恋花8 最終話
恋花8 最終話
初めてだというのに、2度も立ち続けに愛され、つくしはグッタリとベッドに横になっていた。
喘ぎすぎたせいで声が擦れ、類がペットボトルの水を口に含ませてくれる。
つくしを、愛おしそうに腕の中に抱えながら耳たぶにキスをひとつ落とす。
「さっきの話の続き、してもいい?」
「う、うん」
さっきと言われても、何をどこまで話したのかもすでに覚えていないつくしは、取り敢えず返事はするものの、何を話していたかと頭を巡らせる。
しかし、口を継いで出た言葉は、予想の範疇を越えていた。
「牧野…俺と結婚しよ?」
言われた言葉の意味がわからずに、″けっこん″=血痕と変換してしまい、きちんと理解するまでに、数秒を要した。
「はぁ…って!け、け、け!」
「け?」
「何言ってんの類!?そんなの無理に決まって…んっ」
無理に決まってるでしょ、という言葉は類の唇で塞がれた。
「断る返事は聞かないよ」
「だって、道明寺の時と一緒だよ…どうせ。反対される…」
「嫌だ、とは言わないんだね?」
「…嫌なわけ、ないじゃん…」
ボソリと言った言葉は、類に届いているのか。
「俺は、遠距離とか無理だから、どこ行くのも一緒だよ。一緒に花沢の仕事しよう」
「そんなの、認めてもらえないよ…お嬢様じゃないもん」
「何言ってんの?結構時間作って英語もフランス語もドイツ語も教えてあげたでしょ?総二郎には茶道、あきらには生け花とダンス。俺たちが教えてんだよ?自分では気付いてないかもしれないけど、牧野の立ち振る舞いは完璧だよ。頭の良さも申し分ないしね…。どうしても家柄が気になるんならあきらのとこに1度養子に入りなよ。はい、解決。それで誰が反対すんの?」
確かに、道明寺を待つ間ポッカリと空いてしまった時間を、なんだかんだと理由をつけられ、お茶だお花だと習わされていた。
F3と食事に行った時などは、会話はすべて英語と決められ、もし日本語を話した場合ペナルティでキスするぞと脅されながら、必死で勉強をした覚えがある。
「でも、類の…両親…とか」
「うーん、俺はさ…そういう意味では、司のかあちゃんが反対する理由が分からなかったんだよね…牧野って実はバックに大物付いてるし…うちの親も知ってるよ?」
「へっ?何それ?」
「あんたのこと無条件に助けたいって思ってる奴はいっぱいいるでしょ?西門家、美作家、三条家、大河原家…」
つくしが目を泳がせていると、大好きな優しい笑顔で類が言った。
「決定ね」
つくしも頷いて嬉しそうに笑う。
その顔を見てまた類も笑った。
そして手を繋ぎ、つくしを抱き締めたまま2人は眠りについた。
***
つくしは、この2年間自分からは決して掛けることのなかった相手に電話をする。
すると、相手は3コールも鳴らないうちに電話に出た。
『…久しぶり、だな』
「うん…久しぶり、道明寺」
『おまえから電話なんて、初めてじゃねぇ?』
「うん。こんなに簡単に繋がれるのにね…。なんで出来なかったんだろう…」
司も色々と思うことがあるのか、急に押し黙った。
「あたしね…あんたのこと忘れるから。だから、あんたも幸せになって…それだけ言いたくて、あと、婚約おめでとう」
司は、この2年仕事にかかりきりだったが、つくしには念のため道明寺のSPを付けていた。
道明寺と関わりを持ったことで、身代金目的の誘拐だって考えられる。
それだけではなく、会うことの出来ない分、写真付きの報告書を見るたびに、つくしが近くにいるような、同じ景色を見ているような気になった。
電話やメールをする時間がなくても、つくしも頑張っている、そう思うことで自分を奮起させていた。
それが、最近SPから上がってくる報告は、聞きたくもない類とのことだった。
写真に収められた、見たことのある非常階段でのキスシーンは、正直腸が煮え繰り返る思いだ。
ジェット飛ばして類を殴りに行こうと思ったほどだ。
『類に…電話した…』
その一言で、つくしは全てを察した。
言わないわけにはいかないことは、分かっていた。
「うん…類と、結婚する…」
類への電話で、電話ごしの相手を殴る方法はないものかと、バカみたいなことを真剣に考えた。
結局怒鳴ることしか出来ない、何も変わっていない自分に腹が立つ。
そして、類に言われなければ気が付かなかった。
″そんなことで怒って電話する時間があるなら、なんで牧野を何ヶ月も放っておいたの?
婚約の言い訳の電話すらしなかったでしょ。
牧野なら、放っておいても司のこと待っててくれると思った?″
そんな考えなら牧野を解放してやれって。
4年後に必ず帰るという、おまえの言葉に束縛されて、可哀想で見ていられないって。
だから、解放してやる。
今は…な。
「おまえ、今…幸せか?」
「うん、幸せだよ」
「…必ず、おまえを取り戻す」
つくしは、何も言わずに電話を切った。
fin
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初めてだというのに、2度も立ち続けに愛され、つくしはグッタリとベッドに横になっていた。
喘ぎすぎたせいで声が擦れ、類がペットボトルの水を口に含ませてくれる。
つくしを、愛おしそうに腕の中に抱えながら耳たぶにキスをひとつ落とす。
「さっきの話の続き、してもいい?」
「う、うん」
さっきと言われても、何をどこまで話したのかもすでに覚えていないつくしは、取り敢えず返事はするものの、何を話していたかと頭を巡らせる。
しかし、口を継いで出た言葉は、予想の範疇を越えていた。
「牧野…俺と結婚しよ?」
言われた言葉の意味がわからずに、″けっこん″=血痕と変換してしまい、きちんと理解するまでに、数秒を要した。
「はぁ…って!け、け、け!」
「け?」
「何言ってんの類!?そんなの無理に決まって…んっ」
無理に決まってるでしょ、という言葉は類の唇で塞がれた。
「断る返事は聞かないよ」
「だって、道明寺の時と一緒だよ…どうせ。反対される…」
「嫌だ、とは言わないんだね?」
「…嫌なわけ、ないじゃん…」
ボソリと言った言葉は、類に届いているのか。
「俺は、遠距離とか無理だから、どこ行くのも一緒だよ。一緒に花沢の仕事しよう」
「そんなの、認めてもらえないよ…お嬢様じゃないもん」
「何言ってんの?結構時間作って英語もフランス語もドイツ語も教えてあげたでしょ?総二郎には茶道、あきらには生け花とダンス。俺たちが教えてんだよ?自分では気付いてないかもしれないけど、牧野の立ち振る舞いは完璧だよ。頭の良さも申し分ないしね…。どうしても家柄が気になるんならあきらのとこに1度養子に入りなよ。はい、解決。それで誰が反対すんの?」
確かに、道明寺を待つ間ポッカリと空いてしまった時間を、なんだかんだと理由をつけられ、お茶だお花だと習わされていた。
F3と食事に行った時などは、会話はすべて英語と決められ、もし日本語を話した場合ペナルティでキスするぞと脅されながら、必死で勉強をした覚えがある。
「でも、類の…両親…とか」
「うーん、俺はさ…そういう意味では、司のかあちゃんが反対する理由が分からなかったんだよね…牧野って実はバックに大物付いてるし…うちの親も知ってるよ?」
「へっ?何それ?」
「あんたのこと無条件に助けたいって思ってる奴はいっぱいいるでしょ?西門家、美作家、三条家、大河原家…」
つくしが目を泳がせていると、大好きな優しい笑顔で類が言った。
「決定ね」
つくしも頷いて嬉しそうに笑う。
その顔を見てまた類も笑った。
そして手を繋ぎ、つくしを抱き締めたまま2人は眠りについた。
***
つくしは、この2年間自分からは決して掛けることのなかった相手に電話をする。
すると、相手は3コールも鳴らないうちに電話に出た。
『…久しぶり、だな』
「うん…久しぶり、道明寺」
『おまえから電話なんて、初めてじゃねぇ?』
「うん。こんなに簡単に繋がれるのにね…。なんで出来なかったんだろう…」
司も色々と思うことがあるのか、急に押し黙った。
「あたしね…あんたのこと忘れるから。だから、あんたも幸せになって…それだけ言いたくて、あと、婚約おめでとう」
司は、この2年仕事にかかりきりだったが、つくしには念のため道明寺のSPを付けていた。
道明寺と関わりを持ったことで、身代金目的の誘拐だって考えられる。
それだけではなく、会うことの出来ない分、写真付きの報告書を見るたびに、つくしが近くにいるような、同じ景色を見ているような気になった。
電話やメールをする時間がなくても、つくしも頑張っている、そう思うことで自分を奮起させていた。
それが、最近SPから上がってくる報告は、聞きたくもない類とのことだった。
写真に収められた、見たことのある非常階段でのキスシーンは、正直腸が煮え繰り返る思いだ。
ジェット飛ばして類を殴りに行こうと思ったほどだ。
『類に…電話した…』
その一言で、つくしは全てを察した。
言わないわけにはいかないことは、分かっていた。
「うん…類と、結婚する…」
類への電話で、電話ごしの相手を殴る方法はないものかと、バカみたいなことを真剣に考えた。
結局怒鳴ることしか出来ない、何も変わっていない自分に腹が立つ。
そして、類に言われなければ気が付かなかった。
″そんなことで怒って電話する時間があるなら、なんで牧野を何ヶ月も放っておいたの?
婚約の言い訳の電話すらしなかったでしょ。
牧野なら、放っておいても司のこと待っててくれると思った?″
そんな考えなら牧野を解放してやれって。
4年後に必ず帰るという、おまえの言葉に束縛されて、可哀想で見ていられないって。
だから、解放してやる。
今は…な。
「おまえ、今…幸せか?」
「うん、幸せだよ」
「…必ず、おまえを取り戻す」
つくしは、何も言わずに電話を切った。
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