around30→78最終話
around30→78 最終話
類とつくしが役員室のある階でエレベーターを降りると、賑やかな話し声が聞こえてくる。
明らかにそれは双子のものであったが、一体誰と話をしているのであろうか。
声が聞こえる秘書室のドアを開け、室内を覗くとつくしはその場の雰囲気に唖然と立ち竦んだ。
つくしの後ろから顔を覗かせた類も驚いた様子なのは、あの対立していた若村と沢田たちとが、揃って双子を間に挟み笑顔を見せているからであった。
「まこと君は学校でどんなお勉強してるのかな?」
「あのね〜マコ漢字ももう書けるんだよ!お母さんは凄いって!」
「そうなの!?凄いね、お勉強頑張ってるんだね〜」
一体彼女はどれだけ別の顔があるのか、優しげな声色で真と話す沢田は、若村と対立しつくしに悪態をついていた人物と同じ人だとはとても思えない。
若村も心を膝に乗せて学校で習っている歌を一緒になって歌っている。
女性特有のピリッとした空気は鳴りを潜め、母親のような顔で接してくれていた。
声を掛けていいか一瞬迷ったが、双子が先に気が付き駆け寄って来ると、全員の視線が類とつくしに向けられる。
「あ、お父さんお母さん!おかえりなさい」
「おかえりなさい!」
「ただいま。遊んでもらってたの?…皆さんありがとうございます。ほら、2人ともありがとうして?」
「「お姉ちゃんたちありがとうございます!」」
類がよく出来ましたと双子の頭をポンポンと叩くと、双子も満足そうに笑った。
「牧野さん、久しぶりね。さっき心くんが言ってたんだけど…まさか…本当に…?」
若村としても双子が言うお母さん妊娠説は信じ難いことであったのであったのだろう。
類とつくしですら半信半疑だったのだ。
「はい…今病院に行って来たら3ヶ月らしくって…しかも双子なんですよ。あたしたちが信じられない思いです」
「うっそー!!」
「双子ちゃんエスパーみたいだね!」
「赤ちゃん産まれるんだって!」
双子は周りの反応を首を傾げ不思議そうに受け止めると、声を揃えて言った。
「「だから言ったでしょ!?」」
そんな双子の言葉に、大人たちも声をあげて笑う。
それを見ていた双子も顔を見合わせて笑い出した。
子どもの笑顔はみんなを幸せにする。
何でもないことで笑い、人を疑うことを知らず純粋な生き物。
そんな子どもの前では、皆が純粋な心に戻るのかもしれない。
*
「あのね、類。ちょっと話があるんだけど…」
双子を連れて邸に戻ったつくしは、仕事中の類に話し掛けた。
邪魔かとも思ったが、ずっと何時間もパソコンの前から動かない類に少し休憩してもらう為でもあった。
「ん?どうかした?」
机に向かっていた類が、目頭を押さえて振り返る。
お仕事体験が楽しかったのかなかなか帰りたがらない双子に、仕方なく類も今日は在宅で仕事をするといい帰宅した。
いつまでも秘書室で遊んでいるわけにもいかないし、彼女たちも大量の仕事を抱えているのだ。
そして類はここ何日間の仕事の滞りを取り戻すかのように、山村が付いていないにも関わらずずっとパソコンに向き合ったままだった。
つくしはワゴンに紅茶を乗せて類の近くに持って行くと、類が立ち上がりつくしをソファに誘導した。
「ありがと…ごめん、今平気だった?」
「うん、ちょっと休憩したかったから」
「仕事のことなんだけど…あたし何年かは働かなくてもいい?」
「いいけど…どうして?つくし働きたいのかと思ってた」
類が疑問に思うのは当然で、真と心が産まれてからも大学に通い、その後もすぐに就職したのは、それがつくしの願いであったからだ。
社会を何も知らないまま家庭に入りたくはないと、当時の彼女は言っていた。
「もちろん働くのは好き。働きたい気持ちはあるんだけどね」
「うん」
「双子たちが産まれた時、あたしはまだ大学生だった。赤ちゃんが出来たってことは嬉しかったけど、まだやりたいことも沢山あったの、でもそれはあたしの我儘よね。双子は何も言わないけど、きっと寂しい思いもさせたと思う」
「そう、かもしれないね…俺も遅い時もあったし」
「だから、その分今度こそちゃんと子どもたちにおかえりなさいって言ってあげたい。これから産まれるこの子たちにも真と心にも同じだけの愛情を注いであげたいな、って思ったの。この子たちが大きくなってお母さんそろそろ働いてもいいよって言ってくれるまでは、ね」
つくしは自分の気持ちを全て吐き出すと、自身を落ち着かせるように紅茶を一口飲んだ。
「俺としては、その方が安心する。監察室に引き抜いたのは俺だけど、どこの部署でもモテモテな奥さんだから困ってたんだ」
「それは類の思い過ごし!あたしの方がモテモテな旦那様に困ってます」
「俺が、つくし以外の女を視界に入れると思う?」
「いや…視界にくらいは入れてあげてよ……ふふっ」
隣に座る類の肩に頭を乗せると、安心したようにつくしは目を閉じた。
類も真っ黒なつくしの髪を優しく撫で、額にキスをする。
「夫婦って似てくるって言うよね…あたしたちも似た者夫婦になるのかな?」
「つくしが俺に似るのは困るな…でも、俺つくしみたいに3秒で寝たりとか出来ないし…」
「嘘〜?類、昨日3秒で寝てたよ?」
つくしが口を尖がらせて言うと、類がつくしの鼻をつまむ。
「もう〜!」
「早く産まれないかな…」
「うん、楽しみだね…」
類もつくしも座ったまま頭を寄せ目を瞑ると、2人同時にスースーと眠りについた。
会話がなくなったことを察してか、佐原がノックなしで部屋に入ってくると、ソファで肩を寄せ合い眠る2人に、タオルケットをそうっと掛けて静かに扉を閉めた。
fin
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
駆け足で終わりましたが如何でしたか?
今回のお話の過去編もあるのですが、それはまた別の機会に。
そしてネタがなくなったら、また潜入させちゃおうという私の思惑がバレバレの終わり方です。
次のお話は“ペットと呼ばないで“です。
何となく想像つくかな…設定は大人類つく。
around30みたいに長い話は書いてて飽きるので、次は短めでいきたいなと思っています。
オダワラアキ
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類とつくしが役員室のある階でエレベーターを降りると、賑やかな話し声が聞こえてくる。
明らかにそれは双子のものであったが、一体誰と話をしているのであろうか。
声が聞こえる秘書室のドアを開け、室内を覗くとつくしはその場の雰囲気に唖然と立ち竦んだ。
つくしの後ろから顔を覗かせた類も驚いた様子なのは、あの対立していた若村と沢田たちとが、揃って双子を間に挟み笑顔を見せているからであった。
「まこと君は学校でどんなお勉強してるのかな?」
「あのね〜マコ漢字ももう書けるんだよ!お母さんは凄いって!」
「そうなの!?凄いね、お勉強頑張ってるんだね〜」
一体彼女はどれだけ別の顔があるのか、優しげな声色で真と話す沢田は、若村と対立しつくしに悪態をついていた人物と同じ人だとはとても思えない。
若村も心を膝に乗せて学校で習っている歌を一緒になって歌っている。
女性特有のピリッとした空気は鳴りを潜め、母親のような顔で接してくれていた。
声を掛けていいか一瞬迷ったが、双子が先に気が付き駆け寄って来ると、全員の視線が類とつくしに向けられる。
「あ、お父さんお母さん!おかえりなさい」
「おかえりなさい!」
「ただいま。遊んでもらってたの?…皆さんありがとうございます。ほら、2人ともありがとうして?」
「「お姉ちゃんたちありがとうございます!」」
類がよく出来ましたと双子の頭をポンポンと叩くと、双子も満足そうに笑った。
「牧野さん、久しぶりね。さっき心くんが言ってたんだけど…まさか…本当に…?」
若村としても双子が言うお母さん妊娠説は信じ難いことであったのであったのだろう。
類とつくしですら半信半疑だったのだ。
「はい…今病院に行って来たら3ヶ月らしくって…しかも双子なんですよ。あたしたちが信じられない思いです」
「うっそー!!」
「双子ちゃんエスパーみたいだね!」
「赤ちゃん産まれるんだって!」
双子は周りの反応を首を傾げ不思議そうに受け止めると、声を揃えて言った。
「「だから言ったでしょ!?」」
そんな双子の言葉に、大人たちも声をあげて笑う。
それを見ていた双子も顔を見合わせて笑い出した。
子どもの笑顔はみんなを幸せにする。
何でもないことで笑い、人を疑うことを知らず純粋な生き物。
そんな子どもの前では、皆が純粋な心に戻るのかもしれない。
*
「あのね、類。ちょっと話があるんだけど…」
双子を連れて邸に戻ったつくしは、仕事中の類に話し掛けた。
邪魔かとも思ったが、ずっと何時間もパソコンの前から動かない類に少し休憩してもらう為でもあった。
「ん?どうかした?」
机に向かっていた類が、目頭を押さえて振り返る。
お仕事体験が楽しかったのかなかなか帰りたがらない双子に、仕方なく類も今日は在宅で仕事をするといい帰宅した。
いつまでも秘書室で遊んでいるわけにもいかないし、彼女たちも大量の仕事を抱えているのだ。
そして類はここ何日間の仕事の滞りを取り戻すかのように、山村が付いていないにも関わらずずっとパソコンに向き合ったままだった。
つくしはワゴンに紅茶を乗せて類の近くに持って行くと、類が立ち上がりつくしをソファに誘導した。
「ありがと…ごめん、今平気だった?」
「うん、ちょっと休憩したかったから」
「仕事のことなんだけど…あたし何年かは働かなくてもいい?」
「いいけど…どうして?つくし働きたいのかと思ってた」
類が疑問に思うのは当然で、真と心が産まれてからも大学に通い、その後もすぐに就職したのは、それがつくしの願いであったからだ。
社会を何も知らないまま家庭に入りたくはないと、当時の彼女は言っていた。
「もちろん働くのは好き。働きたい気持ちはあるんだけどね」
「うん」
「双子たちが産まれた時、あたしはまだ大学生だった。赤ちゃんが出来たってことは嬉しかったけど、まだやりたいことも沢山あったの、でもそれはあたしの我儘よね。双子は何も言わないけど、きっと寂しい思いもさせたと思う」
「そう、かもしれないね…俺も遅い時もあったし」
「だから、その分今度こそちゃんと子どもたちにおかえりなさいって言ってあげたい。これから産まれるこの子たちにも真と心にも同じだけの愛情を注いであげたいな、って思ったの。この子たちが大きくなってお母さんそろそろ働いてもいいよって言ってくれるまでは、ね」
つくしは自分の気持ちを全て吐き出すと、自身を落ち着かせるように紅茶を一口飲んだ。
「俺としては、その方が安心する。監察室に引き抜いたのは俺だけど、どこの部署でもモテモテな奥さんだから困ってたんだ」
「それは類の思い過ごし!あたしの方がモテモテな旦那様に困ってます」
「俺が、つくし以外の女を視界に入れると思う?」
「いや…視界にくらいは入れてあげてよ……ふふっ」
隣に座る類の肩に頭を乗せると、安心したようにつくしは目を閉じた。
類も真っ黒なつくしの髪を優しく撫で、額にキスをする。
「夫婦って似てくるって言うよね…あたしたちも似た者夫婦になるのかな?」
「つくしが俺に似るのは困るな…でも、俺つくしみたいに3秒で寝たりとか出来ないし…」
「嘘〜?類、昨日3秒で寝てたよ?」
つくしが口を尖がらせて言うと、類がつくしの鼻をつまむ。
「もう〜!」
「早く産まれないかな…」
「うん、楽しみだね…」
類もつくしも座ったまま頭を寄せ目を瞑ると、2人同時にスースーと眠りについた。
会話がなくなったことを察してか、佐原がノックなしで部屋に入ってくると、ソファで肩を寄せ合い眠る2人に、タオルケットをそうっと掛けて静かに扉を閉めた。
fin
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
駆け足で終わりましたが如何でしたか?
今回のお話の過去編もあるのですが、それはまた別の機会に。
そしてネタがなくなったら、また潜入させちゃおうという私の思惑がバレバレの終わり方です。
次のお話は“ペットと呼ばないで“です。
何となく想像つくかな…設定は大人類つく。
around30みたいに長い話は書いてて飽きるので、次は短めでいきたいなと思っています。
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