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放課後の教室で

ひるなかの流星【放課後の教室で】
卒業式より少し前、
憧れの卒業生のネクタイを手に入れられるかで、校内は浮き足立っていた。
後輩から、馬村先輩のネクタイをもらうのかと聞かれたすずめは?



1週間後に卒業式を控えたある日、すずめが1年の教室の前を通ると、立ち話をしていた後輩たちが一斉にすずめを見た。
「あの人でしょ…」
「そうそう、やっぱり無理かなぁ…」
「でもさ…言ってみるだけでもっ…」
ひそひそと囁くように話す声が、シンとした廊下ではすずめにまで伝わり、何事かと後輩たちに近寄っていく。
「なに?私に用事?」
「え…と、いや、あの…」
「ほら…えと」
すずめが話しかけると、3人の後輩たちは肩をビクッと震わせて、お互いの顔を見合い誰かいいなよ、と肘で突きあっている。
「あの!」
「はあ…」
「馬村先輩のネクタイ…貰うんですよね!?」
「ネクタイ?なんで?」
すずめは後輩たちが何を言いたいのか、全く分からずに聞き返すが、言いづらそうにモゴモゴするばかりだ。
「え…なんでって…」
「ほら、やっぱり…」
「与謝野先輩!すみません!何でもありません!行こう!」
「う、うん!」
後輩たちは、心なしか喜んでいたようで、うちらにもチャンスあるかも、などと言いながら走って行ってしまった。
何のことか分からずに、すずめは立ち竦む。
「…?」



教室に戻り、ゆゆかにネクタイの話を聞いてみると、鈍いすずめとは違いすぐにどういうことかを察したようだ。
「あ〜、この時期はその話で持ちきりよね」
「そうなの?」
「そうそう、卒業式後に好きな人のネクタイをもらうと両想い…とかでしょ。学ランの第2ボタンみたいなね」
「へ〜、ネクタイなんてもらってどうするんだろ…?」
「あんた…そこなの?」
ゆゆかに分かってないなぁと思いきりため息をつかれる。
「どういうこと?」
「あんたの鈍さ加減にほんと腹立つわ…馬村くんが可哀想になってくる…」
同じ教室内にいる相手の名前を出されると、悪いことをしているわけではないのにドキドキしてしまう。
チラリと見ると、馬村は犬飼たちと話していて聞こえている様子はなかった。

(よかった…馬村気がついてないみたい)

「ゆゆかちゃーん、ごめんなさい!全く分かりません!」
両手でごめんのポーズを取ると、ゆゆかをチラリと覗き見る。
「もういいわよ、あんたのそれ今に始まったわけじゃないし」
「はい…すみません…」
「だから、ネクタイのジンクスを知らないあんたは、馬村くんからネクタイを貰わないはずだから、自分たちがくださいって言ってもいいですよね?ってこと」
「あぁ、そういうことか〜」
「そういうことかって…あんた、いいの?」
信じられないものでも見るように、ゆゆかは驚愕の表情を浮かべた。
「え…だって、馬村が決めることでしょ?」
「はあ!?そういう問題じゃ…。まあ、別に、あんたがいいなら…いいんだけど」
ゆゆかはこれ以上は自分が口を挟むべきではないと思ったのか、何となく納得がいかないような、複雑そうな顔をしながらも話を終わらせた。



そして卒業式当日。
一緒に帰る約束をしていたすずめは、教室で1人馬村を待つ。
すずめの友人たちはそれぞれカップルでとっくに帰っていて、馬村が何故遅いのかというと、すずめの想像だが、たくさんの後輩たちに呼び出されているのではないかと思う。


すずめのことを好きだと言ってくれる馬村のことを信じているからか、不安はない。
ただ、この教室で″おはよう″と言うことはもうない、学校の帰りに寄り道デートをすることもない、そんなことを考えていたら寂しさがこみ上げてきて、すずめは涙目になっていた。

「寂しいなぁ…」
ポツリと呟くその声は、誰にも聞かれることはなかったが…。


「あ、与謝野先輩!良かった…まだいた…」
突然教室のドアが開き、感傷に浸っていたすずめは、馬村が来たのかと思いドアを見ると、かなり体型のいい、もてそうな雰囲気の後輩に話しかけられて戸惑う。
「はい…」
「あの、今してるリボン貰えませんか?」
「へっ?あ、はあ…別にいいですけど…」
「ありがとうございます!」
4月から妹さんでも入学するんだろうかと考え、リボンを外して渡すと、照れたように笑って走って行ってしまう。
その姿は、人懐こいゴールデンレトリーバーのようだ。

(なんなんだ…?)

あまりの突然の20秒程の出来事に、涙も引っ込んだ。
そして、みんなが帰ってしまってから、すでに30分が経過していることに気がつく。

(馬村…遅いな…)

(女の子から、告白されたりしてるのかな…)

(ネクタイ欲しいって言われたらあげるのかな…)

すずめは何となくモヤモヤするものを感じ、頭を振る。
それはあの時感じた感情と、あまりに似ていたから。
新入生たちに、カッコイイと声を掛けられている馬村を見た時とーーー。

(いつもそうだ)

(私は…気がつくのが遅すぎる…)


それから10分後、再び教室のドアが開くと、息を切らして待ち人が現れた。
「悪い…遅くなった…」
「馬村…ネクタイは?」
そしてやはり、ネクタイはしていなかった。

(やっぱり、あげちゃったのかな…)

人のネクタイなんてもらって、どうするんだろうと考えていたすずめも、好きな人の物が、違う女の子の手に渡ったかもしれないと思うと、またモヤモヤして、胸に針が刺さったようにチクチクと痛む。
「なんか、欲しいって言われて…取られた」
馬村がウンザリしたようにため息をついた。

(私も、欲しいって…早く言えばよかった…)

すずめが泣きそうな顔で俯くと、首にふわりと何かが掛けられた。
「嘘だよ…」
すずめが見ると、首に掛けられていたのは、馬村のネクタイだった。
「これ…なんで?」
驚いて馬村を見ると、やり過ぎたかとバツの悪そうな顔をしている。
「おまえが、欲しいともなんとも言わないから、ちょっと意地悪したくなっただけだよ…。そんな泣きそうな顔すんな」
コツンと額をくっ付けられ、頬が熱く赤く染まるのが分かる。

「おまえがいるのに、他の奴に渡すわけないだろ…バカ」

(ネクタイが欲しかったわけじゃなかった…馬村にそう言って欲しかったんだ…)

心のモヤモヤがあっという間に晴れると、すずめはギュッと馬村に抱き着いた。


「で、おまえのは?なんでリボンしてないんだよ?」
それも束の間、腕を急に離されると、すずめの胸元を見て、低い声で告げる。
「え…私のもあげるの!?」
「当たり前だろ?カップルで交換するもんだろ普通」
「え、あ、あげちゃった……」
どうしようと慌てて、あげた人の顔を思い出そうとするが、感傷に浸っていたこともあって、全く思い出せない。
「はあ?誰に!?」
「わかんないけど…なんか…1年生?犬みたいな人…」
「犬…?男?」
「え…う、お、女の子…だよ?」
「嘘ついてもバレバレ」
冷ややかな目で見られ、すずめはまた泣きそうになる。
どうしていつも自分はこうなのかと。
「ごめん…馬村…。知らなかったんだもん…交換するとか」
手を合わせて平謝りすると、優しい恋人はいつものごとくため息をついて、結局は許してくれるのだ。
「ったく…仕方ねぇな…じゃあ、おまえからキスしてくれたら許す」
「え…」
「誰かさんは恥ずかしいって、名前も呼んでくれないし?」
馬村はわざと拗ねたように、横目でチラリとすずめを見ると、頬を赤くして俯いていた。

「………」

「……き」

「ん?」

「だ…いき」
絞り出すように言うと、すずめから頬にキスをした。
「卒業したら誰も知ってるやついないし、恥ずかしくないだろ?だから、これからは呼ぶよな?すずめ?」

「…はい、頑張ります…」

馬村がかがんで軽く唇を触れ合わせた。
「最初で最後の、教室でのキスだね」
そう言ってすずめからも、馬村の首に腕を回して口付けた。

「で、誰にリボンあげたわけ?」
「だから、名前わかんないってば〜」
2人は笑いながら、どちらからともなく手を繋ぎ帰路に着いた。

卒業しても、ずっと変わらずあなたといられますように。
すずめはそう願いを込めて、手を強く握る。


fin


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