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境界線


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駄作だ〜(^^;;
ちょっとダメなつくしちゃんがフランスに行った類を待てずに、総二郎と付き合い帰って来た類が略奪する…という話を書く予定でした…
が、最近買ったBL本にですね、浮気(疑惑)のある受けを攻めが虐めるという、シチュがありましてなんて美味しいんだ♡と、つくしちゃんを虐める類くんをどうしても書きたくなっちゃったんですよ
長くなりそうだからと短編に無理やり纏めたら、うーん…な出来になってしまいました…
アップしたのは、結構な文字数書いたから勿体無いな…とね
それでもよろしければどうぞ(笑)↓



いつの間にそんな関係になったのか……。
無表情と言われる自分の顔が、今までになく強張っているのが分かる。

「お前もう帰るんだろ?送ってくよ」
「えっ、いいよ!西門さんまだみんなと飲むんでしょ?まだ電車あるから」
「お前だって一応は女だろうが…黙って送られておけばいいんだよ」

このやり取りだけで、二人の関係性が垣間見える。
気にしていないように必死に取り繕ってはいるけれど、自分のポーカーフェイスがどこまで幼馴染みたちに通用するだろう。
特に総二郎には絶対にバレたくはないと思うのは、ちっぽけなプライドなのか────。
そんな動揺を知られまいと、類は自身の部屋の棚から年代物のウィスキーを取りグラスへと注ぐ。
グラスに入った琥珀色の液体を一気に口に含めば、焼けるような喉の痛みが自分の胸の痛みと重なるが、それでもなお喉奥に流し続けた。

「おいっ、類……」

類の行動に驚いたあきらが、類の手からグラスを取り上げる。
いつもは酒に飲まれるタイプではない類が、珍しく煽るように次から次へとグラスを空けていけば、長年の付き合いの友人には理由すらも気付かれてしまうだろう。
それでも、良かった────気が付いて欲しかった……つくしにだけは。

「類……?大丈夫?」

たった一年で自分のことをすっかり忘れたような顔付きの女は、総二郎と話を終えたのかわざとらしく心配そうに隣の席に座る類を覗き見る。
もう、帰りたいんだろ……だったら総二郎とさっさと帰ればいい、そう口から出かかるが、アルコールで掠れた声は声にならずに消えていく。

「……っ」
「久しぶり……元気だった?」

社交辞令のような会話でも、話しかけてくれて嬉しいなんて現金なものだ。
この一年、朝から晩まで仕事漬けの毎日だった。
大学を卒業しすぐにフランスへ渡らなければならず、まるで試すかのごとく次から次へと仕事を入れられた。
万年寝太郎と言われた過去がまるで嘘のように寝る間もなく働き────結果、つくしに連絡を取ることすら出来なかった。
たったメール一本すら打てなかったのだ。
司がニューヨークに行き二人が別れるまで、つくしの一番近くにいたのは自分だと自信を持って言える。
どうしてもっと連絡してやらないのか、自分ならばこんなにも彼女を悲しませることはしないのにと思っていたのに、このザマだ。

でも……まだ別れてないよね────?
あんたから、俺は何も聞かされてないよ?

やっと一年ぶりに帰国して久しぶりに会えると、どれだけ嬉しかったか分からない。
類の帰国祝いにと総二郎とあきらも一緒ではあったけれど、この先ずっと二人でいられることを疑いもしなかった。
離れていたけれど、つくしもきっと同じ気持ちだと思っていたのに。

「元気に見える?」
「……ちょっと、痩せたかな」

総二郎とあきらが目配せして、音を立てないように部屋から出て行く。
つくし本人から引導を渡させようとでも思ってるのかと、苛立ちが抑えられない。
そんなことは絶対にさせないと、類はグラスにミネラルウォーターを注ぎ酔った頭を冷ますように一気に飲み干した。

「類……?」
「総二郎と……」
「えっ……?」

そこまで言って、言葉を濁す。
口にしてしまえば、本当のことになってしまいそうで怖かったのかもしれない。

「何があった?」

幾分かはっきりしてきた頭で、冷静さを装う。
そしてつくしを見つめれば、戸惑ったように目をキョロキョロと彷徨わせていた。
きっと、類の知らない〝何か〝はあったのだろう……それがどんなことなのかあまり知りたくはないが。
つくしは、隣に座る類を気にしながら、両手をギュッと膝の上で握っていた。
何の決意か言いにくそうに、口を開けては閉じるを繰り返しているつくしを見ていると、また見守る立場に逆戻りなのだろうかとため息をつきたくなる。

「言いたくないなら……別にいいよ。友達に戻る?あぁ、あんたの中ではもう俺は恋人じゃなかった?」

そんなことが言いたいわけではないのに、口から出るのは皮肉ばかりだ。
誰よりも幸せになって欲しいのに、その相手は自分でなければ嫌だなんて女々しいけれど、つくしが隣にいない未来などいらないし、そばにいなければもう普通に笑うことすら出来ない。

「る、い……?」
「悪いけど……もう帰って。総二郎呼ぶ?」
「どうして……」

傷付き驚いた表情を見せるつくしに満足し、総二郎のことなど考える隙がないほど自分のことで悩めばいいとすら考える。
帰ってと言ったその口でまだ話を続けようとする自分は諦めが悪いと思われるだろうか。
しかしそもそも諦めるつもりは毛頭ない。

「いつから……?」
「な……にが……?」
「誤魔化すなんてあんたらしくないね。俺が気が付かないと思う?いつから総二郎と付き合ってるのかって聞いてる」

さも意外なことを言われたように顔を強張らせ、つくしが唇を噛み締める。
分かっていたことでも、類の言葉を肯定する嘘のつけないつくしの行動に胸が痛んだ。

「付き合ってないっ。ただ……あたしが弱かっただけ」
「慰めてもらった?」

総二郎の慰め方がただ肩を抱き寄せる程度のものではないことは、小さな頃からそばにいる類が一番よく分かっている。
もちろんつくしから靡いた訳ではないだろう、しかし元々つくしのことを憎からず思っていた総二郎にかかれば、つくしを落とすことなど赤子の手を捻るようなものだ。
肯定なのか否定なのか……目の前にいる類にしか分からない程度に首を振るつくしに苛立つと同時に、妙な気分にもなってくる。

どうして────?どうして、つくしは……。

「じゃあこれからは総二郎がいるんだから、俺は要らないよね?」
「そんなわけないっ!」

どうして、そんな顔で俺のことを見てるの────?

「都合がいいね。俺のことも離したくないってわけ?」
「そんなつもりじゃ……」

つくしの類を見つめる瞳は懐かしい色合いだけではない。
昔と変わらずに類を見上げる視線の中には愛しさも含まれている。
総二郎とたとえどんな関係であろうと、つくしの気持ちが変わっていないことを嬉しく思うのだから、自分はこの恋にどれだけ溺れているのだろう。

「総二郎と……何したの?」

顔を寄せ耳朶を甘噛みしながら類が聞くと、つくしがビクリと肩を震わせる。
〝何をしたか〝など意味のない質問だとわかってはいる。
類にとってはつくしが他の男と話すことすら許せないのだから、答えが欲しいわけではない。
チュッと濡れた舌先で耳の中を味わうように舐めれば、甘い吐息がつくしの薄く開いた口の隙間から漏れだす。

「ココ、弱いとこ……変わってないね」
「やぁ……っ、み、耳……ダメ……はぁ」

身体をより近くに寄せ距離を縮めながら、右手でつくしの首筋を撫でる。
溢れそうなほど涙で濡れ誘うように揺れる瞳が、以前と変わらずに類を煽ってやまない。

「総二郎にも、そういう顔見せたわけ?」
「ち、違っ……西門さんとはっ……」
「何もなかったなんて信じないよ?」
「……っ」

耳から首筋に舌を這わせ、つくしにしては丈の短いスカートを捲り上げ手を差し込む。
膝から内腿を撫で上げただけで、固く閉じていた膝が類を誘うように開いていった。
一年触れていなかった割には、良過ぎる感度に類の悔恨の念と嫉妬が胸の内に暗い炎を燃やす。

「総二郎のことが好き?」
「あたしが好きなのはっ……!」
「あんたがたとえ誰を好きだとしても……俺はもう誰にも渡すつもりはないんだ。だから、何も言わなくていいよ」

自分から聞いておきながら、決定的な言葉を封じる類につくしは困惑顔を見せる。
こんな時なのに、つくしの困った様子の表情が相変わらず可愛いと、眉を寄せたつくしの眉間に唇を落とした。
愛おしくて同じぐらい他の男に触れさせたことが憎くて、類は些か乱暴とも言える手付きでつくしの服を脱がしていく。
酷いことなどしたくはないし泣かせたくない……なのに抵抗するかもしれないと細い腕をつくしの頭上で掴む手に力が篭る。
あらわになった一年前と変わらない白い肌にそっと手を這わせても、何を考えているのか全く抵抗も見せないつくしに苛立つ。
諦めているのかとつくしの薄く開かれた瞳を覗き込めば、快感に堪えるように目を細め、つくしが唇を開き漏れる吐息で類の名を呼んだ。

どうして……どうしてそんな顔で俺のことを見る?

愛しい男を見るような瞳を類へ向けることが出来るならば、何故自分が帰って来るのを待てなかったのかと、失望にも似た感情が類の心を蝕むが、それがこの燃え上がった恋の炎を消してくれるわけではない。

「んっ……あ、はぁっ……る、い……」

胸の膨らみに赤く色付く乳頭を口に含めば、つくしの身体が快感に震えた。
自分が与える快感をつくしの身体は覚えている、総二郎に慣らされたとは思えないほど類の思う通りにつくしは喘いだ。
つくしの両足を左右に開き類の目の前に晒させ、以前のつくしならば羞恥で怒りそうなものであるが、贖罪のつもりなのかはたまた同情なのかつくしは抵抗を見せない。
煌々と明かりのついた室内で、愛液で濡れた秘部が光る。
類はわざと指でトロリと粘り気のある愛液をすくい取ると、つくしの前に翳した。

「まだ、ココ舐めてるだけなのにね……ねぇ、いつから濡れてたの?」
「やぁ……ごめ、ごめんなさい……」
「別に謝って欲しいわけじゃないよ……ただ、誰でもいいのかなって悲しくなっただけ」
「類……ごめんなさい……あたし……ぁ、んっ」

愛液を溢れさせ濡れた秘部に唇を寄せる。
赤く立ち上がる実を舌先で転がすように舐めれば、耐えられないといった表情でつくしが天を仰いだ。

「謝って欲しいわけじゃないって言ったでしょ?」
「あぁっ……そ、れ……ダメ、ん」

堪えきれなかった涙がつくしの頬を伝い流れ落ちる。
泣きたいのは俺の方だと顔を顰めても、別れ見守ることなどもう出来やしない。
手放すことなど……絶対に出来ない────。



「ねえ、つくし本当に一人で平気なの?イブくらいさ……花沢さんも連絡くれてもいいのにね」
「忙しいんだよ……仕事だもん、仕方ないよ。応援しか出来ないんだなって思うと不甲斐ないけどさ。でも三月の誕生日までには絶対に日本に帰るって約束したから」

それでも寂しくないわけはなかったが、恋人と過ごすクリスマスイブを楽しみにしていた親友の優紀の顔をこれ以上曇らせるわけにはいかなかった。
たった二日間のこと、バイトをしてコンビニでケーキでも買って食べて寝る……それを二日繰り返せばあっという間だ。
つくしは気にしないでと優紀の肩をポンポンと叩くと、これからイルミネーションを見に行くという優紀を笑顔で送り出した。
時刻は四時過ぎ……あと一時間もすれば辺りは真っ暗になり木に彩られているイルミネーションがその輝きを増すだろう。

「さ、ケーキでも買いに行きますか……」

カップルだらけの街中で、つくしが一人呟けば後ろから控えめにクラクションが鳴り響く。
呼ばれたわけでもないのに、ふとつくしが視線を向けると相変わらずの美貌を振り撒いた艶香のある男が、珍しくも自身の運転する車の窓から顔を出していた。

「西門さん……?」
「よっ……お前どうせ暇だろ?これからあきらと飲むからお前も来いよ」

路上駐車する黒塗りの車に近付いていくつくしに、立ち止まって総二郎を見つめていた多くの女性たちが敵意のある目を向けた。
総二郎も気が付いているだろうに、敢えて不敵に笑ってみせるのだから余計な誤解を招くのだ。

「えぇ?あんたらクリスマスイブなのに何の予定もないの?」
「何言ってんだ……クリスマスイブだからだろ。こんな特別感満載なイベントに女を誘うかよ、勘違いでもされたら面倒くせえ」
「うわぁ、サイテー」
「優しさと言って欲しいぐらいだぜ」

憎まれ口を叩いても、実のところ一人じゃなくて良かったとホッとしているのは総二郎にはバレバレだろう。
ともすれば泣きそうになっていたつくしの様子も何もかもを分かってくれている総二郎の存在は心強かった。

「ほら、乗れよ」
「え……でも飲むんじゃないの?」
「ああ、帰りは迎えに来させるから」

何でもないことのように言う総二郎がセレブであることをひけらかしているわけではないと今では分かっているのに、どうしても心が波立ってしまうのは、今ここにいない男を思ってのことか。
総二郎が助手席のドアを運転席側から開け、つくしはお邪魔しますと乗り心地のいい革張りのシートに身体を預けた。
ここに座りたいと思っている女性たちがどれほどいるか……それを知っていてもつくしの中に優越感などは存在しない。
つくしも周りにいる大多数の女性と殆ど同じであると知っているから。
何も出来ず、愛しい恋人からの連絡をただただ待つことしか出来ない……本当は会えなくともクリスマスくらいは電話の一本してくれてもいいのではないかと思っていても、それを言うことすら出来ないでいる。
たった一年のことなのに、ずっと隣にいた大学生の頃がもう随分昔のことのように思えてくる。

「類からは……連絡ないか?」
「あー、うん。忙しいみたいだね……」

心配そうに聞く総二郎のところにも連絡がないのだろう、総二郎は類がフランス支社でワインの輸入に関わる仕事をしているようだと自分の知る限りの情報をつくしに伝えてくれるが、つくしはそれをどこか上の空で聞き流していた。
嬉しくないわけではない、ただ総二郎はつくしよりも類の様子をよく知ることが出来る立場にあるというだけだが、それだけでも羨ましく思ってしまうのだ。
今どんな仕事をして何を考えてどこにいるのか……類から連絡がなければつくしは何一つ知ることなど出来ないのだから。
もしかしたら、あたしのことなんてもうどうでもいいんじゃないのと、卑屈な考えが頭を過ぎってしまうのは仕方がない。
フランスに行くと言ったきり類からは八ヶ月以上何の連絡もなく、つくしが知る類の情報は全て彼らがもたらしてくれるものである。
それでもあと三ヶ月だと期限付きであることが、つくしを何とか奮い立たせてくれていた。



「ちょっ……牧野!いくら何でも飲み過ぎだ、もうやめておけ」

あきらが止めるのも聞かずに、つくしはグラスに入った度の強い酒を煽るように飲み干した。
喉が焼ける感覚に頭がぐらぐらと沸騰するように熱くなる。

「だって飲まないと眠れない…っ、鳴らない電話待つだけの自分が惨めになる!類はさ…仕事で忙しくて仕事のことしか頭にないのかもしれないけど……あたしは、バイトしてても寝てても類のことばっか考えちゃう……も、バカみたい」

誰に何を言っているのかも分かってはいなかった。
ただ、ずっと類に対して言いたかったことが堰を切ったように自分の口から溢れ出した。
類のことを遠くから見つめる女性たちと同じように、ただあたしのことを見て欲しいと、きっと類が一番嫌いであろうウザい女になってしまっていることを自分自身で気が付いていても止まらない。
だから、類には言えなかった……声が聞きたい、寂しい、そばにいて欲しいと、願いはそれだけだったのに。

「俺ら、盛大な惚気聞かされてる気分じゃねぇ……?」
「ってか、牧野も一応女だったんだなと考えを改めさせられたわ」
「素面の時に言ったら怒るぜ?まあ、どうせ記憶ないだろうけどな……」

頭にモヤがかかったようで、目の前にいるのが総二郎とあきらだと分かっていても身体を動かすことが出来ない。
耳に聞こえる声はハッキリと頭に伝わるが、発したい言葉はつくしの口から出ることはなかった。

「どうするよ、この後。アパート送って行ってもいいけど、この様子じゃな……」
「あー、近くに俺のマンションあるから、そこに連れて行くか……」
「総二郎……お前…気をつけろよ?」
「何をだよ、酔っ払ってる女を襲うほど飢えてねえ」
「それならいいけどな」

ふわりと身体が浮き上がり、心地良い振動につくしの意識は次第に遠のいていった。



酷く喉が渇きつくしは手を伸ばす。
そこに水が置いてあるわけはない、水を飲みたければ起き上がり冷蔵庫を開けなければならないと分かっているのに、どうしてだか誰かが助けてくれるような気がしていた。
カチャっとガラスのぶつかるような音が聞こえ、冷たいグラスの感触がつくしの唇に当たる。
ほらやっぱりねと、何故かつくしは驚くより先に納得し水をコクコクと飲み干していく。
これはきっと夢だから────。
火照り熱くなった身体に冷たい水が心地良く身体中に巡っていった。

「る、い……?」

ここにいるわけはない、類の名を呼んだのはつくしのただの願いだった。
少し冷たい手のひらが、つくしの頬を優しく包む。
これが夢だと分かっているけれど、愛おしくてどうしようもなくて、つくしはその手に頬を擦り寄せ口付けた。
ピクリと反応を示したつくしの顔ほどもある大きな手が、夢ではなく現実に類がそこにいるような気さえしてくる。

「会いたかった……」

薄く目を開けても、部屋の中は薄暗く何も見えない。
ああ、それは夢だからかと再び目を閉じる。
これが現実ならばどんなにいいかと、優しく触れる唇を受け止めた。
キスは徐々に深みを増し温かく触れる舌が妙にリアルで、背中が粟立つ快感をつくしにもたらした。
ずっと、ずっと会いたかったのだとつくしは自分にのしかかる大きな背中に手を回した。

「ふ……ぁ、ん…類……も、っと」

今自分は酷く淫らな顔をしているだろうなと、堪えられない情欲につくしは腰を揺らす。
下半身に当たる生々しい性器が固くしなっていることに、大きな喜びを感じてしまう。
まだ、愛されてる……?忘れていたわけじゃないと、声が聞きたくて、つくしは大きく膨らんだ男性器を服の上からなぞった。

「……っ」
「類……お願い……して?」

夢ならばと恥ずかしいと思う気持ちも、いつもならば口にも出せない淫らな言葉もスラスラと口を出る。
随分と酒を飲んだように思う、夢の中だけれどもしかしたら酩酊状態なのかもしれないなと、服が自分の身体を擦れる刺激でも声が上がりそうな敏感な身体を可笑しく思う。
先ほどとは違い熱を帯び温かさを増した手がつくしの身体を這うと、ビリビリと電気が走るような快感が全身を駆け抜けてつくしは身体を震わせた。

「あ……っ、ん…」

ショーツの隙間から濡れた下半身に差し込まれた指に翻弄され、あっという間につくしは陥落し、真っ白な世界へと落ちていく。
愛しい人を想いながら見た夢は、酷く淫猥で幸せだった────。



頭を金槌で打たれたような痛みでつくしが目覚めると、見たこともない天井が真上にあった。
それに、自分の家とはまるで違う香りに、目だけを動かしやっと広いベッドに自分が寝ていることを知る。

「いったぁ……」

起き上がることも出来ずに、再び頭を抱えるとガチャリとドアが開けられて見知った顔が姿を現せた。
シャワーを浴びたばかりのようで、バスローブを羽織り漆黒の髪が濡れた様子は、彼をよく知るつくしでさえその姿に目が奪われる。
酒からきた頭の痛みで思考力が低下し、昨夜のことがまるで思い出せなかった。

「大丈夫か……?まあ、こうなると思ってたけど……」
「西門さん?何でここ……あ……ごめん、あたし飲み過ぎた?」

ベッドに横になったままつくしが言うと、総二郎の複雑そうに揺れる瞳にしばし見つめられ、その視線の意味に頭を傾げる。
何故か心許なく自分の身体を見直せば、肌着一つ身につけていない姿であることに気付く。
そう考えれば、昨夜自分が見た淫らな夢も思い出され、まさかと驚く瞳で総二郎を見つめる。
視線だけでつくしが言いたいことが分かったのだろう、総二郎は一つ息を吐くと珍しく自信なさげな様子で告げた。

「お前は……類だと思ってたから。なんでだろうな……同情だったのか、俺にも分かんねえけど……お前のこと、ただ抱き締めてやりたいって思ったんだよ」
「ごめ……ごめんなさい……あたし…」

まさか昨夜見た夢が現実だったとは、思いもしなかった。
しかも、つくしを抱き締めてくれたあの腕が総二郎のものだとは……。
頭の痛さも吹き飛ぶほどの衝撃に、つくしは顔を青褪めさせる。

「なんでお前が謝るんだよ……別にいいだろ、遠距離恋愛中ちょっと身体が寂しくなった、で人肌を求めた……それだけだよ。いちいち理由を求める必要もないし、俺とお前の関係が変わることもない。もちろん類とお前の関係もな。何もなかった顔して、類を待てばいい」

そんなこと出来るはずがない──たとえ気持ちは類に向いていたとしても、自分が類を裏切った事実は消せないのだから。
出来るなら、今自分の記憶を抹消してしまいたいぐらいだ……とは言っても、つくし自身総二郎との間に何が起こったのかはまるで覚えていない、ただ〝類〝との夢のことならば朧げに浮かぶ。

「そ、んなこと……あたしに出来ると思う?」
「思わねえよ。でも……お前が類を愛していることは嫌ってほど分かる、だから……類とこのままでいたいなら忘れろ」

総二郎の複雑な思いは自責の念もあるのだろう。
つくし自身が招いてしまった弱さとはいえ、それを受け入れてしまった自分を責めているのだと気付いた。

「西門さんのせいじゃないから……」
「いや、お前を拒むことも出来たんだ。でも……そうしなかったのは……」
「言わないでっ……お願い」

鈍いと言われる自分でも分かっていた、だから聞くわけにはいかなかった。
心を許している総二郎に優しい言葉をかけられればかけられるほど、甘えてしまった自分を許せなくなる。
許されることじゃないと分かってはいるけれど、類のそばにもういられないかもしれないと考えれば自分のしてしまったことを責めずにはいられない。
それは総二郎も同じなのだろう。
総二郎と目を合わせることも出来ず、互いにかける言葉も見つけられないまま時間だけが過ぎていく。



荒く吐き出される息とガクガクと震える膝がつくしの現状を物語っている。
どれだけ懇願しても許されず、下半身をいたぶる類の手は止まらない。
いっそのこと無理やりにでも抱いてくれた方が幾分かはマシだ。

「お、ねが…っ、あぁっ、ん…も…」

ソファーに両腕をついて尻を高く突き出す格好をさせられているから、背後にいる類の表情は見えない。
しかし、喜んでいるわけではないことはその声色からでも判断出来る。

「ダメだよ……俺のものだって分かるまで、イカせてあげない」
「分かってるから……っ、ゆ、るして…ぁ、はぁっ」
「そんなに簡単に許せると思う?」
「類しか……要らない…の……他には、何も要らない……」

自身の足の間が奏でるチュプチュプという湿った水音が、やたらと広い類の部屋に響く。
誰に聞かれているはずもないのに落ち着かない。
秘部を出入りしている長い指は、随分前から入口あたりを愛撫するばかりだ。
こうしていたぶられていることが、類のつくしへの愛ならばそれすら嬉しいと思う。
良かった……まだ愛されているかもしれない、総二郎とのことが許せなくともそれがつくしを想う気持ちへと繋がるのであれば、それでもいい。

「絶対に誰にも渡さないよ……つくしが誰を愛していてもね」
「あぁぁっ!」

突然後ろから昂ったものに貫かれて、予期していなかった衝撃につくしは背中を仰け反らせて達してしまう。
つくしの身体が落ち着く間も無くさらに奥深くを抉るように行き来する性器に、ゾクゾクと再び這い上がる快感が止まらない。

「あぁっ、はぁ…ん…あっ、あ────っ」
「なに、もうイキそう……?仕方ないね」
「やっ……類、激し……っ、あっ、ん…はぁっ」

無意識に蠢く内部が奥へと誘い、腰を支えられていなければ崩れ落ちてしまいそうな程足が震える。
ズルリと一気に引き抜かれた性器が、愛液で濡れた秘部にピッタリと嵌り擦り上げながら再び奥へと入っていくと、もう何も考えられずに意識が下半身にだけ集中する。
プツリと尖った赤い実をトロトロと流れる愛液を潤滑油として人差し指でコリコリと摘まれながら、類が律動を再開した。

「あぁぁ────っ!」
「……っ、く」

内部に温かい体液が注ぎ込まれるのを感じながら、すでに前戯だけでも限界にまで来ていたつくしはあっという間に、意識を手放した。



「それぐらいにしといてやれよ……お前いじめすぎじゃね?」
「ノックぐらいするよね……普通」

類はドアの近くで立ち部屋の中からノックする仕草をする総二郎をひと睨みすると、ソファに全身を預け気を失ってしまったつくしを、手近にあったタオルケットに包み抱き上げる。
その動作は怒っているとは言い難い優しさに包まれたもので、総二郎は僅かに眉を寄せる。
類はあどけない顔をして眠るつくしの額に口付けると、寝室へと運びそっとベッドに寝かせ部屋のドアを閉めた。

「で、なんか用?」
「気付いてんだろ……?」

総二郎に向ける視線は、つくしに向けるそれとは段違いの冷たいものであり、機嫌がいいとは言えない。
それでも勝手知ったる類の部屋に足を進めると、総二郎はチラリとソファを一瞥し結局は立ったまま話し始める。

「質問を質問で返さないでくれる?まあいいや……気付かないはずないでしょ」
「だったら、あんまりいじめるなよ。俺のせいでもあるんだから」

総二郎の言葉に、類がスッと目を細めた。
それは怒りに任せてブチ切れるタイプの司とは真逆であるが、背中に冷や水を浴びせかけられたかのような怖さがあり、総二郎の背中に冷たいものが流れ落ちる。

「お前は関係ない……。俺の代わりにされただけだろ?」

地べたを這うような低い声で告げられれば、そうと言う他ない。
所詮叶わないとは知っていた……つくしへの想いの深さも、覚悟も。

「それも、知ってたんなら許してやれよ」
「許すとか許さないとかじゃないんだよね……」
「はっ?」
「俺への裏切りの贖罪だと思ってるのかな……つくしがセックスに素直だし…可愛いから」
「鬼かよ……」

まるで類からも惚気を聞かされている気分で嫌になる。
本当は総二郎とつくしの間には、何もなかったのだと真実を告げるつもりで戻って来たはずなのに。

「暫くは……俺しか目に入らないだろうね。でも、出張ごとに浮気されたら敵わないから、次は連れて行くことにするよ」
「そうしてくれ……いちいち巻き込まれたら迷惑だからな」

まさか一年間連絡しなかったのもわざとじゃないのかとつい勘繰りたくなるが、総二郎とつくしの間にある空気に気が付いた時の類の表情に嘘はなかった。
類が顔色を変えるところなど初めて見たのだから、間違いない。
つくしには可哀想なことをしたかもしれないと、同情を禁じ得ないが自分が気にすることでもないだろう。
総二郎は一度は寝室に向けかけた視線を戻し背を向けると、じゃあなと軽く手を振りながら部屋を出た。
思い出し笑いをし、通り過ぎる使用人に胡散臭げな視線を向けられる。

「あの時、この世の終わり……みたいな顔してたな。ふっ……まぁせいぜいお幸せに」


fin


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