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馬村家のヒトコマ

ひるなかの流星 【馬村家のヒトコマ】

「…はよ」
「ああ、おはよう大輝。朝食出来てるよ」
いつもどおりの朝、馬村はまだ眠い目を擦りながら支度を済ませる。
高校3年生になり、春が過ぎ、去年の沖縄から1年が経った。2年の頃が懐かしく思えるほど受験生は多忙だ。すずめとも最近はゆっくりデートもしていない。
同じクラスで、帰りも一緒ではあるから会えないというわけではないが、やはり寂しくは思う。
「いただきます」
普段は笑っていることが多く、とても怒りそうもない父だが躾には厳しい。
食事の前や後の挨拶はきちんとしなさいと、小さい頃は何度も怒られた為か、馬村はよく礼儀正しい、坊ちゃんなど言われることがある。
「大輝、覚えてると思うけど、今日父さん出張で帰ってこられないから、大地と家のこと頼んだよ。明日の夕方には帰るから」
「ああ、分かった」
父としては、彼女をつくり父親不在に家に連れ込む…という心配をしなくてもいい分安心ではあるが、心配が全くないのもまた心配である。
(与謝野さんのこと好きみたいだったけどなぁ)
自分の息子ながらいい男に育ったものだと思う。学校で告白もされるだろう。しかし、高校3年生になったというのに、与謝野さん以外の女の子の話を聞いたことがない。
(与謝野さんは、大輝のことは友達…みたいだったし)
そんな考えを巡らせていると、すでに家を出る時間が過ぎていた。
「ごめん!大輝!片付け頼むな…行ってきます」
「…」
(なんか、ぼうっとしてたな…)


「よう」
すずめが朝学校に着くと、後ろから頭をポコっと叩かれる。声の主は分かっているので、ゆっくりと後ろを振り返る。
「馬村、おはよ」
「おまえさ…明日暇?」
「明日?特に何もないけど…久しぶりにどっか行く?」
「…うち、来るか?」
「うん!行く~馬村のお父さんに会うの久しぶり!楽しみ!土曜日だし、朝から行ってもいい?」
「おう」
(明日夕方には帰ってくるんだし…大地もいるし…言わなくていいか)
そう判断した馬村に、下心がないといえば嘘になる。
自分たちは高校生で、しかも受験生、誰にも見られずに2人っきりでいられる場所など、中々ない。
つまりは、イチャイチャも出来ないわけで。
(…大地もいるし、な)


「大輝〜腹減った〜」
大地が朝起きると、すでに朝食の用意がしてある。この兄は、間違いなく父親似であると子どもながらにそう感じた。
「大地、お前今日出かける?」
「え…なんで?」
「いや…別に…」
珍しく歯切れが悪く、何が言いたいのかさっぱり分からない。
しかし、今日出掛ける予定があるのは確かなのでそれを伝えると、心なしか嬉しそうな表情になった。
何かが大地の中で繋がりかけているが、あと1ピース足りない。
しかし、深く考えることは止めた。
友達の家でゲームをやる約束をしているのに、遅れてしまう。
大地は急いで朝食を済ませると、ごちそうさまでしたと言って、着替えをしに自分の部屋へ戻った。

「んじゃあ、行ってきます」
「あんまり遅くなるなよ」
兄に見送られ、家を後にし歩いて行くと、遠くから大地に向かって手を振っている人物がいた。誰だかは全く分からなかったが、その人物は走って大地に向かってくる。途中でやっと大地にも誰だかが分かった。
「あれ〜大地?出掛けるの?」
「すずめか…あんな遠くからよく見えるな」
「私目はいいんだ!…って大地出かけちゃうんだ〜今日大地とも遊べると思って楽しみにしてたのに」
「うち、来んの!?」
「うん、馬村から聞いてない?」
瞬間、大地のピースが全て揃った。
そういえば、昨日の夜兄が部屋の掃除してたのを、珍しいなと思い見ていた。
そして、すずめはたぶん、いや100%兄の好きな人だ。それは子どもでも気がつくぐらい分かりやすい。
「すずめ〜気をつけろよ〜色々」
「うん!じゃあね!」
分かっているのかいないのか、楽しそうに手を振ると、すずめは走って行ってしまった。

息を切らしながら馬村家のチャイムを鳴らすと、10秒と待たずに本人がドアを開けた。
「お邪魔します。あ、これ駅前で買ってきたよ。みんなでお昼に食べようかと思ったけど、大地出かけちゃったんだね」
すずめが手土産に持ってきたのは、ピザでしかもLサイズが2枚だった。
「悪い…親父も出掛けてる。夕方には帰ってくるけど…てか、またおまえ走ってきたの?」
「え、うん。ん〜おじさんいないのか…残念。Lサイズ1人1枚…まぁ私はいけそうな気もするな…」
「お茶持ってくから、先に部屋行ってて…2階の突き当たりな」
「あ、うん。ピザテーブルに置いておくね」
今日家に2人っきりなことを話しても、何も意識してなさそうなすずめに少し苛立ちを感じるが、それが嫌だったら初めから好きになどならない。
周りに気が付かれなかったのが不思議なほど、すずめにだけ優しく、少しでも自分の方を向いて欲しくてちょっかいを出し続けた。それでも鈍感なすずめは、馬村がはっきり好きだと言うまでは気が付かなかった。
もうそんなものだと諦めている。すずめ相手には真正面からぶつかっていくしかないことも分かっている。
馬村がお茶を持って部屋に入ると、すずめはまだ部屋の真ん中で立ったままだった。
「なんで突っ立ってんの?」
後ろから声を掛けるとビクッと肩を震わせた。
「えっ、あ、なんか…初めて部屋入ったな…と」
すずめは俯くと、目を合わせずに答える。馬村は堪らなくなって、すずめの腕を掴み抱き寄せた。
俯いた顔が赤く染まっているのが見えてしまったから。
「ま…むら」
「意識…してた?」
すずめの耳元で囁くように話すと、抱き締めた身体が小さく跳ねるのが分かる。
「してない…わけないよ…だって」
みんな出掛けてるとか聞いてないしと言うと、すずめも馬村の背中に手を回し、シャツをギュッと掴んだ。
「おまえのことは、よく分かってるつもり…だったけど、相手が自分だと全然分かんねぇや」
馬村が笑いながら言うと、すずめもつられて笑う。
(やっぱり馬村の笑ってる顔好きだな)
どのぐらいの時間そうしていただろうか、さすがにすずめが痺れを切らし、モゾモゾと動き出す。
「馬村…?」
「ん?」
「あの…そろそろ…」
恥ずかしくて顔を上げることが出来ない。
すずめはこういう場合どうすればいいのかなど分かるはずもなく、意を決して馬村を見ると、いつものように赤くなるどころか、思いの外真剣な顔で見つめてくる。
「おまえ…もうちょっとくっつきたくない?」
「く…くっつき…って」
「俺はおまえのこと触りたい」
すずめの顔を上に向けると、深く口付けた。
「…っん」
何度も角度を変え、すずめが離れないように強く抱き締めると、そのままベッドに倒れこむ。
「はっ…ん…ま、むら」
「嫌だったら…止める…」
嫌がったら泣くんじゃないかと思うような顔で、止めると言われると、絶対に言えない。これがわざとじゃなかったら確信犯だなとすずめは思った。
「嫌じゃない…けど、ちょっと…怖い」
「キスだけ」
まるで懇願するように馬村が言う。
「なら…いいよ」
すぐそのセリフを後悔することになるのだが、何も考えず答えてしまう。
押し倒されたまま、また口付けられる。さっきよりも激しく、執拗に。
すずめは堪らずに馬村の腕にすがりつくように掴まると、それをどう捉えたのか、すずめを抱き締める腕に力がこもる。
「う…っん…はっ…」
呼吸もままならなくなりすずめから口を離すと、少し怒ったようにまた唇を塞がれる。
気が付いた時にはすずめのシャツのボタンは外され、馬村のキスは首筋に移動していて、何とも言えないゾクゾクするような感覚に襲われた。自分の声じゃないような、出したくもない声が、息が弾んで閉じることの出来ない口から漏れる。
「あっ…やぁ…ん、まむ…らキスだけって…んっ」
「キスだけ…だろ?」
馬村がすずめのブラジャーに手をかけた時、ガチャっと1階から鍵の開ける音が聞こえた。耳もいいはずのすずめには、別の理由から全く届いていない。
「残念…大地、帰ってきた」
「ふぇ?」
血色のいい顔が、さらに赤く染まり、瞳も潤んで今にも涙が零れ落ちそうだ。いくら子どもとは言え、弟にもこんな顔をしたすずめを見せたくはない。
馬村が、すずめのボタンを全てはめ直すと、ベッドから起き上がらせた。
「あり…がと」
ぼうっとした頭では何が起きたのか考えることも出来ない。
「リビング行くか」
「あ、うん」
すずめが来ていることを知っているはずなのに、ノックもなしに部屋に飛び込んでくるはずの大地が来ないため、すずめと共に下に降りると、そこにいたのは大地ではなかった。
「親父…早くね?」
「あ、こんにちは!お帰りなさい。お邪魔してます!」
馬村は大地だとばかり思っていたため、何とか誤魔化せるだろうと思ったが、父親となると話は別だ。
すずめの髪の毛は乱れているし、首筋には馬村が付けたキスマークがある。何よりいつもとはだいぶ違う火照ったような顔を見て、何か思うところがないはずはない。
「ただいま。与謝野さん!久しぶりだね!」
「あ、お昼ご飯食べました?ピザ買ってきたんですよ〜みんなで食べようと思って!」
「ありがとう…私は昼は済ませたから2人で食べなさい。その様子だとまだ食べてないだろう?」
チラリとすずめの首筋と、若干顔色の悪くなった息子を見ながら言った。
「お腹空いた〜馬村早く食べよう!」
先ほどの色気は完全になくなり、食い気に変わると、すずめは勝手にピザを準備しだした。
「あ、おじさん!そういえば報告してなかったですけど、私馬村と付き合ってます!…ってもう1年も経つんだから知ってますよね?」
すずめは、あははと笑いながら、爆弾を投下する。
「そうだね。ほら、私の言ってたこと当たるでしょう?」
「えっ?あ〜お寿司やさんで!?ほんとだ!」
この様子だと未然に済んだみたいだけど、高校生じゃな…まだ早いな、そんなことを考えながら、父親として案外こういう悩みも楽しいものだと気が付いた。
(大輝には、可哀想なことしたけどね)


Fin

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