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wish you were here 39R

wish you were here 39R


可愛いと言われたことがないわけじゃない。
でもそれは、大抵ベッドの上で熱に浮かされている時で、既に恥じらいも何もかもを脱ぎ捨てている状態でのこと。

好きな人に言われて嬉しくないわけがない。

つくしは赤くなった頬を両手で隠すように包み込むと、窓の方へと顔を向けた。
意識をそらすように、流れる外の景色に集中していると、ひんやりとした冷たい手がつくしの太ももに伸びてくる。

「ひゃっ…類っ?」
「ん…?」

つくしはスカートの中に入り込んでくる類の手を払い退けることも出来ずに、上からスカートを被せるようにして隠す。

「類…運転中っでしょ…危な…っよ」
「撫でてるだけだから、平気だよ」

撫でてるだけって…!

確かに類の手は太ももの内側を撫でているだけだ。
だが、触られているつくしにとっては堪ったものじゃない。

「…っ、ぁ…はぁ…」

時折、ショーツギリギリのところを指が掠めるように動き、その度に身体が震え切ない喘ぎ声が漏れてしまう。

「もしかして、もう濡れてる?」
「ふっ…ぅ、…やぁっ」

確かめるように類の指がショーツの隙間から入ってくると、類の手を上から押さえるしかないが、うまく腕に力が入らない。
車のエンジン音の響く中に、微かにクチュっと湿った音が聞こえてくる。

「行き先変更していいよね」

スカートの中を弄っていた手を引き抜き、すぐ近くのシティホテルの駐車場へと類がハンドルを切った。
ハンドルを握る指先が濡れ光っていて、つくしは恥ずかしさから目をそらした。



つくしはシャワールームの壁に手を付いて、今にも崩れ落ちそうになる腰を後ろから類に支えられる。

「ぁ…っ、ん…」
「俺が、洗ってあげる…」

確かにシャワーを浴びさせてと言ったのはつくしだが、愛撫と変わらないその手付きに、浴室につくしの短く吐く息と切ない声が響く。

ボディソープで滑りのよくなった類の手が、つくしの形のよい胸を下から上へと持ち上げるように撫でる。

「あぁ…ん、類…はぁ…」

類はつくしの耳の下辺りに噛み付くように強く吸い付くと、赤紫の痕を残した。
胸元にも襟首の大きい服を着れば見えてしまう位置に、いくつもの痕が散りばめられていた。

「…っ」

コックを捻ると上から流れ落ちるシャワーが、2人の身体を濡らしていく。
まだ泡が残る類の手が、つくしの太ももを這うように動く。

「ココ…もう我慢出来ない?」
「はぁ…ん、あっ、ダメ…」

無意識に足を開くつくしに、類はクスリと笑みをこぼし、割れ目に指を這わせればソープの滑りとは異なる液体が溢れてくる。

「ほら…ヌルヌル…自分で触って…」

類がつくしの手を取り重ね合わせると、足の間へと誘う。

「やっ…ヤダ…ひゃっ」
「ね…?自分の指入れてみる?」

普段自身では触れたことのない部分が、クチュリと音を立てつくしの指を濡らす。

「も…ヤダぁっ…」

本気で泣きそうに顔を歪ませるつくしに、類は手を止める。
最近は互いが忙し過ぎて肌の触れ合いが不足気味だった。
溜まりに溜まったものを持て余し、ついしつこくなってしまったことは否めない。

「ごめん…」

類はつくしの手を離すと、身体を反転させ抱き締めた。

「ちゃんと、して?」

つくしの本気で嫌がることなど類がするはずはないとつくしも分かっている。
強請るように類を上目遣いで見上げると、類は軽く頷いた。

「んんっ…ふっ、はぁ…ん」

類はつくしの顎を持ち上向かせ、貪るように口付ける。
口付けながらも類の手は性急につくしの秘部に突き立てられた。

「あぁぁっ!」

グチュグチュと激しく掻き回され、すぐに指を2本に増やされる。 

「やっ…あっ、そんなに…したら、もぅ…」
「イッていいよ…気持ちいいでしょ?ココ…」

つくしの薄い茂みに隠された突起を指の腹で弄られながら、中に入った指が激しく動く。

「ダメ…ダメっ…も、イッちゃう…はっ、あ、あーーーっ!」

類はガクリと崩れ落ちたつくしを横抱きにすると、シャワールームから出る。
身体を拭く手間すら惜しくて、つくしにバスローブを羽織らせベッドルームへと連れて行く。



本当なら類とお昼ご飯を食べるはずだった。
優紀とご飯食べておけば良かったなんてことを考えていると、集中しろと言わんばかりに激しく中を掻き回される。
感覚がおかしくなるほど何度も繰り返される抽送に、ついには空腹を感じる余裕さえなくなる。

「も…無理っ、だよ…ぁっ」
「ココは俺のもっと欲しいって言ってるよ…ほら」

最奥を一気に貫かれると、つくしは膝をビクンと震わせ、類の背中にギュッと抱き付いた。

「あぁぁぁっ!!」
「……っ、く、はぁ…」

つくしに釣られて達してしまいそうになる欲望を何とか抑え、類は長い息を吐く。

「類…好き、大好き…」

達した直後、瞳をトロンとさせて類を見つめながら、腕を伸ばし類の首に抱き付いた。

「それ、反則…」
「類、キス…して?」
「もう、ほんと…っ、余裕なくなるから可愛いこと言わないで」

類はつくしに覆い被さると、唇を深く塞いでいく。
同時に腰の動きを早く、類自身の快感を求めるようにスライドさせた。

「んっ、ん…ふっ…ぁ」

室内には微かにベッドの軋む音と、接合部から聞こえる水音が響き、2人の快感を後押しした。

「あっ、も…ダメ…ぁ、イク、イッちゃ…っっっ!」
「いいよ、俺も出そ……く、っ!!…はぁ……」

類はつくしの上で項垂れるように深く息を吐くと、達しても収まらないままの、自身の欲望に驚きすら感じる。
初めから余裕などないに等しいが、一応つくしの体力を考えた上でいつもは抱いていた。
今日は既にそれが出来そうになかった。

つくしの中に挿入ったまま、ゆるゆると腰を動かしていく。
類はまだ大丈夫かとつくしを見ると、その瞳は潤んで今にも涙がこぼれ落ちそうなほどだった。

「る、い…ぁ、また…」

類の首にギュッと抱き付き、類の胸で顔を隠すように埋めた。

愛おしくて、可愛くて、際限なく求めてしまいそうだ。
何度身体を重ねても、その度に初めて身体を合わせるような快感に襲われる。

「あっ…ダメ、も…」
「俺を煽ったの…あんただよ…」


***

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wish you were here 38

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類がガードレールに腰かけて人混みに目を向けると、遠くからキョロキョロと辺りを見渡して駆け寄ってくるつくしの姿を見つける。

少し頬を上気させて、類を見つけ微笑む姿を何度も可愛いと思ってしまう。
デートの相手よりも早く来ることは、類にとって当たり前のことではあるが、つくしが自分を必死に探すその様子を見ていたいからかもしれない。

「類!ごめんね、待たせちゃった?」
「いや、楽しかった?」
「うん!」

つくしを助手席に座らせると、類の運転で車が走り出す。
日曜日は唯一、類が1日休める日で、朝から2人きりで過ごせる日でもある。
いくらつくしの親友だとしても、それを邪魔してほしくはない、というのが実のところ類の本音ではあるが、親友と話したあれこれを包み隠さずに楽しそうに話すつくしを見ていると、たまにはいいかとも思うのだった。

「あのね、バイト一緒の田口くん、いるでしょ?」
「親友の彼氏の?」

類の中では、田口の名前を覚える気もない。
つくしから一度聞いた話は忘れるわけがないにしても、男の名前を聞くのは気分が悪いからだ。

「優紀の彼氏の友達ね…紛らわしいけど。あたし全然気が付かなかったんだけど、大学一緒だったみたい」
「そうなんだ?」

その情報にはさすがの類も驚いて、目を丸くする。
類の中でつくしの友人リストから、要注意人物リストに名前が上がったことは間違いない。

「うん、それでね。今度サークルの飲み会に誘われてるんだけど、行ってきてもいい?」
「ダメって言ったら?」
「行かないよ」

どうしてダメなの?そう言ってくれたら、心配だからとか理由を付けて行かせないことなどいくらでも出来るのに、当たり前のような顔をして類がダメと言うなら行かないと言い切るつくしが愛しいけれど憎らしい。

俺も大概溺れてる……。

「嘘だよ。行っておいで」
「え…いいの?あたし大学に女友達1人もいないから、知り合いぐらい作りたくってさ…。ありがと、類」

つくしを束縛する権利など類にはないのに、つくしは束縛されて当たり前のように笑う。

「男友達は作らないでね」
「まさか妬いてくれるの?」

つくしは冗談っぽく、口の端を上げてニヤリと笑う。

「当たり前でしょ?」

冗談などではない。
嫉妬深い男だともう分かっているだろうが、これでも大分我慢しているのだということは知らないだろう。
もちろん、気付かせるつもりもないが。

「…心配だから迎えに行くよ。新歓コンパだと飲まされたりするかもしれないし」
「コンパ?」

つくしはキョトンとした顔で、運転席の類を見た。

「この時期にやるならそうでしょ?…っていうか…ほんとに心配なんだけど?」

田口に誘われるままに、どのようなメンバーが来るかも知らないで行こうとしているつくしに嘆息する。
類としては田口のことも信用していたわけではない。
バイトでの様子やつくしからの話で、つくしに気がある男ではなさそうだから、放置していただけだ。
しかし大学までもが一緒だというならば、類の予感は外れたのかもしれないと思い直す。
つくしが言うにはとてもいい人、ではあるが逆につくしが人を悪く言うのを聞いたことがないのだから、信用出来るはずもないのだ。

「やっぱり、俺も行こうかな…」
「ダメ…」
「何で?迎えに行くのはいいんでしょ?」

つくし本人に断られるとは思ってもみなくて、類は思わずつくしに詰め寄るように聞いてしまう。
まさかとは思うが、本当に男友達もつくしの言う友達の範囲に含まれているのかと勘繰ってしまうが、すぐにそれはないと考えを振り払う。

「だって…」
「なに?」
「笑わない?」
「うん…」

つくしは類をチラリと見ると、顔を赤くして言いにくそうに口籠る。

「類目当ての女の人がいっぱい来るもん…あたしがヤダ」
「ははっ…」
「も〜だから、笑わないでって言ったのに!」
「違う違うっ、ごめん…。ね、つくしがそう思うなら、俺が心配する気持ちも分かるよね?俺だって嫌だよ…つくし目当ての男が寄ってきたらって思うと」

こうして不意を突くように可愛いことばかり言うつくしに、類は僅かに変わる頬の色を悟られないようハンドルに意識を集中する。

今日はリムジンで来ればよかった。
運転中じゃなかったら、押し倒してるところだよ。

「あたし目当ての男の人なんていないよ」
「つくしは自己評価低過ぎ。あんた可愛いから、ちょっとは気を付けて?」
「か、かわっ…」

つくしは物の見事に首まで真っ赤に染まった。

誰が何と言おうと、俺にとっては可愛くて仕方がないんだということをもう少し分かってもらおうかな。


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wish you were here 37

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朝早く起きて朝食を作る、それは毎日の日課であったが、日曜日は類の仕事も休みということもあって、花沢邸からも人を入れていなかった。
そのため、毎週日曜日の習慣として、つくしは部屋を軽く掃除をし洗濯機を回している。

その後はいつもなら、部屋で2人各々課題に取り組んだり、たまにはテレビを見たりして過ごすことが常だが、今日はつくしに先約があり、いつもより少し早く起きて準備を始めたのだった。

「おはよ…つくし、早くない?」
「あ、類おはよ。ごめん、うるさかった?」

まだ眠そうな目をしてリビングのドアを開ける類に、つくしはお掃除シート片手にパタパタと走り回っていたので、起こしてしまったのだろうかと足を止めた。

「いや、目が覚めただけ。あぁ、今日友達とどっか行くんだっけ?」
「うん、優紀とね。でも、お昼前には帰ってくるよ?」
「そうなんだ、じゃあ俺がそっちまで迎えに行くよ。お昼外で食べよ」
「いいの?…じゃあ待ってるね」

掃除用具を収納にしまうと、手を洗いすでに支度は終わっている朝食をお皿に盛り付けテーブルに並べた。



高校卒業を機に団子屋でのバイトを2人とも辞めたこともあり、優紀と会う機会は格段に減ってしまった。
それでも、お互い時間を見つけては近況報告など連絡を取り合い、バイトのない日はカフェで恋愛話で盛り上がったり、芸能人の誰がカッコいいという話をしたり、会えば昔に戻ったように何時間も話をしてしまう。

「優紀!…ごめん、お待たせ」

テーブルの上の携帯を操作していた優紀が、つくしの声に顔を上げて手を振る。

「大丈夫だよ。私も今来たばっかり」
「そっか、良かった…。あ、すみません、オレンジジュースください」

水を持ってきた店員に注文を済ませると、優紀の向かいに腰を掛ける。

「ねえ優紀!知ってた!?田口くんがあたしと同じ大学だって!」
「うん、知ってたよ。っていうか、つくし、まさか知らなかったの?」
「優紀も知ってたんだ〜!昨日バイトの時聞いて、もうビックリだよ。大学内でバッタリなんてなかなかないしさ」
「ふふっ、田口くんと1年近くバイト一緒なのにね。まさか2人がこんなに仲良くなるなんてね〜。花沢さん妬かない?」
「妬かないよ〜っ、た…ぶん?」

そういえば、田口と大学も同じだったと話していない。
類の嫉妬心を思い出すと早めに言うのが得策だ、とはいえ大学が離れてヤキモキしているのは寧ろつくしの方かもしれない。
つくしが英徳にいた頃は、大学と離れていたとはいえ、類はよく非常階段に来ていたし、つくしも類を待ってそうしていた。
今は一緒に暮らしているとはいえ、平日に会えるのは朝と夜の数時間だけだ。

「多分ねぇ」

優紀がニヤリと笑うが、そんなやりとりも中学の頃に戻ったようで楽しかった。
そして、優紀の彼との話や共通の友人の話題、家族の話など話すことは沢山あった。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、気が付けば、頼んだオレンジジュースが殆ど空になろうとしている。

「そういえばさ、つくし大学で友達出来た?英徳みたいなとこじゃないから、心配はしてないけどさ。大学ってサークル入らないと友達出来にくいでしょ?」

優紀の言う通りだった。
サークルに入るつもりのないつくしは、全くと言っていいほど、友達も知り合いもいない。
唯一が田口ぐらいだった。
しかし、花沢邸から帰ってすぐに類が手配してくれた、たくさんの家庭教師の授業があり、とてもじゃないがサークルに入っている余裕はない。
それは類が、というよりつくしが頼んだことでもあるのだ。
類には無理するなと言われているが、聡が言うには、類との将来を考えるのなら、今のうちに学ぶべきことはたくさんあるらしい。
しかし、類と過ごす時間が少なくなっていることはやはり寂しく、自分で決めたことではあるが、同じ大学だったら…そう思ってしまうこともある。

つくしの曖昧に笑う様子を見て事情を知り尽くしている優紀は、やっぱりとため息を吐いた。

「つくし…頑張るのも大切だけど、あんまり無理しないでね」
「うん。でも、出来るだけ頑張りたいんだ。頑張れば結果が付いてくるって大学受験で身を以て知ったしね」
「そっか、まぁ私で良ければいつでも話聞くし。昔からつくしの周りにはたくさん人が集まってたから、心配はしてないけどね。あ、大学のコンパとか参加してヤキモチ妬かれちゃわないようにね」
「も〜優紀っ!」

つくしが頬を染め優紀を睨むと、テーブルに置いた携帯が振動する。

「あ、類だ…。優紀、ごめん出ていい?」
「もちろん」
「類…?あ、うん………分かった。行くね」

つくしが通話を終えると、優紀が帰り支度を始める。
元々、優紀のデートの前に少しお茶をする予定だったのだ。
しかし時計を見るとかれこれ2時間近くは喋っていたことになる。

「花沢さん来たんでしょ?行こ」
「うん。ありがと、優紀も彼氏とデート楽しんでね」
「そうする。いつもラブラブなつくしたちにあてられてるから」
「………」

あてているつもりはないのだが、家でも外でも日本人とは思えない程に、甘い言葉と態度でつくしを陥落させる男に覚えがありすぎて何も言えない。

優紀と店の前で別れると、類が車を停めている場所まで歩いて行く。
道すがら、優紀に言われたことを頭の中で考えた。

友達か…

大学のコンパなどに興味も時間もなかったつくしだが、田口にサークルの飲み会に誘われていることを思い出した。
まだ類に聞いてはいないが、少し顔を出してみてもいいかもしれないと思った。


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つくしが入学した大学の新システムでは、始めの2年間は全員が教養学部という学部で幅広い知識を身に付けさせられ、それを経て専門学部への進学となる。
専門学部と言っても、成績優秀者にしか入れない医学部や法学部は、皆そこに行くために大学に入ってからも必死に努力しなければ進学することは出来ない狭き門である。
初めの1年間の成績によって進学出来る学部が決まっている、と言っても過言ではないために、考える時間はそれ程にはない。
それに行きたい学部によって、要求される科目も異なってくるために何も考えずに始めの1年間を過ごせるわけではないのだ。

つくしは、先日類の父である聡から、自身の将来を花沢の家のことと重ねて考える必要はない、そう言われたこと、興味のあることという理由から、目標とする学部は決めていた。
ずっと迷っていたのは、類の側にいるために、例えば経済学を学ぶ、法律を学ぶ、そう考えてしまうと、果たしてそれが自分のやりたいことなのか、それが分からなかったからだ。

しかし成績優秀者のみが入ることの出来る狭き門、大学に入ってからはバイト頑張ります、という居酒屋の店長との約束は守れそうになかった。

それでも頑張ってみたいという気持ちがある。

つくしは進学のための書類を見ながら家に帰るため歩いていると、大学の門を通り抜けてすぐの道路に、ハザードを点滅させた黒のスポーツカーが目に止まる。
そしてその車にもたれかかるように、長い足を組んで佇む、遠くからでも分かる見目麗しい男性は、つくしに気がつくと軽く手を上げて最上級の微笑みを見せる。

「類、どうして?仕事は?」
「今日はもうおしまい。早く終わったから迎えに来た」
「ありがと…でも連絡くれればよかったのに、行き違いにならなくてよかった」
「また携帯見てないでしょ?」
「え…?」

つくしはまさかと鞄からゴソゴソと携帯を取り出して見ると、類からの着信とメール。

「ごめん…気が付かなかった」
「だと、思った。はい…乗って?」
「ありがとう」

類の車の助手席に乗るのも慣れたもので、初めは恐怖でしかなかった類の運転も今では心地よく感じ寝てしまうことさえあるのだ。

それでも、さすがに大学から家までの数十分で眠りにつくことはなく、つくしは疲労の色が見えている類の横顔を心配そうに覗き見た。

「仕事、最近忙しそうだね?今日は大丈夫だったの?」
「うん。本業は学生だからね。今日は課題やるために無理やり早く切り上げたってところかな?」
「夜も遅くまで起きてるもんね…無理しないでね。あ、もし夜食とか必要なら言って?」
「ん…ありがとう。でもつくしと寝てると結構深く眠れるみたいだから、今からつくしのこと襲えるぐらいは元気だよ?」
「もうっ!何言ってんの!?」

つくしは思わずハンドルを握る類の腕を思い切り殴ろうとするが、それはさすがに命惜しさに止めた。
空ぶった腕は力を失い、類の二の腕をポコリと殴る。





「ねえ、昨日大学の門のところに花沢さん迎えに来てたでしょ?」

土曜日、居酒屋のバイト終わりに、田口と並んで歩きながら帰っていると、突然切り出された話題に慌てて、前のめりに転びそうになってしまう。
田口が腕を支えてくれてなければ、大人とは思えない恥ずかしい転び方をしてしまったであろう。

「ご、ごめんっ」
「慌て過ぎ…」

一瞬、ストーカーか…と思ってしまったことは申し訳ないが、それ程に驚いたのだ。
田口と行動を共にしている時、類と会う頻度がやたら高いように思えてならない。

「でも、なんで知ってんの!?」
「はぁ〜やっぱり気付いてないよね。ってか、俺たち友達なんだし、田口くんどこの大学行くの?ぐらいは聞いてくれると思ってたよ…あーあ、寂しい」
「えっ、えっ、なに?どういうこと?」
「俺たち、同じ大学ですから」
「えええええっ!?」

つくしは驚きのあまり目を丸くして立ち止まり、田口を凝視した。
確かに田口の進路を聞いたことはなかった。
会う時は常にバイト中なこともあり、プライベートな会話をずっとしている時間もなかったのだが、帰りが一緒になることも少なくなかったのだから、今となっては何故その話題にならなかったのか不思議でならない。

「んで、昨日帰りに花沢さんの車に乗り込むつくしちゃんを見たんだよね。目立ち過ぎだよね、あの人。何というか…オーラ、みたいなのあるし」
「そうなんだ〜。あぁ、ビックリした…」
「でも、色々気を付けた方がいいよ」
「なんで?」
「そりゃ……。ま、いいや」
「……?」

つくしが不思議そうに田口を仰ぎ見ると、田口は何でもないと首を振った。

「そういえば、サークル入った?」
「あたし?入ってない。時間もないし…田口くん入ったの?」
「うん、俺はサッカー!観るのもやるのも好きでさ。つくしちゃんも今度サークルの集まりおいでよ。あ、サッカーやれってことじゃないよ?飲み会とか多いからさ」
「ありがと…考えておくね」

田口が家まで送って行くと言うのを、明るい道しか通らないからと丁重に断り、つくしはマンションまでの道を歩いた。
大学が同じと聞いて、もちろん驚きはしたが、今では優紀を通さなくとも連絡し合える仲の良い友人同士ということもあって、大学に知り合いのいないつくしとしてはとても心強い。


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「つくし、そろそろ帰ろうか」

類が腕の時計を見て時間を確認し腰を上げると、つくしも頷いて立ち上がる。
すでに邸に来てから1時間以上経過していた。
本来、聡も美和子も分刻みのスケジュールをこなす人間だ。
このあとも、仕事があるのだと予め類から聞いていた。

「今日はお忙しい中時間を割いてくださってありがとうございました」
「牧野さん」

つくしが頭を下げて言うと、聡は座ったままでつくしを呼び止めた。

「はい」
「君は…将来類とどうしたい?」
「……!」

この1時間和やかな雰囲気で話が進んだが、それを認めてくれていると思っていたわけではない。
邸に着いてまず始めに言われるか、聞かれるかすると覚悟していたが、他愛ない会話だけで終わろうとすることがつくしは逆に不思議だった。

つくしとて、ずっと考えてきたことだった。
答えはもう決まっている。

「ずっと一緒にいたいと思っています」
「それは類との将来を考えてるということ?」
「……まだまだ先の話だとは思いますが、ずっと先の未来を一緒に過ごせればと思っています。……ただ、あたしにはよく分からないんです。類と一緒にいる為に何を学ぶべきか…それを自分の将来と重ねていいのかも」

類はつくしの言葉に驚いたような表情をするが、同時に嬉しそうに微笑んだ。

つくしは迷っていた。
類とのことだけで将来を決めていいのか。
つくし自身まだ方向性も決まってはいなかったが、類との将来と自分の将来のことは別のような気がしていた。
将来の夢、花沢物産社長の奥様…なはずもない。
だからこそ、本当にやりたいことを見つけたい。
そして類の隣にいる為に、学ぶべきことがあるのなら身に付けていきたい。
つくしは聡に胸の内を明かした。

「学ぶべき…か。君はまだ大学生だ…例えば英語やパーティマナー、それらを学ぶのならこれからでも遅くはないだろう。それこそ、類と結婚を考えているのなら、学んで欲しいことは山ほどあるがね」

聡の言葉に、つくしの顔が耳まで真っ赤に染まる。
自分でも遠回しに言ったことではあるが、実際に結婚の二文字を出されると妙に現実的に感じてしまう。

「俺言ったじゃない。高校卒業したら、俺のお嫁さんになるかって」
「類っ!それは冗談でしょ!!」
「冗談なんかで言わないよ、俺つくしがいたから仕事しようと思ったし、つくしが作ってくれるからご飯も食べてるんだよ?自分で言うのも何だけど、ここに住んでた時の俺の生活、結構酷いもんだよ?聞きたい?」

類はあっけらかんと言うが、目の前の聡も美和子も苦笑しているところを見ると、相当酷かったのだろうと予測出来た。

「ふふっ、類に毎日規則正しい生活をさせるなんて、私たちでも出来なかったことですからね」
「そうだね…。牧野さん…君が将来やりたいことは自分自身で見つけなさい。花沢の家のことと重ねて考える必要はないよ」

つくしの勘違いでなければ、もしかしたら、という淡い期待がよぎる。

「あ、あのっ…あたしは…類と、類さんと一緒に居てもいいんでしょうか?」

つくしの言葉にさほど驚いた顔も見せずに、美和子がふわりと笑った。
こんな時でも、その顔が類と酷似していてドキリとさせられてしまう。

「失礼なことを申し上げると…初めはあなたとの付き合いを賛成していたわけじゃないの。類がいくら好きだからと言っても、司くんとのことも知ってるし…お金目当てではないと信じられなかった。やっぱり子どもには幸せになってもらいたいものでしょう?」
「はい」
「取り敢えずは静観することにしたのだけどね。類が…今まで見たことないくらい必死で、あなたのことを話すから。一緒に暮らし始めた頃から…あなたに会ってくれって、何度も頼みに来たのよ?」
「そうだったんですか…だから…」

つくしが何度も両親に1度挨拶をした方がいいのではと言っても、類が取り合わなかったのはその為だったのかと納得した。
その頃は聡と美和子に断られていたからなのだろう。

「類をあんなに必死にさせる子を、一度見てみたいと思ったこともあるけどね。想像以上だったよ」
「ええ…会って良かった…。だって、こんな風に笑う類を私たちは見たことがなかった。牧野さんのおかげなんでしょうね」

聡も美和子も座ったまま話していたが、そろそろ次のスケジュールが押してきているようで、いつの間にか室内に入ってきていた秘書が聡に耳打ちすると、聡は小さく首を縦に振った。

「すまない…もう時間が…。とにかく、私達からは何も言うことはないよ。牧野さん大変だとは思うけど、類のことよろしく頼むよ」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
「類…将来のことを考えているのなら、牧野さんに色々と教えてあげなさいね」
「ん、分かってる」

つくしはダイニングから出て行く聡と美和子に深々と頭を下げ暫く2人の姿を見送ると、類を見上げてありがとうと微笑んだ。

「言ったでしょ?親のこと説得してみせるって。つくしに会わせるのが一番早いって分かってたからね」

類も微笑み返しながら、つくしの頬に触れる。

「会って…ダメって言われたら、どうしてたの?」
「あんたにあって、好きにならない人なんていないよ」

買い被り過ぎだよ…つくしのその言葉は類の唇で塞がれた。


***


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wish you were here 34

wish you were here 34
類の両親の名前を恋シリーズと一緒にしたのは、考えるのが面倒だったからです…すみません(^^;;

***


類から花沢邸へ赴くことに了承を得てから2週間。
現代表取締役社長である類の父の都合で、つくしとの顔合わせは今日になった。
朝から、バタバタとマンション内を走り回る音やクローゼットを開け閉めするバタンバタンという音が絶え間なく聞こえる。

「つくし…何回着替えるの?」
「だって、何着て行けばいいか分からなくなっちゃって」
「だったら俺が選んであげる。俺、スーツで行かないからね、つくしも普通でいいんだよ…はい、これ」

類が手渡したのは、グレーのストライプ柄のニットと膝下まである黒のフレアスカートだった。

「ありがと…あとね、類のご両親が好きなお菓子とかある?」
「よく行く店があるから、そこでケーキでも買って行こうか」
「うん…何から何までごめんね」
「そんなに構える必要ないよ。俺も自分の親のことなのに分かってきたのつい最近だから、偉そうなこと言えないけど…割りと聞く耳持ってると思うよ?」

類は、この1年間つくしが大学受験のために、バイトと両立しながら勉強しているのをずっと側で見てきた。
必死に努力し、自身で道を切り開こうとする人間を馬鹿にするような親ではないと、今では思うことが出来る。
親を少し信じることが出来たことも、実はつくしのおかげなのだと類は思っている。

「そんなに色々深く考えてないよ。ただ、好きな人の親に会うのに緊張しない人なんていないでしょ?それだけっ!」
「そ?ならいいけど…じゃあ行こうか」



つくしにとっては久しぶりの…というよりも、2度目の花沢邸の門をリムジンが通り抜ける。
初めて来た時は、使用人の方々への挨拶もせずに、類に支えられるようにしてこの門を通った。
その時の記憶にあるのは、している最中の類の顔と天井の模様くらいだ。
思い出してしまうと、つくしは居ても立っても居られないほどに恥ずかしくなってしまう。
どうかつくしのことを覚えている人がいませんようにと願うばかりだ。

「お帰りなさいませ」
「ああ…」
「こんにちは、お邪魔します」

つくしが緊張の面持ちで立ち並ぶ使用人へ丁寧に頭を下げ挨拶をすると、40代であろうか、母千恵子と同じぐらいの年齢の使用人が驚いたようにつくしを見た。
しかし、それはすぐに嬉しそうな微笑みへと変わり、ようこそいらっしゃいましたと皆一様に歓迎してくれているように思えて、つくしは嬉しかった。

「類様…旦那様と奥様がダイニングでお待ちです」
「ああ、分かった。つくし、行こ」
「う、うん」

今まで1年も挨拶をしてこなかった後ろめたさが、つくしの足を重くする。
長い廊下を歩いて行くと、突き当たりの部屋の両扉が開け放たれていて、中からは人の話し声が聞こえてくる。

「父さん、母さん…ただいま帰りました」

類が開いている扉を軽くノックしながら、部屋の中に話し掛けると、大きなダイニングテーブルに座った男女がゆっくりと振り向いた。

「類さん…お帰りなさい。あら、あなたが牧野さんね?初めまして、類の母の花沢美和子と申します」

美和子は、類を女性にしたらこうなるのかと思うほど、髪質も顔立ちも類そのままだった。

「ご、ご挨拶が遅れました!牧野つくしと申します…あの、類さんと」

つくしが言いかけるとそれを遮るように、類が話す。

「俺の恋人…知ってるよね?」
「ああ…初めまして牧野さん。類の父の花沢聡と言います。類からあなたのことはよく聞いてましたよ」
「ええっ!?そうなんですか?」

類がつくしのことを既に両親に伝えていたことに、驚きを隠せない。
類を横目にチラリと見るが、つくしの視線に気が付くと予想通りいつものスマイル。
類に促され、つくしは類の両親の前の椅子に腰を下ろした。

「何を話してたの?」
「ん〜色々かな?小動物みたいで可愛いよ、とか?」
「ちょっとっ!それはないでしょ!?嘘でもいいから、清楚な和風美人とかさ」
「会ったらバレるじゃん…」
「あ、そうか…」

つくしの言葉に、類が隣でお腹を抱えるようにして笑う。
つくしは今更ながら、類の両親の前であったと、慌てて居住まいを正した。

「す、すみません…」
「いやいや、小動物とは言ってなかったと思うけどね…」

聡もくくっと声を立てて笑う。
聡もまた類と肩を並べられるくらいの長身だ。
彫りが深く精悍な顔立ちをしていて、笑った顔はやはり類を思わせる。

2人が若いうちに結婚という話は類から聞いたことがなかった為、2人ともつくしの両親とそう歳は変わらないはずだ。
しかし、持って生まれた品格や佇まいがそうさせているのかは分からないが、おじさん、おばさんという言葉がこれ程似合わない人たちをつくしは初めて見たと思った。

「一緒に暮らしていることも聞いてるよ。真面目で努力家で思いやりのある女性だと類は言ってたかな?」
「そ、そんな、大層なものではありませんっ」

自分のいないところで、まさかそのような会話をされているとは露ほども思わなかったつくしは、赤く染まった顔の前で手をブンブンと振った。

「そうね…まずは、合格おめでとう…かしら?」

つくしが受験すること、合格したこと、そして一緒に暮らしていることも類は伝えてくれていたんだと、嬉しく思う。

「あ、ありがとうございます!」
「凄いわね、バイトをしながら超難関校と言われる大学に現役一発合格なんて。牧野さんは本当に努力家なのね」

美和子は社交辞令で言っているわけではなさそうで、本当に感心したようにつくしを見た。

「いえ、類さんのおかげです。マンションに住まわせてもらっているので、以前のように生活のためにバイトをしなくてよくなりました。空いた時間を勉強に充てることが出来ましたし、何より類さんが家庭教師してくれたことが大きかったです」
「へぇ〜類がねぇ!」

和やかな雰囲気でつくしも徐々に緊張が解れていく。
大手企業の経営者一族トップである花沢聡は、同じ立場とはいえ道明寺楓とは考え方は違うのかもしれない。
自分ではそんなつもりはなかったが、実はかなり緊張し、邸を訪れた時はまるで楓と対峙するような気分でいたようだ。
ようやく、つくしは肩の力が抜けて深く息を吐くことが出来た。


***


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wish you were here 33

wish you were here 33



類とマンションで同棲を始めて1年。
つくしは晴れて国立大学への入学を果たした。
持って生まれた努力家な性格と、花沢類というスーパー家庭教師にかかれば、国立など難関ではないのかもしれない。
類は時間の許す限り、つくしの勉強も見てくれた。

そして、つくしが常々心配していた類の両親からの連絡も特になく、一緒に暮らしていることは知らないわけがないと思うが、一過性の恋とでも思っているのか今のところは静観だった。
そうではないのだと自信を持って言うには、つくしにとって類の立場は重すぎた。
また、司の時と同じようなことが起こったら、つくしを守るため、つくしと共にいるため類は家を捨てるだろう。
そうさせないために、どうすればいいか…その答えは未だに出ていない。

そのこととは別に、つくしとしては、一緒に暮らす人の親に挨拶もしないなど失礼なのではないかと思っていた。
しかし、ここ1年類とも話してきたのだが、類には気にしなくていいと軽くあしらわれてしまう。
それが、バイトに受験勉強にと忙しいつくしに心配をかけないためと分かってはいるけれど、やはり納得することは出来ない。
つくしは受験で1年有耶無耶にしてきたことを、晴れて大学入学を果たした今、解決出来ればと考えていた。

「類…あのね」

つくしは朝食の準備をしながら、椅子に座って経済新聞を読む類へ話しかける。
類はキッチンへ視線を向けると、声には出さずなに?と言うように首を傾げた。

「あたしも大学入学したし、ここに住まわせてもらってること、ちゃんと類のご両親に言いたいんだけど。どう?」
「ん〜分かった。都合聞いておくよ。最近は本邸にいるみたいだし、今週か来週あたり行く?」
「い、いいのっ!?」

余りにあっさりと類からの承諾を得られて拍子抜けしてしまう。
今まで断られ続けてきたのは一体何だったのだろうとさえ思う。
つくしがポカーンと口を開けたまま、固まっていると、その顔を見た類が声を上げて笑い出す。

「そっ、その顔…おかしっ…ははっ」
「も〜類!どうせ美人じゃないけどさ!」
「ごめんって…」

怒って頬を膨らませたつくしも類の好きな表情のひとつで、また込み上げて来そうな笑いを何とか抑えていると、つくしが不思議そうに類を見た。

「でも、何で?」
「うん?ああ…本当は挨拶なんていらないけど…そういうのあんた嫌なんでしょ?つくしの受験も終わったしね。それに…前は殆ど日本にいなかったんだけど、俺が仕事始めてからは監視役のようにずっと日本にいるからさ…これからも顔合わせるかもしれないし」

久しぶりに自分の両親のことを話す類は、監視役とは言うが、本当にそう思っているわけではないことが表情から分かる。
あの人たちは仕方ないな、と慈しむような感情すら垣間見えるのだから、つくしは驚きを隠せない。

仕事を通してではあるが、親から子へ、子から親へ、本来なら小さい頃に与えられるはずの愛情を今少しずつ注いでいるのかもしれないとつくしは思う。

「そっか〜。うん、うん良かった!」
「何?」
「えっ?へへへ…何でもない」

ついニヤニヤと笑うつくしを、類は訝しげに見るが、つくしが楽しそうに食事の準備をしている姿は見ていて飽きない。
たまにどうして1つのことにこんなにも、一生懸命になれるのだろうと不思議に思う。
その頑張っている姿が、類の背中をも押してくれているのだ。

「類、今日も大学終わってから仕事行くの?ご飯は家で食べられる?」
「うん、そんなに遅くならないと思う」
「分かった。朝ご飯出来たから食べよ」

つくしがテーブルに朝食を並べる。
今日のメニューは、野菜を圧力鍋で柔らかく形がなくなるまで煮込み、さらに裏ごししたスープとサラダ、昨日からホームベーカリーで予約しておいたパン、それに目玉焼きとベーコンだ。

「いただきます」
「あ、このスープ美味しい…」
「でしょ?この間お邸から来てくれた人に、今度花沢邸のレシピ教えてくださいってお願いしておいたの」

一緒に暮らし始めてから、つくしが食事の準備をしているが、使っていない部屋も多い広いマンション、掃除、洗濯はハウスキーパーに入ってもらっていた。
ハウスキーパーと言っても、新しく雇うには面接や事前調査が必要になってくるため、花沢邸から面識のある使用人を数人来させている。
つくしも類も外出している時間帯にやってくることが殆どだが、つくしの帰りが早い時や遅出の場合に顔を合わせることもあるらしく、その時に聞いたのだと言う。

「類、あたしが作った料理に文句なんて言わないけどさ…。やっぱり子どもの頃から慣れ親しんだ味ってあるよね。だから、ちょっとずつ覚えていこうと思って」
「そう。俺はつくしが作ってくれるなら何でも嬉しいけどね」
「嘘…たまーにしかめっ面して食べてる時あるよ?これ苦手なんだなってすぐ分かるもん。でも、類は残さないで食べてくれるよね?あたしは…食事作ることしか出来ないから、少しでも類が美味しいって思ってくれるものを作りたい」

元々類はつくしに家事全てをさせるつもりなどなかったし、食事をと言ったのも一番つくしにとって負担にならないことを選んだだけのことだ。
もちろん始めはつくしが洗濯、掃除も自分でやると言い張ったが、それではバイトを減らす意味もなくなるし負担も増える。

「無理はしないでね?将来シェフになりたいんなら別だけどさ。つくしの作ってくれる料理、俺は好きだよ?」
「ありがと。そりゃ、シェフにってわけじゃないけど、料理結構好きみたい。しかも高級食材たくさんあるし、あたしまで舌肥えちゃうよ」
「ふっ…たくさん食べな」

類は自分のサラダをフォークに刺すと、つくしの前に差し出した。

「類…生の玉ねぎ嫌いなんでしょ?」
「バレた?」

***


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メリークリスマスを君と 後編

後編


12月18日ーーー。

仕事で海外へ行かなければならないから、いつ帰れるか分からない、そう言われた時つくしは特に寂しいとは思わなかった。
いつ帰れるかと言っても何ヶ月も、というわけではなさそうで、何週間か仕事で海外へ行くことはよくあることだったからだ。
その間も類からは、毎日のように連絡があり、つくしが寂しさを感じる間もなかった。

類と付き合う前、クリスマスシーズンはバイトに入りたがる人が少なくなる期間でもあったので、毎年クリスマスや大晦日、元旦はバイトを入れていた。

「気にしないで、あたしもバイト入れると思うから」

その為、つくしの言葉に類が少し寂しそうに笑ったのも気に留めなかったのだ。

「ん…分かった。向こうから連絡するね」
「うん。気を付けてね」

2人でそんな会話をした翌日に、類はアメリカへと旅立った。
仕事内容はつくしにはよく分からなかったが、大きな商談をまとめなければならないらしく、その結果が出るまでは帰国することが出来ないのだと類は言った。

翌日も授業にバイトにと忙しいつくしは、結局空港から見送ることも出来ないままだった。

繁華街の一角にあるレストラン、つくしはそこでウェイトレスのバイトをしている。
クリスマスが近いこの時期、夜は満席となることが多く、バイトたちは大忙しだ。
つくしのバイトの時間は18時から22時までだが、今日もバックルームへ引けたのは23時近い。

「お先に失礼します!」
「牧野さんお疲れ様〜!あ、駅前に大きなクリスマスツリーあるの知ってる?なかなか凄いわよ?イヴに彼氏と一緒にでも見たら?」
「そうなんですか?帰りにちょっと見てみようかな…」

つくしは帰り際、先輩に声を掛けられて話の種に見に行ってみようと考えた。

5メートルはあろうか、大きいモミの木には色とりどりの飾りが付いている。
そして、たくさんのライトが輝くように点滅し、道行く人たちは必ずと言っていいほど立ち止まり暫し感動を覚える。
つくしもまたその中の1人だった。

「綺麗…」

今頃類もクリスマスツリーを見ているかな?

そんなことを考え上を見上げる。
天辺には一際大きい星の飾りが付いていた。

そういえば、アメリカのどこに出張なのかもつくしは聞くのを忘れていた。

キラキラと輝くツリーは帰り難くなる程綺麗で、この輝きを共に分かち合いたいと思う人が側にいないことを今更ながら寂しく思う。
きっとクリスマスが終わればすぐに片付けられてしまう。

クリスマスまでに帰って来るといいな。

帰って来られるかは分からないけれど、24日だけは予定を入れずに空けておこうとつくしは思った。




12月24日ーーー


「類、牧野…メリークリスマス!俺らからのクリスマスプレゼントだよ」

類はつくしを抱き締めたまま、3人の親友たちに声を出さずにサンキュと言った。
どれぐらいの時間そうしていただろうか。
抱き締められた腕の中で、つくしがモゾモゾと動き出す。

司たちは、類に抱き付いたまま離れないつくしにいつもそれぐらい素直ならいいのにと苦笑し、大分前に帰って行った。

「類…」
「ん?」

類を見上げると、つくしは口元に笑みを湛え言った。

「一緒にツリー見よ?」
「いいよ。せっかくのクリスマスイヴだしね」

類はつくしと手を繋ぐと、1階の到着ロビーからエレベーターに乗り込み、空港4階にある出発ロビーへと向かった。

「アメリカ行く日、ここの出発ロビーに大きいツリーがあってさ。通り過ぎただけだけど、つくしと一緒に見られたら良かったのにって思ったんだ。間に合って良かった」
「あたしも…バイト帰りにクリスマスツリー1人で見たよ。その時…類が隣に居ないと寂しいって思った…」

エレベーターの扉が開くと、ロビーの中央のツリーがつくしの目に飛び込んできた。
つくしがバイト先の近くで見たツリーよりも大きく輝いて見えた。

「わっ…これのこと?凄い!綺麗だね…」

空港という場所がら故に、この時間に照明が落とされるということはないが、ツリーに付けられたたくさんの電飾はチカチカと点滅しツリーに彩りを与えていた。
2人は繋いだ手を離さずに、暫くツリーを見上げた。

「…前に見た時はこんなに綺麗に感じなかった…。今日は、つくしと一緒だからかな」

ツリーを目を細めて眺める同じ瞳で、つくしに視線を移す。
類の言葉につくしは頬を赤くし、上目遣いで見つめ返した。
その時、類の上着のポケットの中からヴーヴーという振動音が聞こえる。

それがプライベート用の物であったなら無視していただろう。
ウンザリした顔で小さく息を吐くと、つくしにごめんと断って携帯を見る。

「え……?ははっ!最高っ…」

類は携帯を見ると、それはメールであったようで一瞬驚いた顔をしたが、すぐに嬉々とした表情へと変わる。

「どうかしたの?」

つくしがキョトンとした顔で類を見ると、すぐに優しげな笑みを浮かべて、つくしを抱き締めた。

「な、なにっ?」
「ね…今日、帰さなくていい?」
「ええぇっ!?」

言葉の意味が分からないほど純情ではないし、何度となく夜を共にした類との逢瀬を期待していない筈もないが、目の前の相手に直接言われることはやはり面映く頬が熱くなってくる。
つくしは類の胸の中で気恥ずかしいながらも頷いた。

「行こうか」
「えっ、え、どこに?」

類はフッと笑うと携帯のメールを開きつくしへと向ける。

「総二郎から…わざと仕事用にメールするんだから、やってくれるよね?」

″クリスマスプレゼント2!空港に隣接するホテルのスイート、類の名前で予約しておいた″


fin


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3人の日常 3

3人の日常 3



桜子のベビーブランド立ち上げに際して、店頭ポスターのモデルを務めたつくしであったが、実際に思っていたのと見たのでは天と地ほどの違いがあった。
桜子の言っていた通り、店頭ポスターなのに目立たなくてどうするんだという意見はごもっともなのだが、写っているのが自分だと思うと、身の置き場のない思いばかりだった。

″誰も先輩と蓮くんだとは気が付きませんから、大丈夫ですよ″

桜子はそう言った。
確かに、芸能人ではないのだから街を歩いていて指を差されるなんてことにはならないだろう。
しかし、今後全国展開していくブランド、つくしのことを知る友人知人に知られるのではないかと危惧しているのだ。

「もう〜あんなに派手な店頭ポスターだと思わなかった!ね…ほんとにあたしだってバレないと思う?」

桜子のブランドショップから、 邸に戻ったつくしは、ベッドで蓮を寝かしつけた後、自室で仕事をしている類に聞いた。

「知ってる人が見たら、すぐ分かるだろうね。俺だって、あんなに綺麗なつくしを他の男に見せたくないよ。しかも、寝顔もあるし」
「綺麗云々はともかく、寝顔とか…ほんと恥ずかしいっ」

類も桜子にしてやられた感はあるようで、店舗内ではさすがにオーナーである桜子を言及するようなことはしなかったが、邸に戻る車の中でもずっと同じことを言っていた。

「絶対、花沢不動産の佐藤とかに教えないでよ?」
「あたしが自分から教えるわけないじゃんっ!…あ、そうだ…忘れてた」

つくしはテーブルに置いてある携帯を取ると、メールを開いて類に見せた。

「島崎さんから…。落ち着いたら蓮くん連れて会社に顔出すこと!だって。あたしもみんなに会いたいし、ちょっと行ってもいい?」
「それはいいけど…前みたいに、一社員のようにはいかないよ?大丈夫?」
「うん…分かってる。蓮がいるんだもん、嫌だなんて言わないよ」

類が大丈夫かと心配そうに言う意味は、つくしにもよく分かっていた。
以前ならSPである堀田1人がつくしに付くだけで済んでいたが、蓮を連れてとなるとそういうわけにはいかない。
最低2人、蓮とつくしを別々に守れるように動けなければならない。
そして、誘拐の危険もあるために、外出時は殆ど要人警護並みにピッタリと張り付いているのだ。
働いていた時は、つくし自身が嫌がっていたこともあり近距離での警護はしなかったのだが、竹内の件があってからつくしにもようやく自覚が芽生えた。
何より、自分に何かあった時にとても悲しむ人がいるのだということを。

「実際もう慣れたしね!だって、それを嫌がっていたら…どこにも行けなくなっちゃうでしょ?」
「そうだね…どんなに嫌でもこればっかりは慣れてもらうしかないと思ってたから、安心した」

産後2ヶ月程は授乳間隔も定まっておらず、邸の中で過ごす方がつくしとしても楽だったために、庭を散歩するくらいしか外に出ることはなかった。
しかし、周りの助けもあり育児に余裕が出来、徐々に外出も増えてくると、がたいのいい男を何人も連れ立って歩くつくしたち親子に、何事かと道行く人に振り返られる日々だ。
しかしそれにも、もう慣れつつある。
そうまでしても、邸に閉じこもっているのは性に合わないのだから仕方がないと、割り切るしかなかった。

「いつ行く?久しぶりに一緒に通勤しようか?」
「どうしよう…会社のあんまり忙しい日じゃない方がいいから…。来週にしようかな?島崎さんに曜日聞いてみるね」

つくしは顔馴染みのメンバーに会えるのがよほど嬉しいのか、メールを送るその表情は楽しそうだった。
つくしがメールを送信してから1分も経たずに携帯が振動する。

「返信早いな〜。…と、来週水曜がいいって!類、いい?」
「ん、分かった」

つくしがじゃあ水曜日に、そう入力し送信したのを確認すると、類はつくしの携帯を取り上げテーブルに置いた。

「類…どうしたの?」

ふわりと両腕に包まれるように背後から抱き締められると、つくしも安心して体重を預けるように寄りかかった。

「そろそろ…俺のことも構って?」

類が頬にキスを落とすと、それが合図であるかのようにつくしは類と深く唇を合わせていく。
何度も角度を変え口腔内を愛撫すると、飲み込みきれなかった唾液が、つくしの顎を伝い流れ落ちた。

「ふっ…ぅ…る、い…」

薄く開いた唇が唾液で濡れていて、赤く染まった頬と潤んだ瞳が、つくしの妖艶さに拍車をかける。

「蓮が…起きるまで、…っ、だよ?」
「分かってるよ。だから、早くしよ?」



そして、翌週水曜日ーーー。
花沢本社ビルの前に停まったリムジンから降りる類の光景はいつものことだが、リムジンからベビーカーを出す花沢常務の姿は誰も見たことがないものであっただろう。

「……!!?」

皆一様に言葉にならない衝撃を抱え、一礼して通り過ぎて行く。
そして蓮を抱っこしたつくしがリムジンから降りると、妙に納得した表情でつくしにもおはようございますと頭を下げるのだった。

「ふふっ、会社で類がベビーカー押してるとこなんて激レアなんじゃない?」

朝の短い時間のこの一コマは、花沢本社ビルで働く既婚女性、既婚男性にも衝撃を与えた。

「そうだね…つくしと蓮と出社するのもいいな…ビルの中に保育所作ろうかな」

冗談なのか本気なのかいまいち分からないが、妊婦のつくしの為に新しい部署を新設したぐらいなのだから、やりかねないとつくしは思った。

「あたしがまた働くようになったらね。考えて?」

頭を下げ常務が通り過ぎるのを待つ社員たちは、目を丸くしながら夫婦の様子を覗き見ていた。
高級スーツには似合わない大きなマザーズバッグを肩に掛け、ベビーカーを押している姿は、本人にそのつもりはなくとも花沢常務育メン情報が真実であることを物語っていて、その噂が本社中に出回るのも時間の問題だった。
そして未婚女性は、私も常務みたいな人と…そう呟く。


エレベーターホールで1階へ停まるエレベーターを待っていると、ちょうど出社する時間のためホールが人で混み合う。

「俺も心配だから15階に行ってから上行くよ」
「ありがと。あ、今の時間エレベーター混んでるよね…ベビーカー畳んだ方がいいかな…」
「大丈夫でしょ?こういう時の役員権限?」
「なにそれ?」

つくしは意味が分からずに戸惑っていると、エレベーターが1階に到着する。
ホールの真ん中あたりにいた、つくしはもちろん乗れないものと思っていたが、何故か誰1人としてエレベーターに乗ろうとはしない。
エレベーターを待つ社員たちが類とつくしに道を開けるように退いた。

「ほら、つくし行くよ?」
「う、うん!」

そういうことかとやっと合点がいく。
エレベーターに乗り込みつくしは頭を下げると、扉は直ぐに閉まった。



「おはようございまーす…」

15階のflowerfoodの電子ドアを類が解錠しつくしと共に中に入ると、早速島崎の大歓迎を受けた。

「あぁっ!花沢さーん!!待ってたわ〜!蓮くんねっ、可愛いわぁ〜常務にそっくり」
「島崎さんっ!お久しぶりです〜!そうそう類にそっくりですよね〜。あたしに似てるとこなんか髪の毛くらいですよ?」
「よ〜花沢!久しぶりだな!…と、常務、お疲れ様です」
「木嶋さん!」

木嶋もつくしを見つけて声を掛けるが、たくさんの大人に囲まれて蓮が驚き泣き出しそうな声を出した。

「ふぇっ…ぅ…」
「ビックリしちゃったのね…大丈夫よ」

島崎はベビーカーから蓮を抱き上げると、さすが子どもを持つお母さんである手慣れた手つきであやす。
そして蓮がキャッキャッと楽しそうに笑い声をあげた。

「「「 かわいいぃぃ〜 」」」

社内にももちろん堀田を含むSP6名が一緒に着いて入っているが、本社内でも堀田たちの存在を気にも留めないのはこのflowerfood社員だけだ。
大体は上司である類の存在があるために蓮に近付いて来ようとはしないのだが、ここのメンバーはそれが通用しない。
蓮付きのSPは、島崎に抱っこされ同僚にも囲まれている蓮を苦笑しながら外垣から見守っている。
悪意のある人間がここにいないことが救いである。

「あ、おまえさ…」
「そういえば花沢さん!見たわよ〜!」

木嶋がつくしに話し掛けようとするが、その言葉にかぶせるように、島崎が割って入る。

「えっ!?な、何を…ですか?」

島崎はニヤリと笑うと、木嶋のデスクからノートと同じ大きさの冊子を取り出した。

「げ…」

つくしは思わず顔を覆い、木嶋はやれやれとため息を吐いた。
類もまた、一番先に気が付くとしたらこの女性だろうと思っていた。

「花沢さん、いつの間に三条桜子ブランドのモデルなんてやってたのよ〜!教えてよ〜!!木嶋くんが大事そうに子ども服のカタログ持ってるから、おかしいなとは思ってたのよ!!」
「ちょっ…島崎さんっ!」

島崎の声は15階中に響き渡り、つくしのモデルの件はこれで花沢本社全社員にバレたも同然だった。

木嶋は以前から、ちょいちょい、ちょいちょい…島崎から爆弾を落とされていて、つくしが男性からの好意に大変鈍くて助かるが、確実に類には悟られていると思う。

やっぱり、カタログは家に持って帰るべきだったと今更後悔する木嶋であった。


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メリークリスマスを君と 前編

メリークリスマスを君と

前後編です。
類つく…ってわりには、前編には類がほぼ出てこない…。
後編はちゃんと出ますよ〜



前編


何やってんだろあたし、やっぱりバイト入れちゃえば良かった。

パーティ会場でたった1人お皿にチキンをてんこ盛りにしたつくしが、深くため息を吐くと、楽しそうに腕を組むカップルを羨ましそうに見つめた。

もしかしたら早く帰れるかもしれない、そんな期待が少しあって、何の予定も入れず12月24日の今日はバイトも断ってしまっていた。

しかし、大学からの帰り道、つくしはよほど寂しそうに肩を落として歩いていたのだろう。
同じゼミに所属する鈴木に、クリスマスパーティするから牧野さんもどう?と声を掛けられた。
結局、類からは何の音沙汰も無いし、クリスマスを1人で過ごすくらいならと参加することにしたが、やはり全く楽しくはない。

「牧野さん、今日朝から元気ないね。何かあったの?」

つくしをクリスマスパーティに誘った鈴木が、スパークリングワインの入ったグラスをどうぞと手渡しながら、つくしの横に座った。

「鈴木くん…ありがと。元気だよ。人いっぱいだから、暑いなぁと思って」
「確かにね。見たことない奴らもいるし…気疲れしちゃったかな?」
「そうかも…あたし…」

これ飲んだら帰るね、その言葉は会場内の黄色い悲鳴にかき消される。

「うわっ!見てっ!すげ…あの人たち英徳大でF4って呼ばれてる人たちだよ!知ってる!?大学近いの知ってたけど、本物初めて見た!あれ…でも3人しかいないね」

鈴木が興奮しながらつくしに説明するが、多分彼らのことは鈴木よりもずっとつくしは詳しいはずだった。
何故ここが分かったのかという疑問は残るが、司が一緒に行動している時点でナンパ目的ではないことは確かだと冷静に判断できる自分がいる。

「なんか…牧野さん、見られてない?っていうか、こっち来るよ?」
「あ、うん…」

ここに懇意にしている友人でもいない限り、彼らが用があるのはつくしだと自分でも分かっている。

類に頼まれて、今日はやっぱり会えないと伝えに来たのか…。

彼らを見たときそれ以外思い浮かばなかった。
メールで済ますことも出来る連絡を、そうしないのは類の優しさだろうと。

「よっ!つくしちゃん浮気?類に報告すんぞ〜?」
「違うわよ…。どうしたの?っていうかもうちょっとひっそりと入ってこれない?目立ち過ぎ!」
「仕方ねえだろ…俺様がいる時点で目立たないなんて無理だ」
「はいはい…そうでしたね」

物怖じすることなく和気藹々と話すつくしに周囲は驚いたように、F3とつくしを見比べる。
やはり、F3と並ぶと凡凡たる自分では仕方がないと納得しているが、類と歩いていても同じような視線が投げかけられることは少し悲しくもある。

…というのは、つくしの見解であって実際のところはそれは大きな誤解だった。
美女ではないが気取ることのないつくしがF3の側で屈託なく笑うその表情に、見惚れている男性も多いと彼らは知っている。
だから牽制の意味も込めてここにいるのだ。

鈴木もまた、その輪の中にはもちろん入ることもできずに、ただ呆然とつくしを見つめていた。

「で?本当にどうしたわけ?」
「クリスマスイヴに一人ぼっちでいるお姫様をもてなそうと思ってな」
「類に頼まれた?」
「俺たち3人にそんな不服そうな顔すんのお前ぐらいだぞ?」

つくしの質問には答えることなく、たまたま近くにいた鈴木にあきらが話しかける。

「ちょっと…俺らの姫連れて帰るから」
「は、はいっ!」
「ちょっと…美作さんっ誤解を招くようなこと言わないでっ!」

嵐のような3人組は、1人の姫を連れ去って会場を出た。
そして、シンと静まり返った室内にほうっと息が漏れる。

「「「 羨ましい〜! 」」」



尋常じゃないほどの美形に囲まれ、クリスマスイブの街並みを歩いていくと、立ち並ぶ街路樹が何万個ものLEDで輝いていた。

「うわぁ…綺麗…」

目を真ん丸にさせて、たくさんの木をライトアップしただけのそれに、つくしは足を止めてウットリと上を見上げる。

「よくこんなもんで感動できんな」

珍しいものでも見るような顔で司が言うが、つくしの感動するもの全てが3人にとって新鮮であることは間違いない。

「牧野と歩いてると目的地に着く頃には真夜中になっちまう」
「…だな。ちょっと急ぐか…」

司が道明寺家のリムジンを呼ぶと、5分も経たずに人目につく大通りに黒塗りの長い車が停まった。

「あれ?車?結局どこ行くのよ…」
「まぁまぁ、俺たちに任せろって」

クリスマスのイルミネーションをリムジンの窓から眺めながら、車はそろそろ閉店準備を始めそうな高級ブティックのある通りに出た。

「ほら、着いたぞ。せっかくのクリスマスイヴだからな、めちゃくちゃ可愛く飾ってやるよ」
「ええ〜いいよ!」
「いいよじゃねえ…強制だ」
「だって……」

着飾ったって、見せたい人もいないし…。

そう口から出かかると、余計に寂しさが募る。

「今日ぐらい、飛び切り綺麗に女らしくしたってバチは当たらねえよ」
「道明寺…ありがと」

司が先頭に立って店内に入ると、閉店準備をしていた支配人が驚愕の表情で飛んでくる。

「ど、ど、道明寺様っ!」
「ちょっとこいつに似合う服、いくつか持って来て」
「は、はいっ!ただいまっ!」

あれでもないこれでもないといくつもドレスを変えていくと、3人が声を揃えてそれだっ!と言ったドレスは、つくしの白い肌が映えるような淡いブルーのパーティドレスだった。

ドレス、というにはシンプルではあるが、光沢のある布地に袖はラッフルスリーブ、胸元はカシュクールデザインで清楚なつくしにはピッタリの一枚だ。
そして、胸元は見えそうで見えない如何にも男心を擽るようなドレスだった。
袖の短いドレスにファー付きの白いカシミアコートを合わせる。

「ほら、ここでメークもしちまえ、あきら」
「ああ…牧野こっち来て座れよ。で、目瞑れ」

つくしは言われるがまま店内の椅子に腰掛けると、あきらの手によって少女のような外見から美しい大人の女性へと変身する。

「ほら…出来た。目開けていいぞ」

つくしは鏡の中の自分の姿に驚きのあまり、声が出ない。
自分のことを可愛いなどとは決して思わないが、綺麗に着飾ればそれなりに見えるのかと驚いたのだ。

しかしF3からすると、つくしは誰も気が付かなかった金の卵だった。
F3と並んで歩いていたとしても見劣りしないほどに。

「よし、準備は出来たな。じゃあ行くぞ」
「え、まだどこか行くの?」
「その姿を一番見せたい奴のところに連れて行ってやるよ」

つくしを来た時と同じようにリムジンへ乗せると、今度は高速の入り口へと車は向かう。
そこから更に1時間は走っただろうか、周りの景色はクリスマスのイルミネーションから工場や倉庫の殺風景なものへと変わった。
それが過ぎると、ゴォォォォという騒音が耳につく。

「空港…?」
「ピンポ〜ン!間に合わないかと思ったぜ!」

総二郎がつくしの手を引き急かすように、到着ロビーへと向かう。

「に、西門さん…もしかして…」
「21:30到着だってよ。ほら…」

総二郎が指差した先には、つくしにとってたった1人の愛おしい人。


「類っ!!!」

満面の笑みでつくしが類の元へ走り寄る。
そして類がつくしを抱き締めると、つくしも幸せそうに類の胸に顔を埋めた。

「あのね…道明寺たちがね…」
「みたいだね。驚いた…凄い綺麗」
「ありがと…」

恥ずかしそうに頬を染めて、でもとても嬉しそうにつくしが笑う。


誰に頼まれたわけでもない。
俺たちは、この顔が見たかっただけなんだ。

「類、牧野…メリークリスマス!俺らからのクリスマスプレゼントだぜ」


***


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