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3人の日常 15

3人の日常 15


やはり、蓮も1歳になり親しい間柄だけの顔合わせでは済まなくなった。
内輪だけのパーティーのあと蓮の関係各所へのお披露目は盛大に行われた。
それこそ、つくしの苦手とするパーティーであったが、それはこの世界に生まれついてしまった以上蓮の宿命であるのだろう。
1歳児へのプレゼントとはとても思えない、船や車、別荘地などを次から次へと贈られると、F3のプレゼントがまだ常識の範囲内に思えてくるのだから不思議なものである。
いや、金額的には総檜造りの戸建ての方が値は張るだろうが、一応はプレイハウスなのだから1歳の子どもでも活用法はあるのだ。
1歳の子どもに本物の船や車を与えてどうしろというのか、高ければなんでもいいと思っているのかは分からないが、それもまた使わずに花沢家の倉庫に眠ることになるのが分かりきっている。

つくしがプレゼントの整理をしながら、ブツブツと文句を言っていると、佐原が部屋のドアをノックした。

「つくし様、いらっしゃいましたよ」
「あ、はい!今行きます!」

今日は大事な来客があるのに、つい片付け始めると1つのことに集中し過ぎて時間を忘れてしまう。
手伝うと言ってくれた使用人にも、また後でと断りを入れるとつくしは客の待つリビングへと向かった。

「お久しぶりです〜!」
「あっ、花沢さ〜ん!!お招きありがとう。ケーキ買ってきたの。あとで食べましょ?」

相変わらずのテンションの高さで島崎が言うと、口を挟めない男性陣が苦笑しながら会釈する。

「うわぁ、ありがとうございます!木嶋さんも剛くんも来てくれてありがとうございます!っていうか、何でスーツ何ですか?」

つくしがケーキを覗き込んで目を輝かせると、島崎の後ろに立つ木嶋と佐藤にも声を掛けた。

「おいおい…後輩の家だけど、俺たちにとっちゃ上司…いや、社長の家みたいなもんなんだから、当たり前だろ?」

木嶋が言うと、佐藤も相変わらずの人懐っこい笑顔を浮かべて頷いた。

「あははっ、気を使うかなと思って類を追い出しておいて正解だったかな?」
「えっ!?ほんとに!?常務追い出されちゃったの?」

島崎が若干残念そうに口を尖らせるが、つくしとしてもこのメンバーだと確実に島崎に遊ばれることも分かっていてそうしたのだ。

「いやいや、追い出したっていうか。たまたま類の悪友たちが飲みの誘いに来てて、たまには外で飲んで来なよ〜って…」

花沢家ではどうやら夫よりも妻のほうが立場が強いらしいと木嶋と佐藤は思うが、何故か類の性格を熟知している島崎がニヤリと笑って言った。

「ふふっ、絶対すぐ帰ってくるに1票!」
「俺もそう思う」
「俺も思います…」

つくしは不思議そうに首を傾げる。
近くに立っていた佐原にジェスチャーで座ることを進められると、つくしはやっと立ち話していたことに気付く。

「あっ、すみません!気付かなくって…どうぞ!座ってください」

つくしがリビングのソファへと案内すると、木嶋も佐藤も腰を下ろした。
島崎はキョロキョロと部屋を見渡しつくしに言った。

「ありがとう…そういえば、蓮くんは?」
「居ますよ〜ちょっと今片付けしてたんで、向こうで遊んでるんですけど連れてきますね」

パタパタとつくしが走りながら、廊下の向こうの部屋へ消えると、入れ違いに佐原が4人分の紅茶と子ども用のマグをテーブルに置いた。

「ふふっ、つくし様はいつも走ってますね」
「会社でもそうだったもんな〜」
「確かにね…ぷっ!」

佐原の言葉につくしの人となりを知るメンバーは堪えきれずに笑い出す。
つくしが蓮を連れてリビングに戻ると、佐原を含めた4人が何故か笑っている。

「蓮…皆さんにご挨拶は?…ってどうかしました?」
「いや…家だともっと花沢常務の奥様してんのかと思ったら、会社と同じだなって話」

不思議そうに木嶋たちを見るつくしに、佐藤がフォローを入れた。

「性格はそう変えられないよ〜ほら、蓮…」
「こんちゃ〜」
「可愛い〜!もう歩いてるのね!こんにちは〜お姉ちゃんのこと覚えてるかしら?」
「お姉…?」

木嶋の呟きにすかさず島崎のパンチが飛ぶ。
相変わらずだとつくしは笑った。
会社に新入社員として入社した時からなんら変わらない態度が、つくしを安心させる。
島崎が蓮とおもちゃで遊んでいると、木嶋がつくしを手招きした。

「はい?」
「多分色んなもん貰ってるんだろうから、いらなかったら誰かにあげてくれて構わないんだけどな…これ」

そう言って木嶋がつくしに手渡した紙袋の中には、子ども用の靴が可愛くラッピングされていた。

「ええっ!いいんですか!?可愛い〜!ありがとうございます!あ、誕生日プレゼント?」

どんな物でも手に入る立場にありながら、一万円しない靴1つで本当に嬉しそうに笑う。
木嶋がプレゼントを渡したタイミングで、佐藤も鞄からラッピングされた包みを取り出した。

「うん…俺からはこれ。周りに子どもいる人いなくて、何選んでいいのか分からなかったから、島崎さんに相談に乗ってもらって靴下にしたよ」
「剛くんまでっ!うわぁありがとう〜!こういうのがいいよねぇやっぱり!」

花沢家倉庫の整理整頓にウンザリしていたつくしは、温かい気持ちのこもったプレゼントが本当に嬉しく感じた。

「花沢さ〜ん、私からはこれね!ほら、蓮くん楽しそう〜!」

つくしが木嶋と佐藤からのプレゼントを開けて見ていると、島崎と蓮がお皿や鍋におもちゃの野菜を入れて遊んでいた。

「あ、すご〜い!おままごとセット!?」
「男の子もね、おままごと大好きよ?私セレクトいいでしょう?」
「ほんとに!皆さんありがとうございます!蓮、ありがとうしよっか?」

「ありやと…」

蓮がペコッと頭を下げながら、一生懸命ありがとうと言おうとしている様子に、決して子ども好きというわけではない木嶋でさえも涙ぐみそうになってしまった。

「「可愛い!」」




蓮を佐原に預かってもらい、つくしたちがリビングで紅茶を飲みながら話をしていると、窓から類の乗るリムジンが戻ってくるのが見えた。

「あ、類帰って来た…」

つくしが言うと島崎が得意げにニヤリと笑うが、木嶋はため息を吐き天井を見上げた。
また揶揄われる羽目になるのだ。
玄関につくしが出迎えに行き類と2人リビングに戻ると、木嶋たちが立ち上がり頭を下げる。

「お邪魔してます」
「……うん…」

類はチラリと顔を向けるが大して興味もなさそうにソファに座る。
元々つくしが座っていた1人掛けソファに類が座った為に、つくしは3人掛けの木嶋の隣に座ろうとするが、手を引かれ類の座る場所へ倒れ込んでしまう。

「ちょっと…類…?」
「つくしはここ」
「ここって…みんないるんだからっ」

類がつくしを後ろから抱き込むように膝の上に座らせると、当然つくしは類の腕を外そうとする。

「だーめ」

類がつくしを離すわけはなく、ガッチリと抱え込まれてしまっては動くことも出来ない。

「花沢さん気にしないで!私たちなら慣れたから!」

周りに慣れたと言われても、恥ずかしさが消えるわけでもなく、つくしは頬を染めながら口を尖らせる。
それでも仕方なく身体の力を抜いて、類にされるがままになっているのだから、本当はつくしの日常としては慣れたものなのだろう。

「ほら…いいって?」

島崎は嬉しそうに類とつくしの様子を見るとニコニコと笑っていた。
三角関係にも四角関係にもなれずにヤキモキしている木嶋のことを島崎は面白がっている節があるし、一番は何よりこの夫婦のイチャイチャを見たいだけなのだろう。
島崎の性格をよく知る木嶋としては、勘弁してくれとため息を吐きたくなった。

「あ、類!蓮の誕生日プレゼント貰ったの!も〜あたしこういうのが一番嬉しいかも!」
「へぇ、どれ?…あぁ、つくし好きそうだね」

つくしが一度類の膝の上から降りるが、貰ったプレゼントを持って自然にまた膝の上に座り直すところを見ると、この夫婦は客がいようがいなかろうが、きっとこれが日常なのだ。
つい10秒前まで、嫌がっていたのは一体何だったのだろう。

「お礼になるか分からないけど、倉庫に置いてあるプレゼントこの人たちにも配れば?」
「あ、そうだね!島崎さん好きそうなの置いてあるし!」
「……?」

島崎たち3人は取引先から届いたという、倉庫を埋め尽くす蓮の誕生日プレゼントという名目で贈られた、ブランド食器や、バッグや洋服を持ち帰ることになる。

つくしが気持ちの全くこもっていない大量のプレゼントにほとほと困っていた様子で受け取ることにしたが、これでもやっと半分まで減ったのだと言う。
類も子どもの頃から毎年自分の誕生日はウンザリしていたらしいという話を聞くと、類に対してどこか羨望の想いを持っていた木嶋は、金持ちは金持ちで大変なこともあるのだと知った。



帰り道、花沢家のリムジンでの送迎を断り3人で駅までの道を歩く。
駅からは島崎とは逆の電車だった為に、木嶋は佐藤と2人何となく気まずい雰囲気でホームで電車を待っていた。

「木嶋さんは、つくしちゃんに伝えないんですか?」

唐突に佐藤が切り出した話に、さすがあの常務の前でつくしに友達になろうと言う勇気のある男だと思った。
惚けることも出来たが、木嶋も誰かに自分の想いを聞いて欲しかったのかもしれない。

「伝えない。またいつか一緒に働きたいし、いい先輩でもいたいからな」
「辛くないですか?」
「そう言うってことは…佐藤は告ったんだ?」
「伝えましたよ?気持ちを伝えられないでモヤモヤするの嫌ですし、返事はいらないから友達でいてくれ、なんてズルイこと言っちゃいました」

ペロッと舌を出しながらも悪怯れなく言う様子に、本社内では可愛いと評される外見だが、実は一癖も二癖もある男なのかもしれないと木嶋は思った。
佐藤がどんな男であれ、結果は変わらなかったであろうが。

「友人でいたって、今日みたいに見せつけられるのは変わらないですけどね」
「まぁな…つーかこんな話してたって島崎さんにバレたら、あの人喜ばせるだけだぞ」
「…ですね」

片想いの男と降った男の前で、旦那とイチャつくつくしが幸せそうで、そろそろ彼女でも作ろうかなと2人が思ったのは間違いない。


***

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3人の日常 14

3人の日常 14
ず◯様へ捧げますーーー。

***


風が冷たくコートとマフラーなしでは外に行くことも出来ない程に寒い季節となった。
朝起きると今にも外は雪が降るのではないかと思う程に、冷たい空気が顔を掠めるが、日中になるとポカポカと春のような暖かな日差しが降り注ぐ。

はるかといつか約束をしていた公園デビューを果たしたつくしであったが、寒空の中遊ぼうという子はいないのか、つくしたちが公園に着いた頃には誰もいなかった。
念のため、公園の出入り口2箇所に2名のSPが配置され、堀田はいつも通り蓮とつくしと共にいた。

これが、堀田がパパと間違われる理由でもあるのだが、つくしがSPとしての仕事のやり方に口を出せるはずもなく、このことが類にバレないようにと願うばかりだった。

まだ遊具で遊ばせるには幼すぎる蓮と洸は、公園内を暫く散策すると、砂場に落ち着いたようで、持って来たスコップで穴を掘ったりバケツにひたすら砂を入れたりしている。

「あ、やっと人来たね〜」

公園の入り口を何とは無しに見ていると、親子連れと思われる何組かのグループが公園にやってきた。
日が高くなってきたことで、やっと暖かさも感じる時間、つくしたちが着いたのは少しばかり早過ぎたようだ。

「さすが高級住宅街…。高そうな服で公園に来るんだね。私たちもしかして浮いてる?」

はるかの指摘通り、確かにグループで来た親子連れは、全員が誰でもよく知る有名ブランドのハンドバッグを持ち、高いヒールにスカートという出で立ちだった。
比べてつくしは、デニムにスニーカー、ダッフルコート、バッグは肩から下げられるショルダーにして着替えなどの荷物は車の中に置いてある。
はるかもつくしと同様の格好だった。

「うん…でも、いいんじゃない?どうせ帰りは砂埃で汚れるしさ」
「そうだね。ま、いいか」

蓮はよほど、砂遊びが楽しかったのか、つくしがおもちゃのジョウロに水を汲み泥で団子を作ると、本当に食べようとしてしまい、つくしとはるかが慌てて止める羽目になった。

キャーキャーと笑っていた声で、いつの間にかグループで来ていた子どもたちがつくしたちがいる砂場の周りでジッと見ていた。
しかし、いつまで経っても見ているだけで砂場に入ってこようとはしない為、チラリと母親たちの方へ視線を向けると、おしゃべりに夢中で子どもを見てはいない。

「やりたいの?こっち来る?」

つくしが、どうしようかと迷った末に子どもたちに話し掛けると、蓮たちよりも少し体の大きい子どもたちは小さく頷き、ピカピカに磨かれた革靴を恐る恐る砂場に入れた。
そして、1人が入ってしまえば恐怖心も消えるのか、1人2人と続けて砂場へ足を踏み入れる。
つくしたちが待って来ていた子ども用スコップやシャベルを渡すと、楽しそうに砂を掘り始めた。

「楽しい?ほら、こうやってね…」

つくしが、持って来ていたプリンのカップに濡れた砂をいっぱいに詰めてひっくり返すと、子どもたちは目を輝かせてプリンの形をした砂を見ている。
はるかも、ゼリーのカップやヨーグルトのカップで同じように作ると、子どもたちからもっととせがまれる。

「自分でやってみたら?はい、どうぞ」
「きゃ〜っ、あなたたちっ!何しているのっ!?」

つくしが空のカップを渡すと、背後から全身をブランドで身を包んだ母親たちが、叱責するように声を荒げた。

母親たちの声で、ビクッと体を大きく震わせた子どもたちは慌てたように砂場から飛び出した。
もしかして、とは思うが砂場遊びは母親から止められていたのかもしれない。

「あ〜っ!もう何て事!お洋服が汚れてるじゃないっ!!ちょっとあなたたち、うちの子に何てことさせてるのっ!!」
「うちの子もよ!買ったばかりの服に泥が付いてる!!」

子どもたちの服が汚れているのは、砂場遊びをさせたつくしたちにあると判断した母親たちは、矢継ぎ早に弁償しろだのクリーニング代を出せなどと喚いている。
確かに、勝手に砂遊びをさせたことは悪かったのかもしれないが、そもそも子どもたちが遊ぶ為の遊具が置いてある公園で、母親が子どもから目を離すとはどういう事だとつくしは思う。

「そもそも汚したくないのなら、公園にこんな格好させてくるのがいけないんじゃないの?それに、汚れたら洗えばいいだけじゃない」
「つ、つくしちゃん…」

心優しいはるかは、喧嘩沙汰などが苦手でいつも言われるがままに負けてしまう事が多かったという。
そんなはるかにとって、つくしの間違った事は嫌いだとハッキリ言えるところは憧れでもあるが、如何せんご近所といえばご近所である地域での事、つくしがこれから生活し難くなるのではないかと心配をしていた。

「はぁっ!?何ですって!あなた方がどちら様かは存じませんけど、この辺りの公園ではこれがマナーです!そんな小汚い格好で公園に来られる神経が可笑しいわ!」
「公園に来て子どもと遊んでいたら汚れるに決まってると思いますけど」
「生憎うちの子は今まで洋服を汚すような低俗な遊び方はしたことありませんの。平日の昼間に父親が公園に来ている時点で、この辺りには相応しくないのでは?」

母親の1人が堀田を父親だと勘違いするのは仕方のない事かもしれないが、平日休みの父親だって世の中にはたくさんいるはずで、母親たちはどんな小さな事でもつくしたちに因縁をつけたいだけなのかと思う。

「この人は父親じゃありません」
「父親じゃないなら何なのよ!愛人だとでも言うわけ?育ちの悪い方は愛人連れで公園にいらっしゃるのね?」
「つくし様…」

堀田も危険のない場合は黙って見守るスタンスを取っている為、あまり相手にするべきではないと思っているが、愛人説は自分からも否定しておいた方がいいかもしれないと口を挟む。
しかし、堀田の小さな呟きはつくしに届かなかったようで、大きな揉め事になる前に帰るしかないかと立ち上がりかけると、コツコツと近寄って来る足音があった。

「なに、愛人って?」

真っ昼間の母親たちが集まる公園に、明らかに似つかわしくない高級スーツに身を包んだ白皙の美青年が颯爽と現れる。

「パー!パー!」

蓮が嬉しそうに手を伸ばすと、革靴が汚れるのも厭わずに砂埃だらけの蓮を抱き上げた。

「蓮、ただいま。で、愛人って何?まさか堀田のこと?」
「類…何で!?」
「ん…?ちょっと仕事の合間につくしと蓮の顔見に来ただけ。で、愛人って?」
「ちょっと…勘違いされただけだよ」

つくしは堀田と顔を見合わせると、類はそれすらも面白くなさそうに、つくしを引き寄せた。

「正義感強いのは構わないけど、危ないことはしないでよ?…で、この人俺の奥さんだけど、あんたたちは何?」

類が、美貌に酔いしれポーっとなっている母親たちに視線を向けると、更に顔を赤くしながら先ほどの勢いはどこに行ったのかと思うほど、辿々しく答える。

「お、奥様…ですか?」
「あの…もしかして…花沢邸の…?」
「は、花沢邸って…あの?」

近所にこれだけの色男がいれば、奥様方の噂にならない筈もなく、3人とも花沢家の存在も類の顔も知っていたようだ。

「つくし…?何があったの?」

母親たちがまともに答えられる状況ないと、類はつくしに話すように促す。

「大したことじゃないよ…服が汚れたら洗濯したら?って話をしてただけ」

類がここまで突っ込んで聞いてくるのは、堀田が愛人に見られた理由を知りたいだけなのだろうが、納得いかないのか顎に手を当てて考えるポーズをとる。

「そっ、そうなんです!奥様に教えていただいてっ!!ねっ!?」
「そうそう!ご親切にして頂いて!」

今にも逃げ出しそうに腰が引けている母親たちは、その場から一歩二歩と下がるが子どもたちが空気を読んでくれる筈もなく地雷を踏むこととなった。

「お母さーん、あいじんってなぁに?」

「「「………」」」

親の話す言葉を子どもはよく聞いているものである。
つくしも言葉には気を付けようと思うが、今はそんなことよりも類の不機嫌そうな様子が気になる。

「いえっ、あの…そちらの方が…お、お父さまかと、勘違いしてしまいましてっ!」
「も、申し訳ございませんっ!」

愛人という言葉が悪かったのかと、言い方を変えて平謝りする母親たちに更に冷たい視線を向けると、類が一言。

「それ、つくしと堀田が夫婦に見えるってこと?」
「えっ、あ、あの…?」

どう答えていいかも、質問の意図も分からずに母親たちは立ち竦む。

「ふふふふっ…も、おかし〜!我慢出来ないっ!!」

シンとした空気を打ち破ったのは、口を挟まずに場を見守っていたはるかだった。
類とつくしを見て涙を浮かべながら笑っている。

「は、はるかちゃん?」
「も〜つくしちゃんのとこ、聞いてたとおりのラブラブっぷりなんだもん…あははっ!……あっ!すみませんっ!!」

類と堀田がはるかを凝視するように見ると、はるかはハッと口を押さえ気まずそうに慌てて謝った。

「も〜はるかちゃんってそんな笑い上戸だったっけ?」
「ご、ごめん…つくしちゃんから聞く花沢さんがそのまんまで、実際に見ると面白くなっちゃって…」
「ちょっ、ちょっと、ダメ…」

はるかの台詞に、つくしが慌ててはるかの口元を押さえるが、類の行動の方が素早かった。
つくしの手を押さえると、はるかに視線で続きを促す。
はるかはブンブンと首を振るつくしと類を見比べて、どうしようかと逡巡する。

「え…いいの?言っちゃうよ?…えっと…自分で付けたSPにもたまに嫉妬するんだよって嬉しそうに言ってた…んだよね?」
「ふうん」

類がつくしを押さえていた腕をするりと前に伸ばし髪にキスを落とす。
その表情はつくしだけに見せる甘く柔らかい微笑みだった。
他人から見たら赤面ものの行動でも、何故こうも美男子だとスマートに見えるのかと、マジマジとはるかが類とつくしに視線を送る。


そして、類の機嫌が直ったことにホッと肩をなで下ろす男が1名。
はるかの言葉がなければ、職を失っていたかもしれないと本気で思う程には、つくしと異なり類の嫉妬は堀田にとっては恐怖だった。
そして、いつの間にか公園にはつくしたちの姿しかなく、母親たちの姿は消えていた。


類が笑っていられるのは、そこにつくしからの愛情があるからなのだと改めて感じた1日である。


***

3人の日常は今後、不定期更新にさせて頂いて、新しい話へと取り掛かります!

***


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3人の日常 13

3人の日常 13



蓮が歩くようになるまではあっという間だった。
初めは壁につかまり、ヨチヨチと足を動かしていただけなのが、気が付けば壁から手を離し何度も転びながらも必死に自分で歩いている。
嬉しさ倍増であったが、その分目が離せない現状から大変さも倍増だ。


今日で蓮も1歳になる。
花沢邸で蓮のバースデーパーティーを開くというので、滅多に会えない花沢の両親にも声を掛けて内輪で楽しもうという計画をし、今日に至る。
バースデーパーティを計画したのはもちろんつくし…ではない。
花沢家では当たり前のパーティ、寧ろ内輪だけでというつくしが珍しいらしい。
初めは、政財界、経済界の名だたる方々に招待状を送ろうとしていた邸の人々を必死に止めたのもつくしだった。

それでも、噂はどこからか漏れるもので、誕生月の10月に入ってからは名前も聞いたことのない企業を始め、取引先から次々と蓮のプレゼントが届きつくしとしては辟易していた。



「つくし、みんな来たよ」

キッチンでシェフの手伝いとしていたつくしを類が呼びに来ると、ケーキの上にイチゴを並べる手伝いをしていたつくしが顔を上げた。

「つくし様、皆様のところへどうぞ。こちらは、大丈夫ですから。ありがとうございました」

シェフもつくしがキッチンに入ることに慣れたもので、初めこそ恐縮していたが、つくしが料理が好きだと話をしてからはたくさんの料理を教えてくれるようになった。
しかし、つくしとしても、花沢家シェフの仕事を奪うようなことはしたくないので、手伝いと趣味の範囲に止めている。

「はい!じゃあ、あとはお願いします!」

つくしがキッチンから出ると、玄関先にいる司たちと鉢合わせた。

「若奥様はなんでエプロン姿なんだ?」
「パーティだから、仮装じゃねぇか?」
「違うわよっ!キッチンで料理の手伝いしてたのっ!」

総二郎とあきらの冗談を間に受けて、いちいち答えを返すのだから揶揄いがいかあるのも頷ける。

「蓮の誕生日プレゼント、ここには持って来れないから、写真だけ見せてやる」
「持って来れない?写真だけ?」

司の言葉につくしの頭には疑問符だらけであったが、嫌な予感しかせず、きっとそれは当たっているのだろうと思う。
予め、彼らにはプレゼントの話が出た際、余りに…余りに…な物を買ってこられると困るので、つくしからリクエストしていたのだ。

確かつくしがリクエストしたのは、一畳ほどの大きさのプラスチックで出来たプレイハウス。
つくしにとっては1歳児には高すぎる価格74,000円の物だったのだが、余りに安過ぎる物では彼らの経済力を鑑みると他の物も付けられそうで怖く、ネットで見つけた最高価格の物を選んだ…つもりだった。

「大変だったんだからな。ここから、そこそこ近い土地買ってよ。最高級の尾州檜だけで建てたんだぜ!ほらっ!」
「はっ?」

司がつくしの眼前に出した携帯の画面には、元のつくしが住んでいたアパートよりも遥かに広そうな庭付きの木造一軒家
が映し出されていた。

「な、なにこれ…まさか」
「蓮のプレイハウスだろ?ちゃんとお前の言うとおり予算も守ったしな」
「こんなのが74,000円で買えるわけないでしょ!?」
「お前メールで74,000千円って言ってただろ!?」
「なっ、ななせんよんひゃくまん!?そんな訳ないでしょ!!」

司が額に青筋を立てながら、つくしが送ったメールを開く。
メールの文面につくしの間違いはなく、プレイハウス 74,000円とメーカーまで指定して書いてあるのだ。

「0が3つ多いのっ!!」
「家が74,000円で買えるわけないだろ!」
「牧野が、蓮が遊ぶ用の家を欲しがってるって言うから、3人で選んだのにな…まさか怒られるとは…お兄さんたちは悲しいよ」

総二郎までもが、司の見方をするようにポンとつくしの肩に手を置いた。

「お、怒ってるわけじゃ、ないけど…。だって1歳の子に家一軒って…」
「いいじゃん。おまえらの子どもが増えてもいいように、ベビーベッドと子供部屋5つ作っといたぞ」

あきらも司や総二郎をフォローするような言葉をかける。
黙ってことの成り行きを見守っていた類が、司の携帯をヒョイと覗き見る。

「ふうん、いいんじゃない?ありがと」
「る、類っ!?」

類の言葉を受けて、総二郎とあきらがニヤリと笑うのは司以外の3人が、多分類を含めて確信犯であったに違いないからだ。


この人たちの金銭感覚には、一生付いていけないっ!!!


***


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3人の日常 12

3人の日常 12


蓮と洸はまだ一緒に遊ぶ、とはいかないまでもどことなくお互いの存在を認識していて、片方が遊んでいるおもちゃを欲しがったり、互いの手や足を触れてみたりしていた。

そして、つくしたちが食事を楽しんでいる間泣くこともなく、スタッフに構ってもらったりと終始ご機嫌だった。

「美味しかったね〜!あ、そろそろこの子たちにもご飯あげないと…」
「そうだね、もうこんな時間だ」

大体10時と14時を離乳食の時間にしていた2人は、預けたマザーズバックを持ってきてもらおうとスタッフを呼んだ。

「お子様たちの食事でしたらこちらでご用意させていただきますので、ご安心ください。今お持ちしますね」
「あ、ありがとうございます」
「しかし、花沢家凄い…ここのサービスでも分かるけど。つくしちゃんのご主人が如何に凄い人かってことが伺えるよね」
「うん…会社を継ぐために子どもの頃から教育されてきたんだもんね。でも…蓮は大丈夫かな…ってちょっと心配なんだ」

蓮の英才教育は、6ヶ月を過ぎたあたりに遊びを取り入れた英語から始まった。
つくしも家庭教師の先生について、同じ部屋で見ているが、今はまだ遊びと変わらない教育で蓮も楽しそうだった。
しかし、花沢の家に産まれた宿命とも言える仕方のないことではあるが、もし蓮が習いごとは嫌だと、花沢の家など継ぎたくないと言えばどうなるのだろうかという心配がある。
つくしとしては、嫌なら自分の好きなことをすればいいと言ってあげたいところだが、類はどうだろう。

「うちは、つくしちゃんち程じゃないけど…旦那はやっぱり小さい頃から習い事はたくさんさせるのが当たり前だと思ってる」
「そっか…はるかちゃんはどう思う?」
「私は…仕方ない、というよりかは、色々な経験をさせてもらえてるって考えるようにしてる。向いてなかったら止めればいいし、向いてそうと思ったことはまた始めればいい。それだけのことが出来る環境にあるのは、幸せなことだと思ってる」

確かに、はるかの言う通りだ。
牧野家でずっと過ごしていたならば、そもそも英語もフランス語もテーブルマナーも習うことなどない、どころか習うことなど出来ない。
つくしは周りの友人の助けがあり、習得することが出来た様々なことを、大抵の人は自分の意思で将来のことを考えるようになってから始めるのだ。
そして、それは一朝一夕で身につくものではない。
かなりの努力とお金が必要だ。

「そうだね…小さい頃からたくさんの経験をさせてあげられるのは幸せなことだね」
「自分の子どもの頃とあまりに違うから、洸が羨ましいくらいだよ」
「ほんとだっ!あたしも英語、フランス語…苦労したもんなぁ」
「つくしちゃん、このあと時間まだ平気?子どもたちにご飯あげたら少しブラブラしない?」
「うん!行こう〜食べ過ぎちゃったしね〜」





リムジンを降りてすぐ店に入った為に、はるかは堀田たちSPの存在に全く気付いていなかったらしい。
つくしが改めて紹介すると、驚いたようにはるかも頭を下げた。

「SPか〜。やっぱりつくしちゃんちって凄いんだね〜どこに行くにも一緒なの?」
「うん。あたしは元々SP付けて歩くような身分じゃないけどさ…蓮に何かあったらと思うとね、堀田さんたちがいてくれるから安心だよ」

はるかの家もそれなりに大きな会社を経営しているはずだが、花沢の家とどの程度の差があるのかはつくしには分からない、というよりそんなことで友人付き合いをしているわけではないのだから、はるかが言わない限りはつくしからも聞くことはなかった。

「そうだね…誘拐とかあったら、と思うとね。でもずっと付いててくれるなら安心して出掛けられるね!ね、また誘っていい?」
「もちろん、2人が歩けるようになったら公園とか行こっか!」
「うん!いいね!」

時間も時間なだけにそれほど、長い時間はるかと散歩出来た訳ではないが、蓮も洸も遊んで満腹になりベビーカーの振動でウトウトし始める。

「ふふっ、2人とも可愛い」
「ね、ほんと可愛い〜。あ、もう少し歩いたら帰る?」

乳幼児連れで長時間の外出は子どもたちも疲れさせてしまうかもしれないと、つくしは腕時計に目をやり帰ろうかと口に出した。

「そうだね…ちょうどお昼寝の時間だしね」

来た道とは違う道を通って、元の店の前に出ると、既にリムジンが停まっていた。
帰りはスヤスヤと眠る子どもたちの為に、つくしもはるかも声を潜めて話をしながら、楽しい時間はあっという間に終わりを告げた。




つくしは邸に着くと、類の帰りを待ちながら、蓮の世話に忙しい。
もちろん、邸にはたくさんの人が働いているのだから、頼めば風呂も着替えも手伝ってくれるだろう。
しかし、つくしには自分でやらない理由はなかったし、類もそれが分かっているから手伝ってくれるのだ。

お座りも出来るようになった蓮と一緒にお風呂に入っていると、扉をノックする音が聞こえた。
まずこの部屋に無断で入ってくる者などいない為、部屋に備え付けてあるバスルームをノック出来るのは類しかいない。

「つくし、俺。蓮終わったら受け取るよ」

結婚して5年も経つというのに裸の状態で類に声をかけられると心臓がドキッと音を立て、思わず身体を隠すバスタオルを手に取る。

「る、類、お帰りなさい。ありがと…ちょっと待って…」

バスルームの中でバタバタと慌てている様子が、外にいる類にも伝わっているとは思うが、致し方ない。

「あのね…何回見てると思ってるの?」
「あ、開けちゃダメっ!」

ダメと言われて開けないはずがない。
ガチャリとドアが開くと、つくしも蓮も泡だらけの状態で、広いバスルームの中で縮こまっていた。
きっと、バスタオルを手に取ったものの身体が泡だらけであることに気付き、お湯で洗い流そうとしたところであったのだろう。

「つくし…誘ってるんじゃないなら、普通にしてて」
「誘ってないっ!はい、蓮よろしく!」

類は笑いを堪えつつ、了解と蓮を受け取った。

「ただいま」

類は、蓮をバスタオルにしっかり包むと、つくしを引き寄せ唇を合わせることも忘れない。

「お帰りなさい」





「今日ね、はるかちゃんとランチしたの。佐原さんに教えてもらったお店行ったんだよ」

いつもの2人きりの時間、蓮を佐原に預けて夕食を摂りながら、つくしは今日の出来事を類に話した。

「ああ、もしかして表参道の?」

類が驚いたようにつくしを見るのは、格式高いお店のイメージが類にもあるからだろう。
今では慣れたとはいえ、つくしが自分から行くような店ではないが、佐原の名前が出たことで納得する。
花沢家が贔屓にしていた店であった為に、佐原から類にも何度か話があったからだ。

「うん。今度は類と来ますって言っちゃった。類にとっては小さい頃の思い出がたくさん詰まったお店なんじゃない?」
「そうなの、かな?あんまり覚えてないけどね」

口調とは裏腹に懐かしく何かを思い出している表情ぐらいは、つくしにだって読み取れる。

「いいお店だったよ。蓮を見て、多分類の子どもの頃思い出したんじゃないかなぁ〜。類見たら支配人泣いちゃうよ」
「泣かないと思うけど…今度は一緒に行こうか」

あまり表情を変える類ではないが、それでも少し寂しそうに笑う。
それは、子供心に仕事に忙しい両親のことを案じ、数少ない家族での思い出の場所を思い浮かべたからなのか…つくしには計り知れない。


いつか、類の子どもの頃の話もちゃんと話してもらえるかなーーー。


***


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3人の日常 11

3人の日常 11



「つくしちゃん!久しぶり!車ありがとう〜」

柳瀬邸へと車を回し、はるかと一緒に店へ向かうことになっていた。
久しぶりに会うはるかは、当たり前だが臨月の印象とはガラリと変わり、元来のプロポーションを取り戻したようだ。
しかし、つくしにとっては、臨月のイメージが強く残っていた為に些か驚きを隠せなかったのだが、それははるかにとっても同じだったようで、久しぶりと挨拶をした後の言葉は互いに″痩せたね″だった。

「洸のチャイルドシートも用意してくれたんだ?ありがとう〜」
「うん!当然!ってあたしが用意したわけじゃないんだけどね。こー君乗せて、はるかちゃんこっち」

つくしはそこまで頭が回らずに、朝になってはるかの息子である洸のチャイルドシートをどうしようと慌てていたが、その時にはつくし付きの運転手田中の手によって、既にチャイルドシートが取り付けられていた。

「今日、予約してくれた店って子連れでも大丈夫なの?」
「うん、そうみたい。あたしも行ったことないし、場所も知らないんだけどね」
「そうなんだ〜。乳幼児連れてレストランってファミレスぐらいしか思いつかない〜。泣いちゃったら…とか思うと家で食べる方が楽になっちゃった」

はるかは、元庶民と言うだけあって感覚がつくしとほぼ同じであり、取り繕うことなく話せる数少ない友人の1人となっていた。
ファミレスぐらいと言うはるかの家も、周りの目を気にするならばレストランを貸切にすることなど造作もないこと、のはずで、きっと洸を連れて家族で食事に行く時は貸切もしくは個室なのだろうと思う。
しかし、つくしと同様で生まれ持った庶民性はなかなか消えるものではないのだ。

「あたしもだよ。格式高いところより行きやすいしね」
「ふふっ、そうそう」

子どもを持つ母親同士、話は尽きないが邸からそう遠くない場所でリムジンは止まった。

「つくし様…こちらの店でございます」

着いた場所はフランスの国旗が掲げられているところから見て、フレンチレストランのようだ。
しかし、店名が分かるような看板は出ておらず、言われなければお金持ちのフランス人の家といった外装だ。

「ここ…ですか…」

互いに子どもを抱っこし店の前で呆然と佇む。
明らかに格式高い雰囲気に子連れで本当に大丈夫かと、つくしとはるかの中に不安が過った。

「と、取り敢えず…行こっか…」
「う、うん…」

まるでヨーロッパの城のような石で出来た門を潜ると、重厚な木のドアがドアマンによって開けられる。

「花沢様、ご予約ありがとうございます。お待ちしておりました」

店内に足を踏み入れると、胸元に光るバッジにDirectorと書かれた日本のレストランで言うところの支配人が頭を下げた。

「え、あ、はいっ!…あの…ここ、本当に子連れで大丈夫ですか?」

やはり店内もそう気軽に子連れで来られるような雰囲気ではなく、蓮を抱っこしていることで子連れなのは一目瞭然であるが、それでも聞いてしまったのは仕方のないことだろう。

「もちろんでございます。それに本日は貸切とさせていただきましたので、どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ」
「は、はい!ありがとうございます」

支配人の後につくしとはるかが続き、店の奥へと入っていくと、あまりの内装とミスマッチのその光景に開いた口が塞がらない。

「これ、あたしたちの為に?」
「凄いね…」

席に案内されると、多分幾つものテーブルが置かれていたのだろうと思われる広いスペースには、子ども用のクッションマットが敷かれ、おもちゃが置かれていた。
その他に昼寝用のベビーラックまでもが揃っているところを見ると驚くのも当然と言える。

「こちらは、類様がまだ幼い頃にご夫妻が類様を連れてよくいらっしゃっていたんです。とてもご贔屓にしていただきました。今回は、ご予約を佐原様より頂いた際に、奥様にお子様が産まれたことを聞きましてご用意させて頂きました」

支配人が不思議そうにその光景を眺めるつくしに、感慨深い思いを語るように理由を話した。

「そうだったんですか…そんな思い出のある場所に来ちゃって良かったのかな…」

類は、子どもの頃家族と過ごした思い出は殆どないと言っていた。
その数少ない思い出の地に自分が来ても良かったのだろうかと、佐原の意図が読み取れずにつくしは困惑していた。

「勿論です。若奥様はあまりこういった店を好まれない、ということは佐原様も仰っておりましたが、私共はいつか類様にもお子様が産まれたらとずっと楽しみにしておりました」

佐原と同じぐらいの歳だろうか、シワの刻まれた支配人の目元には、光るものがあった。
最近ではだいぶ慣れたものであったが、それでも寛ぐとはいかない格式高い店を苦手とするつくしに、どうか懇意にして欲しいという佐原の願いが込められているような気がした。

「今度は…類も一緒に来ますね」
「是非、お待ちしております」


***


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