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恋夢23

恋夢23
長いです…。キリがいいところがなくて…。

***


「竹内くんっ!?」

つくしは竹内に駆け寄ると、床に座らせた。
堀田は仕方なく、何かあれば竹内をすぐに押さえ込めるように背後に回る。
類は目の前で苦しむ男に、怒りをどこにぶつけていいかも分からずに、血が滲むほどの力で拳を握った。

「だ、いじょ、ぶ…ヒュッ…だから…」
「大丈夫なわけないでしょ!?…ちょっと待って!」

つくしは鞄の中から携帯を取り出すと、どこかに電話を掛ける。

「あ、田中さん?申し訳ないんですけど、車回してもらえますか?同僚が…」

事情を簡単に説明すると、病院手配しておきますから、落ち着いて喘息の可能性と吸入器を持っているかを確認してくださいと言われ電話を切った。

「竹内くん?喘息なのっ!?吸入器持ってる!?」

返事も出来ないほど苦しいようで、鞄を指さすと頷いた。

「これか?ほらっ!」

木嶋が慌てて鞄を開けL字型の吸入器を竹内に渡す。

「はぁっ…はぁっ…」
「少しは落ち着いた?…堀田さん、車まで運ぶの手伝ってもらっていいですか?」
「はい」

堀田は頷き竹内を後ろから抱えた。
木嶋も反対側を支えて、ゆっくりと階下に降りる。
体格のいい堀田がいてくれて助かったと、つくしは安堵の息を漏らす。

「ねえ、まさかそいつ助けるつもり?」
「類?」

木嶋と堀田が竹内を連れて部屋を出ると、類は能面のような表情でつくしに聞いた。
それだけで、どれほど類が怒っているか気付いてしまう。

それでも…放っておけないよ。



そして雑居ビルが立ち並ぶ一角に、明らかに周りの景色とは異なるリムジンと、そこに向かう男達に、何事かと通行人が立ち止まる。
田中が類の姿を見つけ、頭を下げた。

「田中さんっ、すみません。病院どうでしたか?」

類と言葉を交わすことなく、つくしは類の手を握り2人で階段を降りると、ちょうど堀田と木嶋が両脇に竹内を抱え先に乗り込んだところだった。

「ご安心ください。花沢系列の病院に連絡しておきましたので、すぐに対応してくれるようです。出来ましたら、木嶋様も同行して頂けると、車から降ろす時に助かります」
「はい、分かりました」

つくしと類も車に乗り込むと、ドアが閉められた。

「結局、金持ってる奴は…こうなんだ…はぁっ、電話一本で、病院手配かよ…はっ」
「あたしの力じゃないわよっ!でも、同僚が病気で苦しんでるなら、こういう時に使わないでいつ使うのっ!?ってか、あんまり喋らないでっ!」
「は…はは…バカか…お人好し…すぎんだろ…」

竹内は苦しさとは別の涙が眼に浮かぶ。
こういうところが、好きだったのだと今更思う。
決して取り返しはつかないが。

そして類が、ぼそりと呟いた言葉は木嶋にしか聞こえなかった。

″ほんと、お人好し過ぎだよ…″




病院に着き竹内が医師の診察を受ける間、待合室で診察が終わるのを待っていた。
落ち着きを取り戻したつくしは、そういえば…と木嶋に話し掛けた。

「どうして…木嶋さんがいたんですか?あたし場所、メール出来なかったですよね…それに…類も」
「ああ、お前を行かせた後やっぱり気になってさ、失礼かと思ったんだけど、常務に電話させてもらったんだよ。まさかSPとか付いてるって知らないし…」
「ううん、助かりました…あれ、でも場所は?」
「常務に電話した時、GPSで場所は分かるって言うからそれ聞いて急いで向かったんだ。そしたら堀田さん?がちょうどビルに入っていくところで…あとは知ってのとおりだ」

つくしとしては、GPSの話は寝耳に水だが、もしそれがなかったらと思うとゾッとするので今は何も言わないでおく。

病室から処置を終えた医師が出てくると、類とつくしに頭を下げ説明した。

「とりあえず今日1日は様子見で入院してもらいますが、明日落ち着いていたら退院してもらって大丈夫ですよ」
「ありがとうございました!…それで、あのう…」
「はい?」
「今、会えますか?」

つくしはホッとして医師に聞くと、驚いたのは類で、ダメだと強く手を握られる。

「お会いするのは大丈夫ですが…。あまり興奮させないように注意してください。もし、何かあればコールしてもらえますか?」

類とつくしをチラチラと見ながら、嘘を吐くわけにもいかずに正直に答えた医師は、余計なことをと類の睨み付けるような目つきにギョッとするとそそくさと立ち去った。

「常務…今日はこれで帰らせてもらいます。私が居てもお役に立つことはもうなさそうですので」
「ああ、連絡ありがとう…」

木嶋が類に言うと、類はその時出来る精一杯の常務としての顔で木嶋に言った。
木嶋が一礼をして待合室を出ると、堀田も外にいますと声を掛けて待合室を出た。

類は言葉を交わすことも出来ずに、ただつくしを抱き締めた。
その手は微かに震えていて、どれだけ心配掛けたのかを伺い知ることが出来る。

「類…ごめんね…」
「ほんと…勘弁してよ。心臓止まるかと思った…」
「うん、木嶋さんに言われたのに…黙って付いていったあたしが悪い…ごめんね」
「本当に…会うつもり?」

類がつくしの顔を覗き込むように聞いた。
その顔は会わせたくないと言っているが、つくしはどうしても自分で話を聞きたかった。

「うん」
「あいつがなんでこんなことしたか…俺が教えるって言っても?」
「類、知ってるの…?」

つくしが驚いて目を丸くすると、類はやっと薄く笑った。

「ん、ちょっとね。調べさせてたから」

司に言われて、とは死んでも言いたくはない。

「それでも、やっぱり自分で聞きたい…」
「じゃあ、絶対に俺より前に出ないって約束出来る?近付かないで。あと、あいつに同情しちゃダメだよ?」
「わ、分かった…」





コンコン…

ドアをノックすると、中からは何の声も聞こえてこなかった。
もしかしたら寝ているのかもしれないなと、そうっとドアを開けると、予想に反して竹内は横にはなっていたが、目を瞑っていない。

「竹内くん…身体どう?楽になった?」

竹内はつくしと類を見ることはなく、嘲笑するように自身の顔を歪ませた。

「自分の方が酷い目にあってんのに…なんで人の心配なんて出来んだよ…」
「あの時…あたしが結婚してたから…って言ったよね…。でも、なんか…違う気がしたから。ちゃんと聞きたいって思ったの。もちろん、その後に殴るぐらいは許してよね?」

つくしの明るいその声に、竹内は衝撃を受けた。
あんなことをした自分を許すとでも言うのか。

そして覚悟を決めたように話し始めた。

「俺の親父…花沢物産で働いてたんだよ、本社勤務のエリートだったらしい。
それが、俺が中学の頃…いきなり地方の子会社に飛ばされたんだ。給料も減って…親父はサラリーマンなんてこんなもんだ、それが嫌なら使う側に回るしかないだろって笑って言うんだ。正直ガッカリしたよ」
「そんな…」

つくしが口を挟むことを竹内は許さなかった。
それほどまでに、本当は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

「仕事の出来る親父だと思ってた…。憧れもあった…。だからショックも大きくて、それ以来親父とは一言も話さなくなって、それも全て親父を左遷させた奴が悪いんだって思った。俺は大学を機にこっちに戻ってきて、唯一受かった就職先があんなに恨んでた花沢の関連会社なんて、なんの因果だよな…」

つくしはただ黙って竹内の話を聞いている。
そして、つくしの前に立つ類は竹内をジッと射抜くような瞳で睨みつけていた。

「でも、そこであんたに会ってさ。いつも一生懸命で、笑ったり怒ったり忙しそうで。そういうの毎日見てたら、もういいかって思うようになったんだ…。別に花沢の上役になんて会うこともないだろうし、俺は与えられた仕事をこなしていこうって、それで俺の隣にはあんたに…花沢さんに居て欲しかった…なのに…」

なんでよりにもよって、好きになった女が敵とも言える花沢の身内なんだ。

「バカじゃない?」

類が竹内に向けて初めて言葉を発する。

「なんだとっ!?」
「竹内くんっ、興奮したらダメだよ…類も言い方があるでしょ?」
「言い方?これでも気を使ってあげた方だと思うけどな…」
「類…」
「おまえの家の事情なんてどうでもいいけど、目に見えるものが全て事実だと思ってるから、そんな答えしか出せないんだよ…」

吐き捨てるように言うと、息を深く吐き出す。
つくしが傷付けられたかもしれなかったことを思い出すと、どうしても昂ぶってしまう気持ちを何とか落ち着かせようとしているように見える。

「どういう意味だ」
「面倒だったけどね、つくしが巻き込まれそうだったから、仕方なく会長に確認したよ…あんたの親父さん…竹内修さんは自分から地方の子会社に異動願いを出したらしい」
「そんなはずないだろっ!?なんでわざわざあんなところに異動願い出す馬鹿がいるんだよ!」

「竹内くんの、ためじゃない?」

つくしが言うと、竹内は訳が分からないといった顔で眉を寄せる。

「その通りだよ。ほら、少し考えれば分かることなんだ」

類は竹内の表情から、まだ何も理解していないのだということを悟り、心底面倒くさそうにため息を吐いた。

「父は竹内修さんのことをよく覚えてたよ。非常に優秀で将来は役員へと話もあったそうだ」
「俺のためって…まさか」
「あんたが初めて喘息の発作を起こしたのは中学生の頃らしいね…。毎日のように夜になると発作を起こすところを見ていたお父さんは、実家がある東北へ引っ越しすることに決めたんだそうだ。会長はそれを聞いてとりあえず出向という形を取ったらしい」
「嘘だ…そんなこと一言も…」

竹内は呆然とし口元を押さえた。

「言えなかったんじゃない?中学生って難しい年頃だし、友達とも離れなきゃならなかったでしょ?……あれ?類…待って…出向、なの?異動じゃなくて…?」
「そうだよ…竹内修さんは本社からの出向になっていた。給料も変わらない。つくしから見てどう思う?大学に行くためにこっちに部屋を借りて、仕送りをもらう生活」

確かに、何故竹内は給料が下がったと思い込んでいたのか。
子会社に異動になったと聞いて、当たり前のように生活も苦しくなるのだと思っていたのだろうか。
竹内の目は一点を見つめ、黙って考え込んでいる。

「そりゃあ…いいご両親だな、と思う」
「だよね…高校の頃のつくしの生活に比べたらね…」

類は、毎日毎日司とのことを考えている暇もないぐらい、つくしがバイトに明け暮れていたことを思い出す。

「そ、れは…親父が無理して…」
「うちの奥さん、高校の授業料すら自分で稼いでたよ。あんたが何をもって不幸ぶってるのか分からないけど…」

竹内は言葉を失い、ただ類の話を聞いていた。

「父親云々言ってたことと、つくしを傷付けようとした話は全く別物だ。どうしたって許されるものじゃない」
「類…」

視線だけで人を殺すことが出来るのではないかと思うぐらい冷たく暗い瞳で、竹内を睨む。
竹内はビクリと肩を震わせると、ゆっくりとつくしを見た。

「た、助けて…くださっ…」

竹内のその言葉で、一気に沸点に到達したかのように顔を赤くすると、つくしは思いっきり竹内を殴った。

「ふざけんなっ!!」
「いた…」
「悪いことしたらちゃんと目を見て謝るんでしょ!?…それに、あたしの家は竹内くんよりもっともっと貧乏だったけど…。親から人様に顔向けできないような生き方だけはするなって教えられた…。竹内くんだって、もっと他に方法があったはずだよ…」
「おまえがしたことは犯罪だから。住居侵入、監禁、殺人未遂…か?」

竹内は青ざめて、初めてことの大きさを理解したらしかった。

「そ、そんなつもりじゃ…」

つくしは類を見つめ、必死に首を振る。
それだけで類には言いたいことが分かってしまった。

そうなるとは思ってたよ…。

「俺も大概つくしには甘いね…。感謝しなよ。つくしは被害届出さないみたいだから。もういいでしょ?帰ろう…つくし」
「うん、竹内くんお大事にね」

つくしはドアに向かうと、竹内が叫んだ。

「は、花沢さんっ!」
「え…?」
「ごめん…本当にごめんな。謝っても許してもらえないと思うけど…」
「いいよ…もう。類は竹内くんのこと許さないと思うから、せめてあたしぐらいは許してあげるよ…じゃあね」

つくしは類と共に部屋を出ると、気付いた堀田が2人の後ろを歩く。
そして、リムジンにつくし達が乗り込んだのを確認すると、頭を下げて車を見送った。

車が走り出すと、つくしが口を開いた。

「類…。竹内くん、仕事は…」

しかし、言いかけてそれはつくしが口を出すことではないと分かっているのか、口を噤むと類をチラリと見た。

「それはいくらつくしの頼みでも聞いてあげられないよ?」
「うん、分かってる…。仕方のないことだって…」

つくし自信がお金に苦労したことがあるからだろう。
仕事を失くしたあとの生活が、どのようになるのか想像に難くない。
ましてや新入社員なら貯金もないだろう。

あいつがこのあとどういう生活を送るかまで、心配しなくてもいいんじゃないの…。

しかし、それが類が好きになった、牧野つくしという人間だった。
どこまでもお人好しで、何度騙されても人を信じる方が好きだと言う。
だから、彼女の周りには自分のような人間が多く集まるのであろうか。
困っていることがあれば、どんなことでも助けたいと思ってしまう。

これでつくしが散財するような、自分のことしか考えていない女だったら、花沢はとっくに潰れているかもね…。

それぐらいつくしに甘いことは、類自身よく分かっていた。

「父親と同じとこに異動させておいた…。異動だからね?それが俺の最大の譲歩。それ以上は聞かないよ?」
「類っ!!ありがとうっ〜!」

他の男のことで、そんなに喜ぶなよ…。

「今日は喋りすぎて疲れた…もう、黙って…?」
「あ、うん、ごめんね…。る、類?」

確かに普段口数の多い方ではない類が、大サービスという程、竹内に話していたように思う。
それは確かに疲れるだろうなと口をつぐむと、類の唇が額にそして頬に落ちてきた。

「な、に?んんっ…ん…っはぁ」

流れるように唇を合わせると、困惑気味のつくしの唇を舌で開けさせる。
舌を絡めていくと、次第につくしの身体から力が抜けた。

「本当に…無事でよかった…」
「ごめんね…類」

唇を離すと、類の手が苦しいほど強くつくしを抱き締める。
どれだけ心配させていたのかを実感して、申し訳なさと自分の馬鹿さ加減に、類の頭を抱えることしか出来なかった。


***

《※本文に喘息の発作についての記述がありますが、喘息はアレルギーによって気管支が過敏になり発作が起こることが多く、空気のきれいなところ?田舎に引っ越ししてもアレルギー源を取り除かない限り、あまり意味はないようです。例えば、花粉やハウスダストなどどこに行っても付いて回るようなアレルギーを持っていたらあまり意味はない…ということですね。
なので、小説の中だけの設定として、深く考えずにお読み頂けると助かります。》


***
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Re: ず◯様

コメントありがとうございます(^-^)

二次でつくしちゃんを傷つけることなんて私には出来なくて(笑)甘々な話ばかりです(^^;;
竹内くんも嫌な感じでしたけど、そのまま去らせました。ナイフで脅しておいて、許されるなんて普通考えられませんけどね(笑)

明日恋夢最終話なので、番外編の続き更新していきます!
まぁ、結構予想通りの展開で終わるかな…?
プロフィール

オダワラアキ

Author:オダワラアキ
オダワラアキの二次小説・二次創作置き場へようこそ。
ひるなかの流星・花より男子・日々蝶々・君に届け・会長はメイド様の二次小説・創作置き場です。黒バス黄黒、青黒BLも書いております。
現在はオリジナルばっかりになってしまったなぁ。

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