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wish you were here 51

wish you were here 51最終話



つくしの妊娠祝いという名目で久しぶりのメンバーが揃い、花沢邸へと集まっていた。
ただ口実を作って飲みたいだけだろうとつくしは思うが、なかなかに忙しくしているメンバーが全員揃うことなど滅多になく、つくしにとっても楽しいひと時であることは間違いない。
特にこの機会を逃したら、司と会うのは早くて結婚式、遅ければ出産後だ。

「つくし、酒の用意とかしなくていいから。座っておきなよ」

妊娠中で酒の飲めないつくしは、飲み散らかした酒の瓶を片付けたり、つまみをキッチンから持ってきたりと忙しなく動き回っている。

「類の言う通りだぜ?ほら…ここ座れ」
「司、何言ってんの?つくしはこっち」

司がソファに座り自分の隣につくしを引き寄せると、類が自分の隣へとつくしの手を掴む。
2人の低レベルな争いのおかげで、つくしは類と司の間に座らされる羽目になった。

「ちょっと…道明寺、わざと類のこと煽るの止めてよ…」
「そうだよなぁ〜その被害は牧野が被るんだしな」

ワインを物色していたはずの総二郎たちも、ソファに座るつくしたちの元へとやって来た。
総二郎がニヤリと笑って言った言葉に思い当たる節があるつくしは、頬を染める。

「やることやって子ども出来てんだから、これぐらいで赤くなるなよ。相変わらずの純情っぷりだな」

あきらまでもが、ニヤニヤと笑いながらつくしを揶揄いだす。

「そういうとこが可愛いんだけどね。俺としては、他の男にそんな顔見せないで欲しい」

類が言えば、益々つくしは顔が赤くなるのだからわざととしか思えない。

「しかし、牧野がデキ婚とはねぇ…ほんと、おまえは昔から俺らの想像の上をいく女だよな」
「ちょっと、西門さん!一応世間では結婚後の妊娠ってことになってるんだからね!デキ婚デキ婚言わないでよ」
「どっちだっていいじゃねえか、幸せなことだろ?」
「そうだけど…」

総二郎とあきらが揃うと、必ずあらぬ方向へと話が飛ぶことはもう分かっている。
つくしは桜子たちの集まるところへ逃げるように移動した。

「また、揶揄われていたんですか?あの人たち…ほんと先輩のこと好きですね」

桜子が離れたところでグラスを傾ける彼らを見て、ため息を吐く。
しかしそれは嫌なものではなく、寧ろそこに当たり前のように4人集まっていることへの安堵のように見てとれた。

「好きっていうか、ただあたしみたいなのが物珍しいだけでしょ?」
「つくしは分かってないなぁ〜。F4全員を虜にしておいて。滋ちゃんにも1人ぐらい回して欲しい〜」
「と、虜って…優紀〜」
「いやいや、滋さんの言う通りだから。つくし、あの人たちにかなり大事にされてるよ」
「う…それは、分かってるけど…」

つくしにも分かっているのだ。
類と司はもちろん、総二郎とあきらもまた友情以上の強い繋がりをつくしに感じてくれていることを。
総二郎とあきらについては、恋愛感情でつくしに接しているわけではないと分かっているが、友情と呼ぶには密な慣れ親しんだ空気がある。

つくしはふと視線を4人に向ける。
類や司の会話は聞こえないが、類の言葉に司が口の端を上げて笑った。

つくしはそのことに心の底から安堵を覚える。

本当に良かったーーー。
また見ることが出来た。
4人が他愛ない話で笑いあうところを。

いつだったか類が言っていたことを思い出す。

″司の記憶喪失とか、つくしのことで壊れる関係じゃないよ。時間は掛かるかもしれないけど、いつもどおりに戻るさ″

そのとおりだったね。

司の記憶がないことで、類がつくしを大事にすればする程深くなる、2人の間に入ってしまった亀裂が、いつの間にかなくなっていた。
それは、司が記憶を取り戻したからかもしれないし、記憶がなくとも変わらなかったかもしれない。

彼らの絆はきっとこの先もずっと続くのだろう。



つくしは知らない。
彼女を愛す男たちが思うことを。

元よりバラバラだった自分たちを本当の親友にしてくれたのは、間違いなく彼女だ。
誰かを思うことが、こんなにも幸せなことだと教えてくれたのも。


いつも君がその笑顔で迎えてくれるから、君がいる場所にこうして帰って来られるのだとーーー。



fin

ここまで読んでくださりありがとうございました(*^^*)
初めは1話完結で書いたこの作品、やっぱり1話だけ違和感があるのでそのうち書き直したいなぁと思っております…。
今回司くんの記憶喪失がテーマでしたが、隠れテーマとしてつくしが元どおりにと望んでいた4人の友情を書いておりました。
しかし、つくしの大学編へと脱線したお話を軌道修正するのがなかなか大変でした(^^;;

次のお話は、コメントくださる方には予告済みですが、3人の日常を進めるのと、プロットが出来次第つくしちゃん不倫ものの予定です(^^;;

次のお話でも、よろしくお願い致します!

オダワラアキ

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wish you were here 50

wish you were here 50
次回最終話です(*^^*)
50話は個人的にお気に入りの回。




高等部の頃から自分たちの溜まり場になっていた、黒服が出入り口を固めている会員制バーのVIPルーム、久しぶりに類はその扉をくぐった。
目的の人物は、すでにVIPルームのカウンターで自身で酒を作っていた。

「昨日、つくしに会ったんだって?」
「おい、久しぶりの挨拶もなしかよ。まぁいいけどよ。俺のこと聞いたってことは、もう知ってんだよな?」

司は類を一瞥すると、自分の為に作っていた酒を類に手渡し、新しいグラスに氷を入れていく。
類は礼を言い受け取り、司が酒を作る近くのカウンター席に腰掛ける。
広いVIPルーム内には、もちろんソファ席もあったが、酒を作る度に動かなければならないのは面倒だ。
でも、店員に入ってこられるのはもっと面倒で、総二郎たちが女を連れ込む時以外は店員を部屋に置くことはしなかった。

「司が俺より先に知ったってことは、かなりムカつくけどね。で、今日婚姻届出してきた」
「そうか。おめでとう…って言った方がいいか?」
「思ってもいないこと言わなくていいよ」
「んじゃ、思ってることな。絶対に幸せにしろ、泣かすんじゃねえ、以上だ。ああ、それと…マスコミ対応どうなってる?」

幸せにしろと言う司の表情は至極真面目なもので、つくしに対しての想いを伺い知ることが出来るが、類は司に言われることじゃないという言葉を飲み込んで、ああとだけ返した。

「つくしのお腹が大きくならないうちに発表して、挙式披露宴もするつもり。妊娠の件は気付かれるまでは発表するつもりないよ」
「今からじゃホテル押さえられねぇだろ?メープル使えよ。妊婦ってことは箝口令強いておくし、うちから漏れることは絶対にねえはずだ」
「サンキュ」

類はウィスキーの水割りを喉に流し込むと、手の中で空のグラスを回しながら話す。

「司…記憶戻ったんだろ?」
「……おまえが分かるってことは…やっぱり、牧野も気付いたな」
「記憶ない時のおまえの目…つくしは忘れないと思うよ。ショックが大きかった分…余計にね。俺だって会ってすぐ気付くぐらいだし」
「自分でその時のこと、覚えてんだよ。病室から出て行けって言ったことも、類の女かって聞いたことも…全部」
「そう…。そうやって後悔すればいいよ。俺はつくしがどれだけ傷付いたか知ってるから、司にだけはもう死んでも返さないって思ってる」

ほんの1年前までは、司の記憶が戻ったら、司はつくしを何が何でも取り戻しに来るだろうと思い、どうかつくしがいなくならないようにと祈るような気持ちでいた。

しかし今は不安はなかった。

つくしからの愛情を信じることが出来るし、類自身に何かあった時、つくしの力になってやれるのは親友たちしかいないことも分かっている。

「それでいいさ。あいつが俺のところに戻ってくるとは思ってねえしな…。ただ、あいつのためなら俺はなんだってしてやるよ。花沢が危ぶまれる時でも、牧野と子どもは絶対に不自由な思いはさせねえ」
「あれ、俺のことは?助けてくれないわけ?」
「ぬかせ…おまえはどうでもいいんだよ」
「ひどっ…」

司は類に新しい酒を注ぎ、どちらからともなくグラスを合わせた。


***


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wish you were here 49

wish you were here 49



「あっ!大学どうしよ…とりあえず行けるだけ行って、休学して…医学部入るためにはあと5年、子育てしながら行って…うん、厳しいけど…頑張れるかな…」

類に抱き締められながらも、今後のことを考えてつらつらと話すその内容に、つくしの背中を撫でていた類の手が止まった。

「つくし…」
「ん?何?」
「医学部…行くの?」
「あ、言ってなかったっけ?ハッキリと決めたのはつい最近だけどね…。あたしは…あたしなりに類の助けになろうと思って。類がどんなに忙しくてもあたしが健康管理はしっかりとしてあげられるように。しかも、この子も産まれるんじゃ責任重大だね」
「うん…そうだね…」

類はつくしには分からないようにため息を吐いたつもりであったが、少しばかり落ち込んだ様子の類に目敏く反応を示す。

「類…?どうかした?」

本当…人のことには鋭いんだよねーー。

しかし、どこかで予想していたことだった。
家の中で類の帰りをただ待って…そんな生活を望むタイプではないことは、自分が一番よく分かっているのだから。

「いや…何でもない。つくしは何があってもつくしだなぁと実感してただけ。でも…無理はしないこと、約束してね」
「うん…ありがと」



マンションに医師を呼ぶと言う類を何とか宥めて、翌日病院へと足を運びそのまま婚姻届を役所に提出した。
医師の診断は妊娠2ヶ月であり、心拍も確認出来た。
つくしの心配をよそに、類の両親もつくしの妊娠を諸手を挙げて喜んでいたようだ。
つくしの母、千恵子に電話で報告すると、驚きつつもそうなる可能性も考慮していたのか落ち着いたものであったが、晴男は電話越しに泣き喚き、慰めるのが大変だった。
それでも、電話を切る直前に幸せにと言葉を残してくれたことに、両親からの愛情を感じる。


今後のことも考え、類とつくしは花沢の邸へと居住を移すことにした。
妊婦のつくし1人でマンションに留守番させることは、類には出来なかったし、今後大学へ通うことも考えると運転手に送り迎えもさせるつもりだった。
つくしには窮屈な思いをさせるかもしれないが、子どものためと言えばつくしが納得することも分かっている。

荷造りは使用人にやらせるからと言っても、下着までやってもらうのは恥ずかし過ぎると言って自身で段ボールに詰めていくつくしに、類が声を掛ける。

「どう?終わった?」
「ん〜あと、これだけ…」

つくしが、段ボールをガムテープで閉じると、類がつくしの手を取った。

今、こんなこと言うタイミングではないけど……。

本当ならレストラン予約してとか、スカイツリーの展望台貸し切ってとか、色々考えていたことが、まさか彼女はTシャツにデニム、自分も同様の格好で言う羽目になるとは本当に予想外のことだらけだ。

でも、不思議とそれが嫌ではないことに笑ってしまう。

「つくし…こっち向いて」
「何?どうかした?」

類はつくしの左手を取ると、ポケットからキラリと輝く指輪を出すと薬指にはめた。

「つくしのこと、絶対に幸せにするから…受け取って」
「類…」

つくしは自身の手を見ると嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう」


***

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wish you were here 48

wish you were here 48


司と話をしたことで若干落ち着きを取り戻したつくしは、類に話をするべく珍しくメールを送る。
類が仕事中であることは分かっていたし邪魔をしたくはなかったが、時間を知ることでそれまでにつくし自身の覚悟も決まるかと思ったのだ。

何時頃に帰る?ただそれだけのメールであったが、類からの返信は早かった。



夕食の支度をあらかた終えると、つくしは落ち着かなくキッチンからリビングまでを歩き回る。
時刻は19時を少し回ったところだった。
バイトを休んだ為に夕食に時間を掛けて作っても、まだ類が帰って来る時間までは2時間以上はある。

夕飯食べながら…?
それとも寝る前に言う?

覚悟を決めたはずなのに、類のことを信じているのに、未だに、もし産むことを反対されたらどうしようという不安が沸き起こる。
つくしは今日買った本を手に取ると、ソファに座りパラパラと捲った。



つくしからのメールが類を不安にさせる。
何時もならつくしはバイトで、類と大体同じ時間に帰っているはずなのに、わざわざ帰宅時間を聞いてきたということは、何か大事な話があるに違いないのだが、それがいい話かそうでないかは全く予想がつかない。

結局メールが届いてから仕事が手に付かずに、秘書からも苦言を呈される有様だった。
それならばと、いつもよりだいぶ早くマンションへ帰ると、部屋の中からは何一つ物音がしない。

やはりいつも通りにバイト行っていて、そこまで心配することもなかったかと、ホッと息を吐き、リビングのドアを開けると、つくしがソファで眠っていた。
類が近付いても一向に目を覚ます気配すらない。

「また、こんなとこで寝て……。えっ…ちょっと…つくし、起きて」

類は自身が目にしたそれに驚愕の表情を浮かべると、いつもなら優しくベッドに運ぶところをつくしの腕を揺さぶるようにして起こす。

「ん…る、い?帰ってたの…?」

まだぼんやりと覚醒しない頭をゆっくりと左右に振ると、手に持っていた雑誌を下に落としそうになりハッと気づく。
司にそうしたように、つくしは慌てて後手に隠すが時すでに遅し。

「ね…これ、どういうこと?」

類は雑誌を指差しつくしに詰め寄る。
つくしの予定ではこんなはずではなかった、落ち着いて自分から話すべきことだったのに。
どこででも、暇さえあれば眠りに落ちる自分が恨めしかった。

「あ、あの…ね、類」
「つくしが妊娠したんだよね?それってつまり、俺の子どもだよね?」
「う、うん…」

類は暫く顎に手を当て考える素振りをすると、固定電話を手に取った。

「……俺。つくしが妊娠した。もう待たなくていいよね?………ああ、分かった」
「え、何…?誰…?」

類の意図が分からずに、自分はまだ寝ぼけているのかと首を傾げる。
ほんの10秒程度で電話を切ると、つくしの隣に腰掛け自身の腕を摩る。

「男の子?女の子?」
「そ、そんなのまだ分かんないよ…。病院にもまだ行ってないし…」
「そうなんだ。じゃあ今から病院行こう。それで明日籍入れるから、うちの親もいいって言ってたし。あ、つくしのパパとママにも連絡しないとね。それと、お腹が大きくなる前に結婚式したいよね?」

次から次へと変わる話題に、つくしの頭がついていかなくなってしまう。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」

つくしの両腕を掴む類の胸を押しやり、深呼吸するように大きく息を吸い込んだ。
そして、自分を落ち着かせるようにゆっくりと息を吐く。

「何?」
「あたし…産んでいいんだ?」
「産まないつもりだったの?」
「ううん…そうじゃないんだけど…。類、喜んでくれるの?」

類もまた突然の出来事に喜びながらも多少なりとも動揺していたのか一息つくと、改めてつくしに向き直る。

「うん…当たり前でしょ。俺もちょっと落ち着かないと…ごめん。つくし…俺と結婚してくれる?まずはそれからだよね」

不安そうに揺れていたつくしの瞳が、みるみるうちに安堵と喜びのものへと変わり涙が頬を伝う。

「類、ありがと…」

つくしは類の首に両腕を回すと、ギュッと抱き締める。
類はつくしの髪を撫でながら、愛おしそうに頬に唇を寄せた。



「あっ…今日ね…たまたま道明寺に会ったよ。少し話しただけだけど…」
「そう、帰国してるんだね、司。何か言ってた?」
「何かっていうか…この本見られちゃって」
「じゃあ知ってるんだ?」
「うん。あとは…類に幸せにしてもらえ…だって」

記憶が戻ってる、それを自分から類に伝えてもいいものかどうか迷った末に、言うのは止めた。
つくしが類に言ったところで、何かが変わるわけではないし、司から直接聞いた訳ではなく確信のないことを勝手に話すのは、司も望んでいないように思う。

「司に言われなくても幸せにするよ。ずっとね」

類に抱き締められると一度止まったかに思えた涙腺がまた緩む。
堰を切ったようにつくしの目から溢れ、止まることなく次から次へと溢れ出す。

「つくし…どうして泣くの?」
「ちょっ、と…不安だったから。類に受け入れてもらえなかったら…どうしよう、とか。色々考えちゃって…」
「結婚しようって、俺言ったじゃない。受け入れないはずないでしょ?そもそも…」
「え…?」

子ども出来たら、すぐ結婚出来るし、そのまま専業主婦になってくれる可能性高いかな…そう思っていたことをつくしに知られるわけにはいかなかった。

しかし、今のところ類の思い通りに進んでいるとみられるが、その思惑は外れることとなる。

***

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wish you were here 47

wish you were here 47


1年半ぶりに日本の地に降り立った司は、ゆっくりと休む暇もないままろくに眠れなかった機上の疲れを癒すべく、リムジンで目を瞑っていた。
しかし、一向に眠りは訪れず半ば諦めかけて窓の外に視線を移す。

そして人混みの中に彼女を見つけたーーー。
間違えるはずなどない、何年経とうとも彼女のいる場所だけは司にとっては光輝いて見えるのだから。

「止めろ!」
「つ、司様…?」

急ブレーキとでもいうかのスピードでブレーキを踏むと、さすがの司も前のめりになるが、そんなことに文句を言っている暇などない。
本屋から出てきた彼女は、リムジンとは反対方向へと足を向けて行ってしまう。

「牧野っ!」

もしこの一時帰国中に会えたら、何を話そうかここ数ヶ月、そんなことばかり考えていた。
思わず顔が笑っていて西田に気味悪く思われたのも一度や二度ではないだろう。

振り返った彼女は、驚いたように司を見て立ち竦んだ。
司もまた、発する言葉が出てこない。
そして、つくしは手に持った本屋のロゴが入ったビニール袋を後ろ手に隠した。
その行動を司がおかしいと思わないわけはないのに。

「久しぶりっ…帰ってたんだね!F3には会った!?あ、あたし…買い物中だから…もう行かなきゃっ…」

つくしは懐かしむ暇もなく、その場から逃げ出そうとする。
司はつくしの腕を掴み、本屋の前に停まっているリムジンへと乗せた。

「なっ、何…」
「とりあえず、落ち着け。何かあったのか?」
「何もないっ!ほんとだから!」

つくしが背中に隠すようにしているビニールを奪い取ると、中に入っている雑誌を取り出した。
司の考えでは、また下手なゴシップ誌が類の噂話程度の信憑性の欠片もないものを載せていて、つくしがそれを見てショックを受けている…程度であったが、この時の司の驚きは予想を遥かに超えていた。

こういった本を買うのは大体が当事者であることは、妊娠についての知識のない司にも分かる。

「おまえ…子ども出来たのか…?」
「……っ」

つくしは余程知られたくなかったのであろう、苦虫を噛み潰したような表情で司から視線をそらした。

「その顔じゃ、類はまだ知らねえんだな」 
「分かったの…ついさっきだし…」
「それでなんでおまえは嬉しそうじゃねえんだ?」
「なんでって!だって、そんな簡単なことじゃないでしょ!?」

つくしは司に食ってかかるように言うと、深くため息を吐いた。

「何がだよ?おまえ…類が妊娠のこと受け入れないとでも思ってんのかよ」
「そう、じゃないけど…だって…」
「相変わらず面倒くせえな…おまえが1人でグルグル考え事してるとロクなことにならないんだよ」

司に額を小突かれると、自分のことでいっぱいいっぱいになっていたつくしは、その言葉にやっと顔を上げて司を見る。
先ほどから感じていた、懐かしい雰囲気。
そして、司の目を見て確信する。

「道明寺…もしかして」

記憶を取り戻しているーーー?

「何だよ?」
「う、ううん…何でもない。また…会えると思ってなかった…」
「今更かよ…。まぁいい、それより類にちゃんと言えよ?あいつはおまえの1人や2人受け止めるぐらいわけないだろ」

今のつくしを見る司の瞳は、記憶をなくしていた頃の冷たく感情のこもっていない瞳ではない。

「うん…言わないでいられないもんね…」
「牧野…類に幸せにしてもらえよ?」
「そうだね…でも…人に幸せにしてもらわなきゃならない女じゃない。あたしが、類を幸せにしてあげるんだった」

つくしは暫し司と見つめ合うと、昔を懐かしむ想いのこもった微笑みを向けた。
司もまた安心したように笑う。

「くっ…そうだったな。もし…」
「え?」
「いや…何でもない」

タイミングを計ったように、運転者が次の予定のリミットを告げる。
送るという司の誘いを断って、つくしはリムジンを降りた。



もしも、何てことがないのは類の性格をよく知る司が一番分かっていることだ。
どんなことがあっても、類はこの先つくしを手放しはしないだろう。

もし…類に受け入れてもらえなかったら、俺のところに来いーーー。

言えずにいる言葉は、胸に鍵をかけ閉ざされる。
司の思い出の中で泣き顔ばかりが思い浮かんでいたこの1年、つくしがいつかまた自分に笑顔を向けてくれる日が来ればいいと思っていた。

お人好し過ぎるだろ…。

つくしの妊娠には驚愕したが、それ以上に喜んでいる自身に驚きだ。
司は緩む頬を手の平で押さえると、つくしの後ろ姿をリムジンの中から目に焼き付ける。

あいつが幸せそうで良かったーー。

***

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オダワラアキ

Author:オダワラアキ
オダワラアキの二次小説・二次創作置き場へようこそ。
ひるなかの流星・花より男子・日々蝶々・君に届け・会長はメイド様の二次小説・創作置き場です。黒バス黄黒、青黒BLも書いております。
現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

こちらを読むにあたって下記注意点をお読みになってからお進みください。

このサイトは原作のある漫画の二次創作、小説です。

同人誌や、二次小説(2次創作・夢小説)に抵抗のある方はウィンドウを閉じてください。
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