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いつか好きだと言って 17最終話

いつか好きだと言って 17最終話



朝学校に着くと、つくしは類がいつもF3たちといるカフェテリアへと向かった。
ホームルームの始まる時間までにと、そう余裕があるわけではない。

勉強をしに学園に来ているわけではない彼らは、一体朝早くから何をしに来ているんだろうとつくしは不思議に思っていたが、つい先日その謎がやっと解けたのである。

つくしがいつもの非常階段へ行くと、類が眠そうに船を漕いで壁にもたれていた。
学校に来ても昼寝ばかりしているなら邸で休んだらいいのにと寝ている類に声を掛けると、邸に帰ったら休ませてはもらえないから学校に来て休んでるんだよ俺たちは、とつくしに言ったのだ。

そう言えば、つくしに会うために寝る時間を削って仕事をしていたのだと聞いたばかりで、類の答えは重責を背負う運命の彼らの立場を思い出すには十分で、つくしとしては複雑な思いであった。


一流レストラン並みのメニューがショーケースに並ぶ英徳学園のカフェテリア。
2階席とは言っても、そこは一般の生徒が足を踏み入れていい場所ではない。
誰が言ったのか、誰が決めたのかは知らないが、2階席全てがF4ラウンジとして利用されF4の許可があるもののみ入ることが許されるらしい。

朝からカフェテリアにいるのは彼らぐらいで、誰にも見られずに済みそうだとつくしは螺旋階段を上った。

「牧野!」

階段を上がってくるつくしが見えていたのか、中央に位置するテーブルから類が片手を上げつくしを呼んだ。

「類、おはよ……あ、あの〜」

類に笑いかけると、恐る恐るつくしは司に話し掛けた。

「あ…?なんだよ」
「あのっ、このあいだはありがとっ!はい、これ!!」

そもそも、はなから司に用事があってカフェテリアを訪れたのだ。
しかし司を前にして半端ない威圧感にたじろぐあまり、年上に対して敬語で話すことすら忘れてしまった。

「牧野?何それ?」
「え、あ〜、お弁当。あたしの思い付くお礼ってこういうのしかないもん」

途端に機嫌が悪くなったのは類で、確かに司に対して迷惑をかけたことでお礼を言いたいからと言ってはいたが、弁当まで渡すとは聞いていない。

「ふっ…」

司が類とつくしを交互に見て鼻で笑うと、類の機嫌は益々下降する一方だ。

「司にそんなの渡さなくていいよ。いつもそういうの貰っても食べないし」

類の言葉は嘘で、司に対してお弁当を手渡し出来る強者などこの学園にはいないことが事実であった。
しかし、もし貰ったりしても食べないだろうことはF3共通の認識として間違ってはいない。

「あ、そうなんだ。……じゃあ類も食べないよね。お昼一緒にって思って類のもお弁当作って来たんだけど…」

つくしはあからさまにがっかりした様子で、類を上目遣いに見る。
そんな2人の様子を面白そうに見守る3人の男たち。

「俺が食べるから、司にはあげなくていい…。ほら、牧野行こ。授業始まるよ」
「いや、俺も貰っとく。お礼、なんだろ?」

司の言葉に類の目が鋭く光るが、つくしには見せたくない表情であったのか、一瞬でいつもの優しげな顔に戻った。

「う、うん。ご迷惑お掛けしました」

つくしは頭を下げると、類に引き摺られるようにカフェテリアを後にした。

「あいつ、初恋かっての。たかだか弁当で嫉妬って、な」
「司…おまえマジで食うの?それ」





「る、類っ?どこに行くの?」

授業が始まるから…と言ったはずの男は、つくしの手を引いたまま無言で校内を歩いて行く。
2人のデート場所とも言える非常階段のドアを開けると、後手にドアを閉めた。

「類…?どうしたの?」
「あいつらに愛想振りまかなくていいから」

つくしを腕の中に強く抱き締めると、不思議そうに類を見ていたつくしも類に身を任せた。

「愛想って…」
「俺以外に笑わないで、俺以外に話しかけないで…って言ったら引く?」

類と身体の関係になっても、じゃあ恋人になりましょうというわけではなかった。
多分、類はつくしからの言葉を待っているのだろうと思う。
答えはとっくに出ているのだが、そのタイミングが掴めないまま1週間が過ぎてしまったのだ。

「引くわけないでしょ…っん、ふっ」

唇を塞がれると、いとも簡単につくしを陥落させる。
あれから、何度もキスはした。
学園や帰りの車の中で、互いに気持ちが昂っているのが分かるのに、類はそれ以上の行為はしなかった。
一度快感を知ってしまった身体は容易くキスだけで反応を示し、類もそれに気付いているはずなのに。

これじゃ、あたし淫乱みたい……。

「ん、ん…っ、はぁっ…ん」

つくしは背筋を這い上がってくるゾクリとした感覚に身震いすると、堪らずに類の腕をギュッと掴むが唇は呆気なく離された。
名残惜しそうに潤んで熱を帯びた目を類に向けると、予想外に真剣な目を向けられる。

「好きだよ。もう何度も言ってる…いい加減、俺のこと好きだって認めなよ」
「う……」
「もう、ずっと俺しか見てないって…」

類に気持ちを伝えるなら今だと言葉を紡ごうとするが、何と言っていいかも分からずに類を見つめたまま口をパクパクとさせた。

「仕方ないな…まぁ、いいや。いつか、ね」

類は抱き締めたつくしの顎を上に向けゆっくりと顔を近付けると、つくしもキスの予感の期待からそっと目を閉じた。

類とのキスは好き。
いつも翻弄されてわけ分からなくなってしまうけれど、物欲しそうに自分の唇をなぞってしまうことがあるほどに。

しかし、いつまで経っても降りてこない唇につくしが不審げに目を開けると、類が薄く笑い、自身の唇に人差し指で触れる。
その仕草があまりに自信に満ち溢れていて、つくしの気持ちは言わずとも知れていることに気付いた。

「……っ」
「好きだって言って」

じゃないとキスしないよ?

類の瞳はそう言っているが、言葉にしてしまえば、溢れ出して止まらなくなりそうで怖い。
しかし、それよりも今目の前にいる愛しい人に触れたくて、堪らずにつくしは口を開いた。

「す…好き……かも…」

類は次の瞬間嬉しそうに笑い、つくしの唇を深く塞いだ。



司は邸に戻る車の中で、弁当の蓋を開けると見たこともない食材が小さな箱の中に所狭しと並んでいた。
物珍しそうにそれらを見ると、綺麗な所作でその1つを口に含む。

「なんだ、これ…クソまじぃ…ふん」

そう言いながらも何1つ残すことなく全て食べ終わり、元どおりに弁当の入っていた袋へと戻す。
司には到底似つかわしくないファンシーな弁当袋を大事そうに持つと、司はフッと唇の端を上げ類に笑いかけていた女の顔を思い出した。


fin

皆様応援ありがとうございました。
このお話を書いている時、本当に色々とありましたが書くことがストレス発散にもなりほぼ毎日更新頑張れました〜!
次のお話はaround30というタイトルです。
こちらはリクエスト作品ですが、設定考えてたら楽しくなっちゃって、またいらんこと盛り込みそうです∑(゚Д゚)


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いつか好きだと言って 16R

いつか好きだと言って 16R


類がベッドに横になったまま手を取ると、つくしはピクリと手を震わせ、類の手をキュッと握り返した。

「心配してくれたんだ?」
「そ、そりゃするよ!突然、来なくなるし…」

静のこともメールでただの友人だと知り、やはり類の口から直接聞きたかったこともあるのだが、それよりもつくしが類にただ会いたかっただけかもしれない。

「寂しかった?」
「………ん」

つくしは頬を染め小さく頷くと、握ったままの類の手を離そうとするが、逆に引き寄せられてしまう。

「ぶっ…あんた顔、真っ赤…ははっ」
「もうっ、熱あるんでしょ…喋らなくていいからちゃんと寝てて」
「寒い…一緒に寝て」

類が掛け布団を捲りベッドをトントンと叩くと、つくしが驚いたように類を見た。

「え…」
「嘘だよ」

そこまで上手くいくはずはないかと、捲った布団を元に戻そうとするが、つくしが類の隣にゴソゴソと入ってくる。

「牧野…襲うよ…?」
「熱でグッタリしてる人になら勝てるから大丈夫」

つくしが横を向く類の胸にコツンと額をくっ付けると、類がつくしの首の下に腕を入れ包み込むようにつくしを抱き締めた。

「これって拷問なんだけど…」

互いの香りが近くに感じられるほどの距離に、絡ませた足の間から類の熱が伝わる。
モゾモゾとつくしが足を動かすと、類の身体がピクリと動いた。

「牧野…頼むからあんまり刺激しないで?ほんとに襲われたくないでしょ?」

類にとっては会えなかった3日分、男としての色々な事情があるのだ。
しかも調子の戻った身体の欲するものは1つで、腕の中につくしがいるだけで心臓が大きい音を立て触れられた場所が熱を帯びる。

「お、襲って…いいよ…」

つくしが隠すように類の胸に顔を埋めるが、耳まで真っ赤に染まっていて胸に置かれた手も少し震えていた。

「ったく…俺があんたのことどんなに抱きたいか分かって言ってる?止められないよ」

類はちょっと待っててとつくしをベッドに残すと、シャワールームへ入って行った。
その間ポツンと残されたつくしはどうしていいかも分からずに、自身で言った言葉の恥ずかしさもあり帰ってしまおうかと悩んでいるうちに、まさに烏の行水で5分も経たずに類がシャワールームから出てきた。

「帰ってるかも…って五分五分だったんだけど…」

頭をタオルで拭きながら、バスローブを着た状態で類がベッドに近付くと、つくしが真っ赤な顔でベッドに座り込んでいた。

「な、なんで、あたしの考えてること分かるの?」
「さぁ、なんでだろ…脱がしていい?」
「シャ、シャワーとかっ…」
「あとでね」

つくしの返事を待たずに、制服のリボンを外しシャツのボタンを1つずつ外していく。
震えているのは空調の効いた部屋のせいではないだろう。

「多分…優しく出来る」
「なっ、なに多分って!もう…」

類が真面目な顔で言った言葉が、つくしのツボをついたのかぷっと吹き出すと、緊張が取れて肩から力が抜けた。

「俺だって、そんな余裕あるわけないでしょ…ほら」

類は胸の真ん中につくしの手を当てると、そこは同じくらいドクンドクンと音を立てていた。
つくしのシャツとブラジャーをベッドの下に落とすと、まだ窓からの入る日差しだけで十分に互いの素肌の色さえもハッキリと見えてしまう時間で、つくしは恥ずかしそうに手で胸元を隠した。
類もバスローブを脱ぎながら、つくしと唇を深く合わせていく。

「ふっ…ぅん…んっ」

つくしが羞恥心で我に返らないようにキスだけで快感を引き出し、その隙にスカートのホックを外し足から引き抜いた。
舌で歯列をなぞると、おずおずとつくしも舌を絡ませてくる。
覆い被さる類の唾液がつくしの口内に流れるとコクリと音を立てて自然に飲み込む。
それでも飲み込みきれなかったものが、口の端から流れ出ると顎を伝い首筋を濡らした。
類は流れ出た唾液をすくい取るように、首筋を舌で愛撫すると、類の背中に回るつくしの手が震えた。

「あっ…ん…はぁ…」
「首、気持ちいい?」

類が聞くと恥ずかしそうにフルフルと首を振るが、類が舌を這わせる度に抑えることが出来ない切ない喘ぎ声がとめどなくつくしの口から漏れ聞こえる。

「んっ、あぁ…ん…っ」

涙が溢れそうに潤んだつくしの瞳は、今まで見たことがない程女の色香を放っていた。
頬はピンク色に染まり、形の良い胸の先端はピンと尖って類を誘う。
類が顔を上げても胸元を隠す余裕すらないのか、くったりと身体から力が抜けていた。

「る…い」
「ん?」
「他の誰かと…比べたり、しないで…ね」

一瞬、つくしの言う意味が理解出来なかったが、すぐにその理由に思い当たる。
しかし、まさかそこまでつくしを不安にさせていたとは思いもしなかった。

「比べる人がいないよ…。言ったじゃん、多分って。したことあるなら、男ってもうちょっと余裕あるんじゃない?」

類はつくしの首に埋めていた顔を上げて言うと、つくしを見る。

「う…嘘…だって慣れてる」
「酔っ払って寝てるあんたに色々したからかな?」
「え、え、えええっ!?……んん〜っ」

つくしの瞳が驚きで見開かれるが、類に恨み言を言う前に唇を塞がれた。
再びつくしの手が類の背中に回ると、類の胸にあたるツンと尖った先端を指で撫でる。

「あっ、あぁっ…ん…」

唇を口から首へ、更に下の鎖骨へと舌で道筋を辿り胸の先端を口に含む。
舌で円を描くように舐めると、あまりの快感につくしは声を抑えることが出来ない。

「んんっ、あ、あっ…はぁっ…ん」
「そのうち、ココだけでイけそうだね」

類の言葉にも反応出来ない程に息を荒くしたつくしは、頬を真っ赤に染めてイヤイヤとかぶりを振った。
類も余裕がないことは、つくしの足に当たる熱から伺えるが初心者のつくしにそれが分かるはずもなく、ただされるがままになるしかなかった。

類の手がショーツの隙間から敏感な部分を探ると、つくしはピクリと身体を震わせた。
指がヌチュヌチュと音を立ててつくしの内部を蠢くが、指の速さと背筋を這い上がるようにやってくる快感につくしが根を上げた。

「あぁん、あっ、はぁっ、あ…もっ…類…っ、ダメ…っ」
「ごめん、優しく出来ないかも…っ」

つくしが息も荒く類を見ると、つくしに快感を与えているはずの類もまた荒く息を吐き出していた。
初めての行為に恐ろしさを感じていた筈なのに、つくしは類が自分を欲してくれていることに喜びを感じた。

類はつくしのショーツを脱がすと、指を二本に増やし大きくかき回す。

「あぁぁっ…はっ、ん…類…も我慢しな…で」
「痛かったらごめんね」

すでに限界だったのだろう、つくしの足を大きく開かせると十分に濡れた秘部に固くなった性器を押し当て、腰を奥に進めた。
 
「あぁぁっ!い…っ、はぁっ…はぁ…」

ズブッと音を立てて秘部に挿れると、つくしが痛みに顔を顰めた。
類は舌と指で胸の膨らみを愛撫し、痛みを徐々に快感へと変えていく。

「まだ痛い…?」
「はぁっ、ん…わかっ…ない」

先端を舌で吸うたびに繋がった秘部からトロリと愛液が溢れ出し、類を中へと誘うように蠢くと、もう大丈夫かと類はようやく腰をゆっくりと動かす。

ヌチュ…ヌチュ…

「あぁっ、ん、あっ、あっ、類っ…な、んか気持ちい…っ」
「ん…っ、俺も」

類が動く度にポタリと汗がつくしの胸に落ちる。

なんて綺麗なんだろうと思うーーー。

あまり日に焼けない肌は白くはあったが病的ではなく、筋肉のついた腕や胸の均整の取れた類の身体に思わず見惚れてしまう。
類のこんな顔を誰も見たことがない…そのことがつくしにより一層喜びを与えてくれた。

類の性器が奥深くを抉るように入ってくると、つくしの秘部が痙攣を始める。

「な、んか…っ、変…っ…あぁっ」
「イキそう?」
「んんっ、あっ、それ…気持ちい…んんんっーーー!」
「……っ」

大きく開いた足がビクビクと震え、つくしの背中が弓なりにしなると、痙攣していた結合部がキツく締まり、類はあまりの快感に性器を引き出すとお腹の上に欲望を吐き出した。

グッタリとベッドに深く身体を沈めるつくしに体重をかけないように、類は腕をついて身体を支える。
互いに荒い息を整えると、軽くキスをした。
ベトついた身体をタオルで拭い、類は後ろからつくしを抱き締める。





「分かった?静とはそもそも付き合ってないから」

類の腕枕で裸のまま身体を合わせた余韻に浸ると、優しく髪を撫でながら真剣な目を向けられる。

「うん…」

小池と帰ったその日、類は眩暈がして動くこともできず仕方なしに運転手を呼ぶと邸に戻ったらしい。
それはメールに書いてあり、そのあとに静のこともただの幼馴染みだからと添えてあった。

「じゃあ、そろそろ俺が牧野のこと好きだって言うのも信じてよ」
「うん…。え、ちょっと、類?」

つくしの身体を反転させると、背中側から足を開かせ太ももを撫でる。
つい先ほど男性の興奮状態のモノをしっかりと見てしまったつくしには、太ももに当たる類の感触で何を求めているかは明白だった。

「ん?2回目は、もっと気持ちいいよ…ほら、まだ濡れてるし」

類は指をチュプリと沈めると中をグルリとかき回しすぐに引き抜いた。
代わりに後ろから、熱く大きくなった類の性器を挿れられる。

「あぁっ…あ、ん…深す、ぎっ」

つくしは枕に必死にしがみつくと、類に腰をより高く持ち上げられた。

ズプッ…グチュ…グチュ…

1度目よりも響く濡れた音と腰を激しく打ち付けるパンパンという音が、つくしの羞恥心を煽る。

「入ってるとこ…丸見え」
「やぁ…っ、恥ずかし…よ」



つくしが目を覚ますとカーテンから入る自然光がなくなり、室内はオレンジ色の温かい光に包まれていた。
何時間こうしていたのだろうか、つくしは類の腕の中で気持ちのいい眠りを貪っていた。

初めてバイトサボっちゃったな……。


***


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いつか好きだと言って 15

いつか好きだと言って 15
類くんとつくしちゃんの出会いから入ります(*^^*)徐々にラブラブになりますよ〜お待たせしました




恋に落ちるのって、こんなに簡単なことなんだって知らなかったんだーーー。


類がいつもどおりに非常階段のドアを開けると、自分の特等席とも言える場所に知らない女が寝ていた。
しかも今日は暖かい天気も良い日で、気持ちよさそうにスースーと寝息を立てて眠っている。
それに若干イラっとしながらも、女が起きても面倒だと開けたばかりのドアから出て行こうと踵を返すが、女がうーんと唸り声を上げた。
起きたかとチラリと後ろを振り返るが、女の目は閉じられている。

「お腹空いた〜ご飯がお腹いっぱい食べたいよ…」
「ぶっ…!」

類は女のあまりに現実離れした寝言に堪らずに吹き出すと、笑い声をあげそうな自分を何とか抑え、肩を震わせながら来た道を戻る。

この時代に満足に食事が出来ない人間がいるのか?
しかもこの英徳学園に?

変な女…そう思ったのが始まりだった。
今考えれば運命とか言えないが、類が非常階段に行くタイミングで必ずと言っていい程その女はいるのだ。

しかもいつも寝ている。

何度もそういった偶然が重なると、徐々に類も遠慮がなくなり寝ている女の横で過ごすことが苦痛でなくなってしまった。
本を読んだり、時には自身もうつらうつらすることもあった。

しかし、女が起きれば類にとって幻滅する結果になると分かっていた。
大抵の女は、類の前では猫を被ったようにおとなしく女性らしくあることを演出し、本心がどこにあるのかなど全く分からない。
そうするのは、自身のバックグラウンドとこの顔にあることは一目瞭然で、もう見慣れたその光景にウンザリしていた。

その日は、珍しく非常階段に女は来ていなかった。
偶然もここまでかと、大してガッカリもせずいた類は、風の知らせとでも言おうか、ふと気になって5分もしないうちに校舎へと逆戻りする。

類が階段を降りていくと人集りが出来ていて、その先の廊下でガッシャンと大きい音が聞こえた。

「自分よりも弱い者虐めて楽しい!?バカなんじゃない!?あんたみたいなのが、将来人の上に立つと思うとゾッとする!!」

いつもなら、面倒事は避けて通っていた筈だった。
助ける謂れはなかったし、自身が目立つ相貌であることは誰に言われなくとも分かっていたから、自分から目立つようなことはしなかった。

ただ、人集りの先にチラリと見えた何度も類の昼寝を邪魔した女の姿と、初めて聞くその声に吸い寄せられるように足を進めていた。

しかし、この時の直感は正しかったと後になって知る。

「俺、あんたのこと好きなのかも」

そう告白してみれば、鳩が豆鉄砲食らったような顔をして、頭平気ですかと返す自分を繕わない言葉。
自分の顔に見惚れる女など星の数ほど見てきたが、頬を染められるのが嬉しいと感じたことなど一度もなかったのに。





類が室内の物音でゆっくりと目を開けると、ベッドの横に心配そうに見つめるつくしの顔があった。
自身の願望からくる幻影かと思い手を伸ばすと、つくしの頬に触れることが出来る。

「類?」
「夢の続きかと思った…」
「メール…さっき見たの、ごめん」

この時代、カップルであろうとも携帯片手に食事をするなど珍しいことではない。
食事のマナーとしてはどうかと思うが、そこら中の人が当たり前のようにテーブルに携帯を置いたまま、携帯が鳴る度に手に取る。
しかし、類と会っていた時つくしが携帯を気にする素振りをしたことなど一度もなく、話をする時は視線を交わすのが常だった。
つくしの人となりを知るうちに、携帯自体あまり使用していないことが判明したが、この3日間熱に浮かされてつい何度も多分見てはもらえないだろう彼女の携帯へメールを送り続けた。

放課後会いに行けなかった日は、言い訳じみた内容になってしまった。
本当は直接言いたいことだらけだったけれど、最近のあまりの睡眠不足はさすがに類の身体が限界だと訴えていたようだ。
司をメッセンジャーにしたことはやり過ぎたかもしれないが、類がつくしに会えないことが自身の体調の悪さよりも限界だったのだ。

「今日のメール…」
「うん…会いたかったから」

最後に送ったメールはただ一言、会いたいと。
頬に触れると何故かつくしが泣きそうに顔を歪ませる。

「無理してたんだって…?あたしに、会うため?」
「俺がそうしたかったんだよ」

寝てばかりいたおかげで、すっかり頭痛も治り眩暈やふらつきもなくなった。
類が起き上がろうとすると、つくしによってベッドに押し倒されてしまう。

「熱あるんでしょ。ちゃんと寝てて」

押し倒す方が好きなんだけど、と邪な考えが頭を過るがそれを口に出せば彼女は怒るだろうか。


***


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いつか好きだと言って 14

いつか好きだと言って 14
司くんの最初の性格をガン無視して、ストーリーを進めます(^^;;




あんなに好きだと何度も言ってくれていた類の気持ちは分からないのに、どうして今は分かってしまうんだろう。
小池の照れたように目をそらす仕草や、少しだけ低くなった声色に、小池が本気でつくしのことを好きだと言っているのが分かった。
そして人と比べて初めて分かる自身の気持ち。

「小池くん…ごめん。……あたし…」

あんなにも類の言葉に振り回されていたというのに、小池からの好きはつくしの心に響かなかった。
類がつくしに本気ではなかったとしても、例え本当は恋人がいたんだとしても、小池の手を取ることは決してないだろうと瞬時に判断出来てしまう程、つくしの心の中は類1人が占めていた。

「やっぱり、花沢さんのことが好きなんだ?」

小池に言われると、つくしは間をおかずにコクリと頷き空を仰いだ。

「うん…。こんなになんて、今初めて知った。気付いたら失恋って、ね」

つい先ほどまで怒りが勝っていた筈なのに、小池と話すうちに類への恋心で胸が熱くなる。
女心と秋の空とはよく言ったものだ。

学園から程近い場所で堂々とサボり立ち話をしているのもどうだろうと、どちらからともなく駅に向かい歩き出した。

「失恋かどうかは…ちゃんと花沢さんに聞かないと分からないんじゃない?」

つくしを好きだと言った彼は、同じ口で類と話せと言う。
やはり小池は優しいのだと思う。
敵に塩を送る、ではないが小池の言動はきっとつくしを思ってのことなのだ。

「う…ん、あたしもさっきまで気持ちがグチャグチャで…つい逃げちゃったから…ちゃんと話してみるよ」
「でも、もしあの人が恋人になったら、周りのやっかみとか嫌がらせ酷くなるんじゃない?」

嫌がらせとは言わないが不釣り合いだの貧乏人だのと陰口を叩かれることはしばしばで、今つくしがクラスで1人浮いていることは確かだ。
ただ、類のお気に入りと認識されていることで羨望の眼差しを向けられても、類を敵に回したくない為か目立った嫌がらせはされていない。

「恋人になったら、なんて今は考えられないけど…。あたしのことをちゃんと知ってくれてる人が何人かいれば、それでいいの」
「俺も、その1人に加えてくれる?」

つくしは驚いたように目を丸くして、その直後嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう」



小池と帰ってから3日経ち、類と会えないままつくしはいつも通りの日常を過ごしていた。
いや、いつも通り過ごすしかなかった。
今までだって、類と偶然会えていたわけではないのだ。
類がつくしの予定に合わせて会いに来てくれていたことを、自分から会おうと思わなければ会えないということを初めて知った。
それだけ、当たり前のように類がいつも側にいてそれに甘えていたのだ。
つくしから類に会いに行ったことなど一度もないのだということにも、気が付かない程に。

それに、3日間類が学校に来ていないことはクラスメイトからの噂で知った。
1日の授業が終わり、帰ろうかと鞄を手にして立ち上がると、つくしの側を通りかかったクラスメイトがわざとらしくつくしの前に足を差し出す。
つくしはそれをひょいと跨ぐと意にも介さず通り過ぎた。

「っ!そろそろ飽きて捨てられる頃よね」
「独り占めなんて許されないってこれで分かったんじゃない?」

つくしの行動が気に食わなかったのか、去り際に周りに聞こえるような声で女たちが言い放つ。
小池が心配そうにつくしを見つめ視線が交わると、つくしは気にしていないというように首を振った。
クスクスと笑い声がクラスに響く中、廊下から騒めいた悲鳴のような声が聞こえた。

「まっ、牧野さんっ!!」

つくしはまさかと期待して顔を上げるが、教室を覗き込んだ人物は予想外の男だった。
クラスメイトも何が起こったのかと、誰も言葉を発する者はいない。
ただ、様々な意味合いを持った視線で男を見つめているだけである。

「…あんたが牧野、つくしか?」
「は、はい…そうですけど…」

男は顎をしゃくりつくしを廊下の外に促す。
着いて来いという意思表示らしく、つくしは無言で付き従った。

この人が噂の…とつくしがマジマジ顔を凝視してしまう程の美貌。
カフェテリアで一度見かけたことはあるが、話が出来るほど近くにいたことはない。
日本人離れした体型、モデル張りの顔の小ささとその整った顔立ちが、見る者を圧倒させる。
噂になるだけのことはあるのだなと、つくしは感嘆のため息を漏らした。

F4のリーダー、道明寺司ーーー。

「おいっ、聞いてんのか?」
「へ?あ、はいっ!」

司に連れて行かれたのは、F4がよく利用するカフェテリア2階の特等席で、4人掛けのテーブルと椅子しか置いていないのに無駄に広い。

ここって、一応学食よね。
壺とか生け花とか必要…?

初めて足を踏み入れた2階を物珍しそうに見ていたつくしは、視線を感じて慌てて居住まいを正すが、司は訝しげにつくしを見ると不機嫌そうに眉を寄せた。

「俺に見惚れるような女ならそこら中にいるが、お前みたいにアホな顔して見てる女いねぇな」
「なっ…」

なんて失礼な奴ーーー。

言葉に出すのを必死に堪えながらも、つくしは唇を尖らせて司を見る。
すると、司も女に睨まれたことなど未だかつて一度もなかったのか、驚いた様子でつくしを見返し唇の端を上げて微かに笑った。

「ふっ…なんで類がおまえ?……全然分からねぇ」
「っていうか、あたしに何の用ですか?」

ただでさえ、呼び出される覚えなどない目立つ男と連れ立って歩いていたことで、つくしのストレスはマックスだった。
どうでもいいから早く解放してほしいと、ウンザリした様子でため息を吐く。

司としてもつくしとお茶を楽しみたいわけではなく、時間を取られることは同じく不本意であるらしく特に言い返すこともなく口を開いた。

「類がよ…今熱出してぶっ倒れてるんだと」
「類が!?」
「お前にメール入れたって言ってたぞ」

司が長い足を組み直して、テーブルに肘をついた。
類もそうだが、人への魅せ方を熟知している男は動作1つとっても美しく、スクリーンで映画を見ているような気分だ。

「あ…電源入れ忘れてた」

つくしは学園内で類を探すことに必死で、そもそも携帯で連絡を取るという考えはなかった。
それも仕方のないことでつくしの携帯は受信専門であったし友人らはつくしが携帯をあまり使用しないことを知っている為に、急ぎの場合は家に直接連絡があるぐらいなのだ。
そのため類と携帯で連絡を取り合うことをしたことがなく、類がつくしのアドレスを知っていたことにも驚いたぐらいなのだ。

つくしは携帯の電源を入れると、知らないアドレスからのメールが何度も届いていた。
多分これが類からだろうとメールを開いていく。
届いたメールは全部で5通で、最初のメールは小池と帰った日の夕方、最後のメールは今日の朝だった。
最後のメールを見た時、つくしは震えそうになる唇を手の甲で押さえた。

「つーか、俺様がなんでわざわざ……おいっ」

つくしは携帯を片手に立ち上がり、慌てた様子で立ち去ろうとするが、司に止められて我に返った。

「なにっ!?あ、メールのことありがとうございました!」

つくしが頭を下げると、司は嘆息して言葉をかけた。

「類はな、おまえと会う時間作るために、殆ど寝ないで仕事してたんだぜ。だから、ぶっ倒れるんだ」
「……っ」



***

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いつか好きだと言って 13

いつか好きだと言って 13



小池は教室の窓からボンヤリと外を眺めていた。
空席となっているつくしの席と窓の外を何度も視線を往復させると、思わず周りが驚くほどの勢いで立ち上がっていた。

「……っ」

自分の鞄を持ち、つくしの席からも鞄を手に取ると、二階から一階へ駆け降りた。
昨日自分が伝えてしまった心ない噂のことで傷付けてしまったのではないかと気に病んでいたこともある。
何度呼びかけても反応しないつくしをどうすべきかと見守っていたが、つくしはボンヤリとしたまま小池に目もくれず立ち去ってしまったのだ。
あの人がつくしをどう思っているかなど知らないが、それよりもあの人よりも自分の方が余程彼女のことを好きだという想いが強かった。

二階の教室から見ていた小池は、つくしが学園の外に向かって走って行くのを見た。
そして、何かあったのではないかと反射的に教室を飛び出していたのだ。



小池が門の外へ着き辺りを見渡すがつくしの姿はすでになく、ハァハァと荒い息を落ち着かせる。
やはり見失ったかと肩を落とし振り返ると、レンガの門の前でしゃがみ込んでいるつくしを見つける。

「牧野」

つくしが泣いているのかと思い声を掛けるが、顔を上げたつくしは何故か不機嫌そうに眉を寄せ、小池が突然目の前に現れたことに戸惑っている様子である。

「小池くん…」
「何でこんなとこに座ってんの?熱中症になるよ。教室から門に向かってるの見かけてさ…鞄置いたままだったから持って来た」
「あぁ…ありがとう。忘れてた…」
「鞄忘れてどうやって帰るんだよ」
「だよね」
「ほら……」

小池は手を差し出すと、つくしも小池の手を取り立ち上がった。

「行こう」
「えっ…小池くんも帰るの?」
「鞄持って来たしな。駅まで送るよ」
「駅までって…小池くん迎えの車来るでしょ?いいよ」

普段駅まで歩くことなどない小池を、付き合わせて歩かせるのも申し訳なく思い、大丈夫と断るが小池はつくしの鞄を持ったまま歩き出した。

「たまには歩きたい時もあんの」
「…ありがと」

横に並んで歩いてもつくしと目線は変わらない。
そのことでクラスメイトからは小池だけに小さいなと揶揄われたこともあり、小池にとってはコンプレックスだった。
しかし、いつも1人でどれだけ噂の的になろうとも凛として前を向いているつくしを見たとき、孤立したくないという理由で周りに合わせて、チビと言われようが笑って済ませている自分を恥じた。
それからだ…クラスメイトの1人に過ぎなかったつくしを目で追うようになり、自分で力になれることがあるのなら助けになりたいと思ったのは。

「バイトって、何やってんの?」
「ん…あぁ、団子屋さんだよ」
「楽しい?」

小池は普通の質問をしたつもりだったが、つくしは少し驚いた顔をし笑みを浮かべながら答えた。

「友達と一緒だから楽しいよ。私の場合生活かかってることもあるから、楽しいだけでもないけどね」

〝友達と〝と嬉しそうに言うつくしに、1人が好きなわけではないと知る。
多分、彼女は…この英徳学園に馴染めないだけなのだ。

「小池くんって変わってるよね」

突然ピタリと足を止めたつくしが、小池の顔をジッと見つめ言った。
小池としては好きな女の子に、可愛いと評されるコンプレックスの原因とも言える自分の顔をあまり見られたくないものだが、つくしはそんなこと気にもしないのだろう。

「え、そう?なんで?」
「あたしがバイトしてるって知っても可哀想な顔しないもん。バイト楽しいか、なんて英徳の人に聞かれたことないよ」
「あ〜それは…きっと、興味あるからだよ」

本当はつくしのことをもっと知りたいから、どう聞き出そうかと必死なだけなのだが、まさか本当のことなど言えずに、小池はしどろもどろな答えを返した。

「小池くんが?バイトに?」
「う、うん…まぁ」
「バイトしたいの?」
「……」

小池はどうしようかとキョロキョロと視線を彷徨わせて、落ち着きなく隣を見るとキョトンとした顔のつくしと目が合った。
瞬間、誤魔化そうと口を開きかけるがグッと唇を噛み締め、拳を力一杯握り締める。

「……違う。牧野のことがもっと知りたいだけ」
「へ?なんで?」
「好きだからに決まってるだろ」


***


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