wish you were here 46
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さとみの話から暫くして、つくしの不安は的中することとなる。
大学帰りに周りの目を気にしながら買った体温計のような形をしたそれを、マンションのトイレで呆然と見つめる。
何度も何度も間違いではないかと、説明書に目を通した。
しかし3分待たずに出てきたブルーのラインは陽性であることを示している。
妊娠ーーー。
その言葉を意識するのは、まだずっと先のことだと思っていた。
そして、生理が遅れていたのもちょうどさとみの話を聞いた直後のことなだけに、精神的な不安から遅れているだけと自分に言い聞かせていたのだが、気が付けば予定日から1週間が経っていた。
体調の変化など全く感じはしない。
しかし、身に覚えがあるだけに不安が頭を過り今に至るのだ。
「どうしよう…」
自宅のトイレの中で下腹部を撫でてみる。
当たり前だが、そこには膨らみは感じられない。
類との赤ちゃんがいるかもしれない、そう思うと喜びもある。
しかし、つくしの頭の中には、類がつくしの妊娠をどう思うかで埋め尽くされていた。
せっかく類の両親にも理解を得られ、これからという時だ。
この頃は目覚ましい仕事ぶりを発揮し、大学に仕事にと忙しくしている類はどうなるのだろう。
つくしの妊娠のことで類が世間から批判されたりはしないだろうか。
仕事については、類に聞くと言うよりテレビや雑誌を通して知ることの方が多いが、花沢の専務として話す言葉には株価を左右するほどの重みがある。
つくしは、検査薬を持ってトイレから出ると、箱に戻してゴミ袋の下に分からないよう入れた。
1人で考えていると、悪いことばかりが頭に思い浮かぶ。
この日のバイトを休む旨の連絡を入れ、いつもなら夕飯の支度をする時間、つくしは鍵を持って家を出た。
この時、つくしには産まないという選択肢はなかった。
ただ、類に…類の両親に受け入れてもらえなかったら、この子をどうやって育てていこうか、それだけである。
*
夕方とはいえ外はまだまだ暑い。
家を出た瞬間ムッとした熱気がつくしの身体を包むと、一気に不快指数が上がる。
どこに行こうとも考えずに家を出てしまったが、ふとマンションからほど近い通り沿いにある本屋に立ち寄ると、一冊の本を手に取った。
妊娠、出産について…というタイトルの本をゆっくりと捲りながら目を通していく。
この時初めて、排卵日なるものがあること、生理予定日の約2週間前が排卵日となるが、その前後3日間の行為は妊娠しやすいのだということを知ったのだ。
今更ではあるが、自分の知識不足も否めない。
つわりのことや、陣痛の痛み…読み進めていくほどに不安が広がっていく。
そして、よくよく考えてみれば知り合いに会う可能性もある場所で、こんな本を開いていること自体が如何なものか。
結局、立ち読みすることも諦めレジで精算し店を出た。
「牧野っ!」
どこか慌てたようにつくしを呼ぶ懐かしい人の声が、遠くから聞こえる。
***
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さとみの話から暫くして、つくしの不安は的中することとなる。
大学帰りに周りの目を気にしながら買った体温計のような形をしたそれを、マンションのトイレで呆然と見つめる。
何度も何度も間違いではないかと、説明書に目を通した。
しかし3分待たずに出てきたブルーのラインは陽性であることを示している。
妊娠ーーー。
その言葉を意識するのは、まだずっと先のことだと思っていた。
そして、生理が遅れていたのもちょうどさとみの話を聞いた直後のことなだけに、精神的な不安から遅れているだけと自分に言い聞かせていたのだが、気が付けば予定日から1週間が経っていた。
体調の変化など全く感じはしない。
しかし、身に覚えがあるだけに不安が頭を過り今に至るのだ。
「どうしよう…」
自宅のトイレの中で下腹部を撫でてみる。
当たり前だが、そこには膨らみは感じられない。
類との赤ちゃんがいるかもしれない、そう思うと喜びもある。
しかし、つくしの頭の中には、類がつくしの妊娠をどう思うかで埋め尽くされていた。
せっかく類の両親にも理解を得られ、これからという時だ。
この頃は目覚ましい仕事ぶりを発揮し、大学に仕事にと忙しくしている類はどうなるのだろう。
つくしの妊娠のことで類が世間から批判されたりはしないだろうか。
仕事については、類に聞くと言うよりテレビや雑誌を通して知ることの方が多いが、花沢の専務として話す言葉には株価を左右するほどの重みがある。
つくしは、検査薬を持ってトイレから出ると、箱に戻してゴミ袋の下に分からないよう入れた。
1人で考えていると、悪いことばかりが頭に思い浮かぶ。
この日のバイトを休む旨の連絡を入れ、いつもなら夕飯の支度をする時間、つくしは鍵を持って家を出た。
この時、つくしには産まないという選択肢はなかった。
ただ、類に…類の両親に受け入れてもらえなかったら、この子をどうやって育てていこうか、それだけである。
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夕方とはいえ外はまだまだ暑い。
家を出た瞬間ムッとした熱気がつくしの身体を包むと、一気に不快指数が上がる。
どこに行こうとも考えずに家を出てしまったが、ふとマンションからほど近い通り沿いにある本屋に立ち寄ると、一冊の本を手に取った。
妊娠、出産について…というタイトルの本をゆっくりと捲りながら目を通していく。
この時初めて、排卵日なるものがあること、生理予定日の約2週間前が排卵日となるが、その前後3日間の行為は妊娠しやすいのだということを知ったのだ。
今更ではあるが、自分の知識不足も否めない。
つわりのことや、陣痛の痛み…読み進めていくほどに不安が広がっていく。
そして、よくよく考えてみれば知り合いに会う可能性もある場所で、こんな本を開いていること自体が如何なものか。
結局、立ち読みすることも諦めレジで精算し店を出た。
「牧野っ!」
どこか慌てたようにつくしを呼ぶ懐かしい人の声が、遠くから聞こえる。
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