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wish you were here 10

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両親は漁村で何とか働き口を見つけ、まだ中学生の進と共に暮らしている。
日々の暮らしでいっぱいいっぱいではあるが、その中でもつくしを何とか卒業まで英徳に行かせてあげたいと、生活費を送ることは出来ない分、何とか学費だけは支払いを続けていた。



ここのところ色々な出来事が重なったせいで、バイトを休みがちであったつくしだが、そろそろ食費が底をついてきている。
そこで答えを出すこと、考えることをする暇がないほどに働くことにした。
何もかもを忘れたいとでも言うように。
ずっと働いている団子屋の他に、時給のいい居酒屋でのバイトも始めた。

「あらぁ、牧野さん今日もバイトかしら?貧乏な人は大変ね」
「花沢さんは助けてくれないみたいね?所詮は物珍しさから来るお遊びでしょうし」
「あら、そんな本当のことを言ったら可哀想よ〜」

毎度毎度、嫌味ったらしくつくしに絡んでくる浅井であるが、最近では類のことに含みを持たせて口にする。

つくしががむしゃらに働きたくなる理由は、金銭面の他にこれもあった。

もちろん放っておけばいいだけなのだが、類とのことはつくしにしてみても、自分の気持ちがよく分からないのである。
言い返すことも出来ない、胸を張れない自身の行動が嫌だったのだ。

つくしは無視を決め込み、足早に学園を後にすると、団子屋へと向かった。



気のいいおかみさんと、親友である松岡優紀。
仕事ではあるが、久しぶりにつくしは自分の世界へ帰ってきたような感覚にホッと息を吐く、今まで毎日気を張って過ごしていたのだろうか、一気に疲れが押し寄せた。
それが顔に出ていたのか、何度目かのため息で気が付いたのか、優紀が心配そうにつくしを覗き込む。

「つくし…どうかしたの?なんか疲れてない?」
「えっ…あ〜、ちょっと考え事してた」
「全く…何か困ったことあったら頼ってよ。私だってつくしの力になりたいんだから、ね?」
「ん…ありがと優紀…。あ、のさ…帰り少し話せる?」

バイトの帰り道、優紀の家とつくしのアパートは方向が違う為、団子屋からそう遠くないカフェに2人で入った。

「どう話していいか分からないんだけど…」

ポツリポツリと司が記憶を失くしてからのことを話す。
つくし自身が、自分の気持ちがあやふやであることは優紀も話を聞いていてよく分かった。

「軽蔑…するよね…付き合ってる人が大変なのに、あたし…」
「しないよ軽蔑なんて!今の状態の道明寺さんじゃ、つくしが迷うのも当然だと思うし…それに、ごめん、花沢さんとのことは、何となく分かってた」

優紀のつくしを見る目は、軽蔑しないと言うのが本当であることを物語っている。
しかし類とのことを知られていたことに、つくしは驚愕の表情を浮かべた。

「この間、道明寺さんの退院祝いに行った時…2人の雰囲気で、ね」
「ってことは、西門さんたちも、桜子や滋さんも気が付いたかもってことだよね?」
「うん。多分…よっぽど鈍くなかったら気が付くだろうね」
 
アレで気が付いていないと思うのは、つくしぐらいだと優紀は笑った。
道明寺司…彼もまた2人の関係が表面上のものではないことを、知ったのではないだろうか。

「私は道明寺さんのことも、花沢さんのこともよくは知らないけどさ…つくしには幸せな恋愛してほしいよ」
「優紀…」
「正直…道明寺さんと一緒にいるときは、辛いことしか起きてない気がする。あ、もちろん花沢さんの方がいいって言ってるわけじゃなくてね…。あの2人じゃなくても、普通の人と普通の恋愛したっていいんだし」
「そうなんだよね…あの人たちと恋愛って自体、どこか夢を見ているようなもんだしね。そっか…そうだよね、だからなんだ」

突然1人考え込むような仕草をするつくしを、優紀は訝しげに見る。

「つくし?なに?」
「あ、いや…だからね、道明寺と同じような家柄の花沢類との未来を考えることが出来ないのは、夢みたいで現実味がないからなんだなって思ってさ」
「そう?道明寺さんより、花沢さんの方が現実味あると思うけど」

優紀が思いがけずハッキリと言った。

「なんで?」
「だって、非常階段でデートしてるじゃない?私たち流でいうところの、庶民デートじゃない?それって」
「あはは、確かにそうだね〜セレブのくせに階段で寝ちゃうからね」

類が階段の踊り場で寝ているところを思い出しつくしが笑う。

「つくし、やっと笑ったね。道明寺さんのことでずっと元気なかったから…みんな心配してるよ?」
「ありがと…道明寺に忘れられちゃったのは悲しいけど、いつまでも待ってられないし…ハッキリしないとね。そうしたら、あたしも前に進めるかな」
「うん!その方がつくしらしい!…あ、ごめん電話…もしもし?」

優紀が電話を受けている間、ずっと話し続けていたせいでカラカラの喉を、すでにぬるくなった紅茶で潤す。

「え、うん…私も友達と一緒…いや、それは聞いてみないと…」

優紀が携帯を一度耳から離すと、つくしに向けて話しかけた。

「つくし、あのね…彼氏が友達といるみたいで…今近くにいるから行っていいかって…」
「え、彼氏!?ごめん、約束してたの?いいよ、あたしがいたら邪魔じゃない?」
「ううん、全然!今から来るって…いい?」
「うん」

優紀は携帯に向けて大丈夫だってと話すと、一言二言で通話を切った。

それから5分もしないうちに、優紀の彼氏とその友人がカフェに着いた。
優紀と同じ高校だという彼らは、人が良さそうで突然お邪魔してごめんと、優紀とつくしに謝る姿に好感が持てた。

「来てくれたのは嬉しいけど、もう10時になっちゃうから、これ飲んだら帰らないと」

彼らの到着と共に、新しい飲み物を頼んでいたのだが、よくよく時計を見ればバイトが終わってから30分は経っていた。

「うん、送って行こうと思って寄ったんだよ…俺もこいつと出掛けてたから、もう帰ったかと思ったけど、つくしちゃんと寄り道しててくれてよかったよ」

いきなり名前を呼ばれたことに驚いてつくしが顔を上げると、優紀の彼はかけている眼鏡のフレームを少し上に上げる動作をし、ごめんと恥ずかしそうに謝った。

「いつも優紀から話は聞いてたから、会ったこともないのに、友達のような気がしてた」
「いや、全然大丈夫です!優紀いい人じゃん!良かったね〜今度色々聞かせてよ〜!」
「俺もよく聞いてたよ。友達がセレブばっかりの学校で大変な思いをしてるって…」

もう1人、田口と名乗った彼もまた、優紀の彼とは仲が良いのだろう、つくしのことを知っていた。
4人は飲み物がなくなるまでの間、色々な話をした。
バイトのことや、クラスメートのこと。
つくしは、今置かれている状況を忘れるかのように、よく笑いよく話した。

最近は周りにセレブしかいなかった為か自分の居場所を見失いかけていたが、これがつくしにとって普通の日常だ。

「楽しいけど…遅くなるな。つくしちゃん、優紀ちゃんとこいつと一緒にまた会おうよ!家反対方向なら、送ってくから、その間に連絡先交換しよう?」

田口が腕時計を見ると、少し残っていたコーヒーを飲み干してつくしに言った。

「あ、うん!でも、近いから送ってくれなくて大丈夫だよ?」
「ダーメ。女の子1人で返すことなんて出来ません!歩いてすぐなんでしょ?」
「つくし!田口くん変な人じゃないから送ってもらいなよ。私もその方が安心だしさ」
「優紀ちゃん…変な人って…」
「あ、うん。ありがとう…じゃあお願いします」

カフェを出ると優紀たちと別れ、反対方向に歩いていく。

「自慢の友達」
「はっ?」

ゆっくりと2人が並んで歩く。
目を凝らしてやっといくつか見える星を仰ぎ見ながら、田口が唐突に切り出した。
驚いて田口を見ると、田口もまたつくしを見て微笑んだ。

「優紀ちゃんが、つくしちゃんは自慢の友達なんだって、いつも言ってるんだよ…学校で。だからどんな子なんだろうって一度話してみたかったんだ」
「優紀…買い被り過ぎだよ…。あたしの方がいつも優紀に助けられてるのに」
「優紀ちゃんに聞いていた通りだった。思いやりがあって、いつも誰かのために頑張ってる」
「褒めすぎだってば!そんなに褒めたって何も出ないよ〜?」

つくしはあまりに恥ずかしくなって、田口の肩をパンと叩く。

「イテ…あ、そういえばちょっと凶暴、とも言ってたっけ?」
「あっ、ひどっ!!優紀がそんなこと言うはずないし」
「バレた!?あははは〜!」
「もう〜!」

田口と笑いながら夜道を歩くつくしの鞄の中で、マナーモードで携帯が着信を告げる。
それにつくしは気が付く事なく、あと5分で着くアパートまでの道を歩いた。


***


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wish you were here 9

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女の涙などで、司の気持ちが揺れたことなどただの一度もなかった。
しかし、目の前で泣き顔を隠すように俯向く女に、胸が締め付けられる思いがした。
司が手を伸ばしたのは無意識だった。
頬を伝う涙を指ですくい取ろうとすると、背後からよく知った男の声が司を現実に引き戻す。

「牧野…っ」

冷静で滅多なことでは顔色を変えることのない男が、つくしの元へ走って来ると荒く息を吐いた。

「花沢類…」
「司…何してるの?」

つくしは腕を強く引かれるとあっという間に、類の胸に抱き込まれてしまう。

「何もしてねぇよっ!」

司はつくしの頬に触れようと上げかけていた手を、気まずそうに下ろし足早にその場を離れて行く。
時期的に人気のない場所とはいえ、F4あるところに女の影ありで、類と司がつくしを取り合うような様子は、何人かの生徒に見られることになる。
つまり、三角関係とも言える間柄が全校生徒に知れ渡ったようなものだ。
道明寺司の恋人が牧野つくしであることは、英徳中の生徒が知っているだろう。
そこに来て類がつくしを抱き締めているところなど見られれば、類はよくともつくしは良くはない。
分かっていても、類は抱き締めた両腕を離すことが出来ずにいる。

類は司の後ろ姿をしばらく見送ると、何かあったのかとつくしに問うような視線を向けた。

「偶然会っただけだよ…今の道明寺があたしに会いに来るわけないでしょ?」
「司に何か言われた?」

つくしは首を横に振り否定するが、泣き顔と分かる涙の跡を見逃すはずはない。
ベンチに座るようにつくしを促すと、類も隣に腰掛けた。

「じゃあどうしてそんな顔してるの?」
「……思い出にしたいの。あいつと話す度に辛いの」
「うん…」
「我儘で俺様で自分勝手だけど、優しかったこと覚えていたいのに。まるでそんな道明寺が嘘だったみたい…あたしの知ってる道明寺が幻だったんじゃないかって」
「司があんたにだけは優しかったこと、俺たちだって覚えてるよ…それに…」

司は覚えていなくても、つくしを求めているような気がしてならない。
先ほどつくしの手を取る司は、記憶がないとは思えない必死そうな様子が伺えた。
だからこそ、類はまさか記憶が戻ったのかと焦ったのだ。

「ちゃんと思い出に出来るかなぁ…」

つくしの瞳から溢れてゆく涙が頬を伝う。
優しく頬を包み込むと、愛おしい人の目尻に泣かないでとキスを落とした。

「俺が思い出にさせてあげるから…寄りかかんなよ?ずっと全力疾走してたら疲れるのは当然だろ」
「道明寺とダメになったから花沢類にって…そんな簡単に気持ち切り替えられない」
「分かってるよ…でもあんた、俺のこと嫌いじゃないでしょ?」
「嫌いなわけないっ!嫌いだったら…」
「嫌いだったら俺に抱かれたりしないよね…今は…寂しくなったら慰める。そんな相手だと思いな。何年かかったって構わないから」




司は、自分の行動が信じられなかった。
あの女が泣いているのを見て、抱き締めたい衝動に駆られるなど…。

「くそっ!何なんだよっ…!!」

窓に映る自分の表情が、自分の元ではないような気がして、窓に強く握った拳を打ち付けた。
ガシャンと大きな音を立てて割れた窓に、驚いた生徒たちが何事かと教室からも顔を出す。
しかし、そこに佇む明らかにピリピリした様子の司に、周囲の生徒たちは恐れるようにその場を離れた。

牧野つくしのおかげだと女生徒たちは認めたくはないが、学園内での司の様子が目に見えて変わっていったのは、つくしと関わりを持つようになってからだということは周知の事実だ。

それが、退院してからというもの、以前のように近寄りがたい空気を見に纏い、気に入らなければ物にあたりを繰り返す司に色々な憶測が飛び交う。

牧野つくしと別れたらしい。
花沢類に恋人を取られたらしい。
記憶喪失になったらしい。

今回の一件で、類につくしを取られたらしい…その噂がさらに増長することは、当事者たちは何も知らない。


***


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wish you were here 8

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「司くん、身体の調子いいんならどっか連れて行って欲しいなぁ。海ね、行ってみたいところいっぱいあるんだぁ」

そう猫なで声で話す女は、司が退院してからも自分の居場所とでも思っているのか勝手に邸に出入りし、司がいる自室で過ごしている。

始めは記憶にないのは海のことだと思っていた。
しかし、総二郎たちに牧野つくしという女のことだと聞くより前に、司は違和感を感じる。
何となくではあるが、自分が一番忌み嫌うようなタイプであること、それは記憶がなくとも肌で感じた。
少年から青年へと外見が変わった頃から、パーティなど公の場に出る度に自分へ向けられる視線と、海のそれは同じ色を含んでいる。

「司くん?」

司の腕に絡み付いてくる海の腕を振り払うと、呆然としている様子の海に言った。

「俺が求めてるのは、お前じゃない」
「思い…出したの?」

つくしちゃんのこと…そう続けようとするが、司が言葉を遮った。

「なんも思い出せねえよ…でも、今の俺には怒りの感情しかねえ。お前と一緒にいても、だ。記憶はなくても俺の細胞が言ってる…失くした記憶は暗闇の中にいた俺を救い出してくれた、大切なものだった」
「司く…」
「もう二度と来るな」

司はそれだけ言うと、海を部屋に残し自室を出る。

失くした記憶…それが、牧野つくしのことだと知っていても、感情がそれに付いていかない。
記憶喪失と聞いていても、実際になってみるのとでは0と100程の開きがある。
何も知らない赤の他人を、お前の恋人だ…突然そう言われて好きになることなど出来るのだろうか?

そもそも、自分のことは自分が一番よく分かっているはずだ。
司から見る女への感情は、気持ちが悪い、ただそれだけだった。

いつかは、後継として結婚するだろう。
しかしそれは政略結婚であって、そこには何の感情も生まれない。
どこの馬の骨かも知れない女と一時だけの恋愛など、本当に自分の話なのだろうか。
しかも、総二郎たちの話によると一時だけというわけではないらしい、それを知ると余計に自分のよく知る自分自身と結びつけることが出来ないのだ。

牧野つくしのことを考えると、得体の知れない怒りが沸き起こる。
その正体が掴めずに苦悩するが、今現在の司が思い浮かべるつくしは、常に類に守られるようにそこにいるのだ。

その感情が、嫉妬だと知るのはまだ先のことである。





すでに行く必要もない学園、もうすぐ卒業ということもあるが、道明寺の力と金で入学した当初から似たようなものだった。
学園に来たからといって授業に出たことなど一度もない。
ただ、幼馴染みと顔を合わせ、憂さ晴らしをしていただけだ。

母、楓からは、卒業後英徳大学に進まずに、ニューヨークへ来るよう打診されていた。
それに迷いなどない…はずで、自分に課せられた義務だということも分かっている。
もちろん返事はイエスで返したが、では何故、来る必要もない場所に自分が向かっているのか、そこに何があるのかを確かめたかった。

司が人気のない中庭を歩いていると、ベンチに腰掛け寒そうに手を擦りながら、弁当を食べている女がいた。
いくら日中は陽があるとはいえ、この寒い時期に外で食事をするなど気が触れているとしか思えない。

女は数メートル先の司に気が付くと顔を上げるが、その表情からは何も読み取ることが出来なかった。
怒っているのか、悲しんでいるのか…嬉しい、楽しいではないことだけは分かるのだが。

「何か用?…あたしの顔なんか見たくないんじゃないの?」

食べていた弁当に蓋をすると、司には目を向けずに後片付けを始め立ち去ろうとする。
その姿はまるで目を合わせることを、恐れているようでもあった。

「待てよっ」
「何?」
「……」
「もう体調いいみたいで、良かった。用ないなら…行くね」

今度こそ司に背を向けるが、歩き出す前にその腕は掴まれてしまう。
司は強く力を入れたら壊れてしまいそうな、その腕の細さにドキッとするが、手を離したら逃げ出してしまいそうな女に、力を緩めるわけにはいかなかった。

「…イライラすんだよっ!」
「はっ?」
「総二郎もあきらも思い出せ思い出せって。お前と付き合ってたんだろ?信じらんねえけどな、何で俺様がお前みたいなのと付き合ってたのか」

つくしは司の顔を見なかった。
見ていれば、何かが変わったかもしれない。
言葉とは裏腹に、必死につくしとの会話を続けようとしている司の姿は、つくしを追いかけ回していた時と同じものだった。

「だったら、放っておけばいいじゃない…信じられないんだったら、信じなくていい!でも…」
「なんだよ?」
「あたしが好きだった道明寺との思い出まで否定しないでよ…」

この日初めて合った瞳は寂しげに揺れ、瞬きの瞬間つくしの目から一粒の涙がこぼれ落ちた。


***


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車が花沢邸の門をくぐり、玄関前で外側からドアが開けられる。
車の中から英徳学園の制服を着た女性が、類に支えられながら降りてきたことに、エントランスで出迎えた使用人たちは驚愕の表情を浮かべた。
この邸に出入りする女性は使用人たちの知る限り、藤堂静ただ1人であったからだ。
そして静がフランスへと旅立ってからは、誰1人女性を邸宅へと招くことはなかった。

「お帰りなさいませ」

邸に着く前つくしにコートを着せて、着崩れた制服を何とか正しはしたが、その表情からはどういう状態であるかは歴然としていた。
もちろん使用人がそれについて言及することなど絶対にないが、初めて邸に連れてきた恋人と思われる女性が、すでに足元もおぼつかない状態であることに目を丸くした。

類はつくしを横に抱きかかえると、使用人たちに返事をすることもなく一直線に自室へと戻る。

類もまた治まりが付かない欲望を持て余したままなのだ。

自室のドアを開け中に入ると、内側からしっかりと鍵をかけた。
そして、つくしの靴を脱がせると大人4人は寝ることが出来そうなキングサイズのベッドに、つくしを優しく下ろした。

「花沢類…あたし…」

外の冷たい空気に少し触れたことで、熱が治まりつつあるのか、少し掠れた声で類を呼ぶ。
つくしのそのあとに続く言葉を阻むように、つくしをベッドに組み敷き優しく抱き締めながら類が言った。

「牧野…俺のこと、拒否しないで?今は…司の代わりだと思ってもいいから…」

司の代わりでいい…類の瞳はそう言っていないことは、つくしにも分かりやすい程に伝わった。
自分の言葉で傷付いたような顔をするのも、その顔に弱いつくしが断れないと知ってのことなのか…。

つくしは、逡巡するような瞳を類に向けた。
俺たち付き合ってる…それはあくまでも類の言い分である。
恋人として付き合っていきながら、気持ちが自分に傾いてくれれば…そう思っている。

しかし元来真面目なつくしからすると、イエスかノーかはっきりしていないのに、身体の関係を持ち続けるのはよくない、そう感じているのだろう。

しかし拒むことが出来ない…このままではダメだと分かっているのに。

「花沢類を…道明寺の代わりなんて思ったこと、ないよ」

つくしが、そう言いながら類の背中に腕を回すと、類はお喋りは終わりとでも言うように、熱の籠った男の顔でつくしに口付けた。

1度ははめられたボタンを、上から1つずつ器用な指先で外していく。
つくしに考える隙を与えない。
身体だけが欲しいわけではないけれど、愛する女を前にして抱かずにいることは類には出来ない。
1度知ってしまったからこそ、麻薬のように制御が効かず求めてしまい、類に何度も境界線を越えさせる。
″司の代わり″じゃない…今はまだ、それだけで十分のはずなのに。



レースのカーテンから入る太陽の光が、徐々に赤く染まっていく。
室内には、泣き声のような途切れ途切れの息遣いとチュプチュプという水音だけが響いていた。

「んぁ…あっ、はぁっ…あぁっ」

類はつくしの大きく開いた太ももの間に顔を埋め、薄い茂みに隠された突起を舌で執拗に攻める。
しかしあともう少しというところで焦らされ、おかしくなりそうな快感につくしの膝はガクガクと震えだしていた。

「牧野…自分から言って…ちゃんと言わなきゃ分からないよ?」

余裕がないことは、類の吐く荒い息が物語っている。
それでも、つくしから求めて欲しいと最後の快感を与えずにいるのだ。

「類の…っ、挿れて…も、お願いっ」

類は漸く互いに待ち侘びたソコに、屹立した自身を当てがうと一気に貫いた。

「あぁぁっ!」

既に濡れそぼったつくしの秘部はグチュリと音を立てて類を飲み込んでいった。
繋がった場所から伝わる快感が全身に走り、まだ類の大きさに慣れていないつくしの秘部はキツく類を締め付けていた。

「まだ、キツい…ね。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」

苦しげに眉を寄せる眉間にキスを落としながら類がゆっくりと律動を開始すると、キツく締め付けていた秘部が類の性器に絡むように蠢く。

「あっ、あぁ…ん、はぁ」

ほんの僅かな時間揺れ動かしただけで、つくしの苦しげな声は、喜びのものへと変わっていった。

「この間初めてだったのに…牧野の身体エッチだね…ほら、凄く喜んでる…」
「やぁぁ…っ…あぁん」

接合部から聞こえるグチュグチュという濡れた音も、秘部から流れ出た愛液を類によってかき混ぜられているからで、つくしが快感を得ていることが分かる。

「牧野…っ、好きだよ…愛してる」
「あっ、あぁ…る、いっ…もうっ」

類が愛してると囁けば、自分も愛されているのではないかと錯覚するほどに、つくしの中は喜び類を締め付けてくる。

「イキたい?ちゃんとイクとき言って…」
「もっと…奥っ、突いて…はぁ」
「ココ?これ…イイんだ」
「あっ、あっ、あ、あ…やっ、もう…イッちゃう…イッちゃ…あぁぁっ!」
「…っ、俺、もっ」

身体を痙攣するように震わせて、弓なりにしなった背中を支えるようにつくしを抱き締めると、類も避妊具ごしにつくしの中に欲望を放った。


***


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wish you were here 6

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ギリRではないですか…?





まさか自分が静以外の女に執着することになるとは、以前の類であったならば思いもしなかっただろう。
実際に、非常階段で話しかけてくるつくしのことをウザいと感じていたし、レイプされかけているところを助けたのも、つくしはそう思っていないが本当に気まぐれだ。
しかし、今となってみればあの時のことは類にとって運命だと思えてならない。

万が一、あの時助けずに放っておいたら?

つくしは今のように類に笑いかけてくれていたであろうか?
未遂で済んだからこそ、首謀者である司も許されたのだ。
見て見ぬ振りをしていたら、今の自分とつくしの関係もなかっただろう。

類はつくしの手を離れないように握ると、道明寺邸のエントランスへと急いだ。

もう、この手を離すことなんて出来ない。

「花沢、類…?どうしてみんなの前であんなことしたの?」

リーチが違うために、足早にエントランスへと向かう類に着いて行こうとすると、軽くジョギングをしているような話し方になってしまう。
類は、つくしの言葉でやっと歩を緩めた。

「どうしてだろ…なんか悔しかったからかな」
「何が?」
「好きな人」

司のことがまだ好きなのだと、分かっているけれど…。
好きな人だと言われる司のことが羨ましくて堪まらない。

「そ、それは…」

道明寺邸エントランスに停まる車に乗り込むと、つくしは気まずそうに視線を彷徨わせる。

つくしを追いかけ回す司のことをどこかバカにしていたのに、止めることなど出来ない感情を露わにし以前の司のことを言えない程に溺れている。

類に気まずそうに司のことを考える、その瞳にすら嫉妬するほどに。

「うち来て…いいよね…?」

類は静かに運転席との間にある仕切りを下ろす。

側にいたい。
抱きしめたい。
キスしたい。
笑ってほしい。
俺以外の男に笑いかけないで…触れないで。
そんなバカなことばかり考える。

つくしが類を見て頷くと、類はやっと満足そうに微笑み、後部座席のシートにつくしを横たえる。

「キスしていい?」

唇が触れるか触れないか、あと3センチの距離で話す類は確信犯だ。
つくしは、ズルいと睨むように類の肩を押しやるが2人の体格差がそれを許さない。

「さっき、したでしょ…」
「ダメ、まだ足りない」

結局は、綺麗な顔でつくしを誘う、我儘王子に押し切られる形で唇を塞がれた。

「はぁっ…る、い…」
「キス…気持ちいい…?」

羞恥心のあるつくしには、答えられるはずのない質問を類は好む。
唇を離した類がその舌を耳朶へ移動させると、つくしが小さく喘いだ。

「……っ」

首筋に触れる類の髪ですら、あらぬ声が出そうになってしまうつくしのことなど、きっとお見通しなのだろう。

「気持ち…い…ぁっ」
「素直な牧野も、可愛いね」

舌を首筋に這わせると身体をビクビクと震わせる。
制服のボタンを1つ2つと外していくと、日に焼けない白い肌が露わになり、類は唇を寄せ何度も所有の証を刻んでいく。
シャツの隙間からブラジャーのホックを片手で外し、類の舌が膨らみの頂上を舐め回す。

「あぁっ…っん…ぁ」

自身の車中で発してしまった声に驚き、手で隠すように口を塞ぐが、その手を類は外してしまう。

「可愛い声…聞かせてよ」
「んぁ…っ、あ、やぁ」

大きな手で膨らみを揉みしだきながらも、親指と人差し指の腹でクリクリと突起を弄るとプッツリと赤く尖ってくる。
敢えてピチャピチャと音を立て、指を休めることなく尖った先端を舌で舐め回した。

「あぁっ…ダメっ、ん〜っ、ソコ…っあぁぁっ!」

司の邸で散々煽られた身体は、いとも容易く陥落した。
小さく震えるように痙攣した身体からは一気に力が抜け、車中にはつくしの荒い息だけが響いていた。

「牧野のイク時の顔…そそられる。ヤバい…」

密着した下半身からは、つくしの秘部を擦るように熱く脈打つモノが存在している。
つくしが腰を捩るたび秘部に類の先端が当たり、すでに濡れそぼった秘部からは新たな蜜が溢れ出し、下着を濡らしていく。

「はぁん…擦っちゃ、ダメ…ぁ、あぁ、ん」
「擦ってるの…牧野でしょ?…っ、ほら」
「やぁっ…ち、がっ…」

涙を目に溜めて喘ぎながら、つくしは違うと言うが、その間も類が白旗を上げてしまいそうになるほどにいやらしく腰を揺する。

「もうすぐ、邸に着いちゃうよ?我慢出来る?」

懇願するように潤んだ瞳を類に向けながらも、つくしは何とか小さく頷いた。


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wish you were here 5


wish you were here 5


抵抗出来ないのかしないのか、司には知る由もないが、女が嫌がっているようには見えない。
冷めた気持ちとは裏腹に、手の平は血が滲みそうな程に強く握られていた。

類の狙い通りなのか、女の身体がベッド同然の大きなソファに崩れ落ちるように倒れこんだ。

「ん…っ…はぁ…」

履いている制服のスカートから、膝を立てることで太ももの内側の白い肌が露わになり、類がその間に身体を差し込む。
女の足は快感をどうにか逃そうと、ソファの上で何度も彷徨う。

「る、いっ…ダメ…ぁ」

明らかに官能を含んだその声に、表情も変えずに興味津々なのは桜子ぐらいで、司だけではなくその場にいた全員が頬を赤く染めた。
慣れているはずの、総二郎やあきらまでもが顔色を変えたのは、快感に溺れたつくしの表情が艶と色気を帯びて、何ともいえず美しかったからに他ならない。
普段絶対に見せることのないつくしの女の顔は、そのギャップも相まって男たちは身体の火照りすら感じてしまうほどだ。
そして同時に、つくしがすでに純情なだけではないことを知ってしまった。

「お、ねが…やめ…っ、んっ」

抵抗できないようしっかり身体を押さえられ、一度快感を知ってしまったつくしの身体は否応なしに崩れていく。

司はその光景から目を離すことが出来ずにいた。
胸が焼け爛れるように熱く、苦しい。
あんな女など知らないはずなのに、類が愛おしそうに身体を撫でる様子に怒りが湧き上がる。
しかし、それを認めることなど出来るわけがない。
ただ、気がつくと2人を詰るように叫んでいたのだ。

「人んちで盛ってんじゃねえよ!おまえら帰れっ!!」

今までの熱情が嘘のように、類はつくしから身体を離すと、ソファから起き上がらせた。

「うん…牧野帰ろうか?うちおいでよ」
「えっ…」

類がもう用はないとでも言うように、つくしの手を引いて歩き出す。
司は益々怒りを露わにし、近くにあったクッションなどを類に向けて思い切り投げた。
次に花瓶を手に取ったところで、総二郎が慌てて止めに入る。

「おいっ、司っ!止めろっ!!」

この怒りの原因は一体何なのか。
今の司には全く分からない。


***


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wish you were here 4

wish you were here 4


道明寺家主治医を邸に常駐させることを条件に、司は本来の退院予定日よりもかなり早く邸へと戻ることになった。
しかし、戻ってからというもの鬱々とした表情や、何か言いたげな使用人たちに司のフラストレーションは更に溜まる。

ビクつく使用人を睨むように、ワイン片手に自室への扉を開けると、いつの間に来たのか、女たちを含めた友人たちが一斉に司を見た。

「司〜おまえいつの間に家に戻って来たんだよ!退院したなら言えっつーの!」
「言わなくっても来てんじゃねぇか…」

身体の具合は良くても、仲良さそうに女どもと話す親友たちが気に障りかなり不愉快だった。

「道明寺…退院おめでとう。花…飾るね」

つくしが司に花を渡そうとするが、受け取るはずはない、本人もそう思っていたようで、すぐに腕を引っ込めた。

「またおまえかよっ!何なんだよ!類の女だか何だか知らねえが、勝手に人んち入ってきてんじゃねえよっ!」

司が威嚇するように怒鳴り散らすが、つくしは全く気にする風でもなく、チラリと横目で司を見ると深くため息を吐いた。
そのつくしの態度も、更に司のイラつきを増す原因となっている。

「あんたは覚えてないかもしれないけど、あたしはこの邸の人たちに凄くお世話になってるの!しかも、それがお見舞いに来た人に対する態度!?花を貰ったらありがとう!それぐらい言えないわけっ!?」

病院の屋上で、泣きそうになっていた女と同一人物とは思えない程の剣幕でつくしが罵ると、司は拳を強く握って近づいて行く。

「司、止めろ…話がある。牧野のことで。あきらたちも聞いてて」

今にも殴りかかりそうな司から、つくしを庇うように類が前に出た。

「俺にはねえ!この女のこと思い出せとか言われてもよっ!」

司としては、思い出せる気配すらない無くした記憶の話かと、ウンザリしてしまう。

「もう思い出さなくてもいい。話っていうのは、俺と牧野のこと。俺たち…付き合うことになったから。いいよね?牧野」

類がつくしの腰を優しく抱き寄せると、いつものように目を細めて綺麗な瞳をつくしに向けた。
司は目の前の親友の放った言葉を、どこか他人事のように聞いていた。

「花沢類!?」
「はあっ!?類…マジかよっ!」
「おま…司の記憶が戻ったらどうすんだよっ!」
「花沢さんやりますね〜」

腰を抱かれたつくしと同様に、皆一様に驚きの声を上げるが、慌てたのは総二郎とあきらだ。
司も類も親友であると同時に、つくしのことも大切な友人だと思っている。
確かに、類がつくしのことをやたら気にかけることには気が付いていたが、類には静がいる…そう思っていた。

いや、それよりも寧ろ司の記憶が戻ったとしたら、大変なことになる…キレるどころでは済まないかもしれない、そう思うと総二郎としては聞かなければよかったと、トラブルの予感に頭を悩ませた。

「道明寺の記憶が戻ったら…なんて無責任なこと言わないでよ…」

その場の空気を破ったのは、怒りを抑えるような低い声で話すつくしだった。

「牧野…?」
「あたしは…いつ記憶が戻るかも分からない道明寺をずっと待っていなきゃいけないの!?1年後?2年後?10年後?何年かかるか分からない。記憶が戻るまで、好きな人に疎まれて嫌われても頑張らなきゃいけない?道明寺にその気もないのに…」

″好きな人″つくしがそう言って司を見るが、その目からはなんの感情も読み取ることはできなかった。

「関係ないよ。司の記憶がどうなろうが。ただ俺は…好きな女泣かせることしか出来ない司に…もう遠慮なんかしない。記憶が戻ったとしてもこれだけは覚えておいて、俺と牧野が付き合ってるってこと」
「おまえらが付き合おうと別れようと、俺には関係ねえよ」

つくしを大事そうに抱き寄せる類に、言いようのない怒りが湧き上がる。
自分の気持ちは言葉通りのはずなのに、どうしてこんなにもイライラするのか…司はこのチグハグな感情を持て余していた。

「それ聞いて安心した。おいで牧野」
「る、いっ!?……んん〜」

しっかりと逃れられないようにつくしの腰を引き寄せると、類は深く唇を重ねていく。
つくしは腕を突っ張り類を押し返そうとするが、類が息継ぐ間も与えず口腔内を愛撫すると、やがてその腕からも力が抜けていく。

「ん、ん…っ」

ここが何処であるか、周りに誰がいるか、つくしはそのことに気を回す余裕はない。
驚きで開かれていた潤んだ瞳は、諦めと共にゆっくりと閉じていった。



***


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wish you were here 3

wish you were here 3
2話では、なんだ司だけか〜とガッカリした方もいるかと思います!
ちゃんと3話で出てきますよ〜(≧∇≦)



「やっぱりここにいた…また寝てるの?」

英徳学園非常階段、つくしは何度ここで類に慰められ、助けられてきただろう。
側にいるだけで、1人じゃないんだと安心させてくれる、ビー玉の瞳を持つ童話の中の王子様のような男。
実は、ものぐさで寝るのが好きでお笑い番組が大好き…そのことを知っても、つくしにとって類はヒーローのような存在であることに変わりはなかった。

「寝てないよ…今から寝ようとしてたとこ。どうかしたの?」
「ん〜眠いなら寝てていいよ…」

つくしが類の隣に座ると、当たり前のようにつくしの膝枕で類は目を瞑った。
風が吹くとサラサラと靡く類の髪を手で何度も梳くと、やがてスースーと寝息が聞こえてくる。

今から話すのは、つくしにとって懺悔のような想い。

「…ごめんね。やっぱり、あたし…そんな簡単にあいつのこと忘れられないよ…。サイテーだね、花沢類の気持ち利用してた」

司に冷たい瞳で見られること、名を呼ばれないことが悲しくて、寂しくて。

ついそこにある手に縋ってしまった。
類ならば絶対に抱き締めてくれることも分かっていた。
キスされた時、つくしの中で受け入れないという選択肢はなかった。
寧ろ、嬉しかったのだと思う。

もしかしたら、司を忘れられるかもしれないと、今の辛いだけの恋に終止符を打つことが出来るのならばとーーー。

しかし、そうではなかった。
普段甘い雰囲気になどほとんどならなかったのに、今となって思い出すのは司との甘い思い出ばかりだ。

「あんたたちと、会わなくなったら…そのうち忘れられるのかな。そもそも最初から住む世界が違い過ぎて会うことも出来ないか…ははっ」

司の側にいられなくなって、その上類とも会えなくなってしまったら、また三つ編み姿の牧野つくしに戻れるだろうか。

類の姿を学園内で見ても、話しかけずに話しかけられずに過ごす…そんなことに耐えられるだろうか。

「そんなの絶対許さないから」

目を瞑って寝息まで立てていた男が、突然話し出したことに、完全に1人の世界に浸っていたつくしは気まずさから、ついむくれてしまう。

「ズルい…タヌキ寝入り?」
「牧野が側にいて寝られるわけないじゃない…」
「どういう意味?」
「わからない?」

つくしの膝に顔を埋める男は、下から腕を上げて髪に触れてくる。
何かの意味を含んだような触れ方に、つくしの頬が赤く染まる。

「牧野が、まだ司を忘れられないことぐらい分かってるよ…。俺だって、あんたのそういう気持ち利用して、あんなことしたんだしね」
「でも…」

あれは、つくしとて同罪であることは分かっている。
類に流されたから…ではない。

「いいよ。あんたが俺のことまだ100パーセント好きじゃなくても…。司のこと無理に忘れなくてもいい。でも、俺との関係まで切ろうとしないで?」
「花沢類…ごめん…」

寂しそうに言う類に謝ることしかできない。
つくしにとっても、類と会えなくなることが嬉しいはずはないのだから。
だが、類と会えば司を連想させるのも仕方のないことだ。

「っていうか、また花沢類になっちゃったの?類って呼びなよ、俺あんたに名前呼ばれるの好き」

類は完全に目が覚めたのか、つくしの膝から頭を起こすと隣に座る。

ほんの一瞬名残惜しく感じたのは、きっと気のせい。
そして、肩と肩が触れ合い…その場所が熱っぽく感じるのも…きっと気のせいだ。

「こっち向いて」
「な、に…?」

ゆっくりと類の顔が近付いてくると、つくしは金縛りにあったように動くことが出来ずにいた。

「る、類…ダメ、だよ…あたし」
「俺が無理やりするんだから、あんたのせいじゃないよ」

無理矢理…そうではないことはつくしが一番よく分かっている。

「ん…っ」

類の唇が重なり、無理矢理とは大きくかけ離れるほどに優しく、クチュリとつくしの唇を啄ばむように舐めていく。

「ふっ…ん…っ」

つくしは類のシャツに縋り付き強く掴むと、必死に快感を振り払おうとするが、次第に深くなる口付けに結局は翻弄されてしまう。

「はぁ…っ、類…」

つくしの腕が背中に回ると、類は嬉しそうにつくしを抱き締めた。


***


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wish you were here 2

wish you were here 2

花より男子本編の設定とは違います!
だって類つくですから(≧∇≦)
司の扱いもそう酷くないと思いますので、皆様に読んでいただけたら幸いです。




生死の境を彷徨い無事に生還したものの、自分が何故そういう状況に陥ることになったのか、考えようとすると頭に靄がかかったように何も思い出すことが出来なくなる。
それが、とても大切なことだったことは分かるのだが、自分にとってそんなに大切なことなどあったのか…司は想像すらつかなかった。

「くそっ…何なんだよ…!」

痛みで思うように動かない身体と、考えることを拒否しているような脳が更に司を苛立たせる。
病院のベッドの上で、ドンッと音を立てサイドテーブルの上に拳を下す。

そんな時必ず、頭のおかしいあの女が思い浮かぶ。
あの時、感情の浮き沈みの少ない類が珍しく怒っていて、目の前に女が飛び出してきた。
何かを喚いてすぐに飛び出して行ったが、去り際に見た怒りながらも悲しそうな表情が、何度も司の脳裏に浮かんだ。
考える時間だけはたっぷりあるのに、大切なことは思い出せないらしい。
皮肉なものだ。

軽く病室のドアをノックする音が響くと、返事をする前にドアが開けられた。

「司くん…?具合どう?」
「またおまえかよ…」
「おまえ、じゃないよっ!海って名前があるんだから!」

司はウンザリしたようにため息を吐くが、1日暇を持て余している今は勝手に喋って帰るこの女もBGM程度にはなっていた。

「ね…司くん…つくしちゃんって…」
「よ〜司!暇してんだろ〜と思って、来てやったぞ!」

またもや、ノックもなしに特別室のドアを開けて入ってきたのは幼稚部の頃からの親友の2人。

「おまえらか…つーか、おまえらよく来んな。暇なのかよ…」
「そりゃねぇだろ。俺もあきらも暇じゃねえよ。一応幼馴染を心配してんだけど?」
「司、何か思い出したかよ?」

総二郎とあきらは、海を一瞥するものの特に話しかけることなく、ベッドに寄った。
さすがに、そろそろ海の存在はつくしの気持ちを思うとまずいと、苦言を呈しにきたのだ。
記憶のない司がそれを受け入れるとは思わないが。

「何を思い出せばいいのかも分かんねえよ」
「牧野つくしのことだよ」
「誰だ、それ?知らねえよ…」

あきらは何度もここに来てるだろうがと、ため息を禁じ得ない。

「類がおまえのこと殴ろうとして、飛び出してきた女だよ!おまえが好きな女だっ!」
「俺が好き…?んなわけねえだろ…女にキョーミねえよ!」
「おまえ…後悔すっぞ。マジで…」
「もう、止めてあげてっ…思い出せなくて辛いのは司くんなのにっ…」
「ちっ…」

海の言葉にあきらにしては珍しく舌打ちをする。
海の態度は、今まで自分たちの周りにいた女のものと全く同じ。
ターゲットにした男によく見られようと、媚び諂う様子…司がそれに気が付いていないとは思いたくはないが、正直今の司のことは総二郎にもあきらにも心の内は分からなかった。


***


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新作は日曜日から♬

こんばんは。
いつもありがとうございます(*^^*)

コメントを下さる方々には、すでに告知させて頂きましたが、次の新作は類とつくし&蓮くんのその後〜じゃありません!(^^;;
ちょっとそこから離れまして、類がまだ″牧野″呼びの頃…高校生の2人を書いていきたいと思います。
しかも、新作ではなくて以前に書きました、wish you were hereの続きになります!
何とな〜くで書いた作品ですが、続きを読みたいと言ってくださった方がいらっしゃいまして、そのうち書いてみようかなと思ってました。
つくしちゃんを落とすために攻める攻める!ちょっといつもよりR要素、もしくはR寸前要素強くなるかな…と思いますので、苦手な方ごめんなさいm(__)m

では、明日土曜日はもしお時間ありましたら、1話を読み直して頂けたら幸いです。

月に叢雲花に風の続きもそのうち書きますので、続きを〜と言ってくださった方もうしばらくお待ちくださいませ(*^o^*)

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ひるなかの流星・花より男子・日々蝶々・君に届け・会長はメイド様の二次小説・創作置き場です。黒バス黄黒、青黒BLも書いております。
現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

こちらを読むにあたって下記注意点をお読みになってからお進みください。

このサイトは原作のある漫画の二次創作、小説です。

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