いに行こう~!!』
『2人とも…ありがとう』


土曜日、すいれんはゆりにメイク、髪のセットをしてもらい、洋服はいつもとは違う、淡いピンクのワンピースを着ていた。
自宅の窓から川澄が歩いてくるのが見え、待ちきれずにすいれんはチャイムが鳴る前にドアを開けた。
瞬間、川澄は息を飲み顔を背けてしまった。
(なんか…今日…ちげー…)
長い髪を巻いてもらったのも見てほしくて、家の前ではキャップを外して出迎えた。目をそらしたままの川澄の頬は赤く染まっていた。
『今日…やっぱり…家でもいいっすか…?』
ようやくすいれんの顔を見ると複雑な表情でそう話した。すいれんは、何か川澄を怒らせるようなことをしてしまったかと心配になる。しかし、ボソッと呟いた一言で不安は払拭される。
『あんまり他の人に見せたくないんで…』
(!…それって…自惚れても…いい…のかな…ちょっとは…ちょっとは…いつもより可愛いって…思ってくれたのかな…)
そんな風に考えると、嬉しくて、溢れ出てくる笑みを押さえることが出来ずに、すいれんはキャップを目深に被った。

もっと、もっと、この人のために強くなりたい、そして可愛くありたい…そう思った。

Fin

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遠出でもしようか

日々蝶々【遠出でもしようか】
川澄×すいれん。高校を卒業し、それぞれの道を歩む2人。
なかなか会う時間は取れないけれど、会うことのできる1日を大事にしたい。
そんな思いから…。




高校を卒業して、川澄は大学へ、すいれんは専門学校へとそれぞれの道を歩みだした。

川澄は、一人暮らしを始めてから、やっと携帯を持ち始め、すいれんとの電話やメールはそれなりにしているが、会えるのは月に2〜3回だった。
電話で声を聞くたびに、会いたい気持ちは募るばかりで、周りに色々言われながらも毎日会えていた高校生の頃が懐かしい。

(早く会いたいなぁ…)

すいれんはカレンダー見て、本日何度目かのため息をついた。


明後日の土曜日、川澄が実家に戻るため、家に遊びに行かせてもらうことになっている。
川澄の母はとても優しく、あまり口数の多くはないすいれんも、落ち着いて話すことが出来た。
本当ならお昼ご飯を食べてから行く予定だったが、お昼も一緒に食べればいいという川澄の母の好意に甘えて、午前中から会うことになった。

(明日は…金曜日、明後日は…土曜日、寝ちゃえばあと1日…)

早く土曜日にならないかと、おやすみのメールを川澄へ送り眠りにつく。



何度訪ねても、最初のこの瞬間だけは緊張する。
目深に被っていたキャップを脱ぎ、身だしなみを軽くチェックする。
今日は膝より少し上の、淡いブルーの花柄ワンピースを着ていた。
いつからか、あやからの洋服チェックもなくなり、勇気を持って着たい服を着るようになった。
あやもそれを応援してくれている。
まだキャップは手放せないけれど。

すいれんは持ってきたお菓子の袋を開けギュッと掴み、インターフォンを押した。
インターフォンからの応答の代わりに、家の中から、バタバタと階段を駆け下りるような音がする。
程なくして、ドアがガチャっと開いた。

「お…はよ…」

「おはよう、どうぞ」

すいれんは靴を揃えて、まずはキッチンにいる川澄の母のところへ挨拶に行く。

「おはよう…ございます。お邪魔します」

「あら、おはよう!ご丁寧にどうも!」

緊張の面持ちでぺこりと頭を下げると、持ってきたお菓子を袋から出して、テーブルに置いた。

「お菓子また作ったので…食べてください…」

「いつもありがとね〜。このあいだ貰ったのも美味しかったわ〜。あ、お昼出来たら呼ぶから部屋行ってていいわよ」

すいれんは照れたように赤くなると、また軽くお辞儀をして、川澄の待つ部屋に行く。

川澄の母は、口数は少ないが、当たり前の礼儀や挨拶が出来るすいれんのことを、非常に気に入っていた。
まだまだ若い2人でも、いつかはあの子が娘になる…そんなことを考えながら、ウキウキと昼ご飯の用意を始めた。


川澄の部屋をノックすると、入ってと声が聞こえる。

「お邪魔…します」

初めて来た時も、今日も、川澄の部屋はそれなりに片付いていて、性格出るなあとすいれんは部屋を見渡す。

「2週間ぶりだね」

「うん…電話で話してたけど…」

(会いたかった…)

すいれんは声に出さずに見つめると、川澄はそれに応えるように言った。

「会いたかった」



「学校どう?騒がれたりしてない?」

川澄は、会うたびに心配そうに聞いてくる。

「うん…楽しいよ」

安心させるようにすいれんは笑った。

すいれんの通う製菓の専門学校は、調理部門と製菓部門で学校自体が分かれていて、製菓専門学校は男女比率7:3程度のため女子が多く、すいれんにとっては過ごしやすい環境でもあった。
入学した当初こそ騒がれることが多かったが、年齢にもバラツキがあり、やはりすいれんに告白する勇気のある男性などなかなかいないため、毎日楽しく学校に行っている。

「女の子の友達…出来たの」
すいれんが嬉しそうに話す。

「そっか…どんな人?」

「なんか…可愛い子」

可愛い子と言うすいれんの方が、絶対に可愛いだろうと心の中でだけ思う。

(自分のことは、本当に、分かってないんだな…)

だからこそ川澄は心配になるのだが、1人で歩いていけるようにと決意したすいれんに水を差すようなことはしたくはなかった。

(ただ、守ればいいわけじゃない…。それじゃ前と変わらない)

本当は、何の苦労もしないように全てから守ってあげたかった。
でも、それはすいれんの望むことではない。
校内で騒がれても、前を向いて歩いて行けるようになったのは、本人の強い想いがあったから。

すいれんは、専門士や製菓衛生師の資格を取るために、実践はもちろんだが、理論ではパンの歴史や調理の基礎などを学んでいることを話した。

すいれんが川澄の大学の話を聞こうとすると、1階からご飯出来たわよという声が聞こえた。

「行こうか」

「うん」


川澄の母が用意してくれたのは親子丼で、すいれんが甘い卵が大好きだと前に話していたことを覚えていてくれたらしかった。

「うちは、男2人だから、女の子の食べる量が分からなくて、すいれんちゃんこっちに来てご飯盛ってもらえる?」

「はい」

すいれんは自分の分をよそって、川澄の分と共に持っていくと、川澄の母に驚かれてしまう。

「これしか食べないの?遠慮しなくてもいいのよ?」

「いつも…これぐらいなんです…。あの、食べるのが遅いから…お腹いっぱいになっちゃって…」

「やっぱり、女の子だわぁ〜。うちの子達から、そんなセリフ聞いたことないもの」

「川澄くん…食べるの早い、ですよね」

すいれんが思い出したように笑って言うと、母もそうそうと笑う。
手を合わせていただきますと言うと、三つ葉の香りがふわりと立つ親子丼を口に運んだ。

それからすいれんは早々に食べ終わる川澄の横で、必死に口を動かす。


「お母さんこのあと買い物に出掛けて、夕飯前に戻るから、すいれんちゃんゆっくりしていってね」

すいれんがご馳走さまでしたと言うと、お皿を洗いながら川澄の母は言った。



食事も終わりまた部屋に戻り、川澄の大学の話を聞いた。
川澄は医療系の大学、看護学部ではなく医療学部に所属している。
医療学部は、理学療法や臨床検査学科があり、どちらかというと病院での裏方の仕事に就くことが多い。
すいれんが何故と聞く前に、看護はコミュニケーション能力必須なんすよ…と川澄は言った。

「私たち…苦手、だもんね…」

「うん、誰にでも笑顔で優しく…とかな。あ、でも柴石さん看護師だったらいいかも」

言った後にすいれんのナース服を想像してしまって、顔を赤くする。


ポツポツとゆっくり話す2人の時間は、本当に早く過ぎていき、あっという間に夕方になった。

「もう…こんな時間…」
すいれんは時計を見て、目を曇らせる。

(帰らなきゃ…って言いたくない…な)


「今度は…遠出でもしようか…?」

川澄の言葉にすいれんは戸惑う。
どういう意味に取っていいのか分からなかったからだ。

「え…と、旅行…?」

頬を赤く染めながら小さな声で聞く。


すいれんとしても、そういう知識は一応あるわけで、きっとその相手は川澄しかいないとも思ってはいるが、ハッキリと言われたわけでもないのに、自分だけが意識するのはとてつもなく恥ずかしい。


「旅行…っていうか…いや、もちろん旅行は嬉しいっすけど…」

すいれんの旅行という言葉に、川澄は驚いたように真っ赤になって目をそらした。

(私ばっかり…意識してるみたい…恥ずかしい…)

「あのっ、2人で…、ちょっと遠くに出掛ければ…一緒にいられる時間が長くなるかな、とか思って」

変なことは考えてないっすよ、と慌てて真っ赤な顔の前でブンブンと手を振った。

「嬉しい…。川澄くんと、いっぱい一緒にいたい…」

川澄も自分ともっと長く一緒にいたいと思ってくれている、それだけで胸が熱くなって、涙が溢れそうになる。
すいれんは、川澄の背中に顔を寄せると後ろから抱きついた。

「…柴石さん」

背中に伝わるすいれんの体温に、川澄の心臓が一気に跳ね上がる。

「変なこと…考えてないって言ったけど…キス、してもいいっすか?」

前に回された手がピクリと震える。

「嫌とか、絶対に言わないから…聞かないで…」

川澄はゆっくりと振り向くと華奢な身体を抱き締め、触れるだけのキスをした。
何度もついばむようなキスをすると、どちらからともなく、ほんの少し唇を開き、徐々に深くなる口付けにすいれんは頭がぼうっとしてしまう。

「はぁ…っ、ん」

角度を変えて互いの口腔内を舐めるようにキスをすると、室内にはチュッチュッと舌を絡める音と違いの熱い吐息が漏れ聞こえる。
そして、すいれんの身体から力が抜けていく。

「…ん…はぁ」

川澄は、すいれんの喘ぐような吐息と濡れた唇に、理性で何とか抑えていた欲望が熱を帯びていくのが分かった。
身体を密着させているすいれんに、それがバレやしないかと思っているはずなのに、どこかで気が付かれてもいいという思いもあって、口付けながらすいれんの腰をグッと引き寄せた。

「んっ…ん、あっ…」

(これって…なんか、どんどん気持ちよくなってくる…どうしよう)

キスだけで立っていられなくなったすいれんは、震える手で川澄の肩口あたりをギュッと掴む。
川澄もまた、すいれんの腰を強く抱いた。

川澄がこれ以上はマズイ理性ギリギリの所で、チュッと音を立てて唇を離すと、すいれんが熱を帯びた視線を向けてくる。

「もう…おしまい…?」

離れがたくて、潤んだ瞳で見つめると、川澄は嬉しいような困ったような顔をして言った。

「続きは、遠出デートの時…かな…?」

川澄に言われ、すいれんは真っ赤な顔で頷いた。


fin



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プロフィール

オダワラアキ

Author:オダワラアキ
オダワラアキの二次小説・二次創作置き場へようこそ。
ひるなかの流星・花より男子・日々蝶々・君に届け・会長はメイド様の二次小説・創作置き場です。黒バス黄黒、青黒BLも書いております。
現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

こちらを読むにあたって下記注意点をお読みになってからお進みください。

このサイトは原作のある漫画の二次創作、小説です。

同人誌や、二次小説(2次創作・夢小説)に抵抗のある方はウィンドウを閉じてください。
原作者様、出版社とは全く関係ありません。

小説の無断転記、複製、配布を禁じます。

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