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恋春19 最終話

恋春19 最終話



そして、類と結婚をしてから3回目の春が来た。
卒業式が終わり、皆思い思いに写真を撮ったり、門の前で立ち話をしたりしていた。
F3が大学を卒業してから1年。
なんと平和だったことか…。

つくしよりも1年早く卒業した類は、取締役から常務へと肩書きが変わっていた。
類は学生時代とは比べ物にならないほどの忙しさで、朝早く出勤し、夜も何とかつくしがまだ起きている時間に帰ってくるというスケジュールで毎日仕事をこなしている。
山村が言っていた。
どうしても週休2日がいいとダダをこねなければ、もっと早く帰れるはずだと。
しかし、類としてはそこだけは譲ることが出来ないらしく、毎日の深夜帰宅を選んだらしい。

「身体壊さなきゃいいんだけどね…」

高等部時代の三年寝太郎が嘘のように、1日5時間睡眠ほどで仕事に行っている。
なのに、金曜日の夜から俄然元気になるのはどうしてなのか…。
つくしは愛されている実感に、嬉しさ半分、疲れ半分といったところだ。




英徳大学に通っていて、就職活動をする人は稀だが、同じく花沢に入社することが決まっていて就職活動をする必要のなかったつくしは、花沢の仕事について、時間の許す限り山村から学んだ。

海外に出張する時は、大学の都合をなんとか付けて必ず類に着いて行った。
それはもちろん、離れていたくないなんて理由ではなく、少しでも類の仕事に触れて、学びたかったからだ。

ほんの少しは、寂しい気持ちもあったかも…しれないけれど。

卒業式も終わり、いつも待っていてもらっているリムジンの場所に行こうとすると、門の前で花束を持った類が待っていた。

「卒業、おめでとう」

極上の笑顔で大きな花束をつくしに渡しながら言うと、卒業式で賑わっていた門の前は黄色い悲鳴が上がった。
およそ1年ぶりの登場だ。
泣きわめく女学生もいるほどだ。
それもまた仕方がないのかもしれない。
それほどに、彼らのいなくなった学園は静かだったのだから。

同時に、まだ付き合いがあったのかと、つくしを睨み付けるような視線も相変わらずだ。

「る、類っ!なんで?仕事は?」
「つくしの卒業式だよ?来るに決まってるでしょ?それに…」

言葉を切って、つくしの左手を取ると、その指にチュッとキスを落とす。
その姿にまた騒然となった。
類はつくしの首から、ネックレスに通した指輪を外すと、つくしの手を取り、左手の薬指に指輪をはめた。
もちろん、類の指にもつくしと同じデザインの指輪が輝いていた。
それを見ていた周りの学生が、その意味に気がつかないはずがなく、まさか、嘘でしょ、という声が漏れ聞こえる。

「大学卒業したから、指輪解禁でしょ?」
「う…うん」
「結婚3年目にしてようやくだね」

つくしは自分でした約束だったが、まさか卒業式当日にこんな目立つ場所で、自分たちの結婚をバラす羽目になるとは思ってもみなかった。
指輪のあたりから、類とつくしの会話を聞き逃さないとばかりに、シンとした人の輪に囲まれる。

つくしは、その状況に耐えきれなくなり、何も言わずに類を車の方にグイグイ押すと、運転手の田中がドアを開けてくれる。
つくしは後ろを振り返ることもなく、自分も乗り込むと、ドアが静かに閉められた。

「そんなに2人っきりが良かった?」
「違うっ…あんな目立つとこで恥ずかしいでしょ!?」
「俺は、見せたかったんだけどなぁ…つくしは俺のだよって、じゃないと無駄にモテるからね、あんたは」

田中に適当に流してと言い、運転席との仕切りを下ろすと、つくしの腰を抱いて口付けた。

「んっ…ん」

類は唇を離すと、潤んだ瞳を向けるつくしの名残惜しそうな顔を見て笑った。

「確かに…外でこんな顔させるわけにいかないもんね…」

今日の予定はすべてオフ。
類はゆっくりとつくしを座席に押し倒した。


fin


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恋春18

恋春18


大学に2週間の休みを申し出ていたつくしは、安堂商事の記事のこともあって、その期間は邸にいることにしていた。

つくしには直接手を出してはいないが、警察に拘留されている安堂孝一がつくしの名前を出せば、念のためにと警察に呼び出されることもあるからだ。
それに、リオとどんな顔をして会えばいいのか…分からないでいた。

休み明け、予定通りに大学へ行くと、中庭で待っているとリオから連絡が入った。

「つくしちゃーん!!」
「リオ…久しぶり」

相変わらず人気のない中庭のベンチに、2人は座った。
リオはボソリとつくしにだけ聞こえる声で、ごめんと頭を下げた。

「真二からね…聞いたの。花沢さんに迷惑かけたって、それにつくしちゃんにも」
「あたしは何も…」
「本当にごめんなさい…」

頭を下げるリオに、つくしはキッパリと言った。

「リオ…本当にあたしは何も分かってなかったの。だから、迷惑なんてかけられてない」
「つくしちゃん…でも…」
「あたしは…今回、自分のことなのに、最後まで蚊帳の外だった…でも、それが今のあたしの実力」

つくしは深く息を吐くと、キラキラと輝く漆黒の瞳をリオに向ける。

「だから、こんなことぐらい自分で解決できるように、類の隣を並んで歩いていけるようにならないとダメなんだ」
「あ…」

リオが何かに気が付いたように、つくしの後ろを見た。

「ふふっ、頼もしいね。俺の奥さん」

「類っ!ビックリした!今日来るって言ってたっけ?」
「ん?ちょっとつくしと学内デートでもしようかな〜って来てみた」

当たり前のようにつくしの隣に座ると、手を取り、リオの前でわざとらしく恋人繋ぎをする。
リオには類とのことを話しているが、それとこれとは気持ちの問題として別である。

「じょ…冗談でしょ?目立つから絶対イヤ」

さりげなく手を離すと、類は拗ねたように口を尖らせ、また手を絡ませてくる。

リオは、類のその表情に驚愕していた。
直接は会うことも話すこともない、雲の上の存在。
1度カフェテリアでつくしといる際、顔を合わせたが2人が話しているのを見たわけではない。
つくしは自分から惚気るタイプではないので、話の種に、真二から類の人となりを聞いていた。
それはもちろん、パーティで見かけた様子や知人から聞いた程度の話だったのだが。
あまり表情のない、人形のような人だと。

それが本当かどうかは分からないが、そんな人がつくしの前ではこうも変わるのかと、あまりの愛されっぷりに愕然としてしまう。
完全に2人の世界に入ってしまう前にと、リオは類に話しかけた。

「花沢さん…。今回のことすみませんでした。それと、真二を…安堂を助けてくれてありがとうございます」

もしも、類とまた会う機会があるのであれば、リオは類にも直接謝りたいと思っていたのだ。

「あんたは、なんの関係もないんじゃない?」
「いえ、今後は関係あります。私…真二と結婚します。そして、安堂商事を2人で立て直そうと思っています」
「あぁ、そう」

類は興味なさそうに返事をするが、つくしはリオの話に食いついた。

「ほんとっ!?」
「うん。私もつくしちゃんを見習って、真二の隣に並んで立てるように頑張るよ」

リオは今までで1番綺麗な顔で笑った。
つくしも顔を見合わせて笑うと、類に向き直る。

「うん!あたしも…。もう守ってあげたいなんて言わせないんだから!あたしが類を守ってあげる。だから、覚悟しててね」

つくしは類に向かって人差し指を突き出す。

「宣戦布告?」
「あははっ、そう!宣戦布告!」

今度こそ2人の世界に入ってしまった類とつくしを、羨ましそうに見つめると、リオはそっと席を立った。

そして、つくしと類が結婚していることを真二は話さなかった。
今のリオは知らなくていいことなのだろう。
気が付いてしまった事実を、胸の中にそっとしまう。
いつか、つくしに全てを話してもらえる日まで。




「あれ?そう言えば、安堂を助けてくれて…ってどういう意味?」

本当に学内デートをする羽目になったつくしは、手を恋人繋ぎにするか、腰を抱くかどちらがいいと言われて、仕方なく恋人繋ぎを選ぶ。

「あぁ、安堂商事と新事業で提携を組んだからじゃないかな?まあ、業種は一緒だしね。色々と助かることもあるよ」
「ええっ!?そうなの?そっか〜類、ありがとね」

類は簡単に言うが、事実上の倒産ではないかとまで言われた、安堂商事と提携を組むことは簡単なことではなかったであろう。

そして、つくしがそれを知るにはまだまだであることも分かっている。
もっともっと努力しよう。
いつか類から話してもらえるように。

「「聞き飽きた」」

耐えきれずに、ぶっとつくしは吹き出す。

「言うと思った〜!!」

人通りの多い、カフェテリアの前。
ただでさえ、類と手を繋いでいることで、女学生の視線が痛いというのに。

まあ、結婚していることがバレなきゃいいか…。
息を吐いてそう思えるぐらいは、F4全員からの免疫があった。
総二郎なんかは、未だにしょっちゅう肩を組んでくるし、あきらもまた然り。
高等部時代は、司のつくしへのストーカーっぷりは相当だった。

焦りもしないつくしのことを、どう思ったのか、類は腰を屈めると、つくしの唇に軽いキスを落とした。

「…仕返し」

「類っ!!」

類とつくしを見ていた女学生から、悲鳴のような声が聞こえたのは言うまでもない。


***


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恋春17

恋春17


類は、帰国後すぐに安堂商事への対策を取った。
ほとんど、日本にいる山村が指示を出してくれていたので、類はOKを出すだけでよかった。
あとは明日の結果を待つだけだ。

そして、彼はどう動くか。
優しそうな風貌をした、そういう意味でも孝一とは似ても似つかない安堂真二という男。

類は、邸へ帰る車の中で、真二と話をしたあの日のことを思い出す。

**


類が真二に会ったのは、つくしとリオが偶然会った…はずのレストラン。
そこに、安堂真二と磐田リオが2人で現れ、つくしと会うことは、実は必然だったのだ。

類は安堂真二があの日にレストランに予約を入れていることを調べ、つくしにたまには外で食事をしようと誘った。
もちろんつくしと出掛けたい気持ちも嘘ではないが、そこに他意があったことは事実だ。

真二がトイレに立つと同時に、類も席を立ち後を追った。

突然現れた類に、真二は困惑するが、リオから聞いてつくしのことは知っていたし、その恋人として店内で顔を合わせたばかりなので、軽く会釈をした。
もちろん、花沢の後継者である類のことは、パーティなどで度々見かけることがあった為知っていた。

「君のお兄さんが動いているんだ」

脈略なく言われ、何のことかと訝しむと、類は続けて言った。

「え…?」
「結構迷惑しててね。うちの奥さんにまで飛び火しちゃってるから、放って置けなくなっちゃったんだよね」

聞き間違いかと思ったが、奥さんと言ったことは取り敢えず流し、真二は話を続けた。

「兄って、孝一のことですか?」
「うん。そう遠くない時期に、安堂商事大変なことになるからさ。一応、それだけ言っておこうと思って」

大変なこととは、そう聞こうとして真二は首を横に降る。

「安堂とは…縁を切ったんで…」
「そう思ってるのは、あんただけなんじゃない?それでもいいけど、このままだと社員も路頭に迷うことになるね」
「……」
「まあ、俺には関係ないか。じゃあね」

類は役目を果たしたとばかりに、踵を返し席に戻った。
残された真二は、何かを考え込むようにその場に立ち尽くす。


**


類は、会社からそう遅くなく邸へ帰ると、心配そうなつくしが玄関で出迎える。

「おかえりなさい…。仕事、大丈夫だった?」
「ただいま。うん、心配いらないよ?食事しながら話すね」
「う…ん…」

類が仕事の話をつくしにしようとするのは珍しいことだ。
聞けばもちろん教えてくれるであろうが、未だ学生であるつくしに聞いたとして何が出来るであろう。
せいぜい、大変だね頑張ってと声をかけるぐらいだ。
つくしも少なからず驚いて、類を仰ぎ見るが、その表情はつくしが不安に思うようなものではない。
もしかしたら、新婚旅行をダメにしてしまった理由をきちんと話さなければならない、そう思っているのかもしれない。




類は、食事があらかた終わったところで、つくしが知らずに巻き込まれていた事も含めて、安堂孝一が起こした全ての出来事を話す。

「安堂真二さんって、リオの恋人…の」
「そうだね。彼が直接関わっていたわけではないし、つくしの友達は無関係だけどね」
「でも、あたしが類の身内だってことを知って利用しようとしたってことだよね…」

つくしにしたら、寝耳に水の話であるはずなのに、類の話を冷静に受け止めているようだ。

「明日、安堂商事についての記事が週刊誌に載る。うちの社員を脅していたことで、警察から話も聞かれると思う」
「そんな…。類、ごめんね…」
「なんで、つくしが謝るの?」
「だって、あたしが狙われてたのに…何も気付かなかった。リオと友達になって嬉しかったけど、もっと距離を置いてたら、安堂孝一さんも手を出さなかったかもしれない…」

類はやはりと、ひとつため息を吐いた。

「そう言うと思ったから…本当は話すのやめようかなと思ったんだ。つくしのことをさ、俺はただ毎日幸せな暮らしをさせて守ってやりたいとも思うから。あんたを傷付ける全てのものから」
「類…」
「でも、そんな大人しいタイプじゃないでしょ?」

類はつくしと額をくっ付けると、優しく頬を包み込んだ。




安堂孝一は社長の座から退くことになるだろう。
そして、安堂商事もどうなるかは分からない。
本当に優秀な後継者でもいれば別だが。

安堂真二にも考えるだけの時間は与えたつもりだ。

類は、初めて真二を見た時から気が付いていた。
強い意志を持った瞳…あの時はまだ火は灯っていなかったが、今はどうであろう。

高等部時代も今も、同じように強い意志を持った瞳で何度も見つめられ、目をそらすことが出来なかった。
理不尽なことを許すことが出来ずに、適うはずのない相手に、何度も何度も立ち向かっていくつくしと、真二はとてもよく似ていた。

孝一が継いだ安堂商事には、さほど興味もなかったが、もし真二が継ぐのであれば、将来的には本当に花沢にとってのライバルとなりうるかもしれない。




翌日。
週刊誌の記事を受けて、安堂商事は業務を一時停止にする事態に陥っていた。

「なんだよ…これは!?」

孝一は週刊誌を乱暴に床に叩きつけると、イライラと社長室を歩き回る。
安堂商事の株価は暴落し、家にも記者が詰めかけている。
そして、孝一が指示を出していた秘書は、行方が分からなくなっていた。

コンコン…

「誰だ!?」

扉をノックする音にも、ビクリと肩を震わせる。
まさかここにまで、マスコミが来るとは思えないが。

「兄さん…久しぶり」
「真二…」

久しぶりの兄弟の対峙は、もちろん近況報告なのではなく、ピリピリとした空気が流れていた。

「もうやめようよ、兄さん」
「何をだ?」
「類さん…花沢さんから聞いたんだ。その週刊誌の記事は事実なんだね」
「だったらどうした!?俺は、会社のためを思って、もっと会社を大きく、一流企業にしようとしていたんだ!途中で逃げ出したお前に何が分かる!?」
「そうだね…。兄さんを止められるのは俺しかいなかったのに、俺は逃げ出した。それは本当に申し訳なかったと思ってる。でも、外に出て知ったこともたくさんあるよ」

孝一は真二の話に、全く聞く耳を持たなかったが、それでも時間の許す限り、真二は自身の仕事についてを話した。
たった、数十万の給料を稼ぐために必死で働いていること。
そしてその給料がなくなってしまえば、路頭に迷うこと。

「安堂商事で働いてる人たちも同じだよ。簡単に切り捨てたりしたらダメなんだ。しかも、他の企業にスパイを置くなんて…自分の会社に実力がないって言ってるようなものだしね…」
「そんなのは、綺麗事だ!じゃあ今のこの状態を社員のリストラなしで切り抜けられるとでも思ってるのか!?スパイも使わずにあの道明寺財閥や花沢と並んで立てるとでも!?」

この状態を作り出したのは孝一であるはずなのに、それさえも分かっていないようだ。

「そうだね…。どんな状況になろうと、リストラはしなかったじいちゃんみたいに、俺にも出来るかな」
「お、まえ…戻ってくる気か?」
「そんなガラじゃないって俺も思うけどね。父さんの病院行って宣言してきたよ。俺が必ず立て直してみせるって。そして、日本経済に一目置かれるような企業にしてみせるって」

そして、空を見つめて真二は言った。

「守りたいんだよ…。近くにいる大事な人も。会社も。あの人みたいにさ…」

レストランでの一件は、彼なりの助言であったように思う。
何もしなかったら終わり、おまえが動かなければ守れないと。


***


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恋春16

恋春16


自分の事業計画において不穏分子がいることは分かっていた。
始めは、事業計画の関係者名簿のディスク、計画書の作成途中の覚書が紛失した。
どちらも、役員以上が知っているパスワードがなければ開けられないデータであったために実害はなく、父も会社の経営者側である役員を疑っていたのだが、しかしそれならばもっと重要な書類を各々持っているはずだ。

類にしても、それを父から聞いた時の疑問は、なぜわざわざ一取締役という立場の自分が担当する、新事業の計画書を狙ったのかであった。
そう考えると、狙いは類個人もしくは、花沢の後継者である自分。

そしてちょうど時を同じくして、つくしの友人リオの報告書が山村から上がった。
類は、調べさせた磐田リオの調書を見ながら、山村からの詳しい報告を役員室で聞いていた。

「奥様の友人、磐田リオさんですが。特に彼女本人には、問題はありませんでした。ただ…」

仕事中ではあったが、つくしに関係することであれば、類は何よりも優先させてきた。
山村もそれを知っていて、敢えて調べた内容をすぐに知らせる。

「彼女の恋人である、安堂真二氏が、あの安堂商事の御曹司であることが分かりました。真二氏は家を出ていますので、気にし過ぎかもしれませんが…」
「いや、そんなことはないよ。俺もそれは気になる。あそこは兄の孝一氏が会社を継いでからは、いい噂を聞かないからね」

山村が、あの…と言うからにはそれなりの理由があった。
類もまたそれを知っている。

「弱みを握って企業スパイとして利用してるとか…聞くけど。火のないところに煙は立たない、でしょ?しかも、乗っ取りみたいな敵対的買収で最近どんどん大きくなってるみたいだし」
「ええ、かなりの野心家のようですね」
「だとすると、安堂孝一に磐田リオの繋がりでつくしのことを調べられれば、必ず利用しようとするよね。大学以外には結婚したこと隠してもないしね」
「奥様の人脈は、相当のものですから…」

つくしを調べれば簡単に、道明寺、花沢、大河原と、他にも経済界でも名だたるメンバーの名が浮上するだろう。
それらの人脈は安堂孝一にとっては、喉から手が出るほど欲しいはずだ。

「これって偶然だと思う?」
「もしかしたら、すでに奥様のことを調べられているのかもしれませんね…。取締役が進めている新事業のデータが紛失したことも、タイミングが良すぎますし」

類が、安堂孝一の名前と、会社でのデータ紛失を結び付けないわけがなかった。

だとしても、社内にいるであろうスパイを見つけ出すことは容易ではなく、このままでは新事業のプロジェクト開始時期にも影響が出るほどとなってしまう。

「俺が、少しの間日本を離れれば、相手にとっては絶好のチャンスなんじゃない?」

類が言わんとすることをすぐさま理解し、1を言えば10で返す、それが山村という男だった。

「では、餌として偽の名簿、事業計画書を用意しましょう。必ず動かせてみせます」
「じゃあ、その間新婚旅行にでも行くかな…つくしの…」
「大学のことも講師に、特別講義を頼んでおきますので、ご心配なさらず」

そこで、ちょうど日本へ輸入することを考えていたワインの視察という名目で、社内にいるスパイを動かすために類が旅立ったのだ。

旅行の前、類が本当に浮き足立っていたことは、山村の胸に秘めておく。

前もって、偽の名簿や事業計画書の入ったディスクを担当者全員に配った。
と言っても、今までの調べで大体の目星は付けてあったので、動いてさえくれれば、さほど大変なことではない。

あとはゆっくりと新婚旅行を楽しんでいただこう。
山村は秘書室へと戻ると、昔に比べて随分と人間らしくなった類のことを考えていた。
良くも悪くも飽きっぽく、仕事にしてもそんなに興味なさそうにしていた類が、つくしに胸を張れるだけのことをしようと、日々取締役として仕事に向き合っていることを知っている。
今までは野心など欠片も持ち合わせていなかったのに、今では少しでも早く父親にも、後継者として周りにも認められるようにと仕事を務めている。
そんな類の仕事の原動力であり、一番大切な女性であるつくし、山村はこの人がいれば花沢は安泰だと、本気でそう思っていた。


そして見事に、類のあぶり出し作戦は成功し、脅されていたスパイが、ディスクを安堂孝一の秘書へと渡すところを山村が押さえたのであった。

そして類は山村にさらに指示を出した。
秘書が勝手にやったこと、そう言わせないために、花沢の社員を脅し情報を引き出していたこと、安堂孝一が今まで行った敵対的買収についての横暴なやり方を記者に書かせた。

あとはそのカードをいつ使うかだ。

企業においての信用は、直接株価に繋がる。

「彼女を悲しませることは許さないよ?」

本気になった類に敵うものなどいないのではないか。
不敵に笑う類に、山村は世の中には怒らせてはならない人間というのもいるのだと、背筋が寒くなった。


***


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恋春15

恋春15

こ、これでも頑張ったんです…(^^;;
納得いかないわ、という方は飛ばしてくださーい!
15と16本当に大変でした〜。
ラブラブだけ書いている方が楽しいなぁ。
やっと最終章に突入です。

***


類が電話に出ると、至急役員会を開くため帰国せよと、会長である父親からの伝言を受けた、山村からの連絡だった。

類の進めていた事業の担当者が、あろうことか他社へ情報を流すという、類が日本を離れていることを知った上で背徳行為が行われたようだ。

本社では、山村が情報を漏らしていた担当者を締め上げているらしいが、それによると誰かに強請られていたふしがある。

日本へ帰国してすぐに、つくしを邸に送り、類は本社へと向かった。

「情報を流していた先は、やっぱり安堂商事か…」

山村からの報告を受けて、類は役員室の椅子に腰掛けながらため息をついた。

つくし自身は気が付いていないだろうが、また知らず知らずのうちに面倒なことに巻き込まれている。
このことをつくしが知れば、また心を痛めるであろう。





リオの恋人である、安堂真二は性格のいいというか人の良い男だ。
争いごとを嫌い、優しすぎるあまり、部下に対しても腰が低く、仕事は出来るが一族のトップに立って人を動かすようなことは向いていないと、おまえはあくまでも自分のサポートをしろと、常々兄に言われていた。

そのことに疑問をもたなかった。
会社を大きくするには、人との繋がりなどではなく、兄のように冷静に、経営を数字で考えることが必要なのかもしれないが、真二にはそれが出来なかったからだ。

安堂商事は、真二の祖父が立ち上げた総合商社で創業50年になる。
父は、祖父からの教えで、会社も社員も大事にし苦しい時期でも、人を切るようなことは絶対にしなかった。
父の代で上場してからの、20年に及ぶ実績もある。
道明寺財閥など、日本経済を牽引する企業と張り合えるはずもないが、その一角を担っているのだというプライドもあった。

だが、社長である父が病に倒れ、後継者として育てられてきた兄が、安堂商事の社長の座を継いでからそれも変わってしまった。
兄はまず赤字の出ている部署を偵察し、使えない奴は切る、そういうスタンスだった。
人を人とも思わない、利益が出ない事業部はあっという間に潰され、家族がいるいない関係なしに、遠方に飛ばされたり、下請けへ出向させられたりした。

真二は、兄がすることに口も出せず、ただ傍観しているしかなかった。
病に倒れた父も、兄のことを止めることが出来なかった。

自分たちは、それと引き換えるように莫大な財産の中で生活していたのだから。

しかしそれにも耐えられなくなった真二は、ついに兄、孝一との縁を切るように家を出た。

安堂家であることも捨てた自分は、兄にとっては、なんの価値のない人間であるだろうと思っていたが、どうやら孝一はそう思っていなかったらしい。

使えるものは家族でも使う。
それが、安堂孝一という男だった。




孝一は、家を出た真二の身辺を常に調べていた。
どこに住んでいるのか、恋人の有無なども。

「磐田リオね…真二はこの女とまだ続いてるのか」

ニコリともせずに、月に2度ほどの秘書からの報告書を読む孝一は、リオと一緒に写真に写る弟、真二を見ても、何の感情も持っていないようだ。

恋人である磐田リオの通っている英徳大学は、数々の御曹司が通う学園であることで有名だ。
あの道明寺財閥や花沢物産、美作商事、あの西門一族の御曹司も通っている。

そして、報告書を読み進める孝一の手が止まった。

「磐田リオの友人…牧野つくし?この女、どこの令嬢だ?」
「一般家庭の出のようです。しかし、そこに書いてあることは裏が取れています…。高等部の頃は有名だったようで、簡単に情報が出て来ました」

牧野つくしは、英徳学園高等部からの持ち上がり組でF4メンバー全員とも繋がりがあり、あの大河原財閥の令嬢とも交友があるようだ。
他にも、あの道明寺司の恋人であった過去までもが示されている。

そして、花沢物産後継者である、花沢類の妻である。
本名、花沢つくし。

写真を見る限りは信じられないが、事実だとすれば、かなりの大物だ。

「この女…こちら側につけられるか?」
「やってみましょう」

女を取り込んでしまえば、花沢を手に入れたようなものだ。
女のバックグラウンドも然り。
それを利用しない手はなかった。
花沢だけでなく、縁遠い道明寺財閥にも近づくチャンスかもしれない。

花沢や類個人に恨みがあるわけじゃない。
ただ、より大きく自身の会社を成長させるために、誰もが知る企業の名前が欲しかったのだ。
花沢つくしはそのための駒だ。
手に入れようと思っても、手に入らない超一流企業の看板。

パーティなどで度々見かけることはあっても、孝一にとって花沢物産社長である、花沢聡は、挨拶すら出来ないほど遠い存在だった。
それが1人の女のおかげで手が届く距離になった。
花沢聡に最も近い人物、後継者である花沢類。



そして何週間か後、孝一は、秘書からの花沢つくしに関する書類に目を通すと、呆れたようにため息を吐き、机の上に書類を投げた。

「旧姓、牧野つくし…。こういう女はどうせ金目当てだろ…。ああ、花沢の後継者は相当な美男子だったな。顔ってのもあるか。どちらにしても、おまえなら何とかなったはずだが?どういうことだ?」
「ええ、ですが…報告書の通りでした。申し訳ありません」

孝一の秘書である三村も同じように思っていた。
一般家庭から玉の輿に乗るような女は決まって金で動きやすく、遊び歩いているものだと思っていたが、面倒なことに花沢つくしは、夜の社交場に全く姿を現さなかった。
花沢類の妻としてパーティに出ることはあるが、常に類が側にいる。
そして、学内ではSPと思われる人間が離れた位置から、ずっと女を見ていて、直接手を出すことは不可能だ。

しかも行き帰り運転手付きの車が迎えに来るが、女は毎日大学からどこにも寄らずに邸に戻っている。

当初は、花沢つくしの弱みを握るか身体で取り込み、花沢の御曹司である、類の情報を流させスパイとして使う作戦だったが、本人が捕まらないのではどうしようもない。
やっと掴んだ情報は、9月から花沢類が仕事で2週間ほどフランスに行くというものだった。

「もう1人からの情報はどうだった?」
「ええ、そちらは初めて役に立ちました」
「そうか」

花沢つくしの存在を知った後、何かの役に立てばと花沢類が手がけている新事業の担当者を、半ば脅して無理やり情報を出させていた。
しかし、パスワードがかかっていることも知らずに新事業計画書の覚書の入ったディスクを持ち出し、逆に花沢を警戒させてしまった。

その担当者からの連絡で、類の出張の間に、事業に関係する取引先名簿、事業計画書などの入ったディスクが全員に配られるという。
そろそろプロジェクト始動といったところだろう。

花沢物産を動けなくさせるならその時だと、ディスクを手にいれた後、類のいない間に安堂孝一は動いた。

事業に関係する取引先名簿や、事業計画書が漏洩したなんて話が、マスコミに出れば、情報管理に煩い現在、計画の全てを見直さなくてはならなくなる。
何十億という損失が出れば、現経営陣もただでは済まない。
その隙に、花沢の取締役の1人を嗾けて、花沢を取り込む段取りだ。
投資家たちも、かなりの損失が出れば、経営陣を一新することに文句は出るまい。
そこへ、条件のいいM&Aを仕掛ける。
安堂商事は、日本一の総合商社へとなれる。

「もうすぐだ…」

それが確定した未来であるかのように、孝一は不敵に笑った。


***


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プロフィール

オダワラアキ

Author:オダワラアキ
オダワラアキの二次小説・二次創作置き場へようこそ。
ひるなかの流星・花より男子・日々蝶々・君に届け・会長はメイド様の二次小説・創作置き場です。黒バス黄黒、青黒BLも書いております。
現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

こちらを読むにあたって下記注意点をお読みになってからお進みください。

このサイトは原作のある漫画の二次創作、小説です。

同人誌や、二次小説(2次創作・夢小説)に抵抗のある方はウィンドウを閉じてください。
原作者様、出版社とは全く関係ありません。

小説の無断転記、複製、配布を禁じます。

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