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恋愛偏差値 35最終話

恋愛偏差値 35 最終話


「あっ、ごめ…あれ、何で涙なんか…目にゴミが入っちゃったみたい…何でもないの。ごめんね…」

気付けば泣かないと決めたはずの瞳からは涙が溢れ、大丈夫かと心配そうに見つめる大聖に言い訳しなければならない自分が嫌で仕方がない。
ゴシゴシと目を拭い、落ち着かせるようにアイスティを飲み干しはぁっと息を吐いた。

「ごめんね!やっぱり外だと風が強いね!目にゴミが入っちゃった!そろそろどっか行こうよ!あ、久しぶりにたいちゃんの好きなオムライス食べに行く?」

つくしは空になったテーブルのグラスを片付けようと椅子から立ち上がると、大聖がつくしの腕を掴んで止めた。

「分かるよ…つくしの空元気ぐらいさ。何年付き合ったと思ってんだよ。それに…何か話があったんだろ?」

座ってと言われ、つくしは手に持ったグラスを再びテーブルに置いて席に着いた。

「あ、あの…」
「他に好きな奴でも出来た?」

大聖の言葉にビクッと肩を震わせて顔を上げると、眉を下げ苦笑した顔がそこにあった。

「ほんと、分かりやす過ぎだろ。嫌な予感はしてたんだよな…随分前から。さっきので確信したけど。俺じゃ…そんな顔させられないんだもんな」
「そんな顔って」
「嫉妬した女の顔。…花沢専務だよな?つくしの好きな相手。で、多分専務もつくしのことが好きなんだろうな…」

大聖に次々と言い当てられて、桜子の言う、隠し通すことは出来ない、すぐにバレるという言葉が思い出される。

「たいちゃ…ごめ…っ」
「謝るな。俺がつくしを振るんだからな」

つくしは溢れそうになる涙をグッと堪えて、唇を噛み締める。

「他の男に目移りするような女とはもう付き合えない」

結局は大聖に言わせてしまった。
最後の最後までどれだけつくしに優しいのだろう。

「たいちゃん…ありがと…」
「振られてお礼言う奴があるかよ…ったく、そのお人好しは一生直らねぇな」
「あたしより…たいちゃんのがよっぽどお人好しだよ」

つくしが泣き笑いのような顔で唇の端を上げると、大聖も寂しそうに笑った。
こんな風に2人で話すことはもうないのだと、分かっていたから。
名残惜しく思ってしまうのは、きっと情なのだろう。

「なぁ、お前の首のところに……いや、何でもない…聞いたら立ち直れなくなりそうだ。じゃあ、俺もう行くわ。専務にちゃんと連絡しろよ?どうせ、誤解だろ」
「………?あ、うん…」

大聖は自分のグラスだけを持ち席を立つと、振り返ることなく店を出て行った。
大聖の行動に何処と無く違和感を感じるのは、いつも並んで歩くことが普通で、大聖の後ろ姿など見る機会がなかったからだと知る。

類に連絡しなければならないが、先ほどまで見ていた類と女性の姿を思い出すと胸が痛む。
誤解だと信じているのに、聞くのが怖いなんて自分はなんて臆病なのだろう。

いつの間にか周りが騒ついていることにも気が付かず、つくしは座ったまま類のいた場所に視線を向ける。
もうそこに彼の姿があるはずもなく、女性が乗っていたタクシーも走り去った後だった。

「こら、連絡してって言ったでしょ?」

急に目の前に影がかかり、つくしが顔を上げると会いたかった男の姿があった。

「類…」

店内にいる客も、大通りを歩く人々も皆一度立ち止まって類を見ていた。
それぐらい目を惹きつけられる存在で、何故こんな人がつくしを好きだなんて言うのだろう。

「さっき、通りの向こうから見えたからさ。泣いてなかった?」

泣いていたのは類と知らない女性がいるところを見てしまったからなのだが、多分大聖との話し合いで泣いたと思っているだろう類には言えずに言葉に詰まる。
先ほどまで大聖が座っていた場所の椅子を引いて類が座れば、隣に座っている女性たちが歓声のような声を上げる。

「泣いてない…」
「嘘、目は良い方なんだ。どうして泣いてたの?」

一度は止まったはずの涙が、再び溢れそうになるのを堪えていると顎をクイっと持ち上げられる。

「我慢しない。甘えていいって言ったでしょ?」
「だって、類が…笑うから…」
「笑う…?俺が?」

つくしは顔を赤くしながらも、ポツポツと実は類と女性が一緒にいるところを見てしまったことを伝えた。
つくしの涙の理由に、類はクスッと声に出して笑った。

「揶揄ってる?」
「いや、喜んでる。ヤキモチ妬いてるあんたが可愛いなって」
「そういうの揶揄ってるって言うんだけど」

拗ねて唇を尖らせるつくしの頬を撫でると、誰をも魅了するカリスマ性を携えて類は優しく微笑んだ。
類のその表情に見惚れるあまりつくしも身体が動かなくなるほどの効力で、チラリと横を見れば隣に座る女性たちですら、顔を赤くして固まっている。

「あきらの母親だよ…さっきの」
「美作さんの?」

母親という年齢にはとても見えなかったが類が嘘を吐いているようには見えずに、驚きに見開かれた目を類へ向ける。

「あんたの服、持って来てもらったりしたから…そのお礼に会ってた。さっきまであきらも居たよ」
「服って…もしかして…」

つくしが先日朝帰りした時に用意されていたものだろうか。
いつの間にと思っていたのだが、あきらの母親に頼んでいたとは思いもしなかった。

「この間泊まった日、着替えがなかったからあきらに頼んだんだけどね…あきらの母親ブティックの経営もしてるからさ」
「最初から泊まらせる気だったの…?」

つくしが帰るという選択肢もあったはずで、そもそもあの日つくしが会食の後に類のマンションに行くことを最初から予測していたのだろうか。

「仕事にかこつけてでも抱きたいって…ね。俺もただの男だよ」
「類の手のひらの上で、転がされてるだけの気がする」

殆ど初めての出会いからすぐに、まるで洗脳のようにあんたは俺のことが好きだと思うなどと自信満々に言われ、結局は類の言った通りになっている。

「そう?でも、俺はまだ言って欲しい言葉はもらってないよ…」
「言葉?」
「言わせることも出来るけど…それじゃ意味ないしね。そろそろ行こ」

類は立ち上がりつくしの手を取る。
どこにと首を傾げたつくしに艶色を滲ませた表情で、類は手を絡ませた。





それから2年が経ち、つくしは来月秘書室を退職することになっていた。

「つくし…来てくれてありがとな」
「ううん、おめでとう。たいちゃんが幸せそうで良かった…すっごくお似合いだし」

つくしと別れた後、2人の間に何があったのかは知るところではないが、今日大聖は結婚式を挙げた。
本当は出席するべきではないという気持ちがあったが、新郎側ではなく新婦側の友人として招待状をもらい、参列することが出来た。
2人とも幸せになって欲しいと願っていたから、この日を迎えられたことを嬉しく思う。

「香は?」
「今、お義母さんと話してる。つくしもおめでとう、専務から聞いたよ。もっと早く結婚するもんかと思ってたけどな」
「類から聞いたの!?」

類と大聖には仕事以外で接点はないはずで、そんなプライベートな話をするとも思えなかったつくしは、驚いた声を出した。

「あの人、つくしのことになると余裕ないよな。2年がかりのプロジェクトが成功したら結婚って、花沢の両親との約束だったんだろ?わざわざ内線で呼び出された俺は冷や汗もんだっつーの」
「はは…ごめん」

病院向けのシステムはやっと軌道に乗り始めた、とはいえまだ損失を回収出来る段階ではないが、これから何年も先の未来には確実に利益をもたらすだろう。
類の両親に結婚を反対されることはなかったが、類がすぐにでも結婚と乗り気だったのに対し、両親は冷静だった。
プロジェクトが失敗すれば、いくら同族経営であっても責任を取らなくてはならない立場にいる。
その時につくしを守れるだけの力がお前にあるのかと、類に突き付けた。
つくしとしては、結婚を急ぐ理由はなかったし、まだ会社で学びたいことも山ほどあった。
何せプロポーズされた時はまだ新入社員だったのだから当然だ。
渋る類を両親ともに説得し、この2年間は婚約という形を取っていた。

「二次会には来れないんだよな?香が専務はつくしを束縛し過ぎだって怒ってたぞ?」
「この後、あたしたちの式の打ち合わせがあるからさ。香に赤ちゃん産まれたら会いに行くって言っておいて?」

じゃあ香によろしくと披露宴会場で大聖と手を振り別れると、つくしはホテルの出口に向かった。
ホテルの前に黒塗りの高級車が停まり、スーツに身を包んだ類が車を背に立っていた。

「類!」
「つくし、終わった?」

類の元へ駆け寄ると、フワリと抱き締められる。
相変わらず甘い男はつくしの頬に口付けると、助手席のドアを開けてつくしを乗せた。
類が運転席に乗り込み、車はゆっくりと発進する。

「あたしたちの結婚のこと、たいちゃんに言ったんだね。冷や汗もんだったって言ってたよ?」
「ま、一応ね。それより…そのたいちゃんっての止めない?とっくに別れてるんだし、向こうも結婚したんだしさ」
「だって…今更青山さんとか呼べないよ…逆に恥ずかしい。類こそ、未だにたいちゃんに嫉妬するの止めない?」

つくしが口を尖らせて、類を非難するように睨んで言うのもここ2年の間に何度も交わされてきた会話だ。

この2年は無駄じゃなかったーーー

今は、類と自分の思い出がたくさんある。
類の好きな食べ物も、マンションに少しずつ増えていった家具も、そして交わしてきた会話も、全て2人で歩んできた道のりにあるものだ。

「そのピアス…まだ着けてくれてるんだ…」

類がつくしの耳に着けられたチェーンピアスに軽く触れながら言った。
前を見て運転する類の横顔からは、特に表情が変わったようには見えなかったが、ほんのりと赤い頬が類が照れているのだと教えてくれる。
そんな小さなことに喜びを感じてくれる類が愛おしくて、つくしは類の肩に額をくっ付けるように置いた。

「類…愛してる」


fin



突然ではありますが、このお話を最後に花男二次はお休みしようと思います。
前に日記で書いた夏休み…という意味の休みではありません。

次のお話のプロットも立ててたんですけど、どうも毎日更新が出来るほどの創作意欲が湧かなくて…。
やはり飽きっぽいのか…一年書き続けたからもういいか…という気持ちになってしまいました。

まだ愛人イベントも他のイベントもありますし、約束は出来ませんが短編ではそのうち書こうかなと思ってはいます。
そして暫くは他の二次作家さんの類つくを読み漁りに行きます!
でも、書くのは大好きなので止めることはないですし突然また類つく書き始めたりするかもしれないけど…その時はまたよろしくお願いします♬
いつまでも花男二次応援してます。日参させて頂きますので書き手の皆さまも頑張ってください!

最後になりましたが、毎日うちのブログに遊びに来てくれた皆様、今まで本当にありがとうございました。
拍手やコメントなど本当に嬉しかったです。
恋愛偏差値、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

オダワラアキ

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恋愛偏差値 34

恋愛偏差値 34


泊まっていくかという類の誘いを今夜ばかりは断って、帰宅途中に大聖からのメールを開く。
マナーモードにしていたつくしの携帯がバッグの中でヴーと音を立て、大聖からだろうとつくしが一瞬バッグに視線を向けたことを、類は多分気が付いていただろう。
しかし類の前で大聖に返信することなど出来ずに、そろそろ帰ると腰を上げるしかなかった。

メールはやはり大聖からで、帰って来た報告と明日会えるかという内容のもので、つくしがいいよと返信すると、すぐに時間と場所の連絡があった。
待ち合わせで指定されたカフェも、2人で何度も行った思い出の多い店だ。
そこの店だけではなく、付き合ってきた間にたくさんの2人の思い出が出来た。

大学で大聖が好きだと言って毎日のように食べていたオムライス、横に添えられているブロッコリーが嫌いだといつもつくしの口に入れてきた。
野菜も食べなよってつくしが言えば、じゃあ俺が食べられる野菜料理作ってよと返すのも毎日の会話だった。
付き合って、初めて手を繋いだ時大聖の手は少し汗ばんでいて、つくしも緊張していたのに何度も手を服で拭う大聖がおかしくてどちらからともなく笑った。
たとえこの気持ちが恋ではなかったとしても、つくしにとっては大切な人に変わりはない。

つくしは家に帰り、昔撮った写真が収められているアルバムを開いた。
大学時代の写真には、大聖とつくしだけではなく桜子と香が写っているものも多い。
性格ゆえか桜子はつくしとしかつるむことはなかったが、大聖とは猫を被ることなく話していた。
つくしと大聖がどこか似ている部分があるからかもしれない、だからつくしも大聖と一緒にいて楽だった。

優しくてお人好しで、いつもつくしの気持ちを考えて動いてくれる…そんな人を裏切った。

ポタポタとつくしの目から涙がこぼれ落ちる。
誰のために、何のために涙が出るのか…つくしが泣くことは許されないはずなのに涙は止まることなく流れ落ちる。
明日、大聖の前では泣かないようにすると決めたから、今だけはと許しを請うように開いたアルバムのページを濡らした。



何度も待ち合わせに使ったカフェテリア、いつも来るのは大聖の方が早くて、自分が来るのを一体何分待っていたんだろうとつくしは考える。
今日は待ち合わせの30分以上前に店に着いて、オープンテラスに座って大聖を待った。
店員に飲み物を注文してすぐ、大聖が通りの信号を渡って来るのが見える。
待ち合わせの20分も前にいつも来てくれていたのだと、初めて知った。

「たいちゃん」

つくしが椅子を立ち手を振ると、呼ばれて振り返った大聖が驚いたような顔をしながらも、手を軽く上げて応えた。

「久し振り。早いな…」
「うん、たいちゃんがいつもどれくらい早く来てるのかな…って気になって」
「それでつくしまで早く来てたら、待ち合わせの時間決めてる意味なくなるだろ?あ〜しっかし今日暑いな…出掛ける前に飲み物頼んで来ていいか?」
「うん」

すっかり昼間は春らしさが鳴りを潜めて、夏の暑さを感じさせる陽気になっていた。
1ヶ月前は、今こんな気持ちで大聖の前に座ることになるとは思ってもみなかった。
注文カウンターに並ぶ大聖の後ろ姿を見ながら、つくしは氷の入ったアイスティのグラスをストローでかき混ぜる。
結露がグラスを伝ってテーブルに落ちる、その様子をボンヤリと眺めていた。

「つくし…?」

気が付けば目の前に座ってアイスコーヒーを飲んでいた大聖が、黙ったままのつくしに声を掛けた。

「どうかしたか?ボンヤリして…具合でも悪い?」
「え、あ…ううん!暑いなって…テラスじゃなくて、お店の中にすれば良かったね!」

つくしは慌てたようにアイスティを口に含み、顔をパタパタと手で仰いだ。
大聖はつくしを見て優しい笑みを浮かべる。

「そういえば、たいちゃん焼けたね…色んなとこ行ってたんだっけ?」
「あ〜全国行脚したな〜。北は北海道、南は沖縄までな。ゴールデンウィーク始まるのに旅行行きたいと思わないぐらいこの1週間で制覇したかも」
「メールで1日三県回ったって書いてあったから、びっくりしたよ。お疲れ様」

大聖は現在進行中のプロジェクトの件で、全国各地の花沢系列の病院を上司と共に回っていたらしく、結構な気温の中報告書を移動中に纏めながらのハードスケジュールをこなしていたのだという。

「で、つくしは?仕事どう?」
「仕事…は、うん…何とか頑張ってるかな。あ、あのね…あの…話が…」
「あっ、あれって専務じゃないか?通りの向こう…」

つくしが意を決して何とか話を切り出そうとすると、大聖が指を指した方向に遠くからでも間違えるはずがない男が立っていた。

「あれ…恋人か?結構な美人だな…」

類は大通り沿いで停まっていたタクシーに女性をエスコートしながら後部座席に乗せると、つくしにだけ向けられていると思っていた顔でフワリと笑い軽く会釈をした。
つくしは目を離すことが出来ずに、驚愕に見開かれた瞳で瞬きもせずにただジッと見つめていた。

「他の女の人褒めないで〜とかつくしは本当言わねえよな……って…つく、し?」


***

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恋愛偏差値 33

恋愛偏差値 33



耳に当てた携帯から伝わる彼の声に、つくしの胸は暖かくなっていく。
目を瞑ってずっと聞いていたいとすら思ってしまうが、もしかしたら仕事の用かもしれないとつくしは気を引き締め直した。

「専務…?」
『仕事で電話したんじゃないよ?』
「は、い…」

緊張で声が掠れて、上手く音が出ない。
つくしは軽く咳払いをして、類と言い直す。

「どうか…したの?」
『今日、青山帰ってくるでしょ?』

どうして類が大聖の予定を知っているのかと疑問に思うが、それは愚問だと気が付いた。
直接ではなくても出張命令を出す立場にいる類が、部下の予定を調べられない筈がなかった。
つくしのことを心配して連絡してくれたのだろうか。

「う、ん…夜帰ってくるって」
『待つって言ったけど…本当は会わせたくない俺の気持ち…分かる?』
「……っ」

類の言葉は、逃げられないようにつくしを追い込んでいく。
ダラダラと答えを出すことが出来ない自分が悪いのは分かっている。
長く宙ぶらりんの状態を続けることは、大聖を余計傷付けることになる。
桜子にも言われたが、大聖を裏切って類と関係を持った以上、一生隠し通すかキッパリと大聖と別れるしかないのだろう。

『牧野…?』

類の低い声が電話越しに耳に伝わると、ベッドの中で囁かれているような感覚に陥る。
まだつくしは大聖の恋人だ…そんな自分が類を欲してはいけないのに、どうしようもなくそばに居たくて、ただあの人の香りに包まれていたいと思ってしまう。

「類……」
『ん…?』
「類に…会いたい…」

電話越しにも類がどんな顔をしているのか分かってしまう。
少しだけ驚いたように目を開いて、その後は嬉しそうに微笑むんだ。

『今からおいで?』



類のマンションでつくしが簡単な昼食を作り、午後の時間をゆっくり過ごす。
何をするでもなく、肩が触れ合う距離でラグに座って他愛のない話をした。
仕事との切り替えが上手く出来ずに敬語で話してしまうと途端に不機嫌になる類に、まだ慣れないながらも普通に話しかける。

「類って一人っ子?」
「うん…そう見える?牧野は?」

ラグにゴロンと横になった類が、つくしの足の上に頭を乗せる。
サラサラの髪に思わず触れたくなって、つくしが遠慮がちに髪を撫でると気持ちよさそうに類は目を閉じた。
身体は大きいのに美しい猫みたいにも見える男は、つくしが黙り込んでいるのを訝しむように薄眼を開けた。
ただ実は見惚れていただけとは言えずに、誤魔化すように話を続ける。

「類は…結構強引だし全然人の話聞いてないし…弟とか妹がいるようには見えないかな。あたしは弟が1人いるよ」
「俺が強引なのは牧野にだけだよ。あんたは長女って感じがするよね…強がりで寂しがりやで甘え下手」
「寂しがりや…?」

強がりはよく親にも言われているし自分でも自覚はあるが、寂しがりやと言われたのは初めてだった。

「本当はもっと甘えたいとか思ってるくせに出来ないから、ベッドの中でだけ出るんじゃない?可愛いけどね…俺の胸に擦り寄って眠ってるとことか、手を握ったまま離してくれないとことか」
「そ、そんなことしてた…?」

確かに朝起きると類の胸に顔を埋めていたが、まさか自分から擦り寄っていたとは夢にも思わなかった。
つくしの真っ赤に染まった顔を見て、類はクスッと笑いを漏らすとつくしの頬を指で撫でた。

「だから…あんたから会いたいって言ってくれるとは思わなかった…」
「そ、それは…」
「もっと俺に甘えて。まだ恋人じゃないけど、あんたのことが好きな俺の気持ちを利用しな…どんな我儘でも聞いてあげるよ」

つくしが罪悪感に苦しんでいるのもお見通しなのだろう。
会いたければ会いたいと言っていいのだと、類は言う。

「ちゃんとする…から。たいちゃんに会って言う…」
「それはプロポーズを断るって思ってていい?」

類の問いにつくしが小さく頷くと、類の髪を撫でるつくしの手を取り口付けた。

「ごめんな…他の誰かを傷付けても牧野を手放したくない」
「多分…あたしも、そうなんだと思う…」

身体を起こしつくしの手を握ったまま類が顔を寄せると、つくしもゆっくりと目を閉じ受け入れる。


***


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恋愛偏差値 32

恋愛偏差値 32



「桜子…色々とありがと」
「先輩をこんなに、恋愛偏差値の低い女にした原因は私にもありますからね」
「え?どういう意味?」

つくしが首を傾げて聞くと、桜子が綺麗にリップの塗られた口の端を上げてフッと人の悪い笑みを浮かべた。

「高校の頃から、先輩のファンはたくさんいたんですよ。ただ、先輩も彼氏が欲しいって感じではなかったし、私も男性より先輩と話している時の方が楽しかったので、先輩には大事な人がいるって周りに吹聴してました。だから、あまり寄ってこなかったでしょう?」
「え〜モテないだけだよ。だって、桜子より一年早く大学入ったけど…別に大学入っても、そんな告白とかされなかったよ?」

高校の頃は男子と一緒になってサッカーやバスケをし遊ぶようなタイプであったから、自分を女として見ていた男子がいるとは思えないし、桜子の大事な人がいるという牽制も意味があるとは思えない。
それに、男性から告白されたのは大聖が初めてだった。

あたしがモテるはずないじゃんーーー
類じゃあるまいし

相当モテるであろう類のような綺麗な男性がそばにいると、自分に自信がなくなってくるのは、仕方のないことだろう。
何せ、秘書室の女性ほぼ全員に告白された経歴の持ち主だ。
自分への告白云々とは全く別の理由だが、何だか面白くなくてつくしは唇を尖らせる。
それを勘違いしたのか桜子がクスリと笑い、話を続けた。

「当たり前じゃないですか。高校の頃の先輩は髪も短かったし、体育の後男子の前で着替えるような男勝りで、かなり話し掛けやすいタイプだったでしょう?私が髪を伸ばしてくださいってお願いしたの覚えてます?」
「そりゃ忘れないよ…いくら切りたいって言っても、絶対ダメって言うんだもん。今は秘書だし…それなりに落ち着いて見えるから感謝してるけどさ」

桜子の言いなりになる必要は全くないのだが、律儀にもつくしは桜子の言いつけを守って、毛先をそろえる程度しか髪を切らなかった。

「髪を伸ばして…服もボーイッシュなTシャツ、デニムを控えれば、先輩はどこからどう見ても綺麗なお嬢様でしたから。男性から見ると綺麗すぎる人って近付き難いらしいですよ?まあ、鈍感で純情な先輩を守るためにと思ってましたけど…まさか、こんなに恋愛音痴になるとは予想外でした」
「恋愛音痴って…」
「青山さんを勧めたのは私ですけど…いつまで経っても友達の域を出ない付き合いで…全然恋人って雰囲気になりませんし、それでも少しずつ近い存在になっていってると思ってたんです。でも…本当の恋をすると、女は一瞬で変わるものですね…花沢さんと一緒にいるところなんて、恋人同士にしか見えませんでした」
「やっぱり…あたしの気持ちって…すぐに分かったの?」

桜子は人の気持ちに聡い、だから気が付いたのではないかと一応聞いてみるが、高校の頃からの付き合いの彼女はまだ言うかとでも言うように、わざとらしくため息を吐いてやれやれと肩を竦めた。

「先輩は良くも悪くも分かりやすいんです…もし花沢さんと2人でいるところを青山さんに見られたら一発でバレますよ?恋する乙女ですから」
「類にも言われたの…分かりやすいって」
「別にダメとは言ってませんよ。男性は先輩のそういうところも含めて、可愛いと思うんでしょうから…。でも、早めに先輩から青山さんにちゃんと話をしないと、先輩の気持ちなんてすぐにバレますよって言ってるんです」
「うん…ちゃんとしなきゃ、ね…」

その後の報告を必ずすることと約束させられて、三条邸を後にしたつくしは、土曜日の昼過ぎの持て余した時間をどうするか悩んでいた。
本当は1日忙しかったらしい桜子は、無理やりつくしとの時間を作っていたようで、連絡を自分から全くしなかったことで大分心配かけていたようだ。

自宅に帰るにしても、街へ出るにしても三条邸からは電車の距離だが、駅を通り過ぎボンヤリと考え事をしながら足を進めて行く。
バッグの中にあるキーケースに付けられた真新しい鍵は、結局は類に押し切られる形でつくしの物となった。
とは言っても、類のマンションに来いと言われたわけでもないのに、勝手に足を運ぶことはない。
ピアスを貰った日から、プライベートでは一度も会ってはいない。
類も忙しいのか、仕事で深夜まで会社にいることが多いようだ。
つくしも手伝うと言うが、なんだかんだと理由を付けられて22時頃には帰されてしまう。
多分それは類の優しさなんだと分かるが、たとえ遅くなっても少しでも長く一緒に居たいと思ってしまうつくしの心情は伝わってはいないらしい。
きっとそんなことばかり考えているから、桜子にも恋する乙女と言われてしまうのだ。

分かりやすいんだったら、察してよ

類が悪いわけでもないのに、八つ当たり気味にそう思ってしまう。
土曜日は仕事は休みのはずだが何をしているのだろうかと、立ち止まり携帯を取り出しては、またバッグへと戻すことを繰り返すと、手の中でヴーッと携帯が振動する。
つくしは突然のことに驚いて、誰からの電話か相手を見る前に通話を押してしまう。

「は、はい…もしもし…?」
『俺…』


***

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恋愛偏差値 31

恋愛偏差値 31



類と密な時間を過ごし、朝帰りどころか会社の途中まで類の車で送ってもらい、何事もなかったように仕事をするのは至難の技だった。
あれから幾日かーーー。
週末、三条邸に呼び出されたつくしは、幾分怒ったような顔付きの桜子から何を言われるかと身を縮みこませていた。

「で、花沢さんとはどうなったんですか…?」

開口一番に眉を上げそう尋ねた桜子には、先週末に類にお持ち帰りされてから事後報告をしないまま1週間が過ぎてしまった。
心配するメールが入ってきてはいたが、何となく連絡し難かった。
桜子が大聖と友人であることもそうだが、あきらと桜子には飲み過ぎて類にキスしたところを見られている。
恋愛に関しては誤魔化しの効かない桜子には、つくしの気持ちなどお見通しなのではないかと思い、その事実を突き付けられるのが怖かった。
そして結局メールを無視することになってしまったが、黙って待っているタイプでもなく痺れを切らした桜子から強制的に土曜日の約束を取り付けられ今に至る。

「と、泊まった。類の家に」
「類…ですか。何もなかったなんて信じませんよ?それに…先輩が花沢さんに恋してるのは…あの日、気付いちゃいましたから。多分…美作さんにもバレバレです」

ほらやっぱりこうなる…桜子にいくら隠し立てしても無駄なのだ。
類が熱を出した次の日、朝まで何度も類に抱かれた。
前の日と同じ格好で出社するのが憚られ、家に一度帰ろうとするつくしに、いつ買っていたのか類は当たり前のように新しい服を差し出した。
自分から類のマンションに足を運び、服やアクセサリーをプレゼントされる。

恋人でもないのにーーー

自分は大聖と結婚するんだと、決意したはずじゃなかったか。
大聖を裏切っておいてのうのうと騙したまま結婚するのかという道徳的な問題もあるが、大聖と結婚し共に生活をしていくということは、セックスも含めるのだと類に気付かされた。
大聖と付き合って、いつかこのまま結婚するんだろうなと思っていたのに、自分は結婚の意味がまるで分かっていなかった。
大聖の家でそういう雰囲気になった時は受け入れられなかったつくしが、今大聖に抱かれることが出来るのかと、考えさせられた。
もう、自分でもどうしていいのか分からなくなっていた。

「たいちゃんに…プロポーズされたの」

つくしは下を向いたまま短く息を吐き出すとポツリと呟いた。

「そうですか」
「そうですかって…それだけ?」

もっと驚くかと思っていた桜子の反応が意外にも冷静で、つくしが顔を上げると桜子は落ち着いた様子でつくしと向き合った。

「だって断るんでしょう?まさか、受けるなんてことないですよね?」
「え…だって…あたしは今たいちゃんと付き合ってるんだよ…?」

付き合っているカップルが結婚を視野に入れるのは当たり前のことで、例えばつくしが仕事で長い間遠方に行くなどの理由でもない限り、断ることが許されるとは思えなかった。
しかし、大聖と結婚生活をしていけるのかという不安はずっと残ったままだ。

「先輩…付き合ってるからって、結婚しなきゃいけないわけじゃないですよ?心変わりも別れる理由にはなるんです。先輩みたいに純粋で、結婚するまで処女を守る…みたいな人が花沢さんには、抱かれてもいいと思ったんでしょう?それぐらい好きってことなんでしょう?」
「桜子…」
「青山さんが先輩にプロポーズしたなら、もしかしたら何か気付いてるのかもしれませんよ?あんな、先輩のためなら10年でも待てる…って人が何だか急いでるように感じますから。何れにしても、男が2人に女が1人でみんなが幸せになるのなんか無理なんです。誰かは傷付くし、傷付けるんです…青山さんのこと大切に思うなら、なるべく早く答えを出してあげてください」

自分で犯した罪の決着は自分で付けなければならない。
分かっていても、大事な人を傷付けると思うと楽な方に逃げてしまいそうになる。

「第一、他の男と関係を持った恋人と結婚しようとする男なんていませんよ?先輩が黙ったままでいようが、花沢さんとの関係がバレたら終わりなんですから。早いか遅いかの違いなだけです」

黙ったままのつくしに、桜子が付け加えるように言った言葉で、つくしは若干ではあるが救われたような気がした。

「桜子…ありがと。きちんとたいちゃんに話してみるよ…」
「今、出張でしたっけ?いつ帰ってくるんですか?」

先週から出張に行っている大聖から、明日の夜帰ると昨夜連絡が入っていた。
出張から帰って来たら、会えるかと連絡が来るのはいつものことだから、今日か明日の朝にでも連絡は来るだろう。

「今日の夜だって…」
「明日、日曜日ですし…話す時間は十分ありますね」

考えてみれば、自分から大聖に会いたいと連絡したことが一度もないことに今更ながらに気付く。
いつも、つくしを楽しませようと色々なところに連れ出してくれた。
そう頻繁ではないキスも抱き締められる行為も嫌だとは思わなかったのだ。
ただ、あの日少し酔いの回った大聖の行動が恐ろしく感じただけで、類と出会ってなかったら、いずれは受け入れていたのかもしれない。

でも、出会い、そして知ってしまった。
離れたくないと思う相手に、見つめられるだけでどうしようもなく胸が高鳴る感情を。


***


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プロフィール

オダワラアキ

Author:オダワラアキ
オダワラアキの二次小説・二次創作置き場へようこそ。
ひるなかの流星・花より男子・日々蝶々・君に届け・会長はメイド様の二次小説・創作置き場です。黒バス黄黒、青黒BLも書いております。
現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

こちらを読むにあたって下記注意点をお読みになってからお進みください。

このサイトは原作のある漫画の二次創作、小説です。

同人誌や、二次小説(2次創作・夢小説)に抵抗のある方はウィンドウを閉じてください。
原作者様、出版社とは全く関係ありません。

小説の無断転記、複製、配布を禁じます。

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