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ペットと呼ばないで 38最終話

ペットと呼ばないで 38最終話


類は元々テレビを見るのが好きらしく、休みの日出掛ける用事がなければ2人でソファに座りながらテレビを見ることも多かった。
この日も朝からテレビは付けっぱなしになっていて、家事が終わりつくしも類の隣に腰掛けると、番組と番組の間に入るニュースでとある反社会勢力の団体が一斉摘発されたと報じられた。

「類…もしかしてこれ…」
「ん、そうだよ。やっと片がついた。それと、つくしの両親に結婚の承諾もらったから…あと、少しだけ厳しいことも言った。ごめんな…」
「ううん、分かってる…あたしのためだって。結婚式には会える、かな?」
「そうだね、きっと喜んでくれるよ」



ニュース速報で報じられる3日前ーーー

類はつくしに仕事が遅くなると連絡し、とあるアパートの前にいた。
あきらからミッション完了の連絡が入り、類はすぐに牧野家が今住んでいるアパートに向かったのだ。
進には新しい携帯をつくしと同様に渡してあったので、今日行くことを告げてある。
5分も経たずに息を切らせた進がバイトから帰って来ると、アパートの前で進は頭を深く下げた。

「花沢さん…本当に色々とありがとうございました…」
「いや、君にも話があったんだ…ご両親はいるよね?」
「はい…姉ちゃんの居所を知っている人が来るとしか話してませんが…あ、どうぞ…」

進は類をアパート2階の一部屋へ案内すると、ただいまと声を掛ける。
玄関先から全ての部屋を見渡せるような1DKの狭いアパートの奥の和室に緊張した面持ちで、つくしの両親が座っていた。

借金取りか何かだと思ってるんだろうな、と思いはしたがそもそもこの人たちに同情の余地はないと類は考えていた。

長身の類が部屋に足を踏み入れると、狭い和室はますます圧迫感を増してより窮屈だ。
安っぽい卓袱台を囲み気まずそうに類へ視線を向ける父親と、今すぐ娘の安否を知りたい母親といったところか。

「父さん、母さん…こちらは花沢類さん。今、姉ちゃんと一緒に暮らしてる」

進が紹介すると、怯えたように類を見つめていた母親が口を開きかけるが、俯きまた口を噤んだ。
きっと借金取りからの酷い取り立てがあり、こうして黙って嫌がらせや脅しにも耐えていたのだろう。

「初めまして、花沢と申します…今つくしさんと一緒に暮らしていますが、別に借金の取り立てに来たわけではありません」

類の言葉に母親がパッと顔を上げ、言葉にはならない口の動きで〝つくしは〝と言ったのが伝わった。
類はつくしに起こった出来事全てを包み隠さず伝えると、両親は卓袱台に突っ伏して泣き崩れる。
進もつくしからハッキリと事情を聞いたわけではなかったから、予想はしていたもののやはり怒りや遣る瀬無さのようなものはあったのだろう、ギュッと拳を握ったまま俯いていた。

「つくしは…本当に頑張り屋で…あの子の行方が分からないってなった時も、心配でしたけど…もしかしたらこんな親のことが嫌になって、見限って出て行ったのかもしれないとすら思いました。それぐらい、私たちは、子どもたちに頼りきりの生活をしていたんです…ご迷惑を掛けて申し訳ございません…」
「それは知っています。一緒に暮らしていれば、彼女がどれほど努力家で家族思いなのか…だからこそ厳しい言い方かもしれませんが、俺はあなたたちが許せない。今日は彼女と結婚の意思があることを伝えに参りました…でも、あなたたちがこのままの生活を続けるようであれば、結婚式に呼ぶことは出来ませんし、彼女と会うこともなりません…意味が分かりますか?」

母親は畳に頭を擦り付けるように類に頭を下げるが、類もここで甘い顔は出来なかった。
進にも家に行くとは伝えたが、詳細は何も伝えていないためハラハラと動向を見守っている。
気の弱そうな父親も顔を上げ母親と類をキョドキョドとしながら見ているが、口を挟もうとはしない。

「借金の原因はお父さんのギャンブル…ですね。金をどこに置いておいても探しては勝手に持って行ってしまうお父さんに、お母さんもパートを辞めざるを得なくなってしまった…ってところですか?」

母親は父親へと視線を向けるが、痛いところを突かれたというような顔で父親は肩を落としている。

「どうして、それを…?」
「色々と調べさせてもらいました。そしてその借金を返すために、つくしさんと進くんが必死に働いていたことも…つくしさんは高校を辞め、進くんはせっかく決まった就職先を辞めざるを得なくなったことも」
「…!!進っ…あんた…」

進が仕事を辞めたことを知らなかったのか、母親が目を見開いて進を見つめる。
両親を傷つけまいと未だに話せずにいたのだろう、つくしも進も実の親だからと優し過ぎるのだ。

「私ったら、何をしてるんでしょうね…親なのに…子どもたちに苦労ばかりかけて」

母親は目に涙を浮かべながらも着ていたエプロンのポケットから折り畳んだ紙を取り出すと、父親の前に置きポツポツと話す。

「つくしと進の幸せのために…もしあなたが定職に就かずにまたギャンブルを始めるようなことがあれば、その時は…離婚しましょう」

つくしの強さは母親似なのだろう。
こうと決めた意思の強い瞳はつくしにも進にもよく似ている。
何も言えず呆然と離婚届を見ている父親を他所に、母親は類の目を見つめて言った。

「花沢さん…うちの娘とは以前からのお付き合いですか?親として恥ずかしいのですが、あの子から恋人がいるなんて話全く聞いたことがなかったので」

マンションの前に座り込むつくしを助けたという類の言い方が悪かったのか、つくしが恋人である類に助けを求めたと思われているようだ。
まあ、それならそれでいいかと類は曖昧に頷いた。

「まあ、そんなところです。ところで、進くんのことなんですが…」
「え…?」

突然話を振られた進が類を見ると、類はビジネスバックの中から書類を取り出して進の前に置いた。

「うちの本社で働く気はある?必死で勉強しないと付いていけないことが多いとは思うけど、つくしは俺の仕事をいつか手伝いたいと言って今必死に勉強してるよ。一日中、ね。君もやる気があるなら、将来の弟にためにそれぐらいのことはさせて欲しい」
「花沢さん…」

進が目の前に置かれた書類に目を通すと、雇用契約書や就業規則だった。
高卒の進にはあり得ないほど高待遇の給与が書かれていて、進の視線は雇用契約書と類の顔を何度も行ったり来たりしている。

「あ、あの…今更なんですけど…花沢さんって、もしかして…」

雇用契約書にしっかりと花沢物産と書いてあるだろうに、未だ信じ難いのか進が冷や汗を拭う。

「うちの会社、だよ。今は父が社長をしてる。俺が継ぐのは10年ぐらいは先かな」

進はやっぱりと、持っていた雇用契約書を落とした。
母親も項垂れていた父親ですら驚きの余り、ポカンと口を開けたまま固まっている。
類が経済誌に顔を出している…と聞いた時にはつくしとの再会で聞き流していたが、あんな大企業の後継者ならば確かに経済誌に顔ぐらい出す有名人だろうと、今更つくしと結婚したいという類の立場に驚きを隠せない。

「俺は…未熟ですし力不足だと思いますが…頑張ってみてもいいですか?」

進が意思の強い瞳で類をジッと見つめて言うと、類も強く頷いた。
そして進だけに、牧野家の全ての借金が清算済みだと話しアパートを後にする。



「そっか…パパ頑張って働いてくれるといいな…進のこともありがとう…」

2人でベッドのようなサイズのソファにゴロゴロしながら類の話を聞くうちに、つくしはウトウトとし始める。
類に手を取られたのもどこか夢見心地に感じていた。

「つくし…寝る前に、これ見て」
「ん…な、に…」

薄っすらと閉じていた目を開けて、つくしが類に持ち上げられた左手を見ると、さっきまではなかった指輪がはめられていた。

「これ…」
「全部片が付いたら、結婚しようって言ってあったよね。籍入れるまではこれしてて。結婚指輪はあとで買いに行こう」

眠気も覚めるほど大きなダイヤモンドの付いた指輪につくしが手の指をジッと見つめる。

「お、お、落としたらどうしよう…」
「うん?そしたらまた買ってあげるよ、いくらでも。俺と、結婚してくれる?」

ソファの上でつくしに覆い被さりながら、類はつくしの額にキスを落とす。

「落とさないように…気を付ける…ありがと、類。よろしくお願いします…」

涙目で類を見上げると、類はつくしの目尻や鼻にチュ、チュと口付けた。

「じゃあ、これからうちのペットを可愛がろうかな…」

類はつくしを抱きかかえたまま寝室のドアを開けるが、つくしは相変わらずのペット扱いに口を尖らせて類を睨む。

「もう…ペットって言わないで」
「奥さんだもんね…これからは」

ベッドの上に、そっと寝かせると指を絡ませつくしの唇を塞いだ。


fin


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ペットと呼ばないで 37

ペットと呼ばないで 37



つくしはブルブルと震える拳を握り締め、キッと司の目を睨みつけながら言った。
まさか、店中に響くような大声で言い返されるとは思っていなかった司も、呆気にとられて呆然と佇んでいる。

「ははっ…つくしちゃん最高!司に言い返す女初めて見たぜ!」
「でも、ドーベルマンの前で威嚇するチワワみたいだったぞ…」

個室で飲んでいたはずの3人がいつの間にかつくしの後ろの壁からヒョイと出てくると、総二郎と呼ばれていた男が腹を抑えて笑い出した。
あきらも苦笑しながら総二郎を窘めているが、犬に例えないでほしい。

「司、つくしに何してくれてんの?」

類だけは冷たい視線を司に向け、冗談という顔付きには見えないほど睨み付ける。

「俺は何もしてねぇよ…つか、マジか」
「司…つくしはおもちゃとは違うから。もし俺から奪おうとしたら許さないよ?」
「ふん、いらねぇよっ、こんなチンチクリン!」

類と司が見えない火花を散らしているのを他所に、つくしが再び声を張り上げる。

「だから!チンチクリンって言わないで!!」


席に戻れば、類は何を警戒してかつくしを膝の上に抱き上げて離そうとはしないし、しかもそれを楽しそうにニヤニヤと笑いながら総二郎が見つめてくるのだからタチが悪い。

「類…降りちゃうダメ…?」
「ダメ…だから会わせたくなかったんだよ」

つくしが不思議そうに首を傾げると類が後ろで小さくため息を吐きながら言った。

「類のやつ会わせろって言ってんのに、俺らからの連絡ことごとくスルーしてたんだよっ」

チッと舌打ちをしながら、司は気に入らないとばかりにつくしに視線を送った。

「だから、もし連れて来ないならマンションに行くぞって脅したわけ…でも、あきらは行ったんだろ、じゃあマンションだってよかったじゃなねぇか」
「話済んだら、即行で追い出されたけどな」

総二郎が事の顛末を説明するが、つくしには幼馴染みの恋人に会いたいと思う3人の考えがいまいちよく分からない。
これだけの容姿の人たちが揃いも揃って、類に恋人が出来たからといって騒ぐほどのことだろうか。
総二郎とあきらなんかは、言葉の端々から相当遊んでいるのだろうという雰囲気が伝わってきて、男性にあまり慣れていないつくしは彼らの仕草や言葉にいちいちドキドキしてしまう。

「類に恋人が出来たら、そんなに凄いことなんですか?」

つい、口に出して問うと、類以外の3人は鳩が豆鉄砲を食ったようにポカンと口を開けた。
そして何故か納得したようにうんうんと頷いている。

「つくしちゃんは類にご飯作って、一緒に寝てるんだよな…?」
「え…あ、まあ…」

総二郎の問いかけに一緒に寝てるということには若干の恥ずかしさがあったものの、正直に答える。

「類が他人の作ったものを口にすることがまず凄え。バレンタインにチョコとか貰ったりするじゃん?こいつ全部ゴミ箱に捨てて帰るからな。ま、俺はそんなことしないけどな。…それに、まず自分のテリトリーに入れない、俺らだって類のマンションなんか行ったことない…そういう奴なんだよ」
「あと、寝てるとこ起こされるのが嫌いだから、誰かを泊めるなんてあり得ない。しかも基本他人を信用しない…それは俺たちみんなそうだけど、寝首掻かれることもあるしな」

司と総二郎が話す類はつくしの知る類とは別人のようだ。
確かに類は佐原の作ったご飯しか食べなかったとは聞いたが、つくしの作るご飯は出したものは全て食べてくれるし、夜もつくしを抱き締めて寝るのは日課となりつつある。
寝汚いところはあるかもしれないが…つくしが朝起こしにいけば機嫌が悪いどころか、朝から元気いっぱい過ぎて、休みの日の朝は家事が進まないこともしばしばあった。

「寝首掻かれるって…そんな…」
「別に大袈裟に言ってるわけじゃないぜ?実際に美人局じみたことは何度もあるしな。だから素性の分からない女なんてリスキーなんだよ」

司の言う素性の分からない女とはもしかしなくともつくしのことなのだろう。
確かにマンションの前にいる怪しい女だったに違いなく、類が何故家に招き入れてくれたのかも不思議だった。

「あたしも…ずっと不思議だった。今更だけど…聞いてもいい?」

後ろから抱き締められながらも身体を反転させ、類を見上げて言った。

「なんでだろ…俺もよくは分からない。いつもだったら絶対にしない。けど…あの時はなんか…放って置けなかった」
「ふふっ…それが、類とあたしの運命だったのかな…」
「惹かれ合う?そうかもね…」

目を合わせて微笑むとどちらからともなく唇を重ねる。
クチュっと類の舌が口の隙間から入りこみ、つくしは潤んだ目を微かに開けた。

「ん…っ…」

散々唇を貪られ、つくしが完全に陥落すると唇を離す。
類を誘うような目で見つめると、軽く口を触れ合わせるだけのキスを落とされた。

「名残惜しいけど、続きは家でね…」
「い、え…?え…?ヤダヤダヤダ!あたし何してるの…」

ここがどこだかも忘れて、類のキスに溺れてしまった自分を恥じるように真っ赤になり、ニヤリと笑う3人から隠れるように類に抱きついた。


***


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ペットと呼ばないで 36

ペットと呼ばないで 36



受付嬢と睨み合っているとどこからか類の声が聞こえる。
どこからか…というのは、つくしも気がつかない内に争う声が大きくなっていたらしく、周りに人が集まっていた為に、類の姿をすぐには見つけられなかったのだ。

「類…?」
「なんの騒ぎ?」
「花沢専務っ…この方が私の受付としての対応が悪いと仰ってて」
「えっ…ちがっ…」

女性は瞳を潤ませて、類に助けを求めるように目線を上げた。
どんな特技かは知らないが本心なんかじゃないことはつくしが一番よく分かっている。
しかしポロポロと涙を流す女性につくしもそれ以上は言い返すことが出来なかった。
それを良しとしたのか、手で隠した口元をニヤリと歪めると、再びつくしを攻撃する。

「私はいつものように対応していたつもりなんですが…早くしてと仰られて…給料貰ってるならどうのと」

一部嘘が混じってはいるが、給料貰っているなら云々については本当のことだ。
でも、そこまでこの人も類のことが好きなんだな…そう思うと決して自惚れているわけではないが罪悪感のような感情が芽生えてしまう。
つくしがため息混じりに類に視線を向けると、類はジッとつくしを見つめていた。

まさか、信じてもらえないの、かな…

「受付に声掛けてって言うんじゃなかった…ごめん」

類の言葉に女性の顔がパッと花開いたように明るいものへと変わる。
この出来事が類と自分の距離を確実に近付けてくれたと思ったのかもしれない。

「他の女追っ払ってくれるから便利と思って置いておいたのを忘れてたんだ…つくしまで追っ払われるとは思わなかった、ごめん」

追っ払ってくれる?便利…?

類がつくしに対して謝っているのは分かったが、つくしも受付嬢もポカンと口を開けたまま固まる。
確かに追っ払われそうになったけど…その言い方は。

「類…あたしはいいんだけど…あ、の…」

つくしがチラリと視線を女性に移すと、類も釣られて女性を見る。

「せ、専務…」

受付嬢は地に堕ちたような青ざめた顔でピクピクとこめかみを揺らし、動揺しているのが見て取れる。

「この人…公にはしてないけど、俺の大事な人だから。あんたもそこに座っていたいなら態度を改めるべきだね。あぁ、他の女に関しては今まで通りでいいよ」

ニコリともせずに類が言うと、向き直ったつくしには極上に笑顔付きで行こうと腰に腕を回す。
天国から地獄?地獄から天国?
あきらとの会話でも思ったが、つくしには花沢類という人がよく分からない。
でも、つくしを大事に思ってくれているのだけは信じられると思うのだから、自分も相当類に溺れているのかもしれない。

「類って…」
「ん…?」
「性格悪い…」
「酷いな…つくししか見えてないだけなのに…」

まだロビーを歩いているというのに人目を憚らず類に口付けられれば、もう何とでもなれ…である。



類に連れて行かれた店は、進と待ち合わせた店だった。
いつも幼馴染みで集まる時はここを使うことが多いのだと類は言う。
つくしが、目の前に座る超絶美形集団に初めましてとお久しぶりですと挨拶すれば、初めて会った2人に穴が開くほど鋭く見つめられてつくしは固まる。
確かに皆が皆揃ってもの凄い美形だとは思う、しかし1人の男の眼光の鋭さにつくしは完全に萎縮していた。
立ち上がれば類よりも背が高く常に見下ろされる形になるせいで、余計に怖い。
しかも、つくしがトイレに立ったタイミングで何故一緒に席を立つのかが分からない。
偶然トイレのタイミングが一緒だったという話なのだろうが、何となく2人きりにはなりたくなくて、洗面所で直す必要もない髪を手櫛で梳いたりと意味のないことをして時間を潰していた。
そろそろいいかなと、トイレのドアを開けソロソロと外に出ると、後ろからヌッと長身の男が現れてつくしはビクリと身体を震わせた。

「おい…」
「は、はい…?」
「ちょっと話あんだけどよ」

目の前に立たれると首が疲れるほど見上げなくてはならなくて、つくしは司と呼ばれていた彼と無意識に距離を取った。

「何ですか?」
「…つーか、何で離れる?」
「え…首が疲れるから」
「はぁっ?」

つくしには、何故司がそんなに驚いた顔をしているのか理解出来なかったが、離れてしまえば眼光の鋭さも怖さも多少緩和されるということにホッとする。

「お前…類の女なんだよな…俺らに近付いてくる女って大抵金目当てなんだけどよ、お前はどうやって類を落とした?あいつがこんなチンチクリンに引っかかるとは思えねぇんだよな…どうしても…」

相手に対して失礼なことを言っているという意識さえないのか、至極真面目そうな顔でつくしに問う。
知らない男たちに拉致され恐怖に怯えていたせいで本来の我の強さは最近影を潜めていたが、つくしは元々持っていた負けん気の強さがムクムクと湧き上がってくるのを感じた。

「お前が多少着飾ったとしても、類ほどの男が落ちるにしちゃあ…これだもんな」
「……」
「あぁ、実はすげぇテク持ってんのか?」
「……」
「おいっ!聞いてんのかよ!?」
「……さいな…」
「ああ?」
「煩いな!何であたしなんか好きになったのかなんて、あたしが聞きたいわよ!幼馴染みなんだったら、自分で聞けばいいじゃない!!この、オタンコナス!!」


***


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ペットと呼ばないで 35

ペットと呼ばないで 35



類にプロポーズされたものの、全ての片が付くまではと互いの両親への挨拶などはまだだった。
あれから一月が経ち、つくしは相変わらず日々勉強に励み、今ではSPを付けながらではあるが外にも1人で出られるようになった。

佐原が帰った夕方、つくしがマンションで家事を済ませていると、新しく買い与えられたつくし用の携帯が着信を告げた。
この電話を鳴らすのは1人しかいないため、つくしは相手の名前も確認せずに電話に出る。

「類…?どうかしたの?」
『勉強中にごめん。つくし、今からこっち来れない?』
「こっちって、類の会社?行けるけど…どうして?」

つくしが類の仕事を手伝えるようなレベルに到達していないことは、自分が勉強をすればするほどよく分かる。
今の現状のつくしに仕事を任せたいという話でないとは思うが、何だろう。
今までそんなことを頼まれたことは一度もなかったため、つくしは行けると言ったものの不安が胸を掠めた。

『俺今日はもう帰る予定だったんだけど、幼馴染みがつくしに会わせろって煩くてさ…飲みに行くことになったから、つくしも来てくれる?』
「あ、そうなんだ…いいの?あたしが行っても?」

何を頼まれるのかとドキドキしていたつくしは、ただ飲みに行くだけだと知りホッと息を吐いた。

『ほんとはつくしを誰にも見せたくないけどね…。でも色々頼んでるし、あぁ、あきらもいるよ』
「そっか。前にちゃんとお礼言えないままだったし、良かった…会う機会があって」
『じゃあ、今からマンションに車回させるから、こっちおいで。受付に声掛けてくれれば降りるから』
「うん、分かった」

つくしは電話を切ると、ウォークインクローゼットから洋服を探す。
デニムにTシャツでつくしには十分だったが、類の会社に顔を出すのだし一応はきちんとした格好で行かなければと思ったのだ。
しかし、飲みに行くと言っていたがどういった店に行くのだろう。
無難なワンピースを選び軽くリップを引いたところで、インターフォンが鳴り運転手から車が到着したことを告げられる。



「ほ、ほんとにここ…?」

つくしは目の前にそびえ立つ何十階建てかも分からないビルを見上げ青ざめた。
大きな会社とは聞いていたし佐原もよく類の実家のことをお邸と言っていたため、つくしと釣り合わないお金持ちなんだろうなとは思っていた。

いや、でも…まさかこんな大きな会社だとは…
しかも、類…専務って言ってなかった?

緊張しながらも類が待っていると思いロビーに足を踏み入れればショーケースに飾られた食品サンプルが目に留まる。
日本中の国民全員が知っているのではと思うほど有名なこのデザイン、まさかこれを作っていたのが類のところの会社だったとは思いもしなかった。
つくしが唖然としながらショーケースに張り付くように眺めていると、退社する社員に訝しげな視線を投げられ慌てて背筋を伸ばし受付へ足を向けた。

「あ、あの…」

カウンターの奥に座る女性に軽く会釈をしながらつくしが話し掛けると、さすが一流企業といった一点の曇りのない笑顔でお約束ですかと女性が言った。

「花沢専務と約束がありまして、牧野と申します…」

つくしが答えるとにこやかだった女性の眉がピクリと動き、つくしを全身舐め回すように見つめる。
やはりこの格好が場違いだったのかと、つくしは間の悪いような心持ちで俯いた。

「少々お待ちください…」

受付の女性が内線を掛け来客を告げると、電話の相手の返答に女性の声のトーンが落ちていく。

「かしこまりました。お伝えします…」

受話器を置くと最初に見せた笑顔とは打って変わったキツイ表情でつくしを睨み、ブツブツと独り言のように言った。

「あなた…花沢専務の何なの?専務を訪ねてくる女なんてしょっちゅういるけど、専務は煩わしいのが嫌いで誰からの誘いも受けることなんてなかったのに…」
「あの…?類はなんて…」

つくしが類と呼んだことに女性の眉が釣り上がる。
つくしは名前しか名乗っていないが、女性がきっと類との関係を勘繰っているのだということは分かる。

「何を勘繰られているのかは知りませんが、仕事をきちんとすべきだと思います」

つくしが類との仲を勘繰られるような立場でなく、大事な取引先の客だったりしたらどうするのだろうかと、受付の女性に対しての対応に眉を寄せてキッパリと言った。
言ったことの意味を理解した女性がつくしを鼻で笑う。

「フン…あのお方が取引先であろうと何だろうと女性と2人きりで話されることはないわ。煩わしいのが嫌なんでしょうね…来客はいつも男性よ。でもここに専務に会いたくて来る女は後を絶たない。あなたのようなね」

事情を知りそうだったのかと女性の態度の悪さに思わず納得しそうになるが、つくしは一流企業で働くことが出来ることを幸運と思わずに胡座をかいているような人を不快に思う。

「だとしても、給料貰ってそこに座っているなら、しっかりその分仕事すべきです」

つくしが負けじと言い返せば、キツイ目でつくしを睨む。
しかし、類会いたさに来る女性が後を絶たないとは凄い話である。
確かに非の打ちどころのない容姿に、これだけ大きな会社の専務という立場ならばそれも致し方ないのかもしれないが、そんな人が何故つくしを…というところが自分でも疑問だ。

「つくし…何してんの?」


***

リレー最終話まで更新されてます♬
まだ読んでない方はこちらからどうぞ↓


11通りの最終話は、6月27日0:08〜毎日更新になります♬


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ペットと呼ばないで 34

ペットと呼ばないで 34
やっとここまで来ましたよ〜
もうすぐ終わる〜なのに、司を登場させるの忘れてた(笑)



「でも…あたしも、進に何度も電話したんだよ…?」

類に助けられてから何度も進の携帯には掛けていたが、呼び出し音が鳴ることもなく電源が切られているか…というメッセージが聞こえてくるだけだった。

「あ、うん…今思えばそれもあいつらにハメられたんだろうけど…。姉ちゃんがいなくなる前から、かな…イタズラ電話が酷くて、朝でも夜でも構わずに鳴るから電源切ってたんだ。大丈夫かなと思って電源入れると途端に鳴り出して…。姉ちゃんには家の電話番号、留守電に入れてるから大丈夫だろうってさ。俺もバカだよね…」

進は自分のせいであるかのように肩を落とす。
進の所為ではないことは、つくしが一番よく分かっている。
仕事を辞めなければならなかったことも家族に話せず、悔しかっただろうにそれを一言も口に出さずにアルバイトを掛け持ちしながら両親を助けていたのだ。
誰がそんな進を責められるだろう。

「君のせいじゃないし、それが奴らの手だから」

類がピシャリと言うと進は弱々しく微笑んだ。
その表情がつくしによく似ていて、姉弟であることを感じさせる。

「類…美作さんは、あたしに何もしなくていいって、取り敢えず片がつくまでは類のところにって言ってたけど…どうするのかな。自分の家族のことなのに何も出来ないのって…」
「つくしに何もしなくていいって言ったのは、実は俺たちのためでもあるんだ。万が一、つくしがまた捕まることがあれば俺は何としても助けるよ…。でも、俺って割と有名人らしいから向こうはそれをネタに強請ってくると思う。だから、今は動けないんだ」
「有名人、なの?」

確かに大きな会社の後継者であるようなことは佐原からも聞いていたが、つくしは花沢物産という企業を知らなかった。
就職活動をまともに出来なかったこともあるが、そもそも大企業は大卒が基本でエントリーする資格すらつくしにはなかったのだ。

「みんながみんな知ってるわけじゃないよ。経済誌に顔を出してる程度かな。でも、大企業の後継者にとって反社会勢力との繋がりは絶対にあってはならないものだから…」
「美作さん、は…?大丈夫なの?」
「あきらんとこはちょっと特殊だからね。取引先がアジア圏中心だし…金さえ払えばっていう考え方の連中が多いから。奴らを潰すのは時間の問題だよ…ただ、今回は合法的にって頼んだから結構時間が掛かるんだ」

優しいお兄さん風なイメージであきらのことを見ていたつくしだったが、類から、潰す、合法的にという意外すぎる言葉が出てきたことで目を丸くする。
しかし、今回は合法ならばいつもは…とはとても聞く気になれずつくしは口を噤んだが、進が類に問う。

「どうするんですか…?」

類も一瞬考えた後に、言葉を選んで答える。

「闇金業社を合法的に捕まえるのは殆ど不可能に近い。住所も電話番号も使ってる口座すら自分名義のものではないからね。もちろん契約書なんかも一切交わさない。だから警察はなかなか動けないんだ。運良く摘発出来たところで、氷山の一角だし…それもトカゲの尻尾切りだから」
「それは、何となく分かります…」
「でもあきらは、バックに付いている組織も借りている人たちのリストも手に入れられる立場だとしたら?」

進もつくしも顔を見合わせる。
確かに確固たる証拠があれば、出資法違反、貸金業法違反で取り締まることが出来る。
しかし、話を聞いていてつくしが思ったことは、たとえ警察が動き闇金業社が摘発され逮捕に至ったとしても、懲役刑は10年以下で、その間も別の業社が生まれ警察と完全にイタチごっことなるのだ。
だから、借りてはならない…借りる人がいなければ、闇金業社など生まれはしないのだから。

「パパもママもバカだよね…なんで、そんなとこで借りたのかな…」

少し考えれば高卒のつくしにだって分かること。
進も同じ思いなのか、慰めるようにつくしの肩をポンと叩いた。

「そうだね。だから…片が付いたらつくしの両親と話をさせて欲しいんだ」
「類が?もちろん、こんなにお世話になってるんだから」
「あきらから連絡が来たら行ってくる。でも、帰れる段階になったとしても…つくしはもう暫く会わないで欲しい。進も両親のためだと思って口裏合わせて」

つくしは何故と疑問には思うが、類が自分のために動いてくれていることは明らかで、今は類やあきらのことを信じるしかないのだと思っていた。
進もつくしと同じ気持ちだったのか、類の言葉に被せるように首を縦に振った。



話が終わると、類は進に先に店を出るように言った。
万が一付けられていることも考えてのことらしく、進が店を出て暫く経ってから今度は裏口を使いつくしたちが店を出た。

「類…本当にありがとう。あたしたちのせいで余計な仕事増やしちゃってごめんね」

表通りに出ると、休日ということもあって車道も歩道も混み合っている。
邪魔にならないようにと端によって迎えの車を待つ間、つくしはポツリと言った。

「つくしのせいでも進のせいでもないだろ?しかも、つくしは俺のお嫁さんになる人だからね。フィアンセを助けるのは当たり前のことじゃない?」
「へ…っ?」

あまりに軽く世間話として言われ、つくしがポカンと口を開けたまま固まっていると、類はバツが悪そうに頬をかく。

「今のプロポーズのつもりなんだけど…」

照れたように目を反らした類の頬に薄っすらと赤みが増したことに、つくしは胸が激しく波打ち膝がわけもなく震えるのを感じた。

「あたしなんか…で、いいのっ…?」

あまりにあり得ない出来事に、上擦った声がしゃくり上げるようになってしまい上手く話すことが出来ない。
頬を伝う涙がポタリとアスファルトに落ちる。

「佐原にも、つくしを逃したら誰もいないからちゃんと捕まえてくださいって発破かけられた…俺もそう思ってるよ。だから、俺と結婚して?」
「でも、あたし…何の役にも立たない…し」
「それはこれからでしょ?俺の仕事手伝ってくれようとして勉強してるんだから」
「でも…」

幸せに満ち溢れている分不安も大きい。
そんなつくしの不安を包み込むように、類がギュッと抱き締めた。
どこからか、歓声に似た声が上がるが類の胸に抱き留められてつくしの耳には届かない。

「黙って…つくしはYESって言えばいいんだよ」

つくしの顎を持ち上げ、類が周りから見えないように唇を塞いだ。


***


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