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熱量 4

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総二郎は女性の腰に回していた手を解くと、入り口からつくしの座る席へと無言でやって来る。
本来ならばパートナーを置いて、勝手に店内に入るなど男としてどうかと思う行動だが、店内にいる客の殆どは総二郎の美貌に酔いしれるように目を奪われ、従業員は教育が行き届いているのか動こうともしない。
女性が入り口から何やら叫んでいるようだが、総二郎は振り向きもせずに眉を寄せてつくしにだけ視線を向ける。

「西門さんっ…なに…」
「ちょっとこいつ借りるわ…」
「え…ちょっと、待っ…」

総二郎にグイッと手を引かれると、つくしは思わずガタンと音を立てて椅子から立ち上がってしまう。
一瞬客の目が総二郎からつくしに移るが、総二郎は周りを気にもしていない様子でつくしの手を引くと、店の出口へ向かった。
龍臣はさすがにこんな場所で声を荒げるわけにはいかないと思ったのか、間をおいて立ち上がり精算を済ませてからつくしの後を追った。

入り口付近にいるボーイに一言二言何かを耳打ちすると、ボーイは総二郎に慇懃丁重に頭を下げる。
1人取り残されていた女性にも総二郎は同じように接していたが、女性はつくしをギロッと睨みつけると怒ったような足取りで店を出て行った。

「ちょ、ちょっと…西門さんっ!急になに…」

つくしは総二郎に手を引かれるままついて来ていたが、エレベーターホールまで出るとようやく口を開く。
さすがにホテルの高級レストランが立ち並ぶ店の前で大声を出すわけにはいかない、エレベーターホールとはいえ、つくしはだいぶ声のボリュームを落として話していた。
いつ誰が来るかも分からないし、顔の広い総二郎の迷惑になるようなことは避けたかったからだ。

「お前…類はどうした?」
「類って…なに言ってんの…?」

どうして類の話が出てくるの、そう言いかけるが総二郎のいつになく真剣な瞳で見つめられ、多分色々なことを見向かれてしまっていると思い至る。
つくしが類のことを忘れようとしていることも、勘のいい男にはお見通しなのだろう。

「俺は…類だから諦めたんだけど…?他のどうでもいい男にくれてやるために、お前のこと諦めたわけじゃない」
「西門さん…」

どうして自分が総二郎に告白され、そこに類の名前が出てくるのだろう。
しかし総二郎の真っ黒い双眸に吸い寄せられるように、つくしは握られていた手をピクッと震わせた。
同時に総二郎の唇が、つくしの唇を塞いだ。

時間にすれば1秒足らずの口付けは、軽い音と共に離れていくが、つくしはいつまでも動くことが出来ずにいた。
総二郎もつくしから目を離さない、2人の空気を打ち破ったのはつくしの後を追って来ていた龍臣だった。

「何してんだよ…つーか、誰?」

龍臣はつくしの腕を強く自分の方へ引き寄せようとするが、総二郎に抱き込まれる形で阻まれつくしは胸の中に倒れこむ。
友人だと説明するはずだったのに、総二郎の行動でつくしの友人という言葉には説得力がなくなってしまう。
どうしようかと思案しているうちに、自分が抱き締められたままであることに気付き、腕を突っ張るが総二郎は離す気はないらしく、腕の力が弱まることはなかった。

「に、西門さん…っ、離して!」
「牧野…俺と付き合おうぜ?」
「なに言って…」
「だってお前、そこの男に恋してるって顔してねぇよ。俺が…類のこと忘れさせてやるから」

ギュッと腕に力を入れてつくしを抱き締める、その腕の中は安心するものだけれど。
黙ったまま総二郎のことを拒否しないつくしに、とうとう龍臣が怒りをあらわに声を荒げた。

「男の影があるとは思ってたけど…やっぱり俺は遊ばれてたわけだ…」
「ち、違っ…長谷川君…ごめ…」

男の影もなにも、龍臣に隠し事があるとすれば〝好きな人がいる〝という点だけで、総二郎の行動に関しては完全な誤解なのだが、つくしも龍臣の誤解を積極的に解こうという気になれなかった。
いつか好きになれるかも、そう思っていたって、自分の心の中には未だに強く類への想いが残っている。
むしろ龍臣と付き合うようになってから、余計に類への気持ちが大きくなった。
つくしは総二郎の腕を外そうとそっと手を置くと、今度は総二郎もつくしを抱き締めていた腕の力を弱め解放する。
眉を寄せ総二郎とつくしを交互に睨むように視線を向ける龍臣に、つくしはごめんなさいと告げる。

「この人は友人だけど…あたし、長谷川君のこと、好きな人を忘れるために利用してた。ごめんなさい…」
「どうせ前につくしのアパートの前にいた男だろ?分かってるよ!いい男だったもんな?でももう何ヶ月経ってると思ってんだよ!あいつだって今頃別な女といるかもしれないだろっ!」

知っていたのか、と今更ながらに驚く。
確かに、龍臣と帰っている途中に類と偶然会ったのだから顔を覚えていても不思議ではないが、つくしが話したのは数秒で類との間に何かを匂わせるような会話ではなかった。
龍臣がつくしに好きな人がいると分かっていても、何も言わずに付き合っていくれていたことに胸が痛む。

「そうだけど…それでも忘れられないの…あたしが間違ってた…ごめんなさい」

龍臣はチッと舌打ちすると、エレベーター近くの壁を蹴った。
シンとするホールにはドンっという鈍い音が響き、遠くにいる人々も何事かと視線を向けた。
つくしもビクリと肩を震わせ恐る恐る龍臣を見ると、感情のない冷たい瞳をつくしに向けていた。

「お前のこと…許せないわ…」

龍臣が低い声でボソッと呟いた一言に背筋が凍るような思いがした。

「許せなかったらどうすんだよ…ただの別れ話だろ。あんたこそさっさと別な女見つければいいじゃねえか…こいつに何かしたら、冗談じゃなく転落人生が待ってるぞ…」

総二郎はつくしを背に隠すように前に一歩出る。
龍臣もホテルという場所柄騒ぎ立てることはよろしくないと思ったのか、フンッと鼻を鳴らして目を反らすと、ちょうど人が降りるために開いたエレベーターに乗り込み帰って行った。
何事もなく龍臣が帰ったことに、つくしはホッと安堵のため息を漏らした。

正直、あんなに怒った龍臣を見たのは初めてで、それだけつくしが龍臣を傷付けてしまったんだろうと思う。
初めから断っていれば、こんなことにはならなかったのにと考えると、自分の安直な行動が招いた結果に後悔しかない。
今日原因を作ったのは総二郎であっても、このまま付き合いを続けていれば、きっといつか同じ結果になっていただろう。
長引かせれば長引かせるほど、人の想いは深くなる…それはつくし自身一番よくわかっていることだったのに。


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熱量 3

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類と会ったあの日から、頻繁ではないがきていた類からの連絡がパタリと止んだ。
仕方がなかったんだと、総二郎の言葉を借りれば一期一会のタイミングをつくしは逃してしまったのだと思う他なかった。
〝またみんなで集まる時にでも〝そう言った類が1番みんなでの集まりを嫌い、無理やり総二郎やあきらに連れて来られるタイプなのだから、もしかしたらもう類とは会うことが出来ないのかもしれない、とも思い始めていた。

龍臣とはまだ数ヶ月しか付き合っていないが、いい人だと思う。
未だに家にも入らせないつくしに、無理しないでいいと待っていてくれる。
手を繋ぐだけの友達の延長のような付き合いではあるが、龍臣のそばにいると安心することが出来るし、話題の豊富な彼といるのは楽しい。
類とは、何を喋るというわけでもなく、時折ポツポツと話してくれることが嬉しくていつも必死になって喋っていた。
どういう気持ちでいたんだろう、類のことだから〝ちょっとうるさい〝ぐらいは思っていたのかもしれない。
それでも、何も言わずにつくしの話に耳を傾け、いつもバイトばかりのつくしを心配し、まだ実家暮らしの頃はしょっちゅう家に来ては食事をし帰って行く、それが学生時代の当たり前の日常だった。

いつからだろう、ふとした時の類の言葉が気になるようになった。
何でもない会話の中に、ちょっとした違和感、つくしが深読みし過ぎているだけなのかもしれないが、類にどういう意味かと問うてはいけない気がして、その度に言葉に詰まる。

「こないだ優紀がね…合コン行ったらしくてね。その時にいた人と連絡先交換したんだって!」
「ふうん…あんたは行かなかったの?」
「あ、うん…あたしは…行かなかったけど…」

行った方が良かったーーー?
肯定されるのが怖くて聞けなかった。

彼女でもないのに、多分他の女の子よりかは類の近くにいて、類の隣にはずっと自分がいるんだと自惚れていたのかもしれない。
ただの友達なのにーーー。

「凄いね!類のチョコレートの量!いいなぁ〜直に受け取ってないのにこの量だもんね」
「甘いの好きじゃないし…迷惑なだけだよ、こんなの」
「そっか…」

そう言われて渡せなかったチョコレート、総二郎にもあきらにも司にも渡したのに、類にだけは渡せなかった。
司にはもうチョコレートは見たくねえと迷惑がられていたが無理やり気味に押し付けた、他の2人も言い方は違えど似たような反応で、類にも同じようにすればいいだけだったはずなのに。

家にいても、誰とどこにいても類のことばかり考えてしまう。
龍臣といても満たされることのないこの想いは、どうやったら消せるのだろうか。



「なあ、夏休み泊まりで旅行行かないか?」

冷房の効いた店内で、つくしと向かい合わせに座る龍臣が何の前触れもなく言った。
グラスを手に持ちシャンパンを飲んでいたつくしは、口に含んだ炭酸が思った以上に強く感じて思わずコホンっと咳き込んだ。
つくしの働く会社と龍臣の会社は、ちょうどお盆の同じ時期に夏季休暇となる。
それは仕事の繋がりでも分かっていたことだし、夏季休暇であっても普段と変わることのない日常を過ごすだけだと思っていたのだが、龍臣の一言はつくしを驚愕させるに十分だった。

「泊まり…?」
「あぁ、一泊でもいいからさ。つくしは実家に少し顔出す程度って言ってただろ?だったら、今年は9連休もあるんだし1日ぐらいいいだろ?」
「でも…今からじゃ、予約とか取れないんじゃない?」

我ながら上手い言い訳を思いついたものだとは思ったが、つくしは忘れていた…龍臣もまた、そういう人種であることを。

「いや、うちの別荘があるからさ。連絡して聞いたら親父も使わないみたいだし、大丈夫だよ」
「そう、なんだ…」

正直まだ心の準備は出来ていなかった。
心の準備どころか、龍臣を恋愛的な意味で好きになれるかどうかも分からない。
龍臣の言う泊まりがどういうことを指しているのか分かっていても、いつか誰かとそういうことをするのだと頭では理解していても、つくしにはまだ受け入れることは出来ない。
断る理由が何も思い浮かばずに、つくしが思い悩む様子を見せていると、龍臣が短く嘆息する。
それが諦めを含んだものだということは伝わる。
分かっている、このままじゃダメだと…龍臣は待ってくれていて断られるたびに男としてのプライドが傷付き、それでも度々そういった伺いを立てているのだということも。
龍臣から感じられる熱量と、つくしが龍臣に対して感じている熱量では、まだ明らかに差があるのだ。
そればかりはどうすることも出来ず、まさか、他に好きな人がいてその人を忘れるために付き合っていますと龍臣にカミングアウトするわけにもいかない。

最低だな…あたしーーー

誰かを忘れるために、他の誰かを傷付けていいわけがない。
つくしが口を開こうと顔を上げると、思ってもみなかった人物と目が合った。
相変わらず綺麗な女性を傍らに連れて、その女性の腰に手を回している。
つくしと彼らではそもそも遊び場自体が違うために、外で鉢合わせすることなど滅多にあることではない。
しかし、龍臣の行く店はどこもそれなりに気を使わなければならない店で、まさか会うことがあるとは思っていなかったが、やはり狭い社会だとも思う。


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熱量 2

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龍臣と付き合い始めてから、ますます類と会う時間は減った。
タイミングが悪い…そう言ってしまえばそれまでだが、頻繁に会いたいと言う龍臣に時間を取られてしまい、突然来る類からの連絡に気が付かないことが多かったからだ。
何ヶ月声を聞いていないんだろう…龍臣と付き合っていても、思い出すのは類のことばかりで、会いたくて声が聞きたくて…どうしようもなく寂しい、ここ最近はずっとそんなことばかり考えていた。
折り返してもその時にはすでに電話は繋がらなくて、それがさらに寂しさに拍車をかけていたのかもしれない。

「最近、つくし元気ないよね?何かあった?」

つくしの隣、車道側を歩く龍臣がポツリと言った。
会社からそう遠くない場所に一人暮らしするつくしをアパートまで送るのが、デート終わりの定番だった。
女性1人で夜歩くのは危ないからと絶対に送ってくれるのだが、それが龍臣の優しさであると分かっていても、たまに1人で夜空を見上げていたいこともある。
そういえば類もよくバイト先に迎えに来てくれていたなと、全ての出来事が類の思い出ヘと繋がってしまい、つくしは軽く溜息を吐くと、何でもないよと無理やり笑顔を作って言った。

「疲れてたのかも…ごめんね」
「いや、大丈夫?」

つくしが大丈夫だと頷くと気分を変えるように龍臣は暑いなと、ネクタイを緩め着ているシャツの襟元を空気を入れるようにパタパタと仰いだ。
10メートル置きに置かれている街灯が、住宅街の夜道を照らす。
龍臣の何気ない話を聞きながら、ふと前方からの視線を感じてつくしが前を向くと、あんなにも会いたいと願っていた男が、つくしが住むアパートの壁にもたれて立っていた。
距離が近付き、あと5メートルというところまで来ると、龍臣も人影に気が付いたのか訝しげな表情を見せる。

「類……」

名前を呼ぶだけで、泣きそうになる程愛しいと思う気持ちが溢れ出す。
このままこの人の胸に飛び込むことが出来たら、どんなにいいか。
友人というこの高い壁を壊すのは、壁を作るよりもよほど困難なことだ。

「牧野…久しぶり…」

龍臣がつくしに目配せで誰と聞いているのが分かったが、今は言葉を発することすら出来ない。
やっぱり、好きで一緒にいたくて…その想いを口を開けば全て曝してしまいそうで、そんな自分を抑えることに精一杯だった。
いつになったらこの思いを消化することが出来るのかと、つくしは目尻に浮かぶ涙を必死に堪えながら、類の前に立つ。

「ちょっと近くまで来たから…どうしてるのかなと思って…彼氏?」

類が繋がれた手を見て言ったのだろうと分かる。
こんな住宅街のど真ん中で、類が近くまで来る用事などないことも…最近連絡が付かないつくしのことを心配してくれたのだろうことも。
何とかコクリと声を発しないまま頷くことだけが精一杯で、つくしは類の顔をまともに見ることも出来なかった。

「そう…じゃあ俺もう行くね…また、みんなで集まる時にでも…」

類はつくしに背を向けると、携帯を操作しながら歩き出す。
何かを話しているから、車を呼んでいるのかもしれない。
もう振り返りもしない類にようやく視線を向けると、つくしの目には今にもこぼれ落ちそうな涙が浮かんでいた。

「なあ、今の男、誰?元彼、とか?」

龍臣の少し苛立ったような声に我に返る。
すっかりと物思いに耽っていて、龍臣と一緒に帰っていることすら忘れていた。

「あ、ううん。友達…高校からの…」
「そう…またみんなでって言ってたけど…俺がいなかったら、あいつ部屋に入ってたんじゃないの」
「そんなわけないよ…類はそんなことしない」
「類…ね。名前呼ぶほど親しかったんだ?」

龍臣が苛立っているのは分かったが、つくしにはどうすることも出来ない。
友人というのは本当のことで、つくしが一人暮らしをしてからは類が部屋に入ったことがなかったのも本当のことだ。

「付き合い長いから…」

言い訳染みた言い方になってしまったが、つくしは類以外を名前で呼んだことがない。
龍臣のことも、つくしは未だに長谷川君と呼んでいた。
付き合うようになってからは、龍臣は呼び名を牧野さんからつくしと変え、名前で呼んで欲しいと言われはしなかったものの、そういった雰囲気になったことは確かだ。
自分でもこだわっているつもりなど毛頭ないが、その時長谷川君と呼ぶのに慣れてしまっているからと答えたのは何故だろう。

「じゃあ、つくしの部屋に行ってもいい?すぐ帰るからさ」

龍臣がつくしの手をギュッと握って言うが、その何度となく交わした会話につくしは肩を落として龍臣の手を離した。

「ごめん…ちょっと疲れてて。明日も早いし…また今度ね…」
「……分かった。遅くまでごめんな。また連絡する…じゃあ」

龍臣が来た道を戻るのを見送って、つくしはアパートの階段を上がっていく。
今日、龍臣と会っていなければ、類と会うことが出来たのに…そんな考えを持ってしまう自分が嫌だった。
何ヶ月ぶりかに聞いた類の声は相変わらず優しいもので、あの声にずっと包まれていたいと叶うはずのない思いを、1人アパートの狭い部屋の中で吐き出す。

「類…類…もぅ…忘れたいよ…っ」


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熱量 1

熱量 1

このお話はRはありません!まあ番外編とかで書いちゃうかもしれないけど…。
純愛モノ書きたくて(笑)
総つくではありません、類つくです。これで察してくれるかな?
色々と端折って短編に収めるので、司との過去は?とか聞かないでください(笑)



友人の1人でつくしにとって大切な人…だった。
それがいつから恋になったのかなんて自分でも分からないが、類と話す言葉の裏を考えるようになった時には、もう気持ちは動いていたのだと思う。
周りで見ている総二郎たちからしてみれば、いい年をした大人の男と女がいつまで経っても男女の関係にならないことなど〝あり得ない〝ことらしい。
しかしつくしからすれば、今更なのだ。
もし類がつくしのことを恋愛的な意味で好きであったのならば、それこそ奥手のつくしとは違いもっと早くに何かしらの行動に出ていたのではないかと思う。
類に好きだと言われたのなど遠い昔のことで、類は言わないが友人付き合いをしている間、類に恋人がいたこともあったかもしれない。

歩くときどちらがどう…ではないが、必ず肩が触れ合わない程度に空く距離が今の自分たちの心の距離でもあるようだ。
そんな関係を変えたい、そう思っていても一歩を踏み出せない。
何かを変えるのは怖いし、それによって今の友人という心地いい場所が失くなってしまったら?

つくしは膨れ上がっていく想いを、どう吐き出せばいいのかも分からず、毎日気が付けば類のことばかり考えていた。



類が英徳大学を卒業し、花沢物産で父親の仕事を手伝うようになってから、まだ大学在学中のつくしと会う時間は格段に減っていった。
しかし、つくしにとってみればもちろん寂しくはあったが、離れるための予行練習の期間のようなもの…と捉えることもできる。
友人関係ならば、1年に1度くらいは会うことも出来るかもしれない…そう考えていたつくしだったが、類は少ない空き時間を見つけては度々つくしの住むアパートを訪れ、近況報告程度の話をしてまた忙しそうに仕事へ戻って行く。
その度にわずかな期待と、そしてあまり顔色のよくない類を心配する気持ちがあり、離れるための予行練習には全くならないまま、さらに1年が過ぎた。


英徳大学を卒業し、つくしは美作系列の小さな会社に就職した。
本当は彼らと関わりのある企業で働きたくはなかった。
しかし全く関係を持たない企業など、多分日本には存在しないのかもしれない。
はなから期待はしていなかったが、調べれば調べるほど彼らの立場をより理解してしまうことになり、そんな日本経済を支える大企業のトップに、いずれは立つ男たちだということをまざまざと見せつけられた。
例えば、社用車にしろ、会社の入るビルにしろ、給料を振り込まれる銀行にしろ…そこで働く派遣社員たちですら、調べていけば彼らの会社と深く関わっていることが多かった。
その頃はすでにF4も社会に出ていたから、つくしと会う頻度は減ってはいたが、やはりつくしと類のことを心配する総二郎は度々声をかけみんなで集まる機会を作っていた。
あきらに実は…と美作系列の会社に就職したことを言えば、それなりに驚いてはいたから、多分自分の実力で入社できたのだろうと思う。



「牧野さんさ、付き合ってる奴いないなら…俺と付き合わない?」

そうつくしに告げた男性、長谷川龍臣(はせがわたつおみ)は、つくしが大学4年の時に知り合った友人だった。
周りからつくしとF4の噂も聞いたこともなかったのだろう、初めから普通に話しかけてくれたように思う。
つくしも英徳で話をする友人はいなかったから、何となく話しかけられれば答える、そんな友人とも言えない付き合いを数ヶ月続け、実は料理上手であるという共通の趣味がきっかけで、友人と呼べる関係になった。
それでも卒業し社会人になってしまえば、そんな関係も続きはしない。
中学の頃から一緒の優紀ですら、頻繁に会うことは少なくなっているぐらいなのだから、道が違えば人間関係も変わる。
龍臣とも、卒業後はメールで社交辞令程度の会話をし、会うことはないまま時間は過ぎた。
しかし、龍臣も小さい会社ではあるが御曹司と呼ばれる人物であるーーー龍臣の会社は、つくしの働く美作系列の子会社と非常に親密な関係を結んでいた。
そんな偶然が偶然とも言えない頻度で起こるのが、小さな社交界とも言える英徳学園である。
龍臣に再開した時は驚いたものだが、こういうことはこれから先いくらでも起こるだろう、それこそ英徳の卒業生をテレビや経済誌で見ることも多くなってくるのかもしれない。

「牧野さん…?」

過去の出来事に思いを馳せていたつくしは、龍臣の呼ぶ声にハッとして顔を上げた。
今日は仕事帰りに食事でもと誘われていて、食後のデザートを食べながらの会話だった。
龍臣と再開してからはこうやって何度か食事や飲みに誘われることが多かった。
龍臣がどういう気持ちでつくしを誘っているのか、多分分かっていたと思う。
それでも、断らなかったのは、自分も前に進まなければいけない時期なのかと、そろそろ忘れろと言われている気がしたからだ。

「あ、ごめん…あの…」
「無理に…とは言わないから。今まで通りにたまにこうやって食事したりするだけでいいんだ…考えてもらえないかな?」
「うん…分かった…」

つくしが頷くと、嬉しそうに白い歯を見せて笑う。
龍臣は名前のイメージ通り、ぱっと見はガテン系とも言える健康的に日焼けした肌に筋肉質な体格をしていた。
スポーツもやっていたようだが、そんなイメージとは裏腹に趣味は料理、休みの日は家庭菜園と面白い一面もあったりする。
つくしにとっては、いい友人、それ以上の気持ちを持ったことはない…が、一目惚れから始まる恋がうまくいかなかったのだから、自分のことを好きになってくれた人と付き合ってみるのもいいのかもしれない。


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オフ会レポ

みなさまこんにちは。
小説更新しないのに、こんなのは書いてる私です…ってことで日曜日東京駅まで行ってまいりました!
まあ、都会!人が多い!あんなに上を見上げないとビルのてっぺんが見えない場所で類くんは働いているのね…という妄想をしながら、G様と星さんに着いて行きレストランへ。

ここでは、どんな会話が繰り広げられていたのか一部お伝えしようと思います…いいのかなぁ(笑)

①何をとは言いません…?

「ねえ、何本入る?」
「3は無理でしょ?痛いよね〜」
「いや、3はいけるんじゃない?誰か小説の中で3本入れてたよね?」

はい、個室じゃありませんよ〜(笑)

②お願い店員さん来ないで

「刑務所ものとか良くない?」←その時点で男女ではない(笑)
「刑務所もの?」
「可愛い男の子が筋肉ムキムキの狼の中に入れられて食べられちゃうイメージしかないわぁ」
「「手錠とかいいよねぇ」」
「檻に繋がれちゃったりしてね…ふふ」

③歴史をもっと勉強せよ

「そうだ皇居に行こう!」
「へえ、無料で中に入れるんだね〜」
「○○が××して、△△したんだよ〜」ええ、歴史の知識のないワタクシにはさっぱり分かりません
「姉さんを呼べばもっと詳しいんじゃない?」
「ここって、江戸城があったところなの…?」
「うっそ、マジで?でも城ないじゃん!」はい、このセリフは私です…東京生まれなのにごめんなさい

④主役が余る…

ものすごーく上手なケシハン…みなさまご存知ですかね?
凄いんですよ…本当にね!小説書きながらいつ作ってるの…って思う。

それをね、みんなで分けてと持ってきてくれたんですよ〜

CPの違う7人の女…類を狙う女3人、総二郎を狙う女2人…そして何を狙うか予想のつかない女1人…
最初はグー!じゃんけんぽんってことで順番に自分の好きなCPのキャラをみんな1つずつもらいました。
そして二巡目も…はい、順調にもらえております。
類が失くなり、総ちゃんが失くなり…はい、残ったのは…
司、つくし…主役なのに…(笑)いやいや、やこさんに残したのよ♬みんな(笑)



三次会までいまして…朝10時に家を出たはずなのに、家に着いたのは23時過ぎ…もう若くないのに頑張っちゃった♬
みなさま小説を書いているだけあって、知識の豊富さが凄い!
勉強になりましたよ〜
オフ会に誰が参加していたのかは、他の方のブログで書いてあったのでいいか!(笑)
ということで、オフ会レポでした!

オダワラアキ



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お兄ちゃんのお手伝い(お兄ちゃんシリーズ3)

お兄ちゃんのお手伝い
お兄ちゃんシリーズ第3弾〜




類はまだ大学生のはずなのに、仕事と勉強を両立し、帰りも遅い。
そのため疲れているのか、休日は殆どを部屋の中で過ごしているようで、食事の時間もつくしとは合わないから、一体いつご飯を食べているのだろうと心配になってしまう。
花沢物産という大きな会社の経営者になるために、日々勉強の毎日だと言うが、そんな類のために何か出来ないかとつくしは考えていた。
仕事の手伝いは多分自分には出来ない、つくしは大学の勉強だけでいっぱいいっぱいだし、一朝一夕に出来るほど甘くはないだろう。
ならば、類の身の回りのことを手伝うのはどうかと考えた。
今類には専用の使用人が付いているが、その仕事内容はつくしにも出来そうなことばかりで、それぐらいは手伝えるのではないかと思っていたのだ。

「佐原さーん!あのね……」

つくしは、類の部屋に行こうとする使用人頭の佐原を呼び止めると、これからは自分が類の手伝いをと提案した。
佐原は類が子どもの頃からこの邸の管理を任されている女性で、つくしが邸に来たばかりの頃から孫のようだと可愛がってくれている。
そして目を見開き驚いた顔でつくしの話を聞いていたものの、嬉しそうに口元を綻ばせ言った。

「まぁまぁ!類様のお手伝いを?それは是非してあげてくださいな」
「本当!?そう思う?じゃあ、早速類にも言ってくるね!」

つくしは善は急げとばかりに、佐原に礼を言うと類の部屋へと急ぐ。

「あっ!つくし様!待ってください!いい考えが…」





つくしたち親子と一緒に住むようになってから、花沢邸には増えた音がある。
それは、楽しそうな笑い声と走り回る足音で、まるで子どものように落ち着きがなく、いつもバタバタと類の耳に届く。
類は雑音が嫌いだ、出来ればシンとした静かな部屋でクラシック音楽を聴きながら、休みの日は1日中本を読んでいたい。
そのため、つくしとドアの前で鉢合わせする以前は、よく自分の部屋の前を通る足音に敏感に反応し、イライラとしていたものだが、最近ではつくしが通ると、もしかしたら部屋に来てくれるのではないかと期待している自分がいる。
そんなことなら、自分からつくしの部屋に行けばいいと思うだろう。
しかし類には、義妹であるつくしの部屋を訪ねる理由は思い付かなかったし、つくしにちょっとしたイタズラをしてしまってからは、これ以上踏み込めば引き返せない行為に及んでしまいそうな自分がいて怖かった。
つくしが類を受け入れてくれるのであれば、義理の妹だろうが何だろうが構わないのだが、今の状態は何も知らない純真無垢な女の子をそういった行為で手懐けていると取られても仕方がないだろう。

だから、邸の中でもなるべく顔を合わせないようにしているというのにーーー

「ねぇ、ねぇ〜類!これ似合う!?」

全体が黒のフリルワンピースになっていて、胸元が大きく開いている。
ワンピースの上から白いレースのエプロンを着ければ、可愛らしいメイドさんの完成だ。
ベッドに横になっている類の前でクルクルと回って、ふわりと舞うスカートから白い太ももが覗く。
類はつい絶妙な加減の胸元や足の間に目がいってしまいそうになるのをグッと堪え、つくしの顔に視線を戻す。
しかし、頭にもワンピースと同じ生地で作られたレース生地のカチューシャが付いていて、ダメ?と上目遣いで見る黒い大きな瞳が類の心を揺るがす。
佐原が用意してくれたのだとつくしは息巻いて言うが、さすが小さい頃から類の面倒を見てきた使用人だけあって、類の好みはバッチリだ。

アキバとか絶対連れて行けない…可愛過ぎるし…

「うん…似合う。けど…本当にやるの?つくしは使用人じゃないでしょ?」
「やるの!だってあたしも類のお手伝いしたいもん!朝とか起こしてあげるし…ご飯だよって知らせに来る!そうしたら一緒にご飯食べられるでしょ?」

どうしてこんなに可愛いかな…この生き物は…

しかし年上であるプライドなのか、男としてのプライドなのか、どうも素直になれずにいる。
本当は告白するつもりで、ちょっとしたイタズラをしてしまったあの日、つくしが目覚めるのを待っていたというのに、類が起きた頃すでにつくしの姿は部屋になかった。
類自身も大学と仕事の両立で、同じ邸内に住んでいるとはいっても、なかなかつくしと偶然会うことなどはない。
3食きっちり食事をし生活リズムが安定しているつくしと違って、類はあまり空腹も感じないため、気が付けば休みの日などは今日1日何も口にしてなかったということが多々あり、本を読んだり何かに集中してしまうと部屋から出ることも滅多にない。
そのため、あれから1度も顔を合わすことはなく今に至る。
そうして時間を置けば置くほど、気まずさも増していくという道理だ。

「朝も起こしてくれるの?」

こんな、降って湧いたチャンスを逃すわけはないーーー

「うん!もちろん!類寝坊助さんだって佐原さんに聞いたよ!あたしがちゃーんと起こしてあげる!」
「朝起きる時間、日によって違うけど、どうやって俺の予定知るの?」

類はある提案をするために、つくしに聞いた。
狡いことをしている自覚はある。
でも、可愛いんだ…朝起きてつくしの顔が目の前にあったら、多分色々な意味で朝っぱらから元気いっぱいになり、それからでは取り返しがつかないかもしれない。

「ええ〜どうやって…って。類教えてくれないの?あたし類専用のメイドさんなのに…」
「だったら、俺の部屋で一緒に寝る?そうすれば、スケジュールも分かるし俺の世話しやすいでしょ?」
「あっ!それいいかも!類のベッド大きいしね!暇なときはあたしも勉強出来るし!」
「うん、じゃあ早速勉強机とつくしのクローゼット増やしてもらうね?」

自分の思惑通りの展開につい口元が怪しい笑みを浮かべそうで、類はキュッと口元の緩みを引き締め、つくしの好きな王子様スマイルを顔に浮かべる。
機嫌良く類が了承したことが余程嬉しいのか、自分ではどこがいいのかサッパリ分からないこの顔にほとほと弱いのか、つくしは顔を真っ赤にしてコクリと頷く。
そして、自分の部屋に戻ろうと類に背を向けると、あっと何かを思い出したように、類がいるベッドに近付き声を潜め耳元で囁いた。
近付いたことでつくしの香水のものではない甘い香りが類の鼻を刺激し、同時に聴覚からも甘い誘惑のような刺激を与えられることになる。

「あんまり…エッチなことしちゃダメ…だよ?」

あんまりってことは、ちょっとならいいのかと考えない男はいないだろう。
類は去ろうとするつくしの手を掴むと、ベッドの中に引き込み逃げられないように自分の腕の中に抱え込む。
抱え込まなくとも逃げるつもりなどなかったのか、つくしは類の腕の中でおとなしくしていた。

「どういう意味…?そういうこと言うと、男っていい方にしか取らないんだけど?」
「ど、どういうって…この前の寝る時のこととか…あたし、類に触られると訳わかんなくなっちゃうし…恥ずかしいんだもん」

つくしが覚えているかいないかは、類にとっても半信半疑だった。
しかし今のつくしの言葉で、ハッキリとつくしは類のしたことを覚えていて、しかもそこまで拒絶されてはいないことを知る。

「恥ずかしいだけ?気持ち良くなかった?俺に触られるの…嫌?」

類はつくしの表情を見逃すまいと、顔を近付けて大きな瞳を見つめる。
何と返せばいいかを悩み一瞬黒い瞳が揺れたが、いつも通りの意思の強い表情に戻り、つくしは首を横に振った。

「嫌じゃない…もっと…触って欲しいって…思っちゃった…」
「ね、ちょっと待って…その前にちゃんと告白させてよ…」
「告白…?」
「うん…俺は好きでもない子にあんなことしないからね?分かった?」

女性に好きだなど言ったことがない類にとっては、これが人生で初めての愛情を伝えるための表現だった。
まさか、また妹だからとか言い出すんではないだろうなと、そう言われた時のために一応次の言葉を準備しておく。
すると、つくしはまさかと驚いた顔をして、口元を両手で押さえると、類の首をギュッと抱き締め胸に顔を埋めた。

「あたしも…好きじゃない人とは、あんなことしないよ?」

類の予想をいい意味で裏切る形で、つくしは類の告白を受け止め、類の唇にチュッと触れるだけのキスを落とした。
それだけで終わるはずもなく、類はつくしの手に自分の手を重ねると、深く唇を貪る。
類の舌に応えるように、おずおずと舌を出し慣れてきたつくしのキスも、類にとっては堪らない。

自分の部屋の鍵を閉めなければ…そう思うのに、今更止められる筈がないだろうーーー

「類…あのね」
「ん…?」
「ちゃーんと、部屋の鍵は閉めたからね」

熱を持った目を類に向けて、赤い唇をペロリと舐める。
ゾクっとするような快感が背筋を伝い、類はゴクリと唾を飲み込んだ。

俺は一生、この天然?小悪魔に振り回される気がするーーー


fin

もしかしたら…まだ続くかも(笑)
こういう類くんは書いていて楽しいです…

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オリジナル用ブログURL

みなさまこんばんは〜

オリジナル用ブログのURLをお知らせします…が、まだなーんにも手付かずです!
多分11月ぐらいまでは放置になりますので、今載せるのはどうかとも思ったのですが、一応質問が多かったので載せておきますね。

http://hongouaki.blog.fc2.com

まあ、odawaraをhongouに変えるだけです(笑)

今、毎日更新していた時よりも頑張ってます…(^◇^;)

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オリジナルPNについて

おはようございます。

これからはこっそりと活動します…と言ったところ、オリジナルを載せる場所とペンネーム教えて〜という声を何名かの方からいただきました!
ありがたいことです…(゚o゚;;

えーと、実はですね。
電子書籍を専門に扱うTLを刊行してる出版社に投稿したところ、うちで書いてみませんかというお返事をいただき、今出版社の編集の方とやりとりしています。
オダワラアキという名前とは別にしないと、二次は非常にグレーの部分があるのでやはりまずいということになり、ペンネームをオリジナル用に考えました。
Twitterでは、色々と案が出ましたが、最終的に本郷アキという名前でオリジナルは書いていこうと思っております。
メイ執のメイちゃんが好きだからという安直な理由ですw
まだ、HPも何も作ってないので検索しても出てきませんよ〜w

これからも頑張りますので、応援していただけると嬉しいです。

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夢見る頃を過ぎても 番外編

夢見る頃を過ぎても 番外編



タカモトを辞めて3年、あの時すぐに東京を離れてしまって世話になった会社に最後の挨拶も出来なかった。
もちろん、人のいい社長や社員は引っ越すという理由に納得し、顔色の悪いつくしを心配もしてくれたが、あの頃は自分のことでいっぱいいっぱいだった。
周りの優しさにもちゃんと気が付いてもいなかったんだ。

つくしは、会社を辞めてからも連絡を取り続けている友人からのメールに顔を綻ばせる。

「弥生…彼氏出来たんだ…ふふ」
「前の会社の人?」

つくしがリビングのソファーで携帯を眺めてフッと笑みを漏らすと、2人分の飲み物をテーブルに置いた類が、つくしの隣に腰を掛けながら聞いた。
類はあれから、寝る間を惜しんで働きつくしを心配させることもしばしばあったが、実績が認められる形で4月からは花沢物産本社へ戻ることになっている。
この3年間、民宿は狭いから是非花沢さんのところでお世話になりなさいと、昔から変わらずの母に押し切られる形で、類の借りたマンションへ身を寄せていたつくしだったが、この3月中に類は元々住んでいた都心のマンションへと戻ることになっていて、つくしも茨城を離れることになった。
つくしが考えていた周囲の反対は全くなく類との結婚が現実のものになり、来年には籍を入れることになっている。
それはこの3年類が精力的に仕事をこなした結果だとつくしは思っているが、内助の功としてのつくしの働きは大きかったと類の両親は思っているようだった。

「うん…タカモトにいる時も、ずっと心配ばっかかけてたから…良かった」
「東京に戻れば会えるんじゃない?」
「だね!楽しみ〜」

会っていなかった10年を取り戻すように、この3年間は色々な話をした。
類の元々持っている強さも、初めて知った弱さも受け入れてやっと一緒にいる日常が当たり前になった。



引っ越す際も嬉し涙を浮かべていた母を思い出しながら、段ボールを片付けていく。
取り敢えずは、寝る部屋とキッチンを先に終わらせて、類は書斎をつくしは自室とリビングの段ボールを開けていった。

実家から持って来た数少ないアルバムを片付けていると、昔使っていた手帳からヒラリと一枚の写真が落ちる。

「あ、これ…懐かしい…元気にしてるかな…」
「誰?この男…」
「ひゃぁっ!ビッ…クリしたなぁ、もう〜類、急に後ろに立たないでってば」

つくしが写真を手に物思いに耽っていると、類がパッとつくしの手から写真を取り上げて不機嫌そうに言う。

「で、誰?」

急激に低下した類の機嫌をどうするかと思案しながら、そういえばと思い出す。
つくしの初めては類であると知っているからか、自分も聞かれて疾しいことがあるからかは分からないが、類は10年間の恋愛的な人付き合いをつくしに聞いてきたりはしなかった。
普通は互いの過去について詮索はしないものだと思う。
しかし、類の嫉妬深さから言うとそれは当てはまらないような気がしていたのだが、何もないと思われていただけだろうか。

何もない…けど…
好きになれるかな…って思ったんだよねーーー

写真の中の自分に笑顔はなく特別楽しそうにしているわけではないが、ケーキを囲んで恥ずかしそうに写る自分の姿があった。
隣に写る、人懐っこそうな笑みを浮かべた男性は、決して明るくはないつくしをいつも楽しませるように話をしてくれていた。

「タカモトで働いてた時の、取引先の人だよ」

つくしの表情に何かを感じ取ったのか、類はいつもなら相槌程度で済ます話を掘り下げるように問う。

「取引先の人と何で写真撮ったの?しかも、これ会社じゃないよね」
「え、あ…うん……でも、類が思うようなことは何もないよ?」
「なら、教えて?」
「篠宮くんって言うんだけどね…一緒に仕事する機会が多くて、何度か打ち合わせを兼ねたランチしたことがあってね…これは、たまたま年末に……」



「年末なのにどこも混んでんな〜牧野さんごめん、ここでいい?」

混雑する駅前のビルのレストラン階はどこも長蛇の列で、篠宮が渋々といった表情で申し訳なさそうに指差したのはファミレスだった。
いつも打ち合わせを兼ねた食事にはそこそこいいお値段のレストランを選んでいた篠宮にしては珍しいとは思うが、ファミレスの方が時間を気にしなくてもいいし、庶民感覚のつくしからすればドリンクバーも魅力的だった。

「寧ろ、ファミレスの方が好きなので…」
「ははっ、牧野さんはそう言うかなとも思ってた…」

篠宮と共に席に案内されると、つくしはそうだ、とバッグの中から携帯を取り出した。
店員にすみませんと声を掛けると、携帯画面を見せて話をする。

「なに?どうかした?」
「あたし…実は今日誕生日なんですよね…で、ここ誕生日サービスにケーキとドリンクバー無料券付いてて、今頼んだんです…ってすみません!仕事で来てるのにっ!」

つくしはしまったと顔を赤くして手のひらで口を覆う。
いくら篠宮とは何度も会っているとはいえ、仕事相手なのだから誕生日云々など言うべきではなかったと思い直す。

「いや、俺は牧野さんの誕生日知れて嬉しいけど?ねえ、ここに誕生日の方限定写真サービスって書いてあるよ?せっかくだから頼もうよ」

篠宮は気にしていないという風に、ケーキが運ばれてきたタイミングで本当に写真を頼んだ。
ケーキを真ん中にし、顔を寄せると店員の掛け声でシャッターが切られた。

「牧野さん…じゃなくて、つくしって呼んでいい?はは、でも…恥ずかしいな、改めてそう呼ぶと。ま、誕生日おめでとう」
「篠宮くん…ありがとう」

何故か気を利かせた店員は、本当は一枚だけなんですけど…と写真を2人分こっそり用意してくれていて、カップルでもないのにねと驚いたことが懐かしい。

篠宮さんから篠宮くんへ、牧野さんからつくしへ。
互いの呼び方が変わった日でもあったーーー

恋人とは言えない付き合いであったが、あまり表情を変えないつくしを心配し食事に誘ってくれたり、半ば無理やりとも言える篠宮の誘いであったが休日に出掛けたりもした。
それは、篠宮が異動になるまでの2年程度であったのだが、類のことをあまり思い出さなくて済んだのは、偏に篠宮がそばにいてくれたからだとつくしは思っている。



「それだけだよ…ね、大したことない話だったでしょ?」

嘘には、自分を守るための嘘と、相手を想うからこそ吐く嘘がある。
きっと、これは言わなくてもいいことだから、と呼び方云々については言わずつくしは篠宮の話を終わりにした。
勘のいい類は何か思うところはあったようだが、そうとだけ言うと気が付かないフリでソファーに腰掛ける。

つくしの新しくした携帯に家族と弥生以外で、初めて登録したのが篠宮だった。
懐かしい友人たちとも連絡を取らなかったつくしにとって、敬語を使わずに話をするようになったのは、弥生が最初で2番目が篠宮だ。

「類…?」

類はつくしをソファーの上で後ろから足の間で挟むように抱き締めると、逃れられないように腕を前で組んだ。
つくしの首筋にチュッと口付けを落とし、シャツの隙間から柔らかい膨らみに触れる。

「ん…っ、な、に…急に…」
「何もないって分かってても…嫉妬する……。ね、もしかして、キスぐらいはされた?」
「………」

敢えて話さないことは出来ても、完全に信じ込ませるのはやはり無理だったようで、つくしは気まずそうに類から視線を反らす。
無言の肯定とも言えるつくしの態度に、類はソファーにつくしを押し倒すと噛み付くように唇を重ねた。

「んっ…ぁ、ふっ…ぅ…」

類の舌がヌルリと口内に入り込む。
この3年で慣らされた身体は、キスだけで簡単に陥落してしまう。
息も絶え絶えに類のシャツを震える手でギュッと掴むと、快楽から浮かんだ涙が目尻からこぼれ落ちる。

「つくしは感じやすいのに…他の男にこんな顔見せたの?」

つくしが感じやすいと言っている時点で、類と身体の関係にあった他の女性と比べられているような気がしてきて、仕方のないことだとは分かっていても、何となく面白くはない。

「類だって…他の人を同じように触ったんでしょ…?」
「他の女のことなんて覚えてないよ…俺の頭の中、つくししかいない」
「じゃあ、あたしの頭の中にも…類しかいないって知ってよ」

つくしが類の嫉妬に拗ねて唇を尖らせると、啄むように類の唇がチュッと降りてきた。

「ごめん…続き、する?」

返事の代わりに、つくしは類の首に腕を回した。



つくしは3年ぶりに懐かしい職場近くへと足を運んでいた。
あの頃散々良くしてもらったにも関わらず、類の婚約という出来事に平常心ではいられず退職願だけを送るという非礼を働いてしまったことを、いつか詫びることが出来たらと思っていた。
弥生に会うのを、敢えて平日のランチ時にしたのはその為だ。

つくしが会社から少しだけ離れた場所で弥生を待っていると、12時ぴったりに引き戸が開き弥生の行ってきますという声が聞こえる。
すると、軽く手を振るつくしにすぐに気が付き走り寄って来た。

「つくしっ!久しぶり〜!うわぁ〜変われば変わるもんねぇ〜?綺麗になっちゃって!」

綺麗になった云々については自分ではよく分からないが、類と生活する中で変わっていったことは確かだ。
弥生と過ごしている時間、きっと下を向いてばかりでどれほど心配をかけたことだろう。

「弥生…ごめんね…あたし…」
「ほんとよっ!でもあんたのごめんはもういいわ…散々メールで見たし。ね、時間があったらランチの後会社寄って行かない?社長も奥さんも心配してたんだから…」

つくしが言いだす前に弥生から言われ、変わらない相変わらずの心遣いに安堵する。
さすがに自分から言うのはもうとっくに辞めた社員として気がひけるため、どうしようかと思っていたところだった。
2人は近況を話しながら、働いていた頃からよく足を運んでいた定食屋の暖簾をくぐると、懐かしい温もりのある木の椅子に腰掛ける。

「相変わらず美味しいね〜この店」

つくしがふふっと笑みを浮かべながら、好物の鯖の味噌煮定食を口に運んでいると、弥生が驚きのあまり目を見開いてつくしを見た。
視線を感じてつくしが顔を上げると、弥生が目に涙を浮かべている。

「や、弥生…?どうかした?」
「ごめ…私、つくしの笑った顔って初めて見たから…さ。そっか…そうだよね…良かった〜」
「弥生…本当にごめんね…心配ばっかりかけて」

共に過ごした長い間、つくしは本当の笑顔を誰かに見せることなどなかった。
笑って過ごしていられるほど幸せだと思うこともなかったからだ。
でも、振り返ればこんなにも心配してくれる友がいたこと、それに気付かずに過ごしてきたことが悔やまれる。
つくしが涙ぐみそうになるのを我慢するように眉を寄せると、弥生が向かいに座るつくしの眉間を指で弾いた。

「こら、つくしのそういう顔はよく見てたんだよ?だから笑ってて?凄く新鮮〜やっぱり愛する人と一緒にいると女は変わるんだねぇ」

弥生がしんみりしかけた空気を変えるように、つくしを茶化す。

「あ、愛する人って…もう食べようよっ…お昼休みなくなっちゃうよ?」

赤らんだ頬を誤魔化し食べることに集中すると、弥生も嬉しそうに時折話をしながら食事を終える。
店内が混み合ってきたことで早々に店を出たが、弥生の最近出来たばかりだという彼氏の話や仕事の話をしながら会社までの道をゆっくりと歩いた。


ランチタイムも終わる頃、社長夫妻の予定を確認するために弥生が先に戻った。
つくしは何をするでもなく会社の前で時間を潰していると、会社の前にスーツ姿の類が現れる。

「あれ…類っ?どうしたの?今日は本社に挨拶に行くって言ってなかった?」
「ん…?もう終わったよ…つくしが昔お世話になった会社に挨拶でもしておこうかなってね…寄るつもりだったんでしょ?」
「う、うん…でも2人で挨拶っていうのも…おかしくない?」

つくしはタカモトに10年近く勤めたが、花沢とは子会社を含めても取引はなかったはずだ。
社長夫妻と会ったこともない類と一緒に行くのはどうなのだろうと首を傾げる。

「いや、半分は仕事かな。つくしがいればスムーズにことも運びそうだしね」
「仕事?」
「うん…悪い話じゃないよ?」

2人が会社の前で話をしていると、弥生が引き戸を開けて出てくるところだった。
いるはずのない類に、弥生が一瞬驚いた顔を見せるが、なぜか納得したようにうんうんと頷いた。

「つくし…社長に聞いたら花沢さんと打ち合わせがあるから、少しだけ待っててって言ってたけど…花沢さん、前に一度お目にかかりました…ご無沙汰しております」
「ああ、やっぱりあの時の人…つくしの友達…でしょ?あと、仕事の話で社長にアポ取ったけど、つくしも一緒でいいから」

2人は会ったことがあったかと不思議に思っていたつくしだったが、そういえばつくしの居場所を探しに会社を訪ねたと類は言っていた。
もしかしたらその時に対応したのが弥生だったのかもしれない。
弥生は類の言葉に頷いて、どうぞとドアを開けた。
ドアを開けると懐かしい匂いがする…この場所で働いていた頃は感じなかった匂いが、この3年離れていたことで思い出された。

弥生が社長室のドアをノックすると中からはいと少し緊張しているような声がする。
それはそうだろう、つくしの父によく似た人のいい社長だが、突然大企業の役員から直接アポを取られるような立場にはない。
弥生がドアを開け類たちを中に通すと、社長は類の隣につくしがいることに驚いた顔をするが、類が挨拶を交えつくしは自分の婚約者であることを告げるともっと驚いた顔をして、2人におめでとうございますと声をかけた。
応接室に案内され布張りのソファーに腰掛けると、弥生が3人分のお茶を運びテーブルに置いた。
弥生が社長室のドアから出るのを待って、社長は口を開く。

「花沢専務…失礼ですが、もしかしてうちと取引をという話は、牧野さんがうちで働いていたからですか?」

社長はいつもとは異なる厳しい顔を類に向ける。
タカモトは社長の文房具好きが高じて興した会社というだけあって、自分の作る物に相当の自信を持っているのだろう。
いくら大企業が取引したいと言ってきたとしても、社長は愛情込めて作った文房具が自分の思うような扱われ方をされない場合、どんないい話でも断るようなそんな一面を持つ男だった。

「それがないと言えば嘘になります。でもいくら婚約者が働いていた職場とはいえ、自分の会社の利益にならないような取引はしません。それに…つくしが10年も働いていた会社っていうだけで、私にとっては信用に足るんです…信じていただけないかもしれませんが。曲がったことが嫌いで自分の思う道を突き進む…そんな彼女が楽しかったという職場だから、取引させていただきたい、それでは理由になりませんか?」
「いえ、こちらこそ失礼なことを申し上げました。そうですね…牧野さんは表情は少なかったが、自分のアイデアが物にならなくても気持ちを切り替えて腐ることなく必死に新しい物を作ってくれました。周りの社員も牧野さんに影響されて、うちのプレゼンは大いに盛り上がるんですよ…なんだか懐かしいね」

社長が懐かしそうに目を細めて言うと、つくしも目を合わせてコクリと頷いた。

「ここからは仕事の話になるのですが……」

つくしは類が話す仕事の内容を目を丸くして聞き入っていた。
花沢物産が新しく作るデパートの一角に、本屋と文房具屋を併設したカフェを入れるらしい。
そこに卸す商品の一部をタカモトで作った文房具にしたいという話だった。
ゆくゆくは既存の全国にある花沢系列のデパートの中にも、同じように本と文房具を置いたカフェを増やしていくつもりだと言う。
タカモトのような中小企業にとってはまたとないいい話だと言える。

「もちろん、売れない商品は置くことが出来ませんから、商品は厳選していただくことになりますが…高本社長が自信を持って売れるという物を卸して頂けますか?」
「それは…商品はうちに任せていただけるということですか?」
「ええ、ただカフェと併設ですから、お互いに意見を出し合って決めていきたいと思っております」

類は社長と幾つか契約事項の説明を簡単にすると、社長も頷きながら真剣に耳を傾けている。
どうやら、この取引はうまくいきそうだとつくしはホッと胸を撫で下ろした。
類がテーブルに並べた資料をビジネスバッグにしまうタイミングで、つくしが口を開く。

「社長…3年前は突然挨拶もなしに退職する形になってしまい…申し訳ありませんでした」

つくしが立ち上がって頭を下げると、社長は仕事人としての顔を捨て家族に向けるような柔らかい微笑みを浮かべた。

「牧野さんが…何かに悩んでいることは知っていたよ。出来ればここで働く間になんとかしてあげたいとも思っていたが…助けになってあげられなくてごめんね。でも今はいい顔してるね…花沢専務のおかげなのかな…?」
「はい…あたしにとってなくてはならない大切な人です。社長に会っていただけて良かった…」
「僕も会えて良かった…みんな君がここに来てるって知ってソワソワしてるんじゃないかな?顔見せてあげてくれないか?」
「はい!是非」

つくしは類に目配せすると、社長に会釈をし社長室を出る。
類はまだ社長と話すことがあるのか、つくしに先に行っててと言うと、テーブルを挟んでまた話し始める。

「つくし!社長と話せたの?ちょっとこっち来て!ものすっごい懐かしい人が今来てるんだよ!」

弥生が社長室から出てきたつくしを引き摺りながら手を引き会議室へ連れて行く。
会議室と言ってもきちんとした部屋ではなく、ついたてで区切られキャスター付きの椅子とテーブルが置かれた簡素な一角で、タカモトで働く社員たちは皆ここを会議室と呼んでいるのである。

「懐かしい人…?」

弥生の言葉に不審気に首を傾げると、会議室からつくしを見て笑う2つの目に覚えがあり、つくしは今日何度目かの驚いた様子で口元に手をあてた。

「つくし!…ってここじゃ牧野さん、じゃないとマズイか?久しぶりだな」
「し、篠宮くん…?誰かと思った…ビックリ…いつ帰って来たの?」

何年ぶりだろう、つくしの目の前に立つ男は昔の面影をそのまま残しながらも、頼り甲斐のありそうな大人の男へと変わっていた。

「去年かな…?ここには相変わらずしょっちゅう来てるんだ。今はあの頃の俺らと同じくらいの年の新人くんが担当してくれてるよ」
「そうなんだ〜新人くん虐めないでね?ふふっ」
「俺がそんなことするはずないだろ?っていうか、つくし変わったな…太った?」
「なっ、失礼な!太ってません!そこは可愛くなったとか、綺麗になったとかいいようがあるでしょ?」

離れていた時間がなかったかのように、言葉がスラスラと出てくる。
あの頃本当の自分を見せられなかった分、心配をさせていたことを謝るかのようにつくしは笑顔を見せた。
篠宮が言いたいことがつくしには分かっていたから。

「良かったよ…つくしが、元気そうで…あーあ、俺がそんな幸せそうな顔させる予定だったのになぁ、異動だったもんな」
「はいはい、気持ちだけ受け取っておきます…」
「俺も彼女作るかなぁ」

ついたてだけで仕切られた会議室のため、ついたての反対側から篠宮を揶揄うような声が飛ぶ。

「篠宮さんが牧野さんに振られたぞ」
「俺誰か紹介しましょうか〜?」

つくしは苦笑しながらも心地良い空気に包まれていた。

「つくし…誰?」

篠宮と穏やかな笑いに包まれる中、いつの間に話が終わっていたのか類がつくしの後ろに立ち冷ややかな目を篠宮に向けていた。
笑顔のない類に、篠宮はビクリと肩を震わせると何か悪いことをしたかとつくしに目を向ける。
類はそれすらも気に食わなかったようで、つくしに対して打って変わったように笑顔を向けた。

「誰?つくしがお世話になった人なら挨拶したいんだけど?」
「あ、類…ごめんね。こちら篠宮さん…え、と…ここで働いていた時の取引先の方なの。こちらは花沢物産の…」

つくしが紹介すると、互いに懐から名刺を取り出す。
類はつくしが持っていた写真を見ていた為、目の前にいる篠宮が写真の男であると分かっているはずだ。
何故不機嫌になるのか、その理由が分かるだけに嬉しいような複雑な気分になるのだが、低下の一途を辿る類の機嫌を浮上させるのは大変だ。

「ふうん、どうも婚約者がお世話になったようで」
「は、初めまして…あの私日本堂の篠宮と申します…あの御社とはうちも取引させていただいて…大変お世話になっております」

名刺交換を済ませると、篠宮は類の肩書きに驚いた顔をしつつも丁寧に頭を下げた。

「あ、あの…類?篠宮くんとは何もないから、ね?」
「へえ、つくしって名前で呼ばれてるのに?」

こんな場所で何を言い出すのだこの男は…と拗ねると精神年齢が低下する類を刺激しない程度に睨みつつ話を反らす。

「そ…そろそろ帰ろっか?」

つくしが帰ろうと類の顔を見上げて言うと、類はわざとらしくつくし腰に腕を回し身体を引き寄せ、狙ったかのように額に唇を落とした。
篠宮は目の前で繰り広げられるカップルのイチャつきっぷりに、顔を赤くしながら目を反らす。
きっとそれには、悔しさも滲み出ていたからかもしれないが、類はしてやったりと言った様子でフッと笑った。

まったく、もうーーー

たまに子どもみたいに、つくしからの愛情がまだ自分にあるかを確かめるようなことをするのは、離れていた10年の反動なのか。
多分信じられないということはないのだろうが、類を不安にさせているのかもしれないと思うと、つくし自身も苦しくなる。

「るーい、何度も言うけど…あたしの初恋もこの先ずっと想い続ける人も…類しかいないから、ね?」

つくしの言葉にやっと穏やかな笑みを見せる類につくしはホッと息を吐くと、類の肩口に頭を乗せた。

「ラブラブだなぁ…」

篠宮がボソリと漏らすと、つくしはハッと周りを見渡す。
ついたての反対側からも何事かと社員たちが顔を覗かせ、篠宮と同様に人目を憚らず身体を寄せ合うつくしたちを見ていた。

「うひゃぁっ!も、も、も…類帰ろうっ!篠宮くん、じゃあ!」

つくしはあまりの恥ずかしさに類の手を引き会議室を出ようとするが、篠宮がそれを引き止めた。

「つく…牧野さんっ!」

類だけは敵意丸出しといった風に篠宮へ視線を向けるが、篠宮は大して気にしていないようで言葉を続ける。

「お幸せに!花沢さんも!」

つくしは今出来る精一杯の笑顔で篠宮に笑顔を向ける。

「ありがとう!篠宮さんもね」



挨拶もそこそこにタカモトを出て、落ち着きを取り戻したつくしが類と手を繋ぎ車を停めた場所までの道のりをゆったりと歩く。
どんなに忙しくても、類は離れていた時間を埋めるようにつくしと過ごすことを大事にしてくれる。
つくしも類と過ごすこのゆったりとした時間が好きで、この3年車に乗るよりも散歩しながら家に帰ることの方が多かったかもしれない。

「つくしはさ…もしかして、あいつと歩む未来もあったのかな…」

類が前を向き歩きながらポツリと漏らす。
確かに…もしかしたらと考えることもあった、あの時あの場所で類と出会わなかったら自分の未来はどのように変わったのかと。
それでも、今言えることはーーー

「ないよ…だって、あたしたち出会ったじゃない」


つくしは話の種にと持ってきていた昔の手帳から写真を取り出すと、近くのゴミ箱へと破り捨てた。



fin


番外編くらいはラブラブにしようかとも思いましたが、本編があんなんなのに類くんが突然エロ専務に変身したら違う人みたい…と思い直し…やっぱりちょっと弱っちい類くんにしてみました。
今後はこのブログの更新頻度も少なくなると思いますが、閉鎖はしませんのでたまに遊びに来てくださいね〜(o^^o)
近況教えて、どうしてるの?っていうコメントも嬉しいです♬
オリジナルはこのブログでは更新しません、二次とはペンネームも変えて書いていきます。
どこで…がまだ決まってないので、今色々二次作家仲間に聞いたりして悩み中です。
こっそりどこかで活動しますw

ではまた、どこかで。

オダワラアキ



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りおりお様へお礼小話

類くんを狼にしちゃおう〜あたしを美味しく食べて〜
のイベントお礼小話に類♡だ〜いすきのりおりお様へ捧げたお話です。
AYA様へ捧げたお兄ちゃんシリーズ?第2弾となっております。

9月14日昼12時公開なので、皆様興味ありましたら読んでみてくださいね♬
15日以降うちのイベント目次にリンク追加致します。

記事に飛びます
お兄ちゃんとなら怖くない!



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オダワラアキの二次小説・二次創作置き場へようこそ。
ひるなかの流星・花より男子・日々蝶々・君に届け・会長はメイド様の二次小説・創作置き場です。黒バス黄黒、青黒BLも書いております。
現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

こちらを読むにあたって下記注意点をお読みになってからお進みください。

このサイトは原作のある漫画の二次創作、小説です。

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