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何度でも… ※

ひるなかの流星【何度でも】R

すずめ20歳。大輝×すずめ。
ラブ有りです。
大輝と同棲していない設定。
酔い潰れ、朝目覚めると隣にいたのは!?
獅子尾×すずめではありませんが、ちょっとした絡みもあるので、獅子尾は嫌いという方はご注意を。
しかもしばらく馬村出てこないので。
少し長い話にチャレンジです♫
最近、別漫画の二次小説にハマってしまいまして、書くのが疎かになってます。




「すずめちゃんも、やっと20歳になったことだし!ってことでカンパーイ!」

すずめが先月20歳の誕生日を迎え、何かの会話の流れで誕生日のことを話すと、日頃から飲み会をしたいと息巻いている同僚たちに、仕事のあと誕生日会だなんだと付き合わされる羽目になってしまった。

同僚の佐伯綾子は、見た目はとっつきにくそうな美人だが、合コンや飲み会が大好きで、仲のいいすずめともよく食事に行っていた。
周りからは、酒豪ゆえに男が出来ないなどと言われるほどに酒好きだ。

すずめは、自分が酒に弱いことを熟知していたので、弱いカクテルをチビチビと口に運ぶが、それを見た綾子がすずめの隣に腰を下ろし新しい酒を置いた。

「すずめちゃん〜ほら飲んで飲んで!」
「綾子さん、私お酒あんまり強くないの知ってるでしょ?」

綾子は、酔っ払ったらちゃんと送ってあげるわよ〜と言うが、いつも綾子をタクシー乗り場まで送るのはすずめの方だった。
今日もそうならなければいいが。

「すずめちゃんも、この後2次会行くでしょ?女子会しようよ〜」
見た目は全く酔っているようには見えないが、綾子のこのテンションの高さはそこそこ酒が入っている証拠だった。

今日仕事のメンバーで飲みに行くことは大輝に言ってあるし、その後の約束もしていなかったため、少しならとすずめは答えた。

「でも、綾子さん、飲み過ぎないでくださいよ〜。送るの私なんだから」
「だーいじょうぶ!全然酔ってないから!」
酔っ払いの〝酔っていない″ほど信じられないものはないが、フラついたりしているわけではないので、まだ大丈夫そうだ。


1次会が終わり、2次会へは同僚の女の子4人で行くことになった。
うち、1人はもちろん綾子で、あとの2人もいつも食事に行ったりしている舞と詩織だ。
結局いつもの気兼ねしないメンバーになる。
同僚全員で飲むよりもすずめはこういう内輪で食事をしたりする方が好きで、酒があまり強くはなくても2次会に参加するのはそのためだった。

1軒目の居酒屋から程近い場所のダイニングバーに入ると、顔見知りの従業員がこんばんはと挨拶をしてくれる。
元々は、舞が見つけた店で、店の雰囲気がよく料理が美味しいのももちろんだが、従業員のレベルが高いのと興奮して話してくれたのを覚えている。
それから4人で食事に行くときは、ほとんどこの店に通っていた。
確かに言われてみれば、働いている従業員目当てでくる女性も多いというのが分かるほど、綺麗な顔立ちの男性が多かった。

「はい、2次会〜カンパーイ!」
またも綾子の音頭でグラスを合わせると、すずめもカクテルを飲んだ。
カクテルもバーテンダーが作ってくれる本格的なもので、美味しくてつい飲み過ぎてしまいそうだ。

「すずめちゃん、今日は彼氏との予定ないんだ?」
「うん、今日は約束してないけど」

人の恋話が大好きな舞が、すずめに彼氏がいると知ってからは、ことあるごとに写真を見せて、今日はデートするのかなどを聞いてくる。

舞は良くも悪くも軽いので、1人の男性と長続きした試しがない。
彼氏がいる間浮気をするようなことはしないが、それは身体の関係はないという意味で、他の男性と食事に行ったりなどはしょっちゅうだ。

「凄いよね〜高校の時から3年でしょ?私そんな長く付き合ったことないよ〜」

感心するように舞が言うが、実は1人の恋人と長く続かないことに悩んでいることを、すずめは知っていた。

「3年ってそんなに長いかなぁ?舞は…まぁ飽きっぽいよね。もうちょっと別れる前に考えてみたら?」
すずめと同じく今の彼氏と3年付き合っている詩織が、舞をチラリと見て冷ややかな目で言うが、心の奥では舞のことをいつも気にかけている故の言葉だ。
舞もそのことを知っているから、詩織の諭すような言葉にも理解を示している。

舞の今日の装いはいつもと同じように、金髪に近い長い髪をトップで纏めて、グレーのカラコンを入れている。
服も露出の激しいものが多く、舞が軽く見られる原因は、この外見にもあるとすずめは思っている。
話を聞けば、もちろん舞にも問題はあるが、相手の男が働いていなかったり、二股三股は当たり前だったりと、ダメな男を好きになる傾向にあるようだ。
「飽きっぽいっていうか、舞にも本当に好きな人が出来れば、変わるんじゃないかなぁ?」
すずめが言うと、全員が顔を見合わせて惚気だね〜とニヤリと笑う。


女同士の話に花を咲かせていると、すずめたちのテーブルに頼んでもいないカクテルが置かれる。
「これ良かったらどうぞ〜」
いかにも遊んでそうな3人組の男性に声を掛けられ、もちろんすずめは無視を決め込むが、チラリと舞を見て嫌な予感がした。

「え〜いいんですかぁ?やったぁ」

ああ、やっぱりとガクッと肩を落とす。
これも舞の悪い癖で、今まで奇跡的に危ないことはなかったが、舞と仲の良い詩織が何度言っても直らない。
すずめと詩織がため息をついて、わざとらしく帰る準備を始めると、舞と男たちの間で一緒に飲むことが決まってしまっていた。

「舞、帰ろう」
「みんな帰っちゃうの〜?残念だけど、じゃあ舞ちゃんは、俺たちと飲もうか!」
男たちは乗り気の舞を帰すつもりはないらしく、綾子が帰ろうと舞の腕を引っ張っても、反対側から舞の肩を掴みホールドされてしまう。
そこで、こういうタイプの男たちは危ないと舞が気がついてくれればいいが、そうではないことをすずめたちは知っていた。
「飲みましょ〜!」
予想通りの舞の言葉に、3人はため息をついた。

男たちは、どこか別の店に移動する風でもなく、すずめたちが懇意にしている店に留まるようだった。
顔見知りの店員もいるし、すずめたちが付いていれば危ないことは起きないだろうと、3人は立ち上がりかけた椅子に再度腰を下ろした。
あとは、なるべく早くに切り上げるだけだ。
「あれ?一緒に居てくれるの〜?嬉しいな。飲もう飲もう!」
外見的には舞と同じような、金髪にピアスの男がすずめの肩を組んだ。
振り払おうとすると、絶妙なタイミングで手を離す。
慣れている様子の男に、すずめは嫌な予感がした。



***


大学時代の友人と、久しぶりに会う約束をしていた獅子尾は、普段は滅多に降りない駅の改札を通った。
お洒落で美味しい酒を出す店があると、友人と待ち合わせをしていたのだが、指定された駅に降りるとふと思い出す。

そういえば、この近くじゃなかったか。

高校を卒業後にすずめが働いている水族館のことを、諭吉から聞いて知っていた。
諭吉と獅子尾の間では、すずめの話は特にタブーになっておらず、獅子尾の怪我をキッカケにすずめとの話し合いを設けてから、吹っ切れたのだと諭吉は思っているようだ。
そのため、事あるごとに馬村とすずめの恋愛事情を聞かされる羽目になってしまい、それもまたどうかと思うのだが。

たまたま降りた駅が同じだからといって、本人に会えるわけではないのに、なんだかすずめが近くにいるような気がして、獅子尾はフッと笑いが込み上げる。
それは、諭吉にはもちろん言えないが、何年も経つというのに、まだこんなにも彼女を愛おしく想ってしまうことへの自嘲だった。

「なに笑ってんだ?」
「いや…いい店だなと思ってな」
急に笑い出した獅子尾を訝しげに見る友人に首を振ると、誤魔化すように店内を見回した。

「最初は入りづらいと思ったろ?」
獅子尾の考えを見透かしたように、友人はニヤリと笑った。
「そりゃそうだろ…」
店内に足を踏み入れた時は、薄暗くカウンターの奥でシェイカーを振るバーテンダーや、明らかに店員目当てのカウンター付近に座っている女性たちを見て、男同士で来るような店ではないだろうと正直恥ずかしく思ったが、店内は思っていた以上に広く、集団で飲み会をしているグループもあり程々に騒ついていて、そこまで居心地は悪くないと感じた。
それに、酒の種類が豊富で、日本酒や焼酎まで数ある銘柄が揃っている事が獅子尾にとっては良かった。

「まぁ、俺だって連れてくる彼女でもいたら、お前を誘ってないよ…お前は?」
「俺?ま、相変わらずだな。お前と同じだよ」
「獅子尾はモテんのにな。よっぽど好みがうるさいわけ?」
好みがうるさければ、そもそもすずめを好きになっていないだろうと、体育祭でパンに食らいついた顔を思い出して、また笑みがこぼれそうになるところをグッと抑えた。
「ちょっと煙草買ってくるわ」
吸っていた煙草の火を消して獅子尾は席を立つと、店内奥の自販機に向かった。


獅子尾が薄暗い通路の奥に向かうと、途中で客から隠れるように2人組の男が立ち話をしていた。
聞こえてくる会話が、タクシーで奥に乗せて出られないようにすればいい、強い酒無理やり飲ませるか、などと穏やかではない。
獅子尾はすれ違い様に、念のためその男たちの顔を覚えておく。
相手がよほど隙のある女性でなければ、大事には至らないとは思うが。

「俺、黒髪ロングの子な」
男のそう言った声が、やたらと耳に残った。


「お前、煙草買いに行ったんじゃないのか?」
友人に言われ、獅子尾は初めて自分が煙草を買いに行ったことを思い出した。
思っていた以上に男たちの会話に気を取られていたのか、自販機を通り過ぎ用を足して席に戻ってしまっていた。
「忘れてたわ。何してんだ俺」
「それはこっちのセリフだよ…まさかビール一杯で酔ったとか言うんじゃねえだろうな?」
まさかと乾いた笑いを漏らし、店内を見渡すと先ほどの男たちが、獅子尾たちより入り口に近い席にいることが分かった。
獅子尾はそこにいるはずのない顔を見つけて驚愕の表情を浮かべる。

男たちと全く楽しそうではなく、嫌そうな顔を隠そうともせずに話をする様子に、本当なら危惧するとこだが、久しぶりに見る彼女に懐かしさと同時に愛しさが込み上げてくる。

綺麗になったなと、思う。
元より顔立ちは綺麗だと思っていたが、高校生の頃のすずめは、決して美意識が高いとは言えなかった。
獅子尾にとっては、愛すべき人であったが、高校生のすずめを抱きたいと思ったことはあまりなかったように思う。
もちろん獅子尾の職業が歯止めをかけていたのもある。
ふとした時に女を感じることはあっても、やはり高校生の子どもだったと、大人の女性になった今のすずめを見て思う。
トレードマークであったはずの、三つ編みは既になく、艶めいたストレートの長い黒髪、濃すぎない薄くあしらった化粧が彼女の魅力を引き立たせていた。


「獅子尾?お前、今日ボウっとし過ぎ。どうかしたか?つか、なんでさっきからあの子達見てんの?」
獅子尾の明らかに普通ではない表情に、友人も具合でも悪いのかと心配そうに伺う。
獅子尾もまたすずめに心を奪われていた頭を切り替えて、友人へと向き直る。
「あぁ、いや…ちょっとな。元生徒がいてさ」
隠したところで、何かあった時に自分が動きにくくなるだけだと思考し、男たちの会話を友人に話した。

「それは…まぁ危なそうだな…。でも、そういう男に着いて行くような女にも問題あると思うけどね。もう成人した大人だろ?元生徒って言ったって、お前がそこまで気にしなきゃならねえもんなの?」
「いや、俺だって分かってるよ。だから、一応気にして見てるだけだって」
絡まれている女性の1人がすずめではなかったら、本当にそうだったであろう。

「ナンパする男に着いて行くような子じゃないしな」
そもそも、獅子尾とのことであれだけ悩み、うまくやれば二股をかけることだって出来たはずなのに、獅子尾ときちんと決別しやっとのことで馬村の手を取った彼女が、ああいう男に着いて行くはずがなかった。

「あ、あの子達店出るみたいだぜ?」
友人の言葉に、獅子尾も後を追うように席を立った。


***



店内ではすずめが心配していたようなことは何も起きなかったが、かなりしつこく家に来ないかと誘われ辟易とした。
そろそろ帰るとすずめたちが言うと、酔っ払っていたら危ないからタクシーで送るという男に、電車で帰るから大丈夫とはっきりと断ると男たちは諦めたように嘆息し、以降はしつこく誘ってくることもなかった。

男たちとは店の前で別れ、すずめは大輝にこれから帰るとメッセージを送る。
すずめが友人たちと飲みに行くと言うと、いつも何が気掛かりなのかは分からないが心配され、遅くなったら迎えに行く、家に帰ったら必ず連絡しろと口にする。
すずめも大輝を心配させたくはないので、気にかけてくれる恋人のことを愛しく思いながら、大輝の言う通りにしていた。

「詩織、舞のことよろしくね〜」
「いつものことだからね…りょーかい。すずめちゃんも気を付けてね」
かなり酔っ払ってしまった舞と綾子を、すずめと詩織が介抱し、行き先の同じ舞と詩織を同じタクシーに、綾子を1人でタクシーに乗せた。


すずめは、男たちとの間に何事もなかったことに安堵を覚え友人たちを見送ると、急に足がフラつき頭が重くなるほどの目眩に襲われた。
それもそのはずで、いつもは2杯も飲めば顔が真っ赤になり、足もおぼつかない状態になるはずが、今日に限っては男たちに勧められた酒を少しずつとはいえ、4杯は飲んでいた。
それでもなんとかフラつきながらも、タクシー乗り場から駅に向かうべく歩き出す。
どうやらかなりの緊張状態であったために、その場では酔わなかったようだ。

ふと視線を感じて、すずめが振り返ると帰ったはずの男たちがニヤニヤと笑いながらすずめを見ていた。

背中が強張り、呼吸が速くなるのを感じた。


***


「悪いな、ここ俺の奢りにするから」
獅子尾の視線はすでに友人を見ていなかったが、会計伝票を持ち席を立つと、友人は真面目な教師だなと呟き、怒るでもなく手をヒラヒラと振り見送る。

会計を済ませて外に出ると、すずめたちは駅近くのタクシー乗り場へと向かっていて、後をつけるわけにもいかずに、近くの喫煙所で煙草に火を付けた。

すずめは決して警戒心が薄いわけではないと思うが、1度安心してしまうと、途端に根拠なく大丈夫と思ってしまう節がある。
初めて会った時、警戒心も露わに獅子尾から逃げ出したところまでは良かったが、結果公園で寝るという失態は、熱のせいだけではないだろう。

しかし、どうやら男たちとは店の前で別れたようで、すでにその姿はなく、獅子尾の心配は杞憂に終わったようだ。
一先ず安心しまだ店内にいる友人を思い、店へと戻ろうとしたとき、帰ったはずの男たちが、店から少し離れたところですずめたちを見張るように立っているところを目にした。

だが、すずめが酔ってしまった友人をタクシーに乗せ、その後にもちろんすずめもタクシーに乗り込むであろうと見越し、そうなれば滅多なことは起きないだろうという獅子尾の意に反して、すずめは駅へと歩き出した。
酒にフラつく足取りでヨタヨタと歩くすずめに、男たちは近寄る。

「…っ」
あいつは、バカか…。
舌打ちでもしたいほどイラつき、煙草を適当に揉み消して、20メートルは離れているすずめの元へと走る。

走りながら獅子尾は妙に冷静に、過去を思い出した。

こういうこと前にもあったな。

そうだ、皆川に絡まれていたすずめを見た時、頭が真っ白になって、慌てて走って行った。
最初に受け入れられないとすずめを傷付けたのは自分なのに、他の男といるあいつのことが気になった。
馬村に取られそうになったら、受け入れられないくせに渡したくなくて。



***



しまった、と後悔してももう遅い。
綾子に一緒にタクシーで帰ろうと言われた時にそうしていればよかったのだ。
危険な信号は出ていたはずなのに、迂闊としか言いようがない。
すずめはしっかりと掴まれた腕を振り払おうとするが、男の力には到底及ばない。
男は3人いたはずだが、すずめに絡んできた男たちは2人だった。
どういうことかは分からなかったが、2人なら何とか逃げられるのではないかと思ったのは甘い考えだったらしい。

「離してください」
すずめがいくら口で言っても、聞く耳を持たず、そして、今頃酩酊状態に陥った身体は全くいうことがきかなかった。
「フラついてるじゃん。大丈夫〜?」
わざとらしく顔を寄せてくる金髪の男に、疎ましい視線を送るが、そんなことは気にも留めずに腰を抱かれ、タクシーの停留所へと引き返す。
「送って行くよ。家どこ?1人暮しって言ってたよね?」
ニヤニヤと笑う金髪の男に言われ、すずめはやっと、舞ではなく自分が狙われた理由に思い至る。
友人たちの中で、1人暮しをしているのはすずめだけだ。

自宅に連れ込めば、男の住所から足が付く。
ホテルは、複数人の男に連れ込まれている女性を警戒するし、監視カメラで顔も映る。
女性の自宅ならば、宥めすかして住所を吐かせ、騒ぎ立てようとすれば何度でも家に来ると脅すことで、大抵の女は言うことを聞く。

酔った頭ではあったが、絶対に自宅の住所は言ってはならないと、すずめは固く口を閉じた。

男たちがタクシーを止め、すずめを車の中に連れ込もうとしたところで、すずめの意識が途切れた。

「その子連れて行くなら、警察呼ぶよ?」

懐かしい初恋の人が、すずめを助けてくれたことも知らずに。


***


学生の自分とは違い、すでに社会人として自立しているすずめになるべく時間が合わせられるように、バイト先をすずめの勤務先の近くにしていた。
すずめが遅番で夜遅く帰るときはバイトを入れ、自宅まで送ることが出来るように。
大輝にとってはお金よりもすずめとの時間の方が大切だった。
しかし、今日はすずめが同僚と飲み会をする話を聞いていたので、時間が合えば一緒に帰ろうとは思っていたが、それを言えば、すずめは時間を気にしてしまうだろうとバイトが終わってから連絡を取るつもりでいた。

大輝が携帯を見ると、30分前に今から帰りますとメッセージが入っていた。
行き違いになったかと、仕方なく家に着いたら連絡しろとだけ入れて携帯をしまう。

すずめは大輝の思いに気が付いていないだろう。
遅番の場合、夜中と言える時間に帰ることが度々あることや、酒に弱いくせに、友人たちと過ごすことが好きなすずめは、酔うと一気に警戒心を解いてしまうことを、どれだけ心配しているか。

まず、自分が目を引く綺麗な女性であることを自覚していない。
自分に言い寄ってくる男などまずいないだろうと、自分を過小評価している。
私のことを好きな大輝が物好きなんだよと、無自覚ゆえに安易な考えである。

だからなるべく、帰りの遅くなる時は送りたかった。
すずめのためというより、自分がそれで安心したいだけかもしれない。

駅へと向かう途中、すずめに似た背格好の女性を見かけるが、とっくに電車に乗っているはずのすずめがいるわけがないと、改札を通った。
それでも、確認するように振り返ってしまう。

大輝は自分の見たものが信じられずに愕然とした。

駅の改札からタクシー乗り場までは、10メートル程で、見間違うはずがなかった。
自分のよく知った顔が2人、仲睦まじくタクシーに乗り込む。
1人は久しぶりではあったが、間違えるわけがない。

獅子尾がすずめの肩を抱き、タクシーに乗せ、2人は夜の闇に消えていった。



***



獅子尾は、携帯の発信を110とし通話ボタンに手をかけながら、男たちに見せた。
「なんだよ、あんた。カンケーねえだろ!?」
「その子、俺の知り合いなんでね。カンケーあるんだわ」
金髪の男は、見るからに短気を起こし、駅前の人通りが多いところで騒ぎ立てる。
リーダータイプの体格のいい男が、その隙に気を失ったすずめを抱えてタクシーに乗せようとするが、タクシーの運転手は突然わめき出した金髪の男に、トラブルは御免だと言わんばかりにドアを閉め、走り去ってしまう。
「チッ…」
リーダー格の男は、金髪を睨み付けると舌打ちをし、騒ぐんじゃねえよと低い声で言うが、すでに金髪が騒いだことで注目を集めてしまった自分たちに分が悪いと気が付いたのか、さっさとすずめを解放し踵を返してしまう。

実際リーダー格の男に、ケンカ腰で来られたら獅子尾に分が悪かった。
相手は2人いたし、すずめを盾に取られたら、獅子尾はどうすることも出来ないのだから。
案外頭の悪い奴らで良かったと、ホッと息を吐く。

意識のないすずめの肩を抱き、目の前に新しく止まったタクシーにすずめを乗せる。
すずめを軽く揺さぶり、住所を聞こうとするが、酩酊状態のすずめに声は届かず、獅子尾は自身のマンションの住所を言った。


かつて住んでいたアパートは更新のタイミングで引き払い、現在のマンションに越してきたのは1年前のことだった。
前のアパートもそれなりに居心地は良かったが、獅子尾の本棚が溢れるほどにいっぱいになり、ついには足の踏み場もないほどの量になってしまった。
引っ越しを機に、厳選してかなり処分はしたのだか、どうしても捨てられない趣味の漫画や小説が一部屋を占領していて、独り身の自分には2LDKの2部屋を寝室と仕事兼趣味部屋として使ってもなんら困ったことにはならないことから、一部屋は人に見せられない部屋と化している。

獅子尾はすずめを起こさないように、ベッドへ下ろすと寒くないように布団を掛けた。
「ん……」
起きたわけではなさそうだが、艶を含んだような鼻にかかった声に、獅子尾は落ち着きを失くした。

一方で、迂闊すぎるすずめの今夜の行動に憤る。
自分が女だという自覚がないのか。
友人たちと行動を共にするならともかく、タチの悪い奴らにナンパされた直後に1人で帰るなど襲ってくれと言わんばかりだ。

タチの悪い奴ら…いや、俺もだな。
獅子尾は自身を嘲笑う。

もしも、与謝野すずめという元教え子を助けるために動いていたのならば、諭吉に連絡をすればよかったのだ。
そのことが考えつかなかったはずがない。
教師としての行動ならば。
本人が住所を言わなかったとはいえ、元教え子を自宅に連れ込むのは外聞が悪すぎる。
それでも、2度と戻らないと思っていた温もりがこの手の中にあることに幸福を覚えた。

獅子尾は、スースーと穏やかな寝息を立てて眠るすずめにそっと口付ける。
微かにアルコールの匂いは残ってはいるが、そんなものは全く気にならないほどにすずめに飢えていた。
本当は今すぐにむしゃぶりつきたい、衣類を全て剥ぎ取って全身を舐め回して、何度も快感を与え恍惚に至る表情を見たかった。

すずめの薄く開いた唇から、赤い舌が覗き獅子尾を誘う。
誘われるがまま、自身の舌を絡め軽く吸った。
クチュと音を立てて唇を深く合わせると、寝ているはずのすずめも獅子尾に合わせて舌を動かした。
「ふっ…はぁ…ん」
すずめの甘い声に、獅子尾の身体の芯が痺れるように熱くなっていく。
獅子尾の手が、すずめの腿の内側に触れ撫でるように中心部へと進むと、クチッと濡れた音を立て誘うように自ら脚を開く。

「ん、ぁ…大輝…」

すずめが名を呼んだ。
もちろん獅子尾の名前ではない。
その瞬間、身体中の熱が冷めていくのを感じた。



後編へ続く
***
獅子尾×すずめじゃないんですよ!?
すみません!後編では大輝とちゃんと(笑)イチャつきます!



ひるなかの流星【何度でも…後編】


***


カーテンの隙間から差し込む光が眩しくてゆっくり目を開けると、自分の家とは違う見慣れない天井が目に入る。
冬の朝方は寒く、肩を出して寝ていたせいで身震いし、羽布団を肩まで引っ張ると、すずめは眠い目を擦り周囲を見回す。
隣に寝ているよく知った男の顔に、心臓が止まるかと思うほどに驚き愕然とし、掛けたばかりの布団を剥ぐと、慌ててベッドから飛び出した。

なんで、先生が…。

すずめと同じベッドで、安らかな寝息を立てて眠る獅子尾に、そういえば昨日何故か先生の声が聞こえた気がしたなと思い返す。
覚えているのは、友人をタクシーに乗せ、男たちに絡まれたあたりまで。
自分が先生の家にいるということは、きっと助けてくれたのであろうと推しはかる。
しかし、だからと言って1人暮らしの男の家に泊まっていいわけはない。
助けてくれただけだということは、昨日の服のまま寝ていることで分かるが、今のこの状態を大輝に対して、冷静に話せるはずもなかった。

ベッド近くのサイドテーブルに書き置きを残すと、獅子尾が起きる前に慌てて家を出た。
周りを見渡すと、自分の知らない景色が目に入り、獅子尾が引っ越していたことに初めて気がつく。

卒業してから2年。
全く思い出さなかったわけではない。
心配症の恋人には言えないが、懐かしい思い出を振り返ることは何度かあった。
それはもう恋とは違うけれど。

すずめは携帯のGPSで自身の場所を把握すると、駅へと歩き出した。
途中、大輝からメッセージが入っていることに気がつき、慌てて開くと、家に着いたら連絡しろの文字。
まさか、これから帰りますと言えるはずもなく、
″気が付かなかったごめん。早くに帰ったから大丈夫だよ″
と返した。

本当のことを話せば、軽蔑するだろうか。
それとも、おまえはバカだなと笑って、結局は許してくれるだろうか。
大輝なら、きっと後者であることは分かっているのに、一晩獅子尾と過ごしたことで、優しい恋人を傷付けたくなかった。
もし自分が逆の立場なら、大輝のことを信じられなくなるかもしれない。
何もなかったと言われても、きっと嫌な気持ちになることは間違いない。

先生との間に何かあったのではと思われたくなかった。
1番大切な人に嫌われたくなかった。

大輝との間では、何度身体を重ねても、獅子尾の話はタブーとなっていたから。



***



よく眠れなかったために、霞む目を擦ると顔を洗うべく階下に降りた。
家の中はシンとしていて、すでに父親も弟も家を出た後のようだ。
顔を洗い、父親が作ってくれた朝食を食べていると、大輝の携帯が鳴った。
着信はすずめからで、連絡が遅くなったことを詫びる内容と、ちゃんと家に帰れたことが書かれていた。
一先ず、ホッとするが、獅子尾についてのことは何も書かれていないことに、胸騒ぎがする。

何故一緒にいたのか。
いつまで一緒にいたのか。
家まで送ってもらったのか。

メッセージの内容に獅子尾のことが触れられていなかっただけで、どうしようもなく動揺し、また、何年経っても見え隠れする存在に嫉妬してしまう。


大輝が普通に聞けば、何でもないことのように答えてくれるであろうことは分かっているが、大輝が気にするのではないかと、すずめが敢えて獅子尾の話を避けていることも知っていた。
そもそも、諭吉と友人である獅子尾の話が、2人の間で全く出てこないことの方が不自然であった。

気になるなら聞けばいい。
急いで食事を済ませると、食器を洗い、着替える。
大輝は、今日休みだと言っていたすずめの家へと向かった。


***


そもそも、隠し事をして大輝にバレない自信があるのか。
今までのことを思い返すと、すずめのちょっとした異変にすぐに勘づく恋人に、嘘など吐いていられるわけがない。

すでに、既読となっているすずめが送ったメッセージを、取り消したい思いに駆られて、ため息を吐いては携帯を何度も何度も開いた。

やはりちゃんと話をするしかない。
自分の迂闊さが原因で招いたことだ。

獅子尾の家からは電車と歩きを合わせても30分掛からずに、自宅付近まで着いた。
こんなに近くに住んでいたのに、偶然顔を合わせたのが昨日のような出来事とは。
すずめは、自身を呆れたように失笑した。

そして、きちんと話をしようとした矢先、連絡を取りたかった相手がすずめのマンションの前にいた。
戯けてちょうどよかったと、明るく声を掛けることが出来たのならば良かったのかもしれない。
そうすることが出来なかったのは、やはり後ろめたさがあるからなのか。


「だ、いき…」
「早くに帰ったから…って、連絡俺にしたよな?今帰ってきたようだけど、どこ行ってたんだ?」
青ざめて名を呼ぶすずめを、問い詰めるでもなく、ただ悲しそうに聞いてくる大輝に、すずめは言葉もなく立ち竦むしかなかった。

「あ、あの…」
やっと開いた口は、自分でも思いがけない嘘を吐いた。
コンビニに、と。
獅子尾のことを、泊まってしまったことをちゃんと話そうと思っていた。
自分でも、何故か分からずに戸惑う。

すずめの嘘に気が付いているはずなのに、大輝の表情はそれを聞いても変わることはなく、すずめの背中を強く壁に押し付けるように抱き唇を合わせたかと思うと、すぐにその手を離した。
「んっ…」
「嘘つけ」
強く手を引かれ、エレベーターでも一言も発することはなく、部屋に入る。

「あいつの匂い付いてる」

怒気を含んだ低い声で言うとベッドに押し倒され、衣類を全て剥ぎ取られると、深く口付けられた。
強引に舌を吸われ、口の中を舐めまわされる。
いつもの甘く優しい愛撫ではない手にすずめの身体が震えた。

あいつの匂いという言葉に、身に覚えがあり過ぎるすずめは、大輝から目を反らすことしか出来ない。

それでも愛しい人に抱かれている事実が、徐々にすずめの官能のスイッチを入れる。
胸の膨らみを痛いぐらいに揉まれ、突起を舌でしゃぶるように舐められると、それだけで身体がドロドロに溶けてしまいそうなぐらいの快感に酔いしれる。

「あぁっ…ん…あ、やぁ」

いつもは、意地悪く焦らしたりしながらも、すずめが泣きそうな顔で睨むと、結局は優しくなり、本当にすずめが嫌がることは絶対にしない、大輝はそういう風にすずめを抱いた。
だが今は、すずめが喘いでも泣いても言葉一つかけずに、淡々と身体を開いていく、それに感じてしまう自分も悲しかった。

首から、胸へお腹へと、舐められていない場所なんてないのではないかと思うほど、全身を舌で舐められて、すずめは荒い呼吸を吐いた。
「はぁ…っ、ぁ…」
シーツがすずめの愛液で、不快に感じるほどに濡れ、足を擦り合わせるだけで濡れた水音が聞こえるが、焦らしすぎな程に放っておかれた場所への刺激はこない。
腰を揺すり、大輝の腕に擦り付けるだけで、また新たな蜜が溢れてくる。

「もっ…おねがっ…大輝…っ」

すずめが涙ながらに懇願すると、まだ指で慣らされてもいない場所に大輝が無理やり押し入った。
「ああっ…!」
刺激を待ちわびていた秘部は、熱い塊を受け入れるだけで絶頂に達し喜びに震えた。

「はっ、はっ…ぅ、あぁっ」
1度では終わらず、ズチュッズチュッと何度も繰り返される抽送に、すずめの足がガクガクと震え、絶頂を迎え意識を手放しそうになるたびに、痛いほどの快感を与えられる。
裸のすずめとは対照的に、ズボンの前だけをはだけていることも、抱き締めることが許されない体位での行為も、悲しくはあるが全てすずめの迂闊さが招いたことなのだ。

それでも、すずめは大輝のことを受け止めたかった。
嫌われたくなかった。
すずめの裏切りとも言える行為を、どういう形でも責めて欲しかった。
そうしたら謝ることが出来るのに。
ただ、何も言われないのが辛かった。

すずめが、目も開けられず、腰も持ち上げられないほどに疲弊すると、大輝がやっとすずめの身体から離れる。

「ごめん…ちょっと頭冷やす…」

身だしなみを整えて出て行く大輝を薄く目を開けて見ると、酷く抱かれたすずめよりも泣きそうに辛そうに歪んでいた。


初めから、言えばよかった。
獅子尾とのことを拘ってタブーにしていたのは、大輝ではなく自分ではないのか。
まだ、獅子尾に気があると思われたくなくて、世間話の中でも獅子尾の名前は出さなかった。

すずめはやっと気づく。

嘘を吐いたのは、自分の気持ちを守りたかっただけだ。
まだ、獅子尾のことが好きなのかと思われたくなかった。
獅子尾とのことを知られて、大輝を傷付けたくない、大輝のためなどとおこがましい。

大輝以外の誰かを好きになどならない。
好きなのは大輝だけ。
そう信じて欲しかった。



***


すずめのマンションから出ると、大学に行く気にもなれず、家へと足を向けた。
すずめの涙に濡れた目を思い出し、あんな風に抱くつもりなどなかったと後悔の波が押し寄せた。

すずめが獅子尾と何かあったのではないか、本気でそう思っていたわけではない。
自分の存在がありながら、平気で他の男と寝られるような女ではないことは分かっていたし、自分に嘘を吐いて、堂々と浮気が出来るような器用な女でもない。
すずめからのメッセージを見たときは、嫉妬し落ち込んでしまったが、すずめのマンションに向かう途中頭が冷えた。

すずめのことだ。
蓋を開ければ、飲みすぎた自覚のないまま帰ろうとして、フラついたところをたまたま獅子尾に助けてもらい、そのまま送ってもらったのであろう。
皮肉な偶然ではあるが、むしろ獅子尾で良かったのかもしれない。
他の男だったら、家に送られた後、無事では済まなかったかもしれないのだから。
その後は、寝てしまいメッセージに気が付かなかった。
俺を傷付けたくないとかそんな理由で獅子尾については敢えて言わなかった。

真相はそんなところだろうと思っていた。
なのに、家に帰ったとメールをくれたはずの彼女から発せられる、他の男の匂いに我慢が出来なかった。
抱き締めたときに、髪から微かに煙草の匂いがした。
口付けたときも同様に。

泊まったのか?
そんなに匂いが移るまで側にいたのか?
あいつに抱かれたのか?

そう考えると、嫉妬で狂いそうになる自分を抑えられなかった。

だから、あの男の匂いが消えるまで抱き続けた。





あれから2週間が経つが、すずめと気まずい別れ方をして以来、どちらからも連絡を取っていなかった。
高校生の頃と違って、お互い会うつもりがなければこのまま自然消滅になってしまうことさえあり得るのだなと、そんなことを考えている自分が可笑しい。

すずめがいなければ、笑うことさえ出来ない。
すずめがそこにいなければ不自然なほどに、当たり前のように側にいてほしい。
大輝にとって、すでに失くすことなど、出来るはずもないのに。

それでも2週間という間が空いてしまったのは、すずめは仕事に、大輝は大学の課題とバイトに忙しかったからに他ならない。
携帯に連絡を取ることぐらいは出来たはずだが、お互いきちんと顔を合わせて話をしなければならないことを分かっていた。


大輝は、講義が終わると大学の友人たちと別れを告げ、懐かしい場所へと足を向ける。
色々なことがあった、1番思い出深い場所。
ここで、すずめと出会い、失恋をして、何度も告白をし、やっと気持ちが届いた。

あの頃通った高校の門、5時を過ぎた時間帯のためすでにほとんどの生徒は下校しているようで、出てくる生徒は疎らだったが、その中に目当ての人物を見つける。

「話がある」
「おまえな…いきなりかよ。先生お久しぶりです、ぐらいないわけ?」
突然現れた大輝に、獅子尾は驚いた顔をするが、卒業式以来の再会にお互い嬉しさなど込み上げてくるはずもなく、ただ帰り道を揃ってゆっくりと歩き出す。

「まぁいいや。俺飯食いに行こうと思ってたんだ。馬村、ちょっと付き合えよ」
「はっ?」
獅子尾に連れられて行ったのは、高校から少し離れた、駅の反対側にある飲み屋だった。
「ここ、滅多に学校関係者とかこねぇから。おまえもビールでいいか?」
大輝がいいとも悪いとも言わないうちに、さっさと注文してしまう。
実はまだ自分は19だなどと、言うつもりもなかった。
程なくしてビールと軽いつまみが運ばれてくると、乾杯もせずに獅子尾はビールをグビグビと飲んだ。

「おまえ…いい男になったなあ」
「はっ?」
大輝から話があると誘ったはずだが、なぜか口火を切られて戸惑う。

「いや…マジで相当モテるだろ?高校の時からモテてたけどな。なんでこんないい男2人が同じ女好きになるんだろうな…」
獅子尾が何を思って言い出した言葉なのか、表情からは読み取れないが、未だにすずめのことを忘れてはいないことはよく分かった。

「あんたは、あいつに関してはダメ男だったろ?」
「うん?まぁ確かにな」
気にもしていないように、獅子尾はははっと笑い出した。

「ああ、この間大丈夫だったか?」
自分と獅子尾の間にある共通点で、この間と言えば、すずめが外泊した時のことしかなかったが、聞き方から察するに試されているのだろうと思う。
すずめから、何があったのか聞いているかと。
自分が驚いた顔でもすれば、獅子尾にとってはしてやったりなのではないか。
大輝はビールを一気に煽ると、一息ついて話し始める。

「あいつと何で朝まで一緒にいたわけ?」

「酔って意識がなかったから」

考えることもなく模範解答で返す獅子尾に、憤りを隠せない。
自分は獅子尾に何を言わせたいのだろうか。

「それなら、諭吉さんとこ、連れて行けばいいだけだろ?」
大輝はいい加減にしろとばかりに、獅子尾をキツく睨んだ。

「まぁそうだな…。でも本当に俺にも分かんねぇよ。自分の欲求に従っただけだ。ちょっとは期待もあったかもしれないけど」
「期待?なんの?」
「おまえと間違えて、抱き着いたり、キスしてくれないかな、とか?」
大輝をチラリと見て薄く笑う。
「恥ずかしくねぇの?」
軽蔑するように睨んでも、獅子尾は気にも留めない。
「全く。むしろ、波風立って別れてくれたら万歳じゃね?」
「俺が抱いた女、あんた抱けんの?」

「そんなこと気にならないぐらい欲しかったからな。もう忘れたつもりだったけど、全く忘れられてなかったんだな」

獅子尾の口からハッキリと彼女が欲しいと言われても、動揺することはなかった。

「ふざけんなよ」
「むしろ、俺の家に泊まったぐらいで、別れてくれるなら、儲けもんだよ」
ニヤリと笑う男に、手の平で転がされているような気がして、腹が立って仕方がない。
「別れねぇよ!」

「だって、おまえ、俺の家に泊まったあいつのこと許せないんだろ?俺があいつに何かしたのか気になったんだろ?だから、わざわざ来たんだろ?」
気持ちを見透かしたように言われ、大輝の顔が赤く染まったのはそれが真実であったからなのだろう。
「…っ」
「俺がもし抱いてたら、別れてくれんの?」
「そんなことで、おまえなんかにやるかよ」
獅子尾はため息をつくと、大輝に向き直る。

「だったら、俺と話すことなんかないだろうが、それより話さなきゃならない奴がいるだろ。たかが、酔っ払って初恋の男が介抱したぐらいで嫉妬して泣かせるんじゃねぇよ」
なぜ、すずめが泣いていたのを知っているのか。
そんなことにも、嫉妬を覚える自分がいて、驚きを禁じ得ない。
大輝が疑問を口にする前に獅子尾が言った。

「泊まった次の日、電話が来たからな。あまりに慌てて出て行ったから、お礼も言えなくてすみませんって。でも、声が泣いてたよ」

結局は大人の獅子尾に諭されたようだと、憎々しげにため息つくと何も言わずに、すずめのところへと急いだ。
もちろん奢られる謂れはないので、相当の金を置いて。


***



「必死過ぎだろ…」
大輝が出て行ったドアを見つめ、ククっと笑いながらも、それを羨ましく感じる自分もいた。
欲しくて望んだ人は手に入らずに、それでももう追い掛けるような情熱も残っていない。
ただ、愛しい彼女の幸せと、時間が忘れさせてくれるのを待つばかりだ。
グラスに残ったビールを全て飲み干すと、追加の酒を頼んだ。

あいつにとって、自分はそんなに脅威の存在なのか。
自分ではそうなり得ないことを十分に分かっているのに。
あの時、感情に任せてキスしてしまったが、寝ていても恋人の名を当たり前のように呼ぶすずめに、獅子尾に気持ちが向くことはもうないことを悟った。


大輝は、すずめのことになると、普段はすました顔にいくつも表情が出てくる。
自分に向けられるのは怒りがほとんどだったが、それだって珍しいことだ。

担任として、大輝を見ていた時、ホームルーム中も音楽を聴き窓の外をボンヤリと見ているような生徒だった。
特に担任としての獅子尾に興味もなさそうに。
こいつが自分に心を開くことなどないのだろうなと思い、獅子尾もまた生徒に対して一歩引いて付き合っていたために、心を通わせるようなことはなかった。

それが獅子尾を教師というよりかは、1人の男として認識しだしたのは、すずめが現れてからだ。
今まで何も興味なさそうにしていた大輝が、すずめと一緒にいる時だけは表情に色が付いたように変わった。
いち早くすずめの獅子尾に対する恋心にも気がついたのであろう。
以来、何かと獅子尾とも話す機会が増えたが、記憶にあるのは全てすずめの話だけだ。

高校生の男子と、何を本気で張り合っていたんだろうなと、過去の自身の行動に笑えてさえくる。

でも、それぐらい手放してしまった人は、かけがえのない大切な人だった。


***


毎日、仕事に行く前と帰った後、もしかしたら連絡が来ていないかと携帯のチェックをする。
しかし、この2週間大輝からの連絡はなかった。
すずめからも連絡が出来ないまま時間だけが経過していく。


仕事が忙しくて良かったと思う。
あまり深く考える時間がなく、落ち込まずに済んだ。
しかし、明日は久しぶりのオフで、そんな日はいつもなら大輝と仕事が終わった日の夜から、次の日の朝まで家で過ごし、大輝が大学から帰ったらまた夜までの短い時間を共に過ごした。

仕事からの帰り道、携帯を見てはため息をつき、また同じことを繰り返す。
獅子尾とのことを謝りたいとか、嘘吐いたことを謝りたいとか、伝えたいことはたくさんあったが、ただ今は会いたい、それだけだった。

意を決して携帯を開き、たった一言の文字を入力する。
送信をタップすると同時に携帯が震えた。
画面を見て嬉しさが込み上げる。
偶然ではあるが、同じことを同じ時間に思っていたのだから。
愛しい人からの″会いたい″は、すずめをこんなにも幸福にしてくれた。


大輝が来るならと、夕飯の買い物をして家に帰る。
働くと同時に1人暮らしを始めて、大分料理も出来るようになった。
シフト勤務という仕事柄、不規則になりがちだったが、朝と夜は自分で作るようにしていたからだ。

そう時間は掛からずに来るというので、簡単なサラダとパスタソースを作ってあとは絡めるだけの状態にして火を消した。

15分もしないうちに、玄関のインターフォンが鳴り、すずめがドアを開けると、それなりに緊張していたすずめよりも気まずそうな顔をして大輝が玄関に立っていた。




「久しぶり」
すずめが笑って言うと、大輝は安心したようにすずめを抱き締めた。

「ごめん」

すずめは、何故大輝が謝らなければならないのかと、口を開きかけるが、大輝自身の唇でそれを塞がれてしまう。

「……っ、ん」

この2週間の距離を埋めるように、角度を変えて何度も口付ける。
身体が熱く火照り、互いがそれを望んでいることも分かっていた。

だが、すずめにはどうしても伝えなければならないことがあった。
「大輝っ…待って…」
このまま流されれば、また同じことを繰り返してしまうから。

「嘘吐いたこと…謝りたかったの…。大輝のこと、傷付けてごめんなさい」

抱き締められながらも、キスの余韻で赤く潤んだ目で、真っ直ぐに大輝を見つめると、欲情を伴った目を向けられる。

「おまえの嘘なんて、すぐ分かる」
そんなことは気にしていないとでも言うように、すずめの首すじを強く吸う。
「…っ、そうなんだけど…。違うの…そうじゃなくて…。私、大輝に…先生のことまだ好きなんじゃないかって思われたくなかったの!」

すずめが必死に流されまいとするが、壁と大輝の間に挟まれて、後ろから太ももの内側を弄ってくる恋人に陥落してしまいそうだった。
「あっ…ん…待って…」
「んなこと思ってねえよ…。もし…万が一にも、またあいつのこと好きになったら…」
「あぁっ…はぁ」
服の上から乳房を揉まれ、太ももの内側を行き来する手が、すずめを追い込んでいく。

「何度でも、俺のこと好きにさせてやる」

目を細めて、口の端だけを上げて微笑む大輝に、すずめが一目惚れしたかのように頬を染める。

「なぁ知ってるか?」
そして耳元で囁く声に、身体が溶けてしまいそうなぐらい反応してしまう。

「んっ…」

「おまえって…なんの匂いもしないんだよな」
大輝の手が、ブラウスのボタンを外し、首筋の吸われたところを舌で舐めると、首にかかる息だけで身体がビクビクと震えた。
「んっ…ぁ、な…に」

「だから…一緒にいる奴の匂いが移りやすいってこと。あの時…おまえの身体からも、キスした時も、あいつの…獅子尾の煙草の匂いがした」

「キス…されたんだろ?」

手を止め真剣な顔で見つめられるが、すずめは本当に覚えがないため、首を振るしかなかった。

「わかんない…」

「だろうな…。だから、おまえは悪くねえよ。悪いとこがあるとすれば、俺に心配かけ過ぎなところぐらいか?」

「あとは、可愛すぎなところもか」
口調は冗談ぽく言うが、大輝が本気でそう思ってくれていることが伝わる。

なぜこの人はこんなにもすずめを愛してくれるのだろう。
確かに、最近は綺麗になったと言われることが増えているが、自分では人並みだと思っている。
いつも優しくて、かっこいい恋人に、こんなに愛されるほどの価値があるとは思えなかった。

「大輝のこと…好きなの…」

「知ってる」

「大輝のことだけ、好きなの」
すずめはやっと愛しい人の背中に手を回すと、大輝もまた強くすずめを抱き締めた。

「知ってるよ…だっておまえ、いつも、俺のこと好きでたまらないって顔で見てるもんな」
耳元で囁くと、大輝は太ももに置いた手の動きを再開する。
ショーツの上から、割れた部分をなぞると、立っていられなくなり大輝に縋り付いた。
「…はぁ、っん」
「そんなこと分かってんのに、あいつのこと許せないのは俺の問題だからな…。ごめんな?酷い抱き方して」

「何されても…どんなことされても、大輝のことが好き…」
荒い息を吐きながら、欲情で濡れた瞳を大輝に向けた。
乳房を揉む手を一旦止めて、すずめを抱き上げると寝室へと運ぶ。


ベッドの上に優しく降ろされると、全てボタンの外されたブラウスを脱がされ、ブラのホックも外すと、すずめが心配そうに言った。
「大輝も…脱いでね…?」
「分かってるよ」
大輝は自身のTシャツを素早く脱ぎ、すずめをショーツだけの姿にした。
電気の付いた明るい室内で、裸体を見られることはこの上なく恥ずかしい。
何も考えられなくなってしまえば別だが、まだ余裕があるだけ余計に居た堪れなくなり、胸元を隠した。
「ダメ…見せろよ」
「恥ずかしいんだもん…」
何度抱かれても、裸を見られることに慣れなくて、毎回初めてのような反応をしてしまう。
そんなすずめが可愛くて、大輝がわざと電気を消さないでいることにも気が付かない。

露わになった胸元を外側から舐めていくと、敏感になったすずめの身体がビクビクと震える。
「はっ…あ…」
指と舌で突起を弄られると、ジワリと足の間が濡れていくのが分かった。
ピチャピチャと濡れた音が、すずめの身体を更に昂らせる。
「あっ…あん、はぁん」
柔らかく白い肌に赤い痕がいくつも浮かぶ。
大輝にしか見られない場所、太ももの内側や乳房、背中をも強く吸われ、所有の証が付けられる。
おまえは俺のものだと言われているようで、すずめは嬉しくもあった。
もっと束縛して、もっと自分のために怒ってと思う。
どうせ大輝しか見えていないのだから。

ショーツの上から、窪みを指の腹で擦られると、クチッと音を立ててショーツにじわりとシミが出来る。
「はぁ…あっ…」
指の動きを激しくすると、すずめが堪らなくなり腰を攀じる。
「あぁっ…ん、もぅっ」
ショーツを脱がされると、すでに愛液で濡れた秘部がヌラヌラと光っている。
足を大きく広げると、クチュッという音を立てヒクつき、ツンと女性器が勃って大輝を誘っていた。
ザラついた舌でソコを舐められると、言いようのない快感が全身を包む。

「あぁっ!んん…っだ、いきっ」

すずめの身体が痙攣するように震え、同時に秘部から吹き出した蜜を全てジュルッと飲み干すと、すずめが荒い息を吐きながら、大輝の熱くなった性器を慣れない手つきで扱いた。
「…っ、くっ」
すずめもまたお返しとばかりに、大輝の性器を口に含む。
付け根から何度も舐め上げると、先端が濡れてさらに硬く大きくなる。
先端から出てくる汁を強く吸い上げ、口を上下に動かすと、大輝の息が荒くなっていく。
「くっ…はぁ…っ」
大輝の性器を舐めながらも、腰がゆらゆらと揺れ、足の間からはとめどなく愛液が溢れている様はとてつもなく卑猥だった。
すずめの尻を掴み顔の方に向けさせると、自身の性器を舐めさせながらも、待ちわびてヒクつく秘部に舌を差し入れた。
「あぁっ、はぁん…あっ、あっ」
ヌチュヌチュと舌と指を出し入れすると、自らイイ場所を大輝の舌に擦りつける。
「ほら、休んでないで、もっとしゃぶって」
「だって…そんなにしたら…っ、んんん…あぁっ」
すずめは、なるべく気をそらすように大輝の性器へと集中して、口を動かす。
口の中で一際大きくなったソレが、限界を訴えていた。

「くっ…はぁ、もうイキそう…っ」
大輝はすずめの口の中に欲望を吐き出した。
「んんっ…ぁ、はぁっ」
すずめは勢いよく出されたソレを受け止めると、全て喉の奥に流し込んだ。
口から糸を引いて体液が垂れる様に、吐き出したばかりの性器がすずめの口の中でまた大きくなる。
「んんっ、また…おっきぃ…」
ジュプッと口から出して、すでに待ち侘びていたすずめの秘部に突き刺した。
「あああぁっ!」
簡単に飲み込んでウネウネと内部が波打つ。
大輝はすずめの最奥に突き刺すように、ズチュッズチュッと腰を激しく揺らすと、すでにどちらのかわからない体液が飛び散る。
「あぁっ…もぅイクッ、イクッ!」
「くっ…う…」
すずめの秘部にキツく締め付けられ、放出したばかりの大輝も、搾り取られるように2度目の欲望を吐き出した。



「あぁっ、あぁっ…ココ凄いっ…イイッ」
大輝の上に跨り、自らイイところを擦り付けるように腰を振る。
乳房を口に含み、レロレロと舐めると大輝の性器をキツく締める。
「んんっ…ぁ、もっと…舐めて…」
「気持ちいい?」
「大輝の…おっきいの…気持ちいい…っぁ、もっといっぱい、して?」


何度も何度も身体を繋げ、お互いを舐め合い、欲望も全て吐き出したかに思えた頃、時刻はすでに夜中で、優に5時間はSEXしていたことになる。

「身体、大丈夫か?」
「うん…」
「手加減出来なかった…悪い…」
すずめの髪を優しく梳きながら、額にキスを落とす。
「何されてもいいって…言ったでしょ?」
すずめは気持ちよさそうに目を閉じると、ウトウトと眠りに誘い込まれる。

「でも…たまに喧嘩するのもいいかもな?」
「…ん、なん…で?」 
半分寝ながら会話を続ける。

「喧嘩したあとのSEX、おまえすげえ感じるだろ?」

耳たぶを噛まれて言われると、火の消えたはずの身体がまた、火照っていくのを感じた。

「ちょっと手出して」
「え?」
大輝が脱ぎ捨てたズボンのポケットから何かを出して、すずめの左手を取ると、薬指に指輪をはめる。
「男避け。外すなよ?」
小さな石が付いたシンプルなデザインのプラチナリングは、すずめによく似合っていた。

「俺、おまえの警戒心のなさ、信用してねえから」

まだ何か怒っているのかと隣に寝ている大輝を恐る恐る見ると、フッと笑った顔はいつも通りの愛しい笑顔で、すずめは背中に手を回して、広い胸に顔を寄せた。

「なに?続きする?」

「勘弁してください…」
そういえば、パスタとサラダを作ったのにと今さら思い出すとお腹が音を立てた。


fin


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Author:オダワラアキ
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現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

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